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デフレ脱却は当分難しい?オルタナティブデータから浮かび上がる悲観的シナリオ

 総務省が1月22日に発表した12月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-1.2%、「生鮮食品を除く総合」が同-1.0%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.4%となりました。

デフレに再突入したのではないか?

 これで3指数ともに前年同月比マイナスとなるのは3か月連続となります。特に生鮮食品を除く総合は5か月連続で前年同月比マイナスであり、下落幅の大きさは2010年9月以来、10年3か月ぶりの水準となりました。

 また、今回は去年1年間の消費者物価指数も発表されましたが、生鮮食品を除いた総合は前年比-0.2%となっており、4年ぶりの下落となっています。11月公開記事「日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認」でも指摘していますが、もはやデフレに再突入したと指摘しても全く問題のない状態であると言えるでしょう。

エネルギー価格と宿泊料の転換に期待?

 現時点では公式にデフレであるという話は聞こえてきません。その理由として、まだ3指数の前年同月比マイナスが3か月連続でしかないという観点があるかと思います。つまり、物価の下落は1四半期続いただけであり、まだ「継続的な物価下落」には当たらないという考え方も出来るからです。今後、物価の下落基調の反転要因として考えられるのはすぐに2つ思い浮かびます。1つは宿泊料。もう1つはエネルギー価格です。

 今回発表された消費者物価指数の内訳をみていくと、宿泊料が前年同月比-33.5%と大きく下落しています。この大幅下落は「Go To トラベルキャンペーン」の割引の影響ですが、前月の同-34.4%%からは下げ幅を縮小しています。これは札幌市と大阪市が先行してGo Toの対象から対象から外された影響と考えられます。この事象に基づけば、来月以降は「Go To トラベルキャンペーン」の全面的な一時停止の影響が出るため、宿泊料の下落幅は更に縮小するでしょう。

 また、エネルギー価格は原油価格をリアルタイムで反映するわけではなく、数か月の時差をもって出てきます。昨年春の原油相場の急落の影響が徐々に薄れてくることは既に分かっており、宿泊料やエネルギー価格の反転が物価全体に対しては多少なりとも上昇に寄与するということです。来月以降、限りなくゼロに近いとはいえ、前年同月比プラスを続けるようであれば、デフレではなかったということになると期待している向きもあるかもしれません。

オルタナティブデータを見ると当分は厳しい

 しかし、実際にはそのような展開は期待しづらいのではないかと思います。消費者物価指数に限らず、経済指標はどうしても発表時期が1~2か月遅れてしまう傾向があるため、リアルタイムで物価情報を見るため、ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」のデータを見ていこうと思います。日経CPI Nowでは、全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。

 日次のT指数の推移を見ると、昨年の緊急事態宣言期間中は物価がそこまで下がっていないものの、緊急事態宣言明け以降は物価が下落傾向にあることが分かります。

 今回も緊急事態宣言明けに再び物価の下落傾向が続く可能性もあり、さらに言えば昨年と同様に緊急事態宣言が延長されるようなことがあれば、昨年同様の展開になる可能性は更に高まるでしょう。

データ以上に厳しい現状

 それでは、緊急事態宣言明けに物価が下落傾向になるのは何故なのでしょうか。データを分析して仮説を作ることは最低限の作業であって、実際には実地調査をすることでその仮説の精度は高まっていきます。昨年の2月以降、私はタクシー運転手や飲食店のオーナーなどに色々と話を聞いてきました。

 これらの話はどれも非常にミクロな話であり、それぞれの事象がどこまでマクロの指標に寄与するのかは分かりません。それを定量的に示せと言われたら難しいのですが、ミクロな事象が積み重なったものがマクロの事象となることは間違いありません。

 たとえば、緊急事態宣言期間中は営業時間の短縮を要請されます。いま発出されている緊急事態宣言では、飲食店の多くは協力金と引き換えに20時での営業終了を求められています。20時に営業終了ということは、ラストオーダーは19時や19時半になります。また、東京都の場合は酒類の提供は19時までにして欲しいとの要求もあるため、居酒屋やバーからすると、もはや夕方以降の稼ぎ時の時間帯は営業ができないのと等しくなります。

 このような状況下では、なんとか人件費と店舗の維持費ぐらいは稼ごうとして、日中にテイクアウトを始めたり、イートインの場合でも通常時より20%ほど値下げをして客を1人でも多く呼び込もうとします。このような施策でなんとか営業を続けたとしても、一度20%オフの相場観が身に付いてしまうと、緊急事態宣言明けに値段を再び元に戻しづらいというのです。

 また、日中のテイクアウト対応だけではとても人件費や維持費を補えないという高級な飲食店は休業という選択をとっています。その結果、従来はそのような店で扱われていた高級食材(魚や肉)の需要が落ちます。しかし、需要が落ちたからといって、生産農家の方々は機動的に生産量を調整することは出来ません。野菜の場合は収穫後に自ら廃棄することもありますが、たとえば牛は子牛を生むサイクルや成長速度を変えられません。そこで、最近はかなりお手頃な値段で高級和牛などの食材を扱う店も目立ち始めています。普段は卸さないような店にまで高級食材が破格の値段で卸されている現実があるのです。

 コロナ禍で給料が下がったり、ボーナスが出なかった人は多いでしょう。また、職を失った人も多くいます。その場合、消費の源泉となる収入が通常時より低下するわけですから、当然家計の財布にヒモは堅くなります。そうなると、よりモノが売れなくなるので、利益率を下げてでも安売りをする。その結果、働いている人たちの給与は下がり、また消費が冷え込んでいく、というデフレスパイラルが発生するのです。

 今回はデフレにはならずに反転するというシナリオと、更にデフレが進行するというシナリを紹介しました。これらのシナリオを頭に入れたうえで、来月以降の物価の行方を注視していくと、これまで以上に経済を見る際の解像度が上がることでしょう。

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オルタナティブデータが明かす行動変容~個人レベルでもDXが推進~

 1月に入り遂に緊急事態宣言が出てしまいました。当初は関東の1都3県が対象でしたが、執筆時点では11都府県に拡大しています。2021年も新型コロナウイルスによって社会情勢や経済環境は大きく変化してしまいそうですが、昨年1年間の行動変容を改めておさらいすることで、今後の予想にいかしましょう。今回もオルタナティブデータを用いて個人の行動変容を確認していきます。

楽しみが減ってしまった自粛期間

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける「外食」、「旅行」、「映画館」、「遊園地」の4項目についての消費指数にPCR検査の陽性者数の推移と重ね合わせたものが下のグラフになります。

 「外食」、「旅行」、「映画館」、「遊園地」の4項目はコロナ前には多くの人が普通に楽しんでいた娯楽かと思いますが、昨年の緊急事態宣言が出たときは全項目が大きく減少し、その後は回復傾向にありましたが、気温が下がるにつれて陽性者数も増えていくなかで、再び減速していきました。感染拡大を抑えるべく、各自が不要不急な外出を自粛していましたが、やはりその間は楽しみが減っていってしまったことが分かります。

若者が意外と大丈夫と言う理由

 終わりが見えないコロナ禍において、自粛疲れが起きていたり、慣れが生じてしまったことによって、一部では気のゆるみなども指摘されていますが、私の周りで自粛に対してあまりストレスを感じないと答えるのは若者が多いように感じています。その理由の1つは下のグラフに表れているのかもしれません。新型コロナウイルスに揺れた1年を振り返ってみると、買い物はEC(Eコマース)で済むので外出の必要がなく、娯楽も動画配信で十分というライフスタイルに違和感がない若者はストレスが少なく済むのかもしれません。

 ここで注目すべきは動画配信などの「コンテンツ配信」の伸びの大きさです。外出しない代わりにEC経由の消費が増えるということは誰もが予想できた行動変容だと思いますが、コンテンツ配信がここまで伸びると予想していた人は多くないでしょう。この伸びがどこまで続くのかにも興味は湧きますが、コンテンツ配信自体よりも波及して恩恵を受ける業種や企業が何かという分析をするとお宝銘柄の発掘に繋がるかもしれません。

小売業界は厳しい

 さて、オンライン上の話から実際のリアル店舗に目を向けてみましょう。やはり「スーパー」、「コンビニ」、「百貨店」はいずれも年末にかけて減速傾向にあります。

 外出して買い物をすると、どうしても不特定多数の人と密な環境に一緒になることもあるため、ECで買い物をすませてしまいたいと考える人もおり、コロナの問題が収束するまでは厳しい環境が続きそうです。昨年の終わりごろからはワクチンの話も具体的に耳にするようになってきたものの、ワクチンの効果が証明され、多くの国民が摂取するのはまだまだ先の話でしょう。

 もちろん、過度に怖がりすぎると、今度は経済活動が停滞して別の問題が発生してしまうリスクもあります。実際に買い物に行けば分かる通り、店舗側も十分に感染リスクを抑える施策をとっており、私自身もなるべくお気に入りの店では買い物をしたいと思っています。しかし、連日、陽性者数が増えたと報道され、その数が日に日に増えていく様子をみてしまうと客足が遠のいてしまうというのが現場で働く人の声でもあります。

 このような逆境を打開するためには、やはりECを活用したり、店舗にいても非接触で買い物が出来るような仕組み作り、つまりDXが求められるわけですが、いち早く対応したのは意外にも外食産業でした。ファストフード店ではアプリで注文したり、ドライブスルーやデリバリーにもアプリやウェブサービスを活用しています。

コロナ禍ではECがシェアを拡大

 対面での販売がメインの小売業界は早々にDXを推進しなければ、コロナ問題が収束したとしても、元のようなビジネス規模では商売が出来ないかもしれないというデータもあります。下図は小売業態を分野ごとに区分けし、コロナ前と言える昨年1月と第3波真っただ中の昨年12月の消費指数を比較したものになります。

