Categories
未分類

なぜ新型コロナで牛乳の価格は下がった?複数のデータから仮説の精度を上げる方法

 総務省が8月21日に発表した7月の全国消費者物価指数(CPI)は総合が前月から0.2%上昇幅を広げて、前年同月比+0.3%となりました。また、生鮮食品を除く総合と、生鮮食品及びエネルギーを除く総合はそれぞれ同±0%、+0.4%と前月から変わらずとなっています。

 依然として日本における物価上昇率は低いままであり、総合が押し上げられたのも日照時間不足や長雨などの天候不順によって、生鮮野菜の価格が上昇したことによるもです。

生鮮野菜の価格は統計をさかのぼれる限り、7月としては最高値を記録しており、内訳を見てみるとジャガイモは前年同月比で+52.5%、ニンジンは同+49.1%と非常に高い価格の伸びを記録しています。

 この連載では毎月2本の記事を公開していますが、月の前半は主にクレジットカードのデータを活用して消費動向についてフォーカスしていますが、後半はPOSデータを活用して物価動向から人々の消費行動を分析していきます。

物価変動から仮説を立てていく

 前述した消費者物価指数の品目別の内訳を見てみると、牛乳の価格が低下していることが分かります。7月は前年同月比-0.3%となっています。

 価格は需要と供給が一致する点で決まります。供給に対して需要が上回れば価格は上がりますし、需要に対して供給が上回れば価格は下がります。その考えに基づけば、牛乳の価格が低下した理由は主に2つ考えられます。

①何かしらの理由で牛乳への需要がなくなった。または減少した。
②何かしらの理由で牛乳の生産量が増加した。

 ②について、この半年ぐらいのニュースを遡ってみても、そのようなニュースは見当たりません。どうやら①が理由としては考えられそうですが、消費者物価指数だけではもっともらしい仮説にはたどり着けなそうです。

別のデータから仮説の精度を高めていく

 そこで、オルタナティブデータを活用してみましょう。ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」のデータを見てみます。「日経CPI Now」は全国の食品スーパー1,200店舗のPOSデータをもとに日次の物価や売上高を算出しています。

 5月から8月にかけて、日次別売上高の前年比伸び率は縮小しているものの、価格を押し下げるほど需要が後退したようには見えません。供給も増えておらず、需要も減っていないのだとすると、価格下落の原因は何になるのでしょうか。

 ここで、このデータがPOSデータを基に算出されているという点が重要になってきます。牛乳の需要発生場所は必ずしもスーパーだけではありません。スーパーでの牛乳需要は後退していないが、価格は下がっているとすると、スーパー以外の場所で牛乳への需要が後退していると仮定できます。

 そこで思いつくのは、4月の下旬に農林水産省が酪農家を支えるために、牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費することを推進する「プラスワンプロジェクト」を開始したことです。この時は、新型コロナウイルスの影響で学校が休校になり、本来は給食によって消費されるはずだった牛乳が余ってしまったり、外出自粛による外食産業からの需要が後退したことが背景にありました。

 このように、スーパー以外での需要が依然として弱いことによって、牛乳価格が徐々に下落していっているという仮説が立てられます。

仮説をもってデータを見る習慣をつけよう

 今回は牛乳を一例として挙げましたが、消費者物価指数はその内訳は500品目以上にのぼります。あらかじめ、各品目について仮説を持っておくことで、実際にデータが発表されたときに、自身の仮説が正しいかどうかを検証することが可能になります。

 たとえば、新型コロナウイルスの影響がありそうな宿泊料はどうでしょう。やはり、外出自粛の影響は大きく、今年に入ってから前年比でのマイナスが続いています。

 それでは、「Go To トラベル」キャンペーンの影響は宿泊料にどのような影響を与えるのでしょうか。旅行が促進されて、宿泊料を押し上げる効果があるのか。それとも、キャンペーンによって安く泊まれるということで、宿泊料には下押し圧力となるのか。

7月下旬から開始になっている関係上、次回の消費者物価指数から影響が出てくるはずです。せっかくですから、次回の公表までに同キャンペーンの影響について仮説を立ててみましょう。


