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グロース株投資vsバリュー株投資、2021年はどちらが笑う?

コロナ禍においてはITやハイテクに代表されるグロース株投資に軍配が上がりました。しかし今後、ワクチンの開発や景気の回復、金利の上昇を背景に、潮目が変わりそうです。2021年はグロース株投資? それともバリュー株投資? その勝敗を占います。

目次

  1. 2020年の市場総括
  2. 現状の市場について
  3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?
  4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

1. 2020年の市場総括

まず、2020年の国内株式市場を「バリュー」「グロース」「小型」の3スタイルに着目して振り返ってみると、以下のことが見えてきます。

  • 通年ではグロース株が市場平均およびバリュー株を大きく上回った(図1:A)
  • 暴落からのリカバリー~レンジ相場にかけて、グロース株の強さが目立った(図1:B)
  • 秋から冬にかけては実体経済の足踏み予想を反映し、小型株が沈む展開に(図1:C)

【図1】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

●株式市場動乱の2020年上半期

年初から中国の武漢を封鎖に追い込んだ新型コロナウイルスが、すでにアジアのみならず欧米・中東などに伝播していることが明らかとなり、3月25日を境に世界の株式市場は激しく動揺していきます。

約1カ月間続いた暴落期(図2・①)では、投資家の心理は未知の疫病への恐怖に支配されました。通常の景気後退では株価下落のヘッジとなる投資適格債券やゴールドまでそろって急落。日本株式全般が影響を受け、日本株式を代表する株価指数であるTOPIXは26.14%の大暴落となりました。

3月中旬には米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)がそろって大規模な金融緩和を打ち出します。各国政府もビジネスや市民への直接給付など、近年例のない巨額の財政支出を行い、経済を支えました。

3月下旬から株式市場は、実体経済に先駆けて急速な回復を見せ(図2・②)ましたが、ここでバリュー株の不振が始まります。TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の上昇率に7.54ポイントの差が付きました。同時期に好調に推移した日経平均もグロース株指数といえます。

【図2】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

コロナ禍で値を伸ばしたグロース銘柄の代表格がBASE(4477)です。コロナ禍が引き起こした最も顕著な消費形態の変革であるEコマースはまさに当社のフィールドであり、3月23日に付けた896円から10月8日には、15,930円と約18倍の大相場となりました。

緊急事態宣言中の5月から10月にかけて、Web訪問数は約3倍に急伸。積極的な広告宣伝が功を奏し、急速に注目を集めていたことが分かります。

《BASE:株価》

《BASE:web訪問数》

(ALTalk「BASE」指標より)

●レンジ相場とバリュー株復権の下半期

不安と弛緩が同居した夏から秋にかけて株式市場はレンジ相場入り(図2・表③)。金融・不動産・資本財といった実体経済と直結するバリュー株セクターは、緩慢な景気回復とワクチン開発の様子見などが相まって低迷が継続します。TOPIXバリューとTOPIXグロースの上昇率較差は約10ポイントに及びました。

その後、いち早く新型コロナウイルスを制圧した中国の景気回復やワクチン開発の進捗を受け、株式市場は歴史的な上昇の11月を経験しました(図・表④)。小幅ながらバリューがグロースを逆転する一方で、小型株が不振に陥ります。

ワクチン接種による欧米の早期正常化が期待される一方で、日本国内の正常化が2022年までかかるという予想もあり、国内経済を反映する小型株からグローバル企業を含む大型株へ資金のローテーションが起きている可能性があります。

11月には、割安感から外国人投資家が日本株の買い越しに転じており、その資金が小型株には及ばないことも不振の一因として考えられます。

TOPIXは3.53%の小幅上昇となった2020年は、TOPIXグロース・日経平均など大型グロース株が市場平均・バリュー株・小型株に大差を付け、一人勝ちの1年となりました。

2. 現状の市場について

株価の最も基本的な物差しであるPER(株価収益率)を使って、ごく大雑把に考えてみます。

一般的に、株式というリスク資産を保有することで得られる利益(リスクプレミアム)は、4~6%程度が通常の水準です。現状はリスクフリー資産である国債の金利がないので、この4~6%がそのまま株式益回り(1株当たり利益を株価で割ったもの)となります。逆数を取れば、PERが算出できます。

《PERの計算式:100 ÷ 4~6% = 16.7~25倍》 

金利がない状況では、株式投資の一般的なPERは16.7~25倍程度ということになります。
日本では金利のない時期が20年近く続いていますが、本来リスクプレミアムと金利を足したものが株式益回りなので、仮に金利が上昇して1%になれば