 どの分野でもコロナ禍で対面の小売業態が前年比でマイナスになっているなか、ECはいずれも大きく伸びていることが確認できます。なかでも、医薬品・化粧品や飲食料品はもはやECで注文することが浸透しているように見えます。鶏が先か卵が先かの議論になってしまうかもしれませんが、外部環境によって個人の行動様式がオンラインサービスの利用にシフトしていく速度よりも速く企業はDXを推進しないことには、コロナ前のビジネス規模を維持できなくなるということは非常に重要な観点だと思います。決算説明会資料などに目を通し、依然として「DXの推進」程度の記載しかなく、具体的なアクション内容や結果が書いていない企業は危険かもしれないからです。

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【2021年のマーケットを検証】バイデン新政権誕生で「沈む業界・浮く業界」

2021年1月20日にジョー・バイデン氏が米国大統領に就任しました。バイデン政権が掲げる主な政策(経済・通商・環境)は、投資家であれば誰もが気になるところでしょう。それぞれの政策の中身を掘り起こしながら、現在高騰を続ける米国や日本のマーケット、ひいては、どのような業界にどのような影響をもたらすのか、検証していきます。

目次

  1. 【経済政策】連邦法人税と裕福層への増税で4兆ドルの景気対策か
  2. 【通商政策】引き続き中国へのけん制か? TPP参加で日本企業へ追い風も
  3. 【環境政策】経済対策4兆ドルの半分を投入する肝いり政策
  4. 【その他】5G競争、インフラへの投資、FRBとの距離感からも目が離せない

1.【経済政策】 連邦法人税と裕福層への増税で4兆ドルの景気対策か

現在のところ、バイデン政権が打ち出す経済政策は、大きく以下の4つが挙げられます。

それぞれの内容の解説と、その後のシナリオを予想してみたいと思います。

(1)景気対策のための増税には警戒が必要

まず、増税と景気対策が挙げられます。バイデン政権では、連邦法人税を21%から28%に引き上げる見通し。また、富裕層への増税では最高税率を現状の37%から39.6%に引き上げるとの方針を示しています。こうした施策により増える税収約1兆4,000億ドルの財源と、財政赤字拡大による約2兆5,000億ドルを加えたおよそ4兆ドルの景気対策を打つ可能性があります。

増税は本来、株式市場にとってはマイナス要因ですが、NYダウなどは最高値圏にあります。市場では「新型コロナウイルス感染拡大による景気下押しを背景に、増税は当面実現できず、経済対策が先行することはマーケットには好材料」と捉えているようです。ただ、キャピタルゲイン(売買差益)税の強化に動くとの指摘もあり、中長期的には株式市場にとって警戒要因になりそうです。

(2)GAFAへの規制強化は経済全般へ影響する可能性も

また、グーグルを傘下に持つアップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆるGAFAなど巨大ハイテク企業に対する規制強化方針を打ち出しています。

かつては米国経済の成長エンジンとして評価され、サクセスストーリーともてはやされましたが、巨大になり過ぎて競争を阻害するとの懸念が出ています。昨年7月には当時、民主党が過半数を占める米下院の反トラスト小委員会が公聴会を開催し、GAFA4社のCEO(最高経営責任者)を呼び、反競争的行為についての関与についてただしました。

ネット上で大規模なサービスを展開するプラットフォームを構築し、他社が入り込めないなどの現状を問題視。その後、4社がそれぞれの市場で独占的な力を享受しているとの報告書が出ており、これが規制強化のロードマップになるとの見方があります。仮に規制が強化されれば、時価総額の大きい企業だけに、経済全般へ影響が及ぶかもしれません。

(3)オバマケアの推進はどちらに転ぶか

またバイデン氏は、オバマ政権時代に副大統領の職に就いていました。オバマ元大統領は公的医療保険制度の充実を図る、通称「オバマケア(Obamacare)」を推進。バイデン次期大統領もこの政策を存続・拡充すると見られています。

米国では長らく国が医療費の決定に介入せず、保険の加入も強制ではない半面、医療費が高額のため、治療を受けられない人も少なくありませんでした。2010年には医療保険制度改革法を成立させ、国民に公的医療保険加入を義務付ける一方で、低所得者に向けて補助金を出し、医療費の抑制にも取り組みました。しかし、トランプ政権はオバマケアに真っ向から反対し、全面廃止を要請。

医療費の抑制策は、医療機器・医薬品メーカーにとっては逆風になりますが、一方で国民皆保険になれば、国民が医療機関にかかりやすくなるため、結果として医薬品企業にとってもメリットとなる可能性があり、どちらが好影響となるかは甲乙つけがたい面がありそうです。

なお、当時を知る関係者は「オバマケア法案の発表時には、オリンパスやシスメックスなど米国に強い機器や試薬メーカーが売られた一方で、エーザイや第一三共などグローバルに展開する製薬企業は比較的堅調だった」と述べています。

(4)ボルカー・ルールに身構えるマーケット関係者

バイデン政権は、金融規制の強化に乗り出す可能性もあるでしょう。トランプ政権では金融規制を緩めていましたが、政権交代により、銀行や証券会社の活動を制約する動きに出る公算が大きいとされています。

具体的には、高リスク取引を禁止する「ボルカー・ルール(Volcker Rule)」の強化です。これは、オバマ政権時に起こったリーマン・ショックを機に、高いリスクのある取引を禁じるルールで、2010年に成立。しかしトランプ大統領が金融規制の緩和を訴えて当選し、2018年にルールを緩和したことで、市場取引がしやすくなりました。

米民主党の政策綱領にはボルカー・ルールの強化が掲げられており、市場関係者は身構えています。この他、ストレステスト(金融機関の健全化チェック)の強化や配当制限を課すとの見方も出ているようです。日本のメガバンクも米国でビジネスを展開しているため、影響が出るかもしれません。

2.【通商政策】引き続き中国へのけん制か? TPP参加で日本企業へ追い風も

(1)バイデン政権における対中政策の行方

通商政策で最も注目されているのは、米中関係の動向です。トランプ政権は対中政策で、関税引き上げなどの強硬姿勢を取ってきました。新型コロナウイルス感染拡大についても、中国政府の対応を非難しています。ZTEやファーウェイなどの中国系通信機器メーカーに規制を掛け、5GなどのIT分野で中国の競争力を削ぐ方策も取っています。

一連の動きは、経済力や軍事力が拡大する中国に対して覇権の阻止を狙ったものだと考えられるでしょう。バイデン政権も、中国へ引き続き毅然とした態度で臨むとの見方が多いようです。

中国では自国内で半導体を製造したり、工場を自動化したりするなどして、生産性を高める動きが出ています。これを機に、日本のFA(工場自動化)関連や、半導体製造装置関連企業などは、ビジネスチャンスになるかもしれません。

(2)GDP世界1の米国がTPPへ復帰も

また、米国がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)へ復帰する可能性も出ています。TPPはオバマ政権が推進し、国境を越えた経済活動をスムーズに行う仕組みですが、トランプ政権は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げ、2国間の貿易を優先。自国に優位な協定を結ぶ戦略を取ってきました。2017年には、TPPの締結交渉からも離脱し、WTO(世界貿易機関)よりも高いレベルの自由化を目標に据えました。

ところが、多国間の連携を重視するバイデン氏がTPPへの復帰に舵を切れば、現在世界1位のGDP(国内総生産)を誇る大国が参加することになり、巨大な貿易圏が誕生するかもしれません。TPPには、「モノ」以外にも知的財産、電子商取引、投資などの項目も含まれており、日本企業にとってもメリットの方が大きいのではないでしょうか。

3.【環境政策】経済対策4兆ドルの半分を投入する肝いり政策

バイデン政権が最重視しているのが、環境政策の分野だといってもよいでしょう。冒頭の経済政策でも触れましたが、バイデン政権は増税で増える財源と財政赤字を合わせて、4兆ドルの経済対策を実施するものと見られています。このうち、4年間で2兆ドルをクリーンエネルギー関連とインフラに投資する計画です。

大統領選の公約では、風力発電や持続可能な住宅、電気自動車(EV)などを推進すると掲げており、雇用の創出も狙っています。2035年までにCO2(二酸化炭素)を排出しない電力業界の実現も目指しています。太陽光などの再生エネルギーを促進し、その電気をためる電力貯蔵施設の設置を加速する予定です。

トランプ大統領は、地球温暖化については「フェイク(嘘)」など切り捨ててパリ協定を離脱しましたが、バイデン政権ではこの協定にも復帰する公算が大きくなっています。パリ協定は、2020年以降の地球温暖化対策を定めた多国間の国際的な枠組みであり、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、「2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求すること」を目的としています。今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることも目標です。

欧州や日本でも脱炭素の動きが加速しており、今後数年間は、世界的にクリーンエネルギー関連株が注目されそうです。洋上風力発電、バイオマス発電、EV、水素(燃料電池)、全固体電池に関連する銘柄などが有望といえそうです。その一方で、石油関連企業の経営にとっては大きな打撃となることが想定されます。

4.【その他】5G競争、インフラへの投資、FRBとの距離感からも目が離せない

バイデン政権では、未来のための技術革新として5G競争に勝利し、全国に高速通信網を整備することも目標にしています。また経済対策ではクリーンエネルギー投資に重点を置くものの、老朽化した道路や空港、橋、上下水道などのインフラにも積極的に投資するという方針です。さらにトランプ大統領が過度に政策へ干渉したと報道されるFRB(米連邦準備制度理事会)については、独立性を尊重する方針のようです。

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グロース株投資vsバリュー株投資、2021年はどちらが笑う?