ALTalkに登録して各銘柄のオルタナティブデータを見る

→ https://altalk.ai/

Categories
未分類

ユーザベース企業分析(後編)-直近決算で進捗を確認

こんにちは、Suiです。

今回は前回の続きで、ユーザベース分析の後編になります。

<全体の流れ>

1. ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する=前編

2. 各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する=中編

3. 直近決算(2020.12期2Q)で進捗を確認=後編

後編では2020年8月13日に発表された2Q決算を詳しく見ていきます。

決算の内容を見る前に、まず前編・中編でのポイントを簡単に振り返りたいと思います。

前編ではユーザベースが4つのセグメントから構成されており、利益を生み出す黒字事業(SPEEDA事業、NewsPicks事業)と投資フェーズである赤字事業(Quartz事業、その他BtoB事業)に分別できる点や、全体業績を見ると同時に各セグメントの売上・利益をチェックする必要性について確認しました。

中編では、各セグメントについて細かく見てきましたが、収益構造としては①広告売上、②サブスク型の有料課金売上、の2つに分けられることが分かりました。また、今後は広告売上が新型コロナの影響を受けるリスク、有料課金売上では重要KPIであるMRRが重要である点を確認しました。

これらを踏まえた上で、2Q決算を見ていきたいと思います。

このように過去の決算やビジネスモデルを分析して、どこが今後の重要ポイントなのか今後考えられるリスクは何か、などを把握してから決算をチェックすると理解が深まると思いますので、ぜひ試してみてください。

■2020年12月期 第2四半期決算説明資料

■2Q決算説明会 書き起こし+Q&A
コロナ下でSPEEDA・NewsPicks好調の理由、Quartz黒字化への道筋などについて回答(全35問)

決算で確認する際におすすめの順番としては、(1)連結業績の確認(2)各セグメントの確認になります。

(1)連結業績の確認

まずは連結業績の確認です。資料の13ページに記載があり、2Qの実績値は売上63.5億円、EBITDA-1.0億円となりました。

図表1

決算を確認する上での注意点ですが、基本的には決算短信や説明会資料では累計の数字で表示されることがほとんどです。

例えば、今回の2Q決算であれば、1~6月の6カ月間の売上、利益の数字になります。

そのため、純粋な2Qのみ(4~6月の3カ月間)の数字を見る場合には別途計算する必要が出てきます。説明会資料では会社によって3カ月間の2Q単体の数字を計算して掲載している場合もあるので、累計なのか単体なのかは確認が必要です。

1Q決算と2Q決算から2Q単体を整理したものが図表2で、2Q単体では売上31.8億円、利益は-0.6億円となっています。

図表2

これまでの記事で見てきたように、まずは売上と利益の成長からチェックしていきます。

売上と利益の成長率を昨年と比較すると、前期(2019.12月期)から売上の成長率が鈍化(2Q累計:85.0%→12.2%)したように見えますが、これは鈍化ではなく前期にQuartzの買収効果が含まれる影響です。2019.12期では売上が大きく成長した(2019.12期1Q:売上+91.9%)ように見えますが、買収による特殊要因なので注意が必要です。図表3は買収直後の2019年12月期1Qの資料ですが、買収効果を除いた実質ベースでは+49%となりますので、M&Aが連結売上に寄与する場合は注意が必要です。また、前期の利益成長がマイナス(2Q累計-262.5%)になっているのも同様の理由です。

図表3 2019年12月期 1Q決算説明資料

昨年との比較については、上記のとおりM&Aによる影響で単純な比較が難しいですが、今期で1Qと2Qの比較(QonQでの比較)をしてみると、売上・利益の成長率ともに大きく変化していないので、順調だったと言えるでしょう。

(2)各セグメント業績の確認

次は各セグメントを見ていきます。p.12の業績サマリーで各セグメントの結果が簡潔にまとまっています。

図表4

まずは黒字事業のSPEEDA事業、NewsPicks事業(以下、NP事業)を見ていきます。

連結業績と同様に2Q累計と2Q単体における売上と利益の成長率を確認します。

売上成長は昨年から変わらず+20%超と堅調です。利益成長は+70%台から+20%台と低下しているように見えますが、金額ベースで考えると2.3億円→4.1億円→5.3億円で安定成長している(同じ金額なので比率で見ると低下していく)ので何か問題があったわけでは無いと考えられます。また、利益率を見ても39%台と安定しているので順調と言えるでしょう。