《PERの計算式:100 ÷ 5~7% = 14.3~20倍》

PERは14~20倍程度が妥当な水準となるわけです。

この計算を踏まえて、現在の日本株式市場のPERを確認します。

(12月17日現在)

今後の企業収益改善予想を織り込んだ予想PERであり、割高水準といえるでしょう。この水準で買いに入った投資家が報われるには最低限、以下の条件のうち少なくとも一つは満たされる必要があります。

①企業の収益改善が継続・ジャンプアップしていく
②投資家のマインドがさらに高進して株式投資ブームがやってくる
③長期金利がマイナスを掘り進む

頭を冷やして考えると、この水準では買いづらいと思われる向きも少なくないでしょう。とはいえ、これまでの議論は株式市場一般についてであり、いわゆる「長期インデックス投資」に強く関係するものです。

個別企業については常に、さらなる利益成長や株価の上昇トレンド継続が見込める銘柄や、割安放置が是正されそうな銘柄の発掘は、努力次第で可能です。過熱気味であるとはいえ、少なくとも平成バブル末期の日経平均PER 60倍という情勢とは全く異なります。

米国S&P500指数のPERが44倍に達した1990年代末のドットコムバブル期でも、バリュー株は安値に放置されており、バリュー投資家は後に高リターンで報われました。

皆が教科書通りインデックスに行くなら、「裏に道あり花の山」です。

3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?

実体経済の回復による長期金利の上昇や、サプライチェーン再構築によるインフレといったマクロ経済の動向が懸念されています。現実となれば、長く続いたグロース株優位が終わり、テクノロジー企業に代表される超成長株投資に逆風が来ると考える向きも少なくないようです。

私見ですが、これは米国内の論調に引っ張られている面があると思えてなりません。米国経済には、2019年までに政策金利を2.25~2.5%へ上げることができた元来の足腰の強さがありますし、現時点でもまだ長期金利は0.9%のプラスです。

異次元緩和でもインフレ目標を達成できていない日本で、インフレ期待・金利上昇へ導く確かな道筋を示すことができる政府・中央銀行関係者や学者がいればノーベル賞ものです。日本銀行がイールドカーブコントロールで国債市場を制圧してきた点も米国とは事情が異なります。マネーストック増につながる財政支出も迫力不足です。

金利上昇で恩恵を受けるバリュー株の代表といえば銀行株ですが、日本の銀行株指数の動きは惨憺たるものです。米国の銀行と比べても明らかな低評価が定着しており、金利が上がらなければ業績の先行きも多くは望めません。

金利上昇による恩恵を現実的に期待できる銀行セクターと、実体経済の回復が強い追い風となるエネルギーセクターを抱える米国とは構造が異なるため、日本でもバリュー株の復権があり得ると単純に考えるのは難しいといえます。

(2020年12月17日現在)

●とはいえバリュー株は「安過ぎる」のは確か

先進国株式におけるバリュー株はこの10年余りは極度の不振にあり、グロース株とのリターン較差は空前の域に達しています。だからこそ長期投資で「平均回帰」が起きたときの見返りはかつてないものになると、世界の著名バリュー投資家は皆考えています。

米国の著名投資顧問会社GMOを率いるジェレミー・グランサムやスマートベータ投資の立役者ロブ・アーノット、著名ヘッジファンド運用会社AQRキャピタル・マネジメントのクリフ・アスネスなど、枚挙にいとまがありません。日本のバリュー株もまた極度の割安にあることは確かです。

以上を踏まえて、「2021年にグロース株とバリュー株のどちらが有利か」を考えるためのポイントは以下の通りです。

①欧米でワクチンの接種・効力発揮が順調に進むか
②中国経済の腰折れがないか
③国内のデフレ再来懸念

2021年単年であれば、上記のポイントのうち①、②が順調にいくなら一般消費財や素材など景気敏感セクターのバリュー株にチャンスがあるかもしれません。

ワクチン接種が遅れる日本国内では、現在の消費・経済の流れが急変する見込みはありません。投資家の成長株物色トレンドを先回りして仕込みたいところですが、東証マザーズから資金が抜けている現状もあります。判断に迷うところで、投資家個々人の年末年始のホームワークになるでしょう。

10年単位の長期資金であれば、バリュー株投資にうってつけの局面です。金融・公益株を避け、コア事業が明瞭・売上営業利益とも大まかに右肩上がり・高ROE(自己資本利益率)・高自己資本比率の、いわゆる優良株の中から割安な株を仕込んでいくのがよいでしょう。