コロナ禍においてはITやハイテクに代表されるグロース株投資に軍配が上がりました。しかし今後、ワクチンの開発や景気の回復、金利の上昇を背景に、潮目が変わりそうです。2021年はグロース株投資? それともバリュー株投資? その勝敗を占います。

目次

  1. 2020年の市場総括
  2. 現状の市場について
  3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?
  4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

1. 2020年の市場総括

まず、2020年の国内株式市場を「バリュー」「グロース」「小型」の3スタイルに着目して振り返ってみると、以下のことが見えてきます。

  • 通年ではグロース株が市場平均およびバリュー株を大きく上回った(図1:A)
  • 暴落からのリカバリー~レンジ相場にかけて、グロース株の強さが目立った(図1:B)
  • 秋から冬にかけては実体経済の足踏み予想を反映し、小型株が沈む展開に(図1:C)

【図1】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

●株式市場動乱の2020年上半期

年初から中国の武漢を封鎖に追い込んだ新型コロナウイルスが、すでにアジアのみならず欧米・中東などに伝播していることが明らかとなり、3月25日を境に世界の株式市場は激しく動揺していきます。

約1カ月間続いた暴落期(図2・①)では、投資家の心理は未知の疫病への恐怖に支配されました。通常の景気後退では株価下落のヘッジとなる投資適格債券やゴールドまでそろって急落。日本株式全般が影響を受け、日本株式を代表する株価指数であるTOPIXは26.14%の大暴落となりました。

3月中旬には米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)がそろって大規模な金融緩和を打ち出します。各国政府もビジネスや市民への直接給付など、近年例のない巨額の財政支出を行い、経済を支えました。

3月下旬から株式市場は、実体経済に先駆けて急速な回復を見せ(図2・②)ましたが、ここでバリュー株の不振が始まります。TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の上昇率に7.54ポイントの差が付きました。同時期に好調に推移した日経平均もグロース株指数といえます。

【図2】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

コロナ禍で値を伸ばしたグロース銘柄の代表格がBASE(4477)です。コロナ禍が引き起こした最も顕著な消費形態の変革であるEコマースはまさに当社のフィールドであり、3月23日に付けた896円から10月8日には、15,930円と約18倍の大相場となりました。

緊急事態宣言中の5月から10月にかけて、Web訪問数は約3倍に急伸。積極的な広告宣伝が功を奏し、急速に注目を集めていたことが分かります。

《BASE:株価》

《BASE:web訪問数》

(ALTalk「BASE」指標より)

●レンジ相場とバリュー株復権の下半期

不安と弛緩が同居した夏から秋にかけて株式市場はレンジ相場入り(図2・表③)。金融・不動産・資本財といった実体経済と直結するバリュー株セクターは、緩慢な景気回復とワクチン開発の様子見などが相まって低迷が継続します。TOPIXバリューとTOPIXグロースの上昇率較差は約10ポイントに及びました。

その後、いち早く新型コロナウイルスを制圧した中国の景気回復やワクチン開発の進捗を受け、株式市場は歴史的な上昇の11月を経験しました(図・表④)。小幅ながらバリューがグロースを逆転する一方で、小型株が不振に陥ります。

ワクチン接種による欧米の早期正常化が期待される一方で、日本国内の正常化が2022年までかかるという予想もあり、国内経済を反映する小型株からグローバル企業を含む大型株へ資金のローテーションが起きている可能性があります。

11月には、割安感から外国人投資家が日本株の買い越しに転じており、その資金が小型株には及ばないことも不振の一因として考えられます。

TOPIXは3.53%の小幅上昇となった2020年は、TOPIXグロース・日経平均など大型グロース株が市場平均・バリュー株・小型株に大差を付け、一人勝ちの1年となりました。

2. 現状の市場について

株価の最も基本的な物差しであるPER(株価収益率)を使って、ごく大雑把に考えてみます。

一般的に、株式というリスク資産を保有することで得られる利益(リスクプレミアム)は、4~6%程度が通常の水準です。現状はリスクフリー資産である国債の金利がないので、この4~6%がそのまま株式益回り(1株当たり利益を株価で割ったもの)となります。逆数を取れば、PERが算出できます。

《PERの計算式:100 ÷ 4~6% = 16.7~25倍》 

金利がない状況では、株式投資の一般的なPERは16.7~25倍程度ということになります。
日本では金利のない時期が20年近く続いていますが、本来リスクプレミアムと金利を足したものが株式益回りなので、仮に金利が上昇して1%になれば

《PERの計算式:100 ÷ 5~7% = 14.3~20倍》

PERは14~20倍程度が妥当な水準となるわけです。

この計算を踏まえて、現在の日本株式市場のPERを確認します。

(12月17日現在)

今後の企業収益改善予想を織り込んだ予想PERであり、割高水準といえるでしょう。この水準で買いに入った投資家が報われるには最低限、以下の条件のうち少なくとも一つは満たされる必要があります。

①企業の収益改善が継続・ジャンプアップしていく
②投資家のマインドがさらに高進して株式投資ブームがやってくる
③長期金利がマイナスを掘り進む

頭を冷やして考えると、この水準では買いづらいと思われる向きも少なくないでしょう。とはいえ、これまでの議論は株式市場一般についてであり、いわゆる「長期インデックス投資」に強く関係するものです。

個別企業については常に、さらなる利益成長や株価の上昇トレンド継続が見込める銘柄や、割安放置が是正されそうな銘柄の発掘は、努力次第で可能です。過熱気味であるとはいえ、少なくとも平成バブル末期の日経平均PER 60倍という情勢とは全く異なります。

米国S&P500指数のPERが44倍に達した1990年代末のドットコムバブル期でも、バリュー株は安値に放置されており、バリュー投資家は後に高リターンで報われました。

皆が教科書通りインデックスに行くなら、「裏に道あり花の山」です。

3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?

実体経済の回復による長期金利の上昇や、サプライチェーン再構築によるインフレといったマクロ経済の動向が懸念されています。現実となれば、長く続いたグロース株優位が終わり、テクノロジー企業に代表される超成長株投資に逆風が来ると考える向きも少なくないようです。

私見ですが、これは米国内の論調に引っ張られている面があると思えてなりません。米国経済には、2019年までに政策金利を2.25~2.5%へ上げることができた元来の足腰の強さがありますし、現時点でもまだ長期金利は0.9%のプラスです。

異次元緩和でもインフレ目標を達成できていない日本で、インフレ期待・金利上昇へ導く確かな道筋を示すことができる政府・中央銀行関係者や学者がいればノーベル賞ものです。日本銀行がイールドカーブコントロールで国債市場を制圧してきた点も米国とは事情が異なります。マネーストック増につながる財政支出も迫力不足です。

金利上昇で恩恵を受けるバリュー株の代表といえば銀行株ですが、日本の銀行株指数の動きは惨憺たるものです。米国の銀行と比べても明らかな低評価が定着しており、金利が上がらなければ業績の先行きも多くは望めません。

金利上昇による恩恵を現実的に期待できる銀行セクターと、実体経済の回復が強い追い風となるエネルギーセクターを抱える米国とは構造が異なるため、日本でもバリュー株の復権があり得ると単純に考えるのは難しいといえます。

(2020年12月17日現在)

●とはいえバリュー株は「安過ぎる」のは確か

先進国株式におけるバリュー株はこの10年余りは極度の不振にあり、グロース株とのリターン較差は空前の域に達しています。だからこそ長期投資で「平均回帰」が起きたときの見返りはかつてないものになると、世界の著名バリュー投資家は皆考えています。

米国の著名投資顧問会社GMOを率いるジェレミー・グランサムやスマートベータ投資の立役者ロブ・アーノット、著名ヘッジファンド運用会社AQRキャピタル・マネジメントのクリフ・アスネスなど、枚挙にいとまがありません。日本のバリュー株もまた極度の割安にあることは確かです。

以上を踏まえて、「2021年にグロース株とバリュー株のどちらが有利か」を考えるためのポイントは以下の通りです。

①欧米でワクチンの接種・効力発揮が順調に進むか
②中国経済の腰折れがないか
③国内のデフレ再来懸念

2021年単年であれば、上記のポイントのうち①、②が順調にいくなら一般消費財や素材など景気敏感セクターのバリュー株にチャンスがあるかもしれません。

ワクチン接種が遅れる日本国内では、現在の消費・経済の流れが急変する見込みはありません。投資家の成長株物色トレンドを先回りして仕込みたいところですが、東証マザーズから資金が抜けている現状もあります。判断に迷うところで、投資家個々人の年末年始のホームワークになるでしょう。

10年単位の長期資金であれば、バリュー株投資にうってつけの局面です。金融・公益株を避け、コア事業が明瞭・売上営業利益とも大まかに右肩上がり・高ROE(自己資本利益率)・高自己資本比率の、いわゆる優良株の中から割安な株を仕込んでいくのがよいでしょう。

バリュー株投資はその時点で「見過ごされている」銘柄に投資することが多く、株価が上昇するためには「見つかる」タイミング(カタリスト)を待つ必要があります。最悪の場合は「見つからない」可能性もあるので、複数セクターにまたがる分散投資は必須です。

4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

成長株と一口にいっても、コロナ禍においてはその性質によって株価の挙動に差が見られました。

①「実際の人間の動き」に密着したサービスを提供する企業
  人材系、アパレルなど  例:ZOZO、リクルート

②オンライン上のサービスに特化した企業
  Eコマースなど  例:BASE

③高成長局面にある中で、さらにコロナ禍を追い風とした企業
 メディカルプラットフォーム、DXなど  例:エムスリー

この中では『①』で比較的株価の戻りが鈍い銘柄を見つけることができれば、欧米のワクチン接種進捗とともに国内正常化の期待が盛り上がり、値を切り上げていくというシナリオが考えられます。

ALTalkがオルタナティブデータを提供している銘柄では、ZOZO(3092)、リクルート(6098)あたりにその可能性があるかもしれません。

《ZOZO:株価》

《ZOZOTOWN:web訪問数》

(ALTalk「ZOZO」指標より)

人と人が元通り会えるようになる「生活スタイルの正常化」が連想されれば、ファッション需要はペントアップもあり、急速に回復すると考えられます。コロナ禍で消費者がEコマースチャネルに慣れた意義は大きく、ZOZOにとってはチャンス到来となるでしょう。

《リクルート:株価》

《Indeed:web訪問数》

(ALTalk「リクルート」指標より)

リクルートは人材派遣分野での売り上げが大きいので、ALTalkで見られるオルタナティブデータの中では、Indeedの訪問数が人材流動の動向を考える上で参考となるかもしれません。

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相場の行方を「干支」で分析!? 2021年「丑年」の相場観と注目銘柄を大胆予測!