図表5

次はNP事業です。

売上成長については2Q累計で+30%超と順調に伸びています。利益については2Q単体を計算してみると実はマイナスということが分かります。これは資料の30ページに記載されているようにマーケティングコストが要因と考えられます。

また、昨年通期では3.8億円の利益なので、下期(3Q+4Q)に利益が偏重する季節性がありそうです。3Q、4QではNP事業の利益がしっかりと出せているかは確認が必要になってきます。セグメント別の通期予想は出ていませんが、前期4QでのNP事業の利益は3.8億円なので、減益にならない水準として残り3億円の利益を下期で創出しなければいけません。3Q決算でこの進捗を確認して達成確度は確認したいところです。

図表6

次は投資フェーズにある赤字事業(Quartz事業、その他BtoB事業)を見ていきます。まずはQuartz事業です。

前回の記事では、Quartz事業の今後の確認ポイントとして広告売上の減少リスクを挙げていました。

2Q累計の売上は-57.5%で、1Q、2Qと連続で減収となりました。この要因は広告売上が新型コロナによる影響で大きく減少したことによるものです。1Qの資料でも言及されていますが、2Qでも状況は変わらず広告に関しては厳しい状況が続いているようです。

一方で、利益に関しては赤字幅が縮小しています。2Q単体では1Q単体よりも赤字幅が縮小しており、説明にもある通り固定費削減の効果が出ています。今後のポイントとしては、資料の29ページにあるリストラ効果が3Q以降に出てくるので赤字幅がどの程度縮まるのかは確認が必要になります。また、①広告売上の回復があるか②有料課金売上が増加するか、にも今後注目していきたいところです。

図表7

その他BtoB事業(図表8)については、売上・利益の金額はまだ小さいですが、順調に成長している点に加えて2Q時点で黒字化できています。今後のマーケティング次第ではありますが、Quartz事業よりも早く連結業績で黒字貢献ができるかもしれません。

図表8

最後にセグメント別の業績と全体の連結業績との関係を確認したいと思います。具体的にはどのセグメントが全体の売上・利益増加に貢献したかを確認します。

まず図表2で、2Q累計の売上を見ると、連結業績では+6.9億円の増収で、Quartz事業の-7.3億円をSPEEDA事業(+4.9億円)とNP事業(+6.3億円)、その他BtoB事業(+3億円)の増収でカバーしています。

次に利益の増減を見ていきます。2Q累計の利益増加は+4.2億円です。この4.2億円がどのセグメントから来ているのかを見ると、SPEEDA事業+2.2億円、Quartz事業+2.2億円が主な増益要因になっています。各セグメントの増減については先ほど見てきた通りですが、SPEEDA事業については安定的な利益成長、Quartz事業ではコスト削減による赤字幅縮小が要因です。

今回の説明では最後に書きましたが、通常の分析ではまずこの増減の要因分析を最初に確認してから、各セグメントでその原因は何かをチェックしていくとスムーズに決算の分析ができると思います。

今回のポイント、今後の確認ポイントを整理すると、以下の通りです。

今回のポイント

  • 2Q累計、単体ともに増収増益
  • 増収要因はQuartz事業の減収を3事業の増収でカバー
  • 増益要因はSPEEDA事業の安定成長、Quartz事業のコスト削減による赤字縮小
  • その他BtoB事業が早くも黒字化

今後の確認ポイント

NP事業

  • 下期の利益創出

Quartz事業

  • 広告売上の回復
  • 有料課金売上の増加=MRRの増加
  • リストラ効果による赤字縮小

参考資料・リファレンス

2020年12月期 第2四半期決算説明資料

2Q決算説明会 書き起こし+Q&A
コロナ下でSPEEDA・NewsPicks好調の理由、Quartz黒字化への道筋などについて回答(全35問)