バリュー株投資はその時点で「見過ごされている」銘柄に投資することが多く、株価が上昇するためには「見つかる」タイミング(カタリスト)を待つ必要があります。最悪の場合は「見つからない」可能性もあるので、複数セクターにまたがる分散投資は必須です。

4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

成長株と一口にいっても、コロナ禍においてはその性質によって株価の挙動に差が見られました。

①「実際の人間の動き」に密着したサービスを提供する企業
  人材系、アパレルなど  例:ZOZO、リクルート

②オンライン上のサービスに特化した企業
  Eコマースなど  例:BASE

③高成長局面にある中で、さらにコロナ禍を追い風とした企業
 メディカルプラットフォーム、DXなど  例:エムスリー

この中では『①』で比較的株価の戻りが鈍い銘柄を見つけることができれば、欧米のワクチン接種進捗とともに国内正常化の期待が盛り上がり、値を切り上げていくというシナリオが考えられます。

ALTalkがオルタナティブデータを提供している銘柄では、ZOZO(3092)、リクルート(6098)あたりにその可能性があるかもしれません。

《ZOZO:株価》

《ZOZOTOWN:web訪問数》

(ALTalk「ZOZO」指標より)

人と人が元通り会えるようになる「生活スタイルの正常化」が連想されれば、ファッション需要はペントアップもあり、急速に回復すると考えられます。コロナ禍で消費者がEコマースチャネルに慣れた意義は大きく、ZOZOにとってはチャンス到来となるでしょう。

《リクルート:株価》

《Indeed:web訪問数》

(ALTalk「リクルート」指標より)

リクルートは人材派遣分野での売り上げが大きいので、ALTalkで見られるオルタナティブデータの中では、Indeedの訪問数が人材流動の動向を考える上で参考となるかもしれません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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相場の行方を「干支」で分析!? 2021年「丑年」の相場観と注目銘柄を大胆予測!

株式市場では干支(十二支)でその年の株価を占うという、独特の伝統があります。干支には、たとえば「辰巳(たつみ)天井」「午(うま)尻下がり」など、その年の相場観を表す格言があり、その格言が過去の相場を的中させた事例がいくつもあります。     

2021年は「丑年」です。相場の動きと注目の銘柄を占ってみましょう。

●干支と相場格言

1. バブル崩壊は予測できた!? 過去に的中させたさまざまな事例

日本がバブル相場のピークを迎えたのは1988年~1989年で、ここが「辰年・巳年」でした。日経平均株価は1989年の年末に史上最高値3万8,915円を付けています。

そして1990年からバブルが崩壊します。まさに「辰巳天井、午尻下がり」で的中です。

(参考:日経平均プロフィル)

そして、2020年は子年。日経平均株価は11月に2万7,000円に迫り、1991年以来、29年ぶりの高値水準に進んでいます。まさに「子(ね)は繁盛」となっています。

戦後1949年に東証が再開され以降、子年は2020年を除き5回ありました。年間の日経平均株価の騰落率を「上昇=勝ち」「下落=負け」とすると、3勝2敗という成績です。
各年の子年の騰落率は以下の通りです。

●子年の騰落率

  • 1960年 +55.1%
  • 1972年 +91.9%
  • 1984年 +16.7%
  • 1996年 ▲2.6%
  • 2008年 ▲42.1%

5年分の騰落率を平均するとプラス23.8%になります。これは辰年のプラス27.9%に次いで2番目の好成績です。
しかも2008年にはリーマン・ショック。騰落率はマイナス42.1%にも達しており、これを含め平均で2割以上の上昇ということになります。

※年間の騰落率(%)={(その年の終値÷前年の終値)-1}×100

2. 丑年の格言「つまずき」の相場観と過去の勝敗

一方、2021年はつまずく丑年。丑年は前回までで過去6回あり、勝率は3勝3敗と5分ですが、平均の騰落率はマイナス6.3%。「午尻下がり」の午年(マイナス5.0%)を抑えて堂々の最下位です。1973年はオイルショック、1997年はアジア通貨危機――。丑年は景気の谷になりやすいようです。

アメリカの株式市場では牛は「ブル」(強気)、熊が「ベア」(弱気)の象徴とされますが、実際の丑(牛)年のパフォーマンスはお寒い限りということになります。

また、12年で一巡する十二支と、10年のサイクルである十干(じっかん)は中国を起源とする「陰陽五行説」と密接な関係があります。十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸からなります。この組み合わせがもともと「干支」といわれています。

2021年は西暦の末尾が1の年で「辛(かのと)」。1991年、2001年、2011年はいずれも年間で下落しています。特に年後半にかけてのパフォーマンスが悪く、これは丑年とも重なります。大手調査機関のエコノミストは「10年程度の設備投資サイクルが悪化する年と考えられる」としています。

ちなみに、筆者は1961年(辛丑)7月生まれですが、当時は7月に株価が大天井を打ち、その後いわゆる昭和40年不況(証券不況)に突入していきました。

ただ、辛の文字のいわれは、陰陽五行で「金」性の「陰」にあたるといいます。

3. 2021年の注目銘柄は「牛乳」と「牛肉」の関連銘柄!