株式市場では干支(十二支)でその年の株価を占うという、独特の伝統があります。干支には、たとえば「辰巳(たつみ)天井」「午(うま)尻下がり」など、その年の相場観を表す格言があり、その格言が過去の相場を的中させた事例がいくつもあります。     

2021年は「丑年」です。相場の動きと注目の銘柄を占ってみましょう。

●干支と相場格言

1. バブル崩壊は予測できた!? 過去に的中させたさまざまな事例

日本がバブル相場のピークを迎えたのは1988年~1989年で、ここが「辰年・巳年」でした。日経平均株価は1989年の年末に史上最高値3万8,915円を付けています。

そして1990年からバブルが崩壊します。まさに「辰巳天井、午尻下がり」で的中です。

(参考:日経平均プロフィル)

そして、2020年は子年。日経平均株価は11月に2万7,000円に迫り、1991年以来、29年ぶりの高値水準に進んでいます。まさに「子(ね)は繁盛」となっています。

戦後1949年に東証が再開され以降、子年は2020年を除き5回ありました。年間の日経平均株価の騰落率を「上昇=勝ち」「下落=負け」とすると、3勝2敗という成績です。
各年の子年の騰落率は以下の通りです。

●子年の騰落率

  • 1960年 +55.1%
  • 1972年 +91.9%
  • 1984年 +16.7%
  • 1996年 ▲2.6%
  • 2008年 ▲42.1%

5年分の騰落率を平均するとプラス23.8%になります。これは辰年のプラス27.9%に次いで2番目の好成績です。
しかも2008年にはリーマン・ショック。騰落率はマイナス42.1%にも達しており、これを含め平均で2割以上の上昇ということになります。

※年間の騰落率(%)={(その年の終値÷前年の終値)-1}×100

2. 丑年の格言「つまずき」の相場観と過去の勝敗

一方、2021年はつまずく丑年。丑年は前回までで過去6回あり、勝率は3勝3敗と5分ですが、平均の騰落率はマイナス6.3%。「午尻下がり」の午年(マイナス5.0%)を抑えて堂々の最下位です。1973年はオイルショック、1997年はアジア通貨危機――。丑年は景気の谷になりやすいようです。

アメリカの株式市場では牛は「ブル」(強気)、熊が「ベア」(弱気)の象徴とされますが、実際の丑(牛)年のパフォーマンスはお寒い限りということになります。

また、12年で一巡する十二支と、10年のサイクルである十干(じっかん)は中国を起源とする「陰陽五行説」と密接な関係があります。十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸からなります。この組み合わせがもともと「干支」といわれています。

2021年は西暦の末尾が1の年で「辛(かのと)」。1991年、2001年、2011年はいずれも年間で下落しています。特に年後半にかけてのパフォーマンスが悪く、これは丑年とも重なります。大手調査機関のエコノミストは「10年程度の設備投資サイクルが悪化する年と考えられる」としています。

ちなみに、筆者は1961年(辛丑)7月生まれですが、当時は7月に株価が大天井を打ち、その後いわゆる昭和40年不況(証券不況)に突入していきました。

ただ、辛の文字のいわれは、陰陽五行で「金」性の「陰」にあたるといいます。

3. 2021年の注目銘柄は「牛乳」と「牛肉」の関連銘柄!

辛の時は「新しい」を意味し、草木が枯れて新たな世代が生まれようとする状態を表すそうです。

また、「商いは牛のよだれ」といわれます。これは、牛が反すうするように、地道に努力することが商売のコツであることを示しているといいます。

2021年、仮に株価が大幅に調整した場面は、2022年以降をにらんで新規の買いをコツコツ入れると成果が上がることにつながるかもしれません。

2021年の丑年の注目銘柄 ですが、ひねりはありませんが、牛乳で「明治ホールディングス(2269)」、「雪印メグミルク(2270)」、牛肉などで「プリマハム(2281)」、「日本ハム(2282)」、「エスフーズ(2292)」、「あみやき亭(2753)」、「ゼンショーホールディングス(7550)」、「吉野家ホールディングス(9861)」、「松屋フーズホールディングス(9887)」などでしょうか。

そのほか社名で挙げるとすると、創業者が牛尾さんの「ウシオ電機(6925)」も挙げられます。

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第3四半期決算は「営業利益25.4%増」の絶好調!今後はkintoneの成長と海外展開がカギ|サイボウズ

サイボウズは2020年12月期第3四半期決算において、前年同期比で売上高16.7%増、営業利益25.4%増と注目すべき好業績を発表。グループウェアの老舗ながら高い成長性を投資家にアピールしました。

2021年に控える本決算を見据え、第3四半期決算の内容点検と企業成長に期待が持てる「3つのポイント」をご紹介します。「グループウェア市場の成長性」「同社の情報公開が担う『メディア=メッセージ』機能」「海外展開」に注目です。

目次

  1. 連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調
  2. グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力
  3. 「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる
  4. 成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

1.連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調

2020年11月12日に発表された2020年12月期第3四半期決算について、主な経営指標と事業の進捗、本決算と今後の成長を占う上でのポイントについて見ていきましょう。

サイボウズは1997年に現代表取締役の青野慶久社長他2名により創業。同年にグループウェア「サイボウズOffice」を発売し、以来一貫してグループウェアを磨き上げつつ、メール共有・業務改善アプリのプラットフォームとサービスを提供してきました。

「企業組織のチームワークに貢献する」という使命は内部にも貫徹されており、当社は「社員が働きやすい企業」として認知されています。青野社長はこの分野でも頻回にメッセージを発信し、よく知られた存在です。

2020年12月期の第3四半期決算(2020年1月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりでした。

第1~3四半期の合計で、売上高・営業利益のいずれも前年同期から目覚ましい成長を遂げています。売上高営業利益率は19.9%で、前年同期比から1.4%増の絶好調です。

業績の押し上げ要因は決算資料等を見る限り「特にない」というのが実際のところです。新型コロナウイルス感染拡大による事業活動・業績および会計上の見積もり等への重大な影響もありません。

2019年における前年同期比の数値を見ても、売上高19.2%増・営業利益17.9%増を記録しており、特段の材料がなくとも通常営業で高成長を遂げる局面にあります。

2020年12月期の本決算見通しは以下のとおりです。

第4四半期に発生する広告宣伝費や業績連動型賞与・税金等を加味した結果、通期での営業利益は21億5,700万円を見込んでいます。第4四半期の1月目に当たる2020年10月度の月次決算でも9月までの成長基調を維持。通期予想の達成は堅そうです。

株価について

株価は第3四半期決算発表翌日(11/13)終値で2,970円を付け、時価総額は約1,258億円に達しました。2019年3月の700円近傍を出発点に上げて足を強め、2020年9月24日には3,800円の最高値を付けて投資家は達成感を得ています。

チャート形状的にはダブルトップを形成し、当面は下落基調にありますが、業績好調で下げ材料となるようなニュースは特に確認できていません。業務上のライバルとなる「ナレッジスイート(3999)」「rakumo(4060)」、さらには「東証マザーズETF(2516)」と値動きが重なっていることから、テクノロジー系成長銘柄全般の動意に連動しているという印象を受けます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2.グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力

当社は決算の際に、売り上げ等を事業セグメントに分割する形式を採用していません。商品ごとの売り上げ推移も、四半期短信では発表していないため不明です。当社発表数値およびリサーチ会社等統計数値を押さえつつ、基幹4商品を概観します。

①kintone

14,000社が導入する「kintone」は、データベース・プロセス管理・コミュニケーションの機能を統合した業務改善プラットフォームです。「情報の属人化・二重管理」「進捗共有の不備」「売り上げ・勤怠・交通費等の管理労力」「契約書面準備の際の連絡不備」といった非効率性に対応。メンバー間での顧客・案件・問い合わせの共有・見える化を促進し、時間と手間の削減に寄与します。

「日経コンピュータ 2020年 9 月 3 日号 顧客満足度調査 2020-2021」クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門において2年連続第1位を獲得。2019年12月期(前期)には売上高が前年度比1.4倍、契約社数が前年度比1.3倍の伸びを記録しました。決算説明資料等で基幹4商品の筆頭に挙げられていることから、当社イチ押しの成長商品であるといえるでしょう。

②サイボウズOffice

66,000社が採用する「サイボウズOffice」は中小規模の企業に適したグループウェアの草分け的存在。スケジュール管理や掲示板・ワークフロー・ファイル管理・メッセージ・タイムカードなどの機能を備えています。2001年~2012年まで売上高が減少基調にありましたが、2011年のクラウド版リリースから再成長を開始。現時点では4年連続で最高売上を達成しています。