2020年12月期 第1四半期決算説明資料

2019年12月期 決算説明資料


ALTalkに登録してユーザベースのオルタナティブデータを見る

→ https://altalk.ai/

Categories
未分類

クレジットカードの取引データからEC・配信コンテンツ市場の消費動向を先読みする

 新型コロナウイルスの影響で日本における家計の消費支出は前年同月比でマイナスの伸びが続いています。しかし、8月7日に総務省が発表した6月分の「家計調査」によれば、二人以上の世帯(季節調整値)の実質消費支出は前年同月比+13.0%と非常に大きな伸びとなりました。

この大きな伸びは新型コロナウイルスの問題が落ち着いたからではなく、定額給付金が振り込まれたことや、キャッシュレス決済に伴うポイント還元キャンペーンが6月末に終了することによる一定の駆け込み需要があったからだと考えられます。

4月を底に消費の回復傾向は維持されている

 東京都内を中心に7月以降は新規感染者数は増加し、第二波を懸念する声を耳にする機会が増えてきました。6月は前述の通り特殊要因があって大きな伸びとなっているため、7月の消費をどう予想するかが難しくなっています。

そこで、オルタナティブデータを活用して先読みをしていきましょう。株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

まず、消費全体の総合指数を見てみると、2月からマイナスの伸びになった消費は4月を底に反転して回復傾向にあることが分かりますが、7月は6月からわずかではありますが引き続き回復するという結果になっています。

サービスへの消費支出は依然として弱い

 しかし、消費と一言で言っても、消費対象が何かによって、見えてくる景色は違います。4月を底に消費が回復しているといっても、主に小売(財)への消費は強い一方で、サービスへの消費は回復傾向にあるものの依然として前年同月比でマイナスの伸びとなっています。

これは、総務省統計局が7月31日に発表した5月分の「サービス産業動向調査」の結果とも整合性があります。サービス産業の5月の売上高は、前年同月比で-22.9%の23.5兆円となっており、4か月連続の減少となっています。

新型コロナウイルスの影響でサービス産業は自主的に営業をしていない企業もあれば、家計が自主的に利用を自粛していることもあり、今後も厳しい状況が予想されます。

一方で、小売(財)に関しては、自粛期間中に溜まっていたストレスを発散すべく高額商品などを買う「リベンジ消費」の対象となることや、定額給付金というまとまった臨時収入による購買の対象となりやすいことから、サービスへの消費とは反対の結果になっているのでしょう。

巣篭り消費はコロナを追い風にした

 新型コロナウイルスの影響といえば、巣篭り消費も気になるところです。JCB消費NOWでは細かい消費品目まで確認できますが、巣篭り消費の代表格といえば「EC」と動画配信などの「コンテンツ配信」でしょう。

新型コロナウイルスの影響が大きくなるにつれて、両品目とも消費が伸びているのが確認できますが、ECの場合は一人当たりの消費金額が増えているのに対して、コンテンツ配信は消費者数の伸びが全体をけん引したという違いがあります。

ECは既に日本では普及しており、これまで外出して買っていたものをECで買う人が増えた一方で、コンテンツ配信は今回の新型コロナウイルスの件を契機として初めて利用する人が増えたという仮説が立てられます。

 また、ECが5月をピークに6月、7月と伸び率が鈍化しつつあるのに対して、コンテンツ配信は7月になって再び伸び率が加速しています。

これは、5月下旬に非常事態宣言が解除されたことで、ECでの買い物需要が一部実店舗へ移った一方で、映画館は依然として3蜜の環境が嫌気されることもあり、動画コンテンツはそのままネットで鑑賞するという傾向が続いたという仮説が立てられます。

JCB消費NOWには、ECについてのみ更に細かい内訳(衣服、化粧品、飲食料品など)も公開されているため、今後はECの内訳なども見て、細かい消費動向の先読みをしていこうと思います。


ALTalkに登録して各銘柄のオルタナティブデータを見る

→ https://altalk.ai/

Categories
未分類

ユーザベース企業分析(中編)-事業セグメントの分析-

こんにちは。株式投資ライターSuiです。

今回は前回の続きで、ユーザベース企業分析の中編「各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する」です。