辛の時は「新しい」を意味し、草木が枯れて新たな世代が生まれようとする状態を表すそうです。

また、「商いは牛のよだれ」といわれます。これは、牛が反すうするように、地道に努力することが商売のコツであることを示しているといいます。

2021年、仮に株価が大幅に調整した場面は、2022年以降をにらんで新規の買いをコツコツ入れると成果が上がることにつながるかもしれません。

2021年の丑年の注目銘柄 ですが、ひねりはありませんが、牛乳で「明治ホールディングス(2269)」、「雪印メグミルク(2270)」、牛肉などで「プリマハム(2281)」、「日本ハム(2282)」、「エスフーズ(2292)」、「あみやき亭(2753)」、「ゼンショーホールディングス(7550)」、「吉野家ホールディングス(9861)」、「松屋フーズホールディングス(9887)」などでしょうか。

そのほか社名で挙げるとすると、創業者が牛尾さんの「ウシオ電機(6925)」も挙げられます。

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第3四半期決算は「営業利益25.4%増」の絶好調!今後はkintoneの成長と海外展開がカギ|サイボウズ

サイボウズは2020年12月期第3四半期決算において、前年同期比で売上高16.7%増、営業利益25.4%増と注目すべき好業績を発表。グループウェアの老舗ながら高い成長性を投資家にアピールしました。

2021年に控える本決算を見据え、第3四半期決算の内容点検と企業成長に期待が持てる「3つのポイント」をご紹介します。「グループウェア市場の成長性」「同社の情報公開が担う『メディア=メッセージ』機能」「海外展開」に注目です。

目次

  1. 連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調
  2. グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力
  3. 「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる
  4. 成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

1.連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調

2020年11月12日に発表された2020年12月期第3四半期決算について、主な経営指標と事業の進捗、本決算と今後の成長を占う上でのポイントについて見ていきましょう。

サイボウズは1997年に現代表取締役の青野慶久社長他2名により創業。同年にグループウェア「サイボウズOffice」を発売し、以来一貫してグループウェアを磨き上げつつ、メール共有・業務改善アプリのプラットフォームとサービスを提供してきました。

「企業組織のチームワークに貢献する」という使命は内部にも貫徹されており、当社は「社員が働きやすい企業」として認知されています。青野社長はこの分野でも頻回にメッセージを発信し、よく知られた存在です。

2020年12月期の第3四半期決算(2020年1月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりでした。

第1~3四半期の合計で、売上高・営業利益のいずれも前年同期から目覚ましい成長を遂げています。売上高営業利益率は19.9%で、前年同期比から1.4%増の絶好調です。

業績の押し上げ要因は決算資料等を見る限り「特にない」というのが実際のところです。新型コロナウイルス感染拡大による事業活動・業績および会計上の見積もり等への重大な影響もありません。

2019年における前年同期比の数値を見ても、売上高19.2%増・営業利益17.9%増を記録しており、特段の材料がなくとも通常営業で高成長を遂げる局面にあります。

2020年12月期の本決算見通しは以下のとおりです。

第4四半期に発生する広告宣伝費や業績連動型賞与・税金等を加味した結果、通期での営業利益は21億5,700万円を見込んでいます。第4四半期の1月目に当たる2020年10月度の月次決算でも9月までの成長基調を維持。通期予想の達成は堅そうです。

株価について

株価は第3四半期決算発表翌日(11/13)終値で2,970円を付け、時価総額は約1,258億円に達しました。2019年3月の700円近傍を出発点に上げて足を強め、2020年9月24日には3,800円の最高値を付けて投資家は達成感を得ています。

チャート形状的にはダブルトップを形成し、当面は下落基調にありますが、業績好調で下げ材料となるようなニュースは特に確認できていません。業務上のライバルとなる「ナレッジスイート(3999)」「rakumo(4060)」、さらには「東証マザーズETF(2516)」と値動きが重なっていることから、テクノロジー系成長銘柄全般の動意に連動しているという印象を受けます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2.グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力

当社は決算の際に、売り上げ等を事業セグメントに分割する形式を採用していません。商品ごとの売り上げ推移も、四半期短信では発表していないため不明です。当社発表数値およびリサーチ会社等統計数値を押さえつつ、基幹4商品を概観します。