③Garoon

5,800社が導入している「Garoon」は中・大規模企業向けグループウエアです。ビジネス向けクラウドサービスのレビューサイト「ITreview」のグループウエア部門、ワークフロー部門で高評価(LEADER)を獲得。自社サービスkintoneとの連携に加え、Microsoft 365など他社システム・サービスとの連携も拡大し、利便性を高めています。

④Mailwise

10,000社が採用している「Mailwise」は、届いたメールを複数人で共有し、履歴を一元管理できるメール共有・管理ツールです。お問い合わせメールの対応・管理、顧客とのやりとりの共有、誤送信・二重送信の防止、アドレス帳の共有などが可能となります。

ALTalk指標

ALTalk指標で、サイボウズOfficeとkintoneへのweb訪問数の推移(合算/1年)を見てみましょう。1年で約2倍となっており、継続して注目を集めていることが見て取れます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

次にkintoneスマホアプリのダウンロード数推移(2年)を見てみましょう。移動平均を読み取ると年率40%程度の上昇傾向にあり、利用者増は一目瞭然。2020年3月のダウンロード数は3,466件と突出しており、緊急事態宣言下のリモートワークで利用機会が急拡大したことが分かります。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2020年9月以降のアプリダウンロード数が若干下降傾向にあるのが気掛かりですが、web訪問数は上昇傾向です。潜在ユーザーの伸びが確認できる指標であり、web訪問数は継続的にウォッチしていきたいデータです。

下の表は、年商500億円未満の中堅・中小企業におけるグループウェアの社数シェアを「導入済み」と「新規予定」に分けて集計したものです。大企業は除外されており、また「社数」であり「ユーザー数」ではないため、必ずしもシェアが売上高と一致しないことには注意が必要です。

(ノークリサーチ「2020年中堅・中小市場のグループウェアとビジネスチャットに起きている変化」より作成)

2019年までにOfficeを含めた統合アプリ「Microsoft 365」にリードを許していたものの、2020年の新規導入予定者数ではサイボウズOfficeがトップを奪取。2強体制を形成しています。

3.「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる

これまで見てきたように、当社の商品展開はいずれも「グループウェア」に属するシンプルな事業構造であり、短期的な事業の浮沈を左右する事情も出てきていません。グループウェアが寄与する部課単位のミクロな事業改善は、政策のはやり廃りに影響されにくい地道な分野であるため、当節よくいわれる「DX」や「AI」「フィンテック」のようなブームとは縁遠いものです。

このような銘柄への投資を考えるにあたっては、高成長トレンドを継続していける「事業性」の根本といえる「事業環境」や「強み」を実直に検討・確認していく作業が必要です。当社の成長を占う「3つのポイント」をみていきます。

1. グループウェア市場の成長性
2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成
3.海外展開

1.グループウェア市場の成長性

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長を続ける見込みです。

これまで見てきたように、現時点ではサイボウズ(サイボウズOffice+Garoon)とMicrosoft 365の二強体制となっています。少しさかのぼってシェア推移を確認しても、競争は熾烈ですが短期的に大きくシェアが上下するフェーズとは見えず、一定の均衡状態にあるようです。

このこととグループウェア全体の2020年~2024年の市場成長予想・年率8.8%を突き合わせると、サイボウズOffice・Garoon以外の商品に、当社の売上高前年度比16.3%増という高成長がかかっているという予測が立ちます。kintoneです。

グループウェアの代表格であるサイボウズ Officeとkintoneには以下のような相違点があります。

サイボウズOfficeは社員間の「連携」に重きを置く一方、kintoneは作業道具箱を「最適化」していくイメージで、社員が個々に利用し効率を高める「作業性の向上・省力化」への寄与が大きいといえそうです。

一般的なグループウェアとの比較で、より強く業務改善を志向するkintoneが高成長を継続していけるかが、当社の今後数年を左右する最重要ポイントとなります。

2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成

当社ウェブサイトに「ソーシャルメディア」というページが設けられています。

商品・事業・支社の単位に加え社長がフェイスブックアカウントを公開し情報を発信。さらに読み物コンテンツ(ブログ)として、企業研修についての情報発信を行う「チームワーク総研」と、働き方や仕事を通じた自己実現を主に取り扱う「サイボウズ式」を運営しています。

SNSの積極利用は、よくも悪くもSNSにおける一方向の情報拡散が起こりがちな時代において、ファンをつくる有益な取り組みです。

積極的・継続的な情報発信によって、グループウェア・業務改善プラットフォームについて意思決定を行う企業の人事総務部門やマネジメント層への認知向上が見込めます。

また、サイボウズは社内の働き方を改善する取り組みを長期・継続的に行っており、この点に関する情報公開も盛んです。「働きがいのある会社」ランキングの常連であるほか、ワークライフバランスやダイバーシティについての賞も複数受賞しています。

仕事環境の整備やマネジメント手法についても青野社長がスピーカーとなって積極的に発信しており、これほど経営者の顔やガバナンスの姿勢が知られている企業もなかなかありません。

社員が尊重され、風通しがよく働きがいのある、いわゆる「ホワイト企業」であり続ける努力を行うこと・情報を公開すること・社長の顔が見えることは、1990年代後半~2000年代に誕生し今まさに社会参画を始めつつある「Z世代」へ非常に大きなインパクトを与えます。

短期的な株価動向などに反映されることではありませんが、当社が力点を置く社内統治と情報発信は、最適な人材の獲得と社歴・モチベーションの長期継続に資する決定的に重要な取り組みといえるでしょう。実際、2019年度の当社の離職率は特筆に値する約3.8%という低さです。

さらに言えば、信頼感の醸成は長期的な「雇用コストの適正化」にも役立ちます。

3.海外展開

2019年度の決算報告においてはグローバル展開も強調ポイントとなっていました。

すでに中国・ベトナム・アメリカ・オーストラリアに現地拠点を設けており、製品の多言語化を進めアジア・欧米地域での販売に取り組んでいます。中国語圏では1,030社(前年比+3%)、アジア太平洋地域では590社(前年比+39%)、アメリカでは360サブドメイン(前年比+33%)の成長を示しました。

組織形態の改革も進めており、組織戦略室・事業戦略室を新設して、国外拠点における事業ノウハウの共有・連携を推進しています。

4.成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

本決算では、通期目標の達成度が最大の注目点となります。アナリストのコンセンサスや経営陣からの情報発信などをキャッチするために、情報感度を高くしておきましょう。

2020年以降のグループウェア市場の成長率・年率8.8%に対し、看板商品であるサイボウズOfficeとGaroonはシェア争いを制し、キャッシュカウ(長期収益源)であり続けられるかが第一の注目ポイント。レッドオーシャンを勝ち抜く自信と戦略を聞き取りたいところです。

目下の成長商品であるkintoneと海外展開の進捗は、今後の当社に対する期待=PERを大きく左右します。2020年12月期本決算の説明会において、中長期的な成長目標が出れば、株価上昇の材料となります。担当役員・社長の説明会コメントのニュアンスに至るまで、アンテナを高く張っておきましょう。

上でも言及したALTalkで確認できる「web訪問数の推移」「kintoneアプリダウンロード数」は、kintoneの成長を傍証する貴重な材料です。投資家は定点観測必至といえます。

●類似・競業関係にある企業の動向

一様に増収基調であり、後続の猛追が見て取れます。サイボウズの決算数値・通期予想には、この業界老舗ならではの安定感が感じられます。

●株価指標

サイボウズの株価は1株当たり利益の120.57倍の評価を受けています。

利益を投資に回す局面であるため、成長株の評価はPSR(株価売上高比率)で行うことが多いのですが、10.46倍という水準は成長性がすでに目いっぱい株価に乗っており、既存投資家の期待は高い水準にあります。

自分なりに、短期の材料もしくは長期の成長性をしっかり腹落ちさせて、投資に臨みたい銘柄といえます。サイボウズOffice・Garoonというトップ商品がいまだに高成長局面にあることは、安心材料です。さらなる高成長の芽を逃すことのないよう、参入の機を見据えていきましょう。


ALTalkでは、サイボウズ以外にも、インターネット系銘柄を中心に約50銘柄を掲載していますので、ぜひ登録してご覧ください。


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参照資料

2020年12月期第3四半期決算短信
2020年10月度月次
2019年12月期(第23期)決算および2020年12月期(第24期)事業戦略説明会
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現在のデフレ状態はいつまで続く?オルタナティブデータから考察

 総務省が12月18日に発表した11月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.9%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.9%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.3%となりました。

 前月に続いて3指数ともに前年同月比マイナスとなりましたが、特に生鮮食品を除く総合 の前年同月比-0.9%という下げ幅は 2010年9月に同-1.1%となって以来、10年2カ月ぶりの落ち込みとなりました。

「Go To」事業がなくても物価は下落傾向

 内訳を見ていくと、前年同月比で大きくマイナスとなっているのが「宿泊料」です。前年同月比-34.4%と大きく下落していますが、「Go To トラベルキャンペーン」による割引の 影響であることは言うまでもありません。消費者物価指数の場合、消費者が支払った価格が基になるため、このような割引支援や、消費増税などによって指数が大きく影響を受けることは知っておきましょう。ちなみに、本キャンペーンによる割引を除いた宿泊料は同+0.7%となっています。

 とはいえ、「Go To」事業の影響を除いた試算でも生鮮食品を除く総合は同-0.5%となっているので、「Go To」事業の影響だけが物価下落の原因ではないことが分かります。

エネルギー価格の持ち直しが反映されるのに期待?

 前回の記事「日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認」でも指摘しましたが、2019年10月実施の消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響を品目ごとに機械的に一律に調整した「消費税調整済指数」は8月から3指数が全て前年同月比でマイナスとなっており、既に日本はデフレに再び突入したと考えてもよいと書きました。

 一方で、春先の原油価格下落の影響が時差をもって物価全体に出てきており、持ち直してきて原油価格が反映される数か月後には再び物価は前年同月比でプラスに回復するという解説もありますが、そんなに単純な話ではないということは主張しておきましょう。

 今回発表されたデータも含めて、エネルギー価格の推移を見てみると、下図のように下落傾向にあります。

 昨年の10月に消費増税がありましたが、実は経過措置として電気代とガス代は10月から税率が引き上げられました。その結果、他の品目と比較して、電気代とガス代は1か月後ろ倒しで消費増税の反動による物価下落圧力が表れます。よって、今回のデータから1年間、両品目はマイナス圧力を受けることになります。

オルタナティブデータを見ても目先は厳しい

 既に2020年も終わろうとしている中で、先程の消費者物価指数は11月のものになります。足元の物価動向を把握するため、全国の食品スーパー1200店舗のPOSデータをもとに、ナウキャスト社が提供している日次物価指数「日経CPINow・T指数(物価指数)」を見てましょう。

 11月下旬に日次T指数が前年同月比でマイナスとなっていますが、12月も再び下落傾向にあることが分かります。T指数を構成する品目を細かく見ても、前年同月比で下落に転じた品目数が増えてきており、物価下落圧力は足元でも強くなっていることが確認されます。

第3波による更なる物価下落圧力

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかりません。国内の1日における感染者の報告数が3,000人を超える日が散見されるようになり、東京都内でも1日で800人以上の感染者数が報告される日も現れ始めました。このような状況下、「Go Toトラベル」について、政府は14日に今月28日から来年1月11日まで全国一斉に一時停止することを決め、東京都をはじめとするいくつかの都道府県では飲食店に対する時短営業の要請がありました。

 このような危機を感じるような報道が増えることで、国民は自主的に経済活動を自粛するようになるというのは、これまでの3回の新型コロナウイルスの感染拡大の波における消費関連のデータを見れば分かる話です。ここ数週間の報道を受けて経済活動が抑制されれば、これもまた物価下落圧力になります。

 そして、今年の2月以降は非自発的失業者が増え続けていますが、いまのところその雇用調整は非正規雇用を対象に起こっていますが、10月の労働力調査をみていると、遂に正規雇用でも雇用調整が起こりつつあるかもしれないと考えられる数字が出てきました。

 雇用関連の指標は景気に遅行します。労働市場には第3波の影響が来年以降表れはじめるため、やはり来年も春先は消費が控えられて物価にはマイナスの影響が出ると考えています。よって、来夏あたりまでは少なくとも現在のデフレ状態が続くとみてよいのではないでしょうか。

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楽天・ドコモとの「経済圏トリプルウォーズ」をいかに戦うのか? 2021 年度におけるZホールディングスの事業構造を読み解く

Zホールディングスは2021年3月期第2四半期決算において、前年同期比で売上高15.1%増、営業利益29.8%増という大幅進捗を発表しました。この多くはZOZOの子会社化によるものです。
来期以降の経営環境を占うには事業の内実をしっかり確認していく必要があります。LINEとの経営統合・PayPayブランドへの大胆な投資・広告事業へのテコ入れなど、話題が目白押しの下半期を展望しました。

目次

  1. 【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に
  2. 【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析
  3. 【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る
  4. 【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

1.【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に

2021年1月に控える第3四半期決算発表の前に、2020年10月末に行われたZホールディングスの2021年3月期第2四半期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

1996年、Yahoo! 米国法人とソフトバンクの合弁でヤフー株式会社が設立されました。以後、孫正義氏率いるソフトバンクの中核企業・ブランドとして、M&Aを繰り返しながら業容を拡大。2019年に行われたグループ再編の際、改めて挑戦の姿勢を世に示すべく新社名に「Y(Yahoo! JAPAN)からZへ」という意味を込め、Zホールディングス株式会社という社名となりました。

インターネット・情報技術で実現できる「利便性」「豊かな生活環境」「社会の発展」の追求を掲げ、その連結子会社数は45社にのぼります。日本を代表するIT企業グループの1つです。

2021年3月期第2四半期決算(2020年4月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

大幅な増収増益ですが、当四半期特有の事情があります。セグメント別の数値とともに確認していきましょう。

モノやサービスを販売・流通するコマース事業の進捗が目立つ半面、メディア事業は減収減益と明暗を分ける形に。新型コロナウイルスはEコマース需要増・広告出稿減と、当社事業に複雑な影響を及ぼしました。

コマース事業の指標には2019年11月にZOZOを連結子会社化したことが大きく寄与しています。売上収益で327億円、営業利益で61億円がプラスされたことで、前年同期比の伸び率がかさ上げされる形となりました。

2021年3月期の通期予想では売上収益1.14兆円(8.3%増)、営業利益 1,600億円(5.1%増)の見込み。既存事業の拡大に加え、下半期は主にコマース事業を中心とした注力領域への積極的な投資を実行するとしています。

株価は決算発表後(11/2)の終値で648.2円、時価総額は約3兆1,268億円となり、10月14日にはここ10年で最高値の790.0円をつけました。この3ケ月の値動き一部上場銘柄ながら東証マザーズ指数に近く、インターネット・DX関連の短期売買資金が多く出入りしている印象を受けます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

2.【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析

Zホールディングスは事業を大きく2つのセグメントに分けて決算発表を行っています。売上高1兆円・連結45社を数え事業領域は多岐にわたるため、比較的売上げの大きい部門および成長著しい部門を押さえておきましょう。

連結の対象となる主な関連会社の一覧です。

《コマース事業》

コマース事業では、ポータルサイト「Yahoo!」ブランドのもとで「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」などのコンシューマーサービスを手広く展開。ASKULやヤフオク!の法人向けシステムなどBtoBも強く、売上高はビジネス関連がコンシューマーを上回っています。

ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」は2020年のウェブサイト訪問者数ランキングでグーグルに次ぐ国内第2位。ニュース・メール・天気予報・検索といった日常生活の情報源をコンパクトにまとめ、オンライン接続ドアとしての強みは圧倒的です。堅いブランドイメージを保持し、関連サービスへの直接的な送客チャネルとして機能しています。スマホアプリ「Yahoo! JAPAN」は2019年の日本でのダウンロード数で7位につけていますが、スマホ世代の若年層への浸透は十分とはいえません。

コマース事業のKPIのうち「物販取扱高」は1兆2,535億円で前年同期比+30.8%、予約サイトや電子書籍などの「サービス・デジタル取扱高」は2,386億円で+3.4%となっています。前者は新型コロナウイルス感染拡大による消費チャネルの変化を追い風に成長した一方、後者は行動自粛とGo To キャンペーンの影響が入り交じりの小幅な成長となりました。

コマース事業に属する金融部門では、既存のサービスをソフトバンクグループが推進しているバーコード決済サービス「PayPay」ブランドに統一し、消費生活全般の金融サービス需要をカバーする「シナリオ金融」構想を推進。完全子会社「Zフィナンシャル」を中心にクレジットカード・銀行・証券・保険・FX・資産運用などを手がけています。

ソニーやトヨタなど、金融部門を祖業と並ぶ、もしくは凌駕する収益エンジンに成長させた先達は複数存在しており、ソフトバンクグループの金融部門を担う当社に強い期待がかかります。

金融事業のKPIである「クレジットカード取扱高」は1兆1,396億円で前年同期比+28.9%。Yahoo! カードとPayPayの連携による優遇キャンペーンの効果が出ているようです。

ALTalkではPayPayのアプリダウンロード数を確認できます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

ここ3年を見ると、2019年のダウンロード数増が目につく一方、今年に入っての減少が気にかかります。QRコード決済におけるPayPayのシェアは約55%と独り勝ちの状態にあり、大規模キャンペーン等で拡大する時期は過ぎたということかもしれません。

コマース事業/パーソナル部門の売上高推移を確認すると、PayPayアプリダウンロード数の増減から少し遅れて売上高が追っているように見えます。

疑似相関の可能性はありますが、PayPayのキャンペーンがコマース事業の売上をかさ上げしている、いわばタコ足食いの可能性も排除できません。毎四半期決算で発表されるKPI「PayPay決済回数」で進捗の裏取りは行っておきたいところです。

《メディア事業》

メディア事業は主に子会社であるヤフー株式会社の所管です。検索連動型広告などのネット広告関連サービスを提供しています。一般的な広告スペース提供のほか、新型コロナウイルスの蔓延を受け感染者情報ページの解説や学校休校支援に向けた学習コンテンツの提供を行うなど、消費者サービスというものを「公共性」や「好感度」も含め重層的にとらえている点は大いに好感が持てます。

メディア事業のKPIである「広告関連売上収益」は1,629億円で前年度比+1.6%の小幅な成長。ここ数年は5~7%程度の安定成長路線でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響で出稿が停滞。景気依存の面が強いという広告の限界を打破すべく推進中の「Yahoo!セールスプロモーション」については後述します。

セグメント別の売上高・営業利益は以下のとおりです。

コマース事業とメディア事業は売上高には約2,700億円の差がありますが、セグメント利益にはほとんど差がありません。原価のかからない広告ビジネスの効率性が表れている形ですが、経済状況に左右されやすい面も。下半期はコマース事業を中心に投資し収益基盤の拡大を狙います。