<全体の流れ>

1. 前編:ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

2. 中編:各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する

3. 後編:直近決算(2020.12期2Q)で進捗を確認

前回の記事で4つのセグメントのうち、SPEEDA事業とNewsPicks事業は黒字で利益を稼いでいる一方、Quartz事業とその他BtoB事業はまだ赤字だが、投資フェーズであることが分かりました。

さて、各セグメントを見るうえでのポイントは①収益構造の理解②業績とKPIの関係性です。

企業によって開示にばらつきはありますが、KPIまで資料や短信で開示している場合は、セグメント情報とKPIの関係性まで考えるとより理解が進みます。

まず黒字事業であるSPEEDA事業、NewsPicks事業を確認し、その後Quartz事業、その他BtoB事業を見ていきます。

(1)SPEEDA事業

SPEEDA事業は、“SPEEDA”という企業情報データベースを企業向け提供するサービスを展開しています。

上場企業から未上場企業の財務データなどを自由に使用することができ、例えば、経営企画部が自社の競合分析をしたり、M&Aの候補を探す時のデータ収集など様々な場面で使用されます。

Bloombergをイメージすると分かりやすいかもしれません。

ライセンス契約でIDが付与されて、月額や年間での料金体系になっているので、サブスクリプション型のビジネスです。

図表1を見ると、SPEEDA事業は利益率(EBITDA/売上)が改善していることがわかります。これは投資フェーズが終わり、コストをかけなくても利益が出せる状態になっていると考えられます。

(図表1)SPEEDA事業 売上・EBITDA推移

次にKPIを見ていきます。

ユーザベースはこの決算でセグメントごとに設定されていたKPIをMRRに統一しています。

おそらく、SPEEDA事業もNewsPicks事業もサブスクリプション型になっているため、統一した方が投資家にとっても分かりやすいのもあり、MRRに変更したのだと思います。

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは1カ月あたりのリカーリング(継続的)収益です。簡単にいえばMRR=サブスク部分の1カ月売上です。MRRのYoYを見ると、売上と同じくらいの成長率になっています。

また、MRRの期中平均に12(ヵ月)をかけて年間のリカーリング収益(ARR)を計算しSPEEDA事業の売上と比較するとほぼ全てがリカーリング収益になっているため、解約がほとんどないといえるでしょう。

したがって、解約率が低い状態でMRRが伸びれば、その分だけSPEEDA事業の売上も伸びる可能性が高いと考えることができます。今後もMRRの成長率には要注目です。(次回の後編では最新決算でこのKPIも確認していきます)

(2)NewsPicks事業

NewsPicks事業は、“NewsPicks”という経済メディアを運営しており、収益源は①広告売上、②有料会員からの売上、③その他売上から構成されています。

残念ながら①~③のそれぞれの売上については説明会資料に数字の開示がありません。

説明会の動画や質疑応答で数字が出ているかもしれませんが、どうしても分析で必要な場合には、IR担当の方へ直接問い合わせしてもいいかもしれません。

(図表2)2019年12月期決算資料 NewsPicks事業ハイライト(売上高の推移)

この部分で少し気になるのは、広告売上の部分です。

新型コロナウイルスの影響で単価や出稿が減少した場合は、広告売上が減少するため、NewsPicks事業の売上減少リスクになります。

グラフからの推測で4割近くは広告売上なので、新型コロナウィルスの影響が出ていないか今後も注意が必要です。

また、SPEEDA事業と同じく、NewsPicks事業でもKPIがMRRに変更されています。先ほど同様に各数字を整理してみたのが下の図です。

MRRからARRを計算すると約18億円になり、セグメント売上41.9億円のうち43.1%(サブスク比率)となります。

MRRに該当するのは有料会員からの売上で、広告売上もあるためSPEEDA事業と比べてサブスク比率は低くなります。

(図表3)SPEEDA事業 売上・EBITDA推移

広告売上の部分は気になる点がありますが、MRRがしっかり増加すれば利益率の改善も期待できると思います。

2019年12月期で利益率が低下している要因も少し気になりますね。

また、広告と有料メディアのビジネスモデルなので、将来的な利益率の水準はもっと高いはずなので、投資も多少しているのかなと思います。

(3)Quartz事業

Quartz事業では、“Quartz”という海外版NewsPicksのような経済メディアを運営しています。

投資フェーズであるQuartz事業ですが、今回は大きな変化がありました。業績を見ると一目瞭然ですが、減収減益となっています。

この大きな原因は「有料課金事業の立ち上げ」です。

(図表4)Quartz事業 売上・EBITDA推移

今までは広告売上だけだったものが、NewsPicksと同様に会員制で有料課金の売上が追加されることになります。

減収については図表5のスライドにある通り、広告売上の減少ですが、減益についてはおそらくこの有料課金事業を開始したことによるコスト増加(図表6のスライドでは新規会員は1年目40%オフ)も影響していると思われます。

(図表5)2019年12月期決算資料 Quartz事業ハイライト(売上高の推移)
(図表6)2019年12月期決算資料 Quartz事業ハイライト(MRRの推移)

広告売上に関しては、NewsPicks事業と同様に新型コロナの影響が今後は少し注意が必要かもしれません。一方で、それをカバーするように有料会員が増えてくれば、有料課金の売上が伸びてくるのでMRRの増加にも注目です。

ちなみに(図表4)のサブスク比率に関しては、まだ有料課金売上を始めたこともあり、かなり低い水準となっています。

(4)その他BtoB事業

その他BtoB事業に関しては、“FORCAS”というマーケティング関連のサービスが牽引して売上が伸びていますが、まだ売上の規模としては9億円弱(全体の7%)と小さいため、ここでは省略したいと思います。

ただ、今後Quartz事業に続く将来の成長ドライバーになる部分ではあるので、今後も売上の伸びには注目していきたいと思います。

まとめ

以上4つのセグメントを見てきましたが、基本的には

1. 広告売上(NewsPicks事業とQuartz事業の一部)

2. サブスク型の有料課金(SPEEDA事業全て、事業とQuartz事業の一部)

によって売上が決まる収益構造になっています。

有料課金の部分については各セグメントのMRRが成長しているかが重要になってくるので、決算でのKPIのチェックが必要です。

中編では各セグメントを細かく見てきましたが、後編となる次回ではこれらの分析を踏まえて、最新決算である2020年12月期2Q決算(記事作成時点)を見ていきたいと思います。


ALTalkに登録して各銘柄のオルタナティブデータを見る

→ https://altalk.ai/

Categories
未分類

ユーザベース企業分析(前編)-事業ポートフォリオ整理-

はじめまして、株式投資ライターのSuiと申します。

今回分析するのはSPEEDAやNewsPicksを運営するユーザベース(証券コード:3966)です。

分析の流れとしては、以下の順番で分析をしていきます。

1. 前編:ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

2. 中編:各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する

3. 後編:直近決算(2020年12月期2Q)で進捗を確認

前編となる今回の記事では、ユーザベースの全体像や各事業セグメントの業績を整理し、理解を深めていきます。

中編では、それぞれの事業セグメントを深堀りすることで収益構造を理解します。

後編では、それらを踏まえて直近決算(2020年12月期2Q決算)を確認していきます。

さて、前編のゴールは、過去の決算説明資料から、ユーザベースがどのような事業から構成され、各事業の業績がどういう状況なのかを理解することです。

さらに、どの事業が会社全体の成長ドライバーとなっているかを理解すると同時に、ユーザベースの業績を見るうえで重要な数字は何か?という点も見ていきたいと思います。

それでは実際に2019年12月期決算説明資料を見ながら分析していきましょう。

最新の決算説明資料は5月14日に発表された2020年12月期 第1四半期の資料 ですが、2Qや通期の決算資料の方が詳細なデータや説明資料が掲載されているケースが多いので、今回は2019年12月期決算説明資料を見ながら分析していきます。

(1)ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

まずは全体像の理解から始めたいと思います。決算資料を見ると、色々な数字がたくさん書いてあり、迷う方も多いかと思います。ただし、必ずチェックすべきなのは次の2点です。

  1. 全体業績(連結業績)の売上・利益
  2. 各セグメントの売上・利益

ユーザベースの場合、連結業績のページでセグメントごとの数字まで記載されているので分かりやすいですね。

決算資料にある通り、ユーザベースは4つのセグメントから構成されています。

SPEEDA事業、NewsPicks事業、Quartz事業、その他B2B事業の4つです。

まずは全体の数字である連結業績を見ていきます。

一般的には、連結業績の売上と営業利益(または当期純利益)の推移や前年比較があるので、売上と営業利益がどのくらい伸びているのかをチェックします。

ユーザベースの場合は、前年比で売上が+34%、営業利益にあたるEBITDAは▲15億で、2019年12月期は増収減益という内容でした。(図表1,2参照)

図表1:2019年12月期 連結業績ハイライト(売上高)
図表2:2019年12月期 連結業績ハイライト(EBITDA)

なぜユーザベースがEBITDAを使っているか、それはユーザベースが積極的な投資をしているからです。EBITDAは、簡単に言うと「営業利益 + 減価償却費」なので、投資が大きい企業は営業利益の代わりにEBITDAを使用しています。

<EBITDAの解説>
【図解あり】EBITDAとは? その意味とは?PLから10秒でキャッシュ・フローをざっくり読み取る方法をわかりやすく3つのステップで解説

売上が +34%に対してEBITDAが赤字になった要因は、新規事業であるQuartz事業が▲20.5億円になったことです。

Quartz事業を除いた場合はEBITDAは+55%と大幅な増益になっています。つまり、SPEEDA事業とNewsPicks事業だけを見ると、増収増益と順調なことがわかります。

簡単にまとめると、全体像は以下のとおりです。

  • ユーザベースの通期決算は増収減益だった(売上+34%, 利益▲15億円)
  • 4セグメントのうち、SPEEDA事業、NewsPicks事業は黒字事業。Quartz事業、その他B2B事業は投資フェーズの赤字事業である
  • Quartz事業の赤字が大きく、全体の利益を押し下げた

(2)各事業セグメントの業績、特徴を整理

全体像を把握した後に、各セグメントを見ていきます。

セグメントで見るポイントは2つで、それは各セグメントの①規模・収益性②成長性です。

① セグメントの規模・収益性

まずは、各セグメントの規模と収益性について見ていきます。

具体的には、各セグメントの売上構成比や利益構成比を確認することで、どこが重要なセグメントなのかを判断することができます。

図表3:セグメント別売上/利益構成比

こちらから、以下のようなことがわかります。

  • 売上構成比は、SPEEDA事業、NewsPicks事業ともに約3
  • 利益は、SPEEDA事業が13.8億円に対しNewsPicks事業は3.8億円と、SPEEDA事業の方が利益を多く出している(今回のケースでは赤字事業で利益構成の比率が分かりにくくなっているため、実数で見ています)

また、利益率で比較しても、NewsPicks事業の利益率が9.1%に対してSPEEDA事業の利益率が30.4%と、SPEEDA事業の方が利益率が高いことがわかります。

②セグメントの成長率

次に、どの事業が成長しているかを見ていきます。

セグメントが変更される時もありますが、過去2〜3年のYoYを計算したのがこちらです。

図表4:セグメント別売上/EBITDAの実績・成長率

各セグメントの売上とEBITDAのYoYを見ると、以下の考察が挙げられます。(利益の金額が小さいためにYoYの変化率が大きくなる点や、サンプルが少ない点には注意が必要です)

  • 売上はSPEEDAよりもNewsPicksの方が伸びている
  • 利益はSPEEDAが安定的に+60%以上の成長
  • NewsPicksは2018年が大きく伸びた or 今年が一時的に伸び鈍化した

また、①で確認したとおり、全社業績との関係ではSPEEDA事業とNewsPicks事業が利益を稼ぎ、まだ赤字であるQuartz事業、その他BtoB事業に投資していることが図表4からも確認できます。

セグメント別の売上・利益をこのようにExcelで整理すると、どのセグメントが収益源なのか、または投資段階なのかなどが見えてくるので、ぜひやってみてください。

中編は、各セグメントのKPIやビジネスモデルなど、事業ごとの細かい部分を見ていきたいと思います。


ALTalkに登録して各銘柄のオルタナティブデータを見る

→ https://altalk.ai/