①kintone

14,000社が導入する「kintone」は、データベース・プロセス管理・コミュニケーションの機能を統合した業務改善プラットフォームです。「情報の属人化・二重管理」「進捗共有の不備」「売り上げ・勤怠・交通費等の管理労力」「契約書面準備の際の連絡不備」といった非効率性に対応。メンバー間での顧客・案件・問い合わせの共有・見える化を促進し、時間と手間の削減に寄与します。

「日経コンピュータ 2020年 9 月 3 日号 顧客満足度調査 2020-2021」クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門において2年連続第1位を獲得。2019年12月期(前期)には売上高が前年度比1.4倍、契約社数が前年度比1.3倍の伸びを記録しました。決算説明資料等で基幹4商品の筆頭に挙げられていることから、当社イチ押しの成長商品であるといえるでしょう。

②サイボウズOffice

66,000社が採用する「サイボウズOffice」は中小規模の企業に適したグループウェアの草分け的存在。スケジュール管理や掲示板・ワークフロー・ファイル管理・メッセージ・タイムカードなどの機能を備えています。2001年~2012年まで売上高が減少基調にありましたが、2011年のクラウド版リリースから再成長を開始。現時点では4年連続で最高売上を達成しています。

③Garoon

5,800社が導入している「Garoon」は中・大規模企業向けグループウエアです。ビジネス向けクラウドサービスのレビューサイト「ITreview」のグループウエア部門、ワークフロー部門で高評価(LEADER)を獲得。自社サービスkintoneとの連携に加え、Microsoft 365など他社システム・サービスとの連携も拡大し、利便性を高めています。

④Mailwise

10,000社が採用している「Mailwise」は、届いたメールを複数人で共有し、履歴を一元管理できるメール共有・管理ツールです。お問い合わせメールの対応・管理、顧客とのやりとりの共有、誤送信・二重送信の防止、アドレス帳の共有などが可能となります。

ALTalk指標

ALTalk指標で、サイボウズOfficeとkintoneへのweb訪問数の推移(合算/1年)を見てみましょう。1年で約2倍となっており、継続して注目を集めていることが見て取れます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

次にkintoneスマホアプリのダウンロード数推移(2年)を見てみましょう。移動平均を読み取ると年率40%程度の上昇傾向にあり、利用者増は一目瞭然。2020年3月のダウンロード数は3,466件と突出しており、緊急事態宣言下のリモートワークで利用機会が急拡大したことが分かります。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2020年9月以降のアプリダウンロード数が若干下降傾向にあるのが気掛かりですが、web訪問数は上昇傾向です。潜在ユーザーの伸びが確認できる指標であり、web訪問数は継続的にウォッチしていきたいデータです。

下の表は、年商500億円未満の中堅・中小企業におけるグループウェアの社数シェアを「導入済み」と「新規予定」に分けて集計したものです。大企業は除外されており、また「社数」であり「ユーザー数」ではないため、必ずしもシェアが売上高と一致しないことには注意が必要です。

(ノークリサーチ「2020年中堅・中小市場のグループウェアとビジネスチャットに起きている変化」より作成)

2019年までにOfficeを含めた統合アプリ「Microsoft 365」にリードを許していたものの、2020年の新規導入予定者数ではサイボウズOfficeがトップを奪取。2強体制を形成しています。

3.「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる

これまで見てきたように、当社の商品展開はいずれも「グループウェア」に属するシンプルな事業構造であり、短期的な事業の浮沈を左右する事情も出てきていません。グループウェアが寄与する部課単位のミクロな事業改善は、政策のはやり廃りに影響されにくい地道な分野であるため、当節よくいわれる「DX」や「AI」「フィンテック」のようなブームとは縁遠いものです。

このような銘柄への投資を考えるにあたっては、高成長トレンドを継続していける「事業性」の根本といえる「事業環境」や「強み」を実直に検討・確認していく作業が必要です。当社の成長を占う「3つのポイント」をみていきます。

1. グループウェア市場の成長性
2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成
3.海外展開

1.グループウェア市場の成長性

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長を続ける見込みです。

これまで見てきたように、現時点ではサイボウズ(サイボウズOffice+Garoon)とMicrosoft 365の二強体制となっています。少しさかのぼってシェア推移を確認しても、競争は熾烈ですが短期的に大きくシェアが上下するフェーズとは見えず、一定の均衡状態にあるようです。

このこととグループウェア全体の2020年~2024年の市場成長予想・年率8.8%を突き合わせると、サイボウズOffice・