3.【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る

Zホールディングスの今後を、3つの「切り口」から読み解いていきます。

① LINEとの完全統合
② 2021年3月期・下半期の重点投資
③「経済圏」バトルの帰趨

①LINEとの完全統合

Zホールディングスは、国内スマホユーザーが利用するコミュニケーションツールではスタンダードであるLINEの運営と関連サービスの提供を行う、LINE株式会社の子会社化を2021年3月頃を目標に推進中。確固たるチームワークとサービス連携・統合によるシナジー発揮に重点を置いています。

LINEとの経営統合のメリットは2点に集約されます。1点目が、長くパソコンベースでのサービス展開を行ってきたヤフーが、LINEを通じスマホユーザーとの接点を強化できること。アプリとしてのLINEおよび付随サービスのコアユーザーである若年層を取り込むことで、全世代をカバーする長期的な成長戦略の立案およびサービス展開が可能となります。その延長線上には、国内オンライン・コンシューマーサービスのプラットフォームとして盤石の体制を整え、アマゾンやテンセントといったグローバル企業とのサービス競争に勝ち抜くという大きな目的があります。

統合により提供中のサービスがどのように整理・統合されていくかは明らかになっていません。今後のプレスリリースや決算発表に要注目です。

②下半期の重点投資を点検

コマース事業では、

  • PayPayを用いた特典付与、イベント(超PayPay祭)開催
  • クレジットカード(PayPayカード)会員拡大施策

これらの施策により「Eコマース利用者の優良顧客化、周期的購入の習慣化」「クレジットカードのアクティブ会員数拡大」を図るとしています。

加えて、あらゆる金融サービスをPayPayブランドに統一してYahoo! ブランドのサービス利用者が決済でPayPayブランドを利用する機会を増やし、両ブランドのシームレスな共通利用を推進します。

こうしたPayPayを中心とするコマース事業の施策には1つ、気がかりな点があります。利用した人なら誰もが感じている「QRコード決済は最も便利な決済手段とはいえない」ことです。

日常的な使い勝手は、電子マネー>クレジットカード>QRコード決済であり、QRコード決済には迅速性・スマホの電源・電波状況による処理遅滞などの問題がつきものです。クレジットカード会員数の拡大を重点項目としていますが、成熟市場であり急速な拡大は易しいものではありません。

PayPayブランドを利用者にとって価値あるものとしSuicaや楽天Edyから決済金額を奪うためには、PayPay特典・イベントといったいわば「金配り」をやめることはできません。後述する他の「経済圏」との戦いに勝つための体力勝負となります。

体力勝負という観点では、Zホールディングスが所属するソフトバンク陣営にはすでにPayPayをQRコード決済の最強ブランドに育てた実績があり、古くはYahoo! BBでADSLに打って出た際の成功体験があります。縦横無尽な資金調達も得意とするところであり、大盤振る舞いも勝つまでやり切れば勝つ……という世界かもしれません。

メディア事業では「統合マーケティングソリューション」の確立に期待がかかります。Zホールディングスに蓄積されるビッグデータを活用し、広告による認知→PayPay特典付与→消費者の購入行動とつなげるマーケティング活動支援サービス「Yahoo!セールスプロモーション」です。

2019年より提供開始となったサービスで、広告事業の中でも成長著しくインパクトは大です。本年度上半期と前年度下半期の比較で、Yahoo!セールスプロモーション経由の広告売上収益は2.6倍となっています。ショッピング広告には季節性があり、下半期の売上げが上半期を3割程度上回る通例にかんがみれば、Yahoo!セールスプロモーションが急速に認知されていることがわかります。

BtoBサービスのため実状が見えにくい部分があり、「広告主にとって真に実用的なものになっているか」という点は今後の情報を待ちたいところです。本来、PayPay特典付与といったプッシュ型マーケティングの訴求力をより確かなものとするためには、決済データと購入された商品がつなぎ合わされた形で利用できればベストのはず。コンビニエンスストアがPOSデータの蓄積・分析からマーケティング施策を立案するイメージです。現状、PayPayの決済データは購入情報と紐づけされていません。

いかに実用性を高め広告主に訴求していくかは技術の核であり、尋ねてわかることでは当然ありませんが、プレスリリースや四半期決算等で情報が得られるか、ウォッチすべき項目の1つといえます。成長商品ですが、投資家としては過信は禁物です。

③「経済圏」バトルの帰趨を占う

LINEとの統合は、Zホールディングスが若年層へ訴求する力を飛躍的に高めます。アマゾン、デンセント等グローバル企業への危機感が素地にあることは先述しましたが、同時に国内のライバル「経済圏」との競争に勝ち抜くことも重要です。

消費者向けサービス市場では、携帯キャリアを核として様々なサービスが連携して展開・相互に送客を行い顧客を取り合う経済圏バトルが激化しています。経済圏は、決済手段やポイントサービスを通じた顧客の囲い込みによって形成されます。現状は、PayPay決済を中心とするヤフー・PayPay経済圏、楽天カード・楽天Edyを擁する楽天経済圏、dポイントを育成し業務提携で固めるドコモ経済圏の三つ巴です。

それぞれの経済圏に特有の強みと弱みがあり、現時点では覇権は定まっていません。ヤフー経済圏はLINEとの経営統合によってサービスラインナップが大きく充実することに加え、ソフトバンクグループのアセットを利用することができれば、一歩抜きんでる存在になる可能性があります。中国の大手総合IT企業アリババやウーバーといった海外の著名なサービスとのつながりは他の経済圏にはないものです。

一消費者として各経済圏の「使い勝手」や「ブランドイメージ」を考えてみることも投資判断の良い材料になるでしょう。

4.【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

Zホールディングスの第2四半期決算は大幅な増収増益となりましたが、実状はZOZO連結のインパクトが大きかったといえます。2021年3月期の通期予想は売上収益1.14兆円(+8.3%)、営業利益 1,600億円(+5.1%)と慎重な見込みです。

ここまで当社の業績・成長戦略・施策・競争環境を分析してきましたが、これらのファクターを株価展望に結びつけるにあたっては、「親子上場」が問題となる場合があります。

Zホールディングスの連結対象企業のうち、売上高の大きい3社がそれぞれ単独で株式を上場しています。

アスクル、バリューコマース、ZOZOの利益は、それぞれの企業の株価とZホールディングスの株価の双方に影響を与えます。

本来はあくまで個別企業の利益ですが、連結(個別)企業の投資家が利益に対して何倍の価格で購入するか(PER)と、Zホールディングスの投資家が投資する場合のPERは常にずれが生じます。いわば一物二価の状態です。この意味で、親子上場は投資家が親子それぞれの企業の利益を適切に評価することを妨げています。

現時点では、ZホールディングスのPERは各連結企業より少々低めといったところです。購入を検討している投資家にはお得に感じられる一方、購入した後、株価が伸びにくい可能性もあります。ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株に投資した際に、多角的な事業構造のため企業価値が割安に評価される「コングロマリット・ディスカウント」という言葉が聞かれましたが、当社に投資する際にはディスカウントとなるのかプレミアムが生じるのか、とくに長期投資を考える向きは気にしておいた方が良いかもしれません。

今後の成長と株価を占うにあたっての最注目ポイントは、金融部門のPayPayブランドの統一効果です。金融部門は現時点での収益寄与は大きくありませんが、うまく育てば優秀な利益セクターとなることはソニー、トヨタなどの前例が証明しています。KPIである「クレジットカード取扱高」「ジャパンネット銀行口座数」は四半期ごとにチェックしておきましょう。前提となる「PayPay決済回数」「累計登録者数」の伸びも重要です。

収益寄与の観点からは、コマース事業に比べ利益率が圧倒的に高いメディア事業で推進している「Yahoo!セールスプロモーション」の進捗についても情報収集に努めたいところです。広告はBtoBのサービスであり投資家が直接動向を知ることはむずかしいのですが、プレスリリースや@DIME、ITmedia等のメディアで動向がわかる可能性もあるので気にかけておきましょう。

第3四半期の業績への影響はまだ少ないものですが、2021年度以降はLINEとの統合が本格的に当社の事業をリフォームしていきます。重複事業の整理やシナジーについて聞こえてくる内容によって、先回りして資金を投下しておくべき場面もあり得るでしょう。若いLINEユーザーをヤフーブランドのサービスに誘導する導線をうまく設計できるかがシナジーのカギとなるため、こうした点を考える際も前述のテック系メディアが参考になります。

類似・競業関係にある企業の動向は以下のとおりです。

経済圏でライバル関係にある両社とも売上成長は高い水準を見込んでいます。楽天は携帯事業の先行投資が響いており、利益については参考になりません。

株価指標については下記のとおりです。

Zホールディングスの株価は1株当たり利益の36.30倍の評価を受けています。日本を代表するオンライン・コンシューマーサービス企業として、海外企業に伍していく期待が込められた評価になっているようです。

ヤフー・PayPay経済圏が楽天・ドコモの経済圏との戦いを勝ち抜いていけるか、ユーザーとしての実感が投資に活かされることもありそうです。PayPayブランド育成にあたり投資先行のフェーズが続きますが、投資家としては費用対効果を厳しく見ていく姿勢が求められます。


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参照資料

2020年度第2四半期(7-9月期)決算説明資料
2021年3月期 第2四半期決算短信
2020 年度第 2 四半期決算説明会(2020 年 10 月 30 日開催)質疑応答要旨
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【出前館】売り上げ急増するも今期も営業赤字予想。大規模な先行投資での勝算はあるのか?

出前館は、出前フード専門Webサイトの「出前館」を運営しています。2016年に配達機能を持たない飲食店向けへの配達代行サービスである「シェアリングデリバリーサービス(R)」を開始。19年11月にそれまでの「夢の街創造委員会」から現社名に変更しました。現在の筆頭株主はLINEです。

2020年初め頃からの新型コロナウイルス感染拡大を受け、「3密」を避けるためのニーズとしてフードデリバリーの引き合いが活発化し、株価も上昇。市場の関心が高い銘柄です。

一方、中期経営計画で事業拡大のための大規模な投資実行で、2021年8月期も大幅な営業赤字予想を打ち出し、実現性に懐疑的な見方も浮上しています。業績の実績と予想、そして中計の内容や可能性などについて取り上げます。

目次

  1. 2020年8月期は26億円の営業赤字、売上高55%増も先行費用負担増
  2. 営業赤字は今期がピーク、中計最終年には120億円の黒字を目指す
  3. 新型コロナウイルス感染拡大で事業環境は追い風、デリバリーが日常に定着も
  4. 【まとめ】PSRは許容範囲、中計の達成可否は新型コロナウイルス感染症の収束時期との兼ね合いか

1.2020年8月期は26億円の営業赤字、売上高55%増も先行費用負担増

まずは直近の決算などについて分析したいと思います。

2020年10月15日に発表された2020年8月期決算(19年9月~20年8月)は売上高103億600万円(前年比54.6%増)となりました。

新型コロナウイルス感染拡大によってこれまでの日常生活が脅かされる中、「在宅勤務へのシフト」、「自宅での食事機会の増加」、「飲食店における営業時間短縮および座席数削減」が広がった結果、外食から中食へのシフトが進み、テイクアウトやデリバリーに対するニーズが拡大。同社の「シェアリングデリバリー(R)」を活用してデリバリーを開始する飲食店が急増しました。

こうした中で、同社では需要に応じるためにサービス展開を加速し、2020年8月末時点で1都1道2府21県まで拡大。ユーザー利用の拡大のために、タレントの浜田雅功氏をCMに起用するなどプロモーション強化に、先行費用がかさみ営業赤字になった格好です。

第2四半期決算発表時点(3月26日)で株価は660円、時価総額は約564億円でしたが、10月15日時点では株価3,025円、時価総額は約2,585億円と急増しています。

2.営業赤字は今期がピーク、中計最終年には120億円の黒字を目指す

2021年8月期は売上高280億円(前期比2.7倍)、営業損益130億円の赤字を見込んでいます。出前館流通金額は1,600億円(同2.5倍)となる見通しです。今期の赤字も業容拡大のための先行投資が要因です。

そして2023年8月期の出前館流通金額は3,400億円(20年8月期実績は1,027億円、売上高970億円(同103億円)、営業利益120億円の黒字(同27億円の赤字)を目指しています。

(「2020年8月期(第21期)通期決算説明会」より)

中期経営計画では「出前館×LINEで実現したい世界」「デリバリーの日常化」で、具体的には2021年8月期を出前館事業拡大のための大規模な投資実行、2022年8月期に出前館サイトの収益化、そして最終年の2023年8月期に「シェアリングデリバリー(R)」の通期黒字化を目指しています。

加盟店舗数は2022年中に10万店(20年7月で3万店)を達成予定。また、ユーザー数の拡大ではLINE IDとの連携(LINEの利用者は8,000万人超)を活用、「シェアリングデリバリー(R)」では人口カバー率50%以上(20年8月で30%)に拡大させる方針です。

営業赤字は今期がピークで、来期である2022年8月期は20億円の赤字まで縮小する計画です。中計最終年の2023年8月期は120億円の黒字を見込んでいます。売上高の伸びの大半は「シェアリングデリバリー(R)」の拡大による配達代行手数料の増加によるものです。

3.新型コロナウイルス感染拡大で事業環境は追い風、デリバリーが日常に定着も

新型コロナウイルス感染症の感染者数の増加が続いており、北海道や大阪府などでは飲食店の営業自粛が継続しています。感染はむしろ拡大気味に推移しており、フードデリバリーのニーズは拡大基調にあります。こうした流れが日常生活の中で定着しつつあるのは、同社にとって事業環境は追い風とみることができます。

ALTalk指標を見てみると、web訪問数もこの半年間、一定数を維持していることがわかります。

(ALTalk「出前館の指標」より)

【まとめ】PSRは許容範囲、中計の達成可否は新型コロナウイルス感染症の収束時期との兼ね合いか

020年8月期実績、2021年8月期計画でわかるのは、売上高の面では事業環境のフォローアップの風をとらえて、大幅な増収ペースを維持していることです。また、フードデリバリーが日常生活に溶け込みつつあり、一気に減少することは考えにくいといえます。

一方、会社側ではこの機をとらえて、一気に攻めに打って出ています。それが中計に反映されています。2020年8月期は攻めが吉と出て株価も大きく上昇しました。現在でも株価は高値圏にあり、投資家の評価は高いといえます。

今後の注目ポイントは、例えば新型コロナウイルス感染症のワクチンが行きわたり、感染者数が減少し、「アフターコロナ」への生活シフトが進むケースです。外出が自由になり、夜の飲食店街へも普通に出入りできる状況になった際に、デリバリー需要が後退することも想定されます。

出前館の株価指標をみておきましょう。

(2020年12月11日現在)

赤字なのでPER(株価収益率)は算出できず、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)も営業キャッシュフローが赤字なので算出できません。PSR(株価売上高倍率=時価総額÷予想売上高)は一般的に、20倍以上なら割高、0.5倍以下なら割安とみなす指標で、同社のPSRは許容範囲内とみることができます。

今後は四半期ごとの決算で、特に売上高の動向をチェックすることが重要と思われます。攻めの投資が実を結べば、フードデリバリー業界の勝ち組として一段の評価を得られるとみられる半面、新型コロナウイルス感染症が鎮静化となった場合でも成長できるか――。LINEとの連携などの動向にも注視しておきたいところです。


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GoToトラベル vs コロナ第3波。旅行需要の変化をオルタナティブデータで確認しよう

 12月に入っても新型コロナウィルス感染拡大の第3波のピークは未だ確認できません。同月12日には国内感染者数が1日の発表数としては最多となる3,000人を超えました。前回の記事でGo To トラベルキャンペーンの効果が東京追加以降の10月から発揮されてきたと書きました。しかし、11月から第3波といわれる感染の再拡大が生じているため、同キャンペーンの一時停止なども検討されています。今回はオルタナティブデータを用いて同キャンペーンのデータを確認し、誰が利用しているのかを確認していきましょう。

既に国民の自粛は始まっている

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける「旅行」の消費指数にPCR検査の陽性者数の推移と重ね合わせたものが下のグラフになります。

 PCR検査の陽性者数が増えた時期を感染拡大期とした場合、日本では第1波から現在進行形である第3波という3回の感染拡大期があったのですが、第1波の時は緊急事態宣言が発令されていたこともあり、旅行への支出は急激に低下しました。第2波は急激な低下からの回復が止まっただけであり、再びマイナス幅を広げることはありませんでした。

 その後は前回の記事でも書きましたが、Go To トラベルキャンペーンに東京が追加されたこともあり、急回復をして前年比でもプラスの成長まで戻りましたが、第3波が襲来したことで11月後半には再び前年比でマイナスの伸びとなりました。  同キャンペーンが感染拡大を加速させたとの指摘もあり、政府は一時停止なども検討しているということですが、国内の感染拡大の報道を受けて、既に国民は自粛を始めていることがデータから分かります。

そこまで大きな傾向は確認できないが・・・

 旅行について年代別の消費指数を見てみましょう。5歳ごとに年代を区切って見てみると、11月後半はほとんどの年代で伸び率がマイナスになっていることが分かります。

 年齢ごとに見てみても、そこまで大きな傾向を見出すことは出来ませんが、60歳以降の高齢者はややマイナス幅を大きくしているという傾向はあります。やはり新型コロナウイルスの特性の1つとして挙げられている、高齢者ほど重篤化リスクが高いということが影響しているのでしょう。

遠距離移動になると傾向が現れる

 次にJCB消費NOWの航空について見てみましょう。こちらも先程と同様に年代別に見てみると、こちらは明確に傾向が見て取れます。

 航空も高齢者ほどマイナス幅が大きくなっていますが、旅行と違うのは若年層もマイナス幅が大きくなっていることです。グラフを見てみると、50歳台を中心に弓なりに曲がった形になっていることが分かります。  若年層ほどネット環境があればいくらでも楽しく生活できる方法を知っているため、わざわざ感染リスクを負ってまで出かける必要を感じていなかったり、そもそも経済的に同キャンペーンを活用して旅行に行こうとは思わないという要因があるのかもしれません。

マイクロツーリズムすらも控えたか

 前回の記事ではGo To トラベルキャンペーンに東京が追加されたことで旅行へ行く人が増えたものの、不特定多数の第三者と密な環境になる新幹線や飛行機といった交通手段は避け、自家用車で旅行に行く人が多いという分析結果を書きました。しかし、JCB消費NOWの燃料小売業を見てみると、11月は再びマイナス幅が大きくなっていることが分かります。

 やはり現在の第3波に関するニュースの中で報じられる陽性者数がこれまでより多いことや、気温と湿度の低下という一般論として感染症が流行しやすい環境になってきたということなどによって、国民が自主的に自粛を始めているということなのかもしれません。

 未だに第3波のピークが確認できないなかで、仮に政府が同キャンペーンの一時停止を決めた場合、宿泊業や旅行・観光業への影響は言うまでもありませんが、自粛ムードがより強まることで娯楽や外食などの産業にも悪影響が生じます。足元の株式市場は堅調ですが、個人投資家は自分が投資している銘柄が属する産業への影響を再度考え直して保有銘柄の構成を見直してもいいかもしれません。