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日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認

 総務省が11月20日に発表した10月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.4%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.7%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.2%となりました。

 3指数が全て前年同月比でマイナスの伸びとなるのは2013年4月以来のことです。特に「生鮮食品を除く総合」のマイナス幅(前年同月比-0.7%)は2011年3月以来のマイナス幅となっています。

制度の変更などによって大きく動く物価

 前回の物価に関する記事では、以下のような文章で締めくくりました。

10月のデータではどの品目がどのような価格変動を見せるのかを今から予想してみましょう。次回の記事で答え合わせが出来ればいいなと思います。

 さて、前述の通り、10月の消費者物価指数は日本経済がデフレに再突入したことを確信させるほど非常に弱い内容となりました。なぜこのような結果になったのでしょうか?また、何が物価に大きく影響を与えたのでしょうか?今回は1つずつ確認していきましょう。

 まず、最初に考えられるのは、昨年の10月に引き上げられた消費税の影響が剥落したということ。ただし、経過措置の関係で新しい消費税率の適用が11月以降になった品目は来月以降に影響が出ます。また、同時に実施された幼児教育の無償化の影響も剥落します。この消費増税と幼児教育の無償化の影響一巡によって、物価上昇率は前年同月比で0.2%程度押し下げられたと計算されます。

私たちの消費に大きな影響を与えた制度変更

 10月はその他にも様々な制度変更がありました。ここでは大きな3点を紹介しましょう。1点目は「Go To トラベルキャンペーン」に東京が追加されたことです。「宿泊料」は前年同月比-37.1%と同キャンペーンが実施されて以降、最も大きなマイナス幅を記録しました。

 2点目は10月1日から酒税が変更されたことです。こちらは少し変更内容が複雑で、酒類が全て増税になった訳ではありません。大まかに説明すると、ビールと日本酒は減税され、発泡酒、第三のビール、チューハイ・サワー、ワインは増税となりました。実際、10月の消費者物価指数を品目別に見てみると、10月は種類ごとに価格の変動が大きく生じていることが分かります。

 3点目はたばこ税の変更です。たばこ1本当たり1.0円(たばこ税0.500円、道府県たばこ税0.070円、市町村たばこ税0.430円)の引き上げとなりました。こちらは全て増税対応となりますので、同じく品目別でみてみると、国産品、輸入品ともにたばこの価格は10月に上昇しています。

物価の変動を先読みして変容する消費行動

 このように10月は制度変更の影響による価格変動が多く生じたのですが、それに応じて私たち消費者の消費行動も変容します。ここで、ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」のデータを用いて、行動変容を見ていこうと思います。日経CPI Nowでは、全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。

 品目別の日次売上高を見てみると、酒類では増税の数日前から増税対象の発泡酒やワインに対して駆け込み需要が発生したことが確認できます。

デフレに再突入した日本経済

 これまで見てきたように、今年の10月分の消費者物価指数は非常に多くの変動要因がありました。しかし、最も注目すべきことは、冒頭で説明した通り、日本経済がデフレに再突入したことを確信させるほど非常に弱い内容となったことでしょう。現時点では総務省による「デフレ」という言葉を使った説明は出ていませんが、データだけを見れば既にデフレに再突入したと言っても過言ではないでしょう。なぜなら、消費増税や幼児教育の無償化の影響を調整した指数では既に前年同月比でマイナスを何か月も続けていたからです。

 一時、原油市場が急落したことがあり、その影響が時差をもって日本の消費者物価指数にマイナスの影響を与えており、今後は原油市場の持ち直しが物価にプラスに作用するという見通しがあるため、まだデフレという話が出てきていないのかもしれませんが、日本では新型コロナウイルスの第三波が確認されており、これによって経済活動が再び委縮し、結果として物価にもマイナスの効果を与える可能性は十分あるため、少なくとも個人投資家は日本経済が既にデフレに再突入しているという認識は持った方が良いでしょう。


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By ナウキャスト客員エコノミスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。
現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。

著書に『MMTが日本を救う』(宝島社新書)や『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

日本証券アナリスト協会検定会員。

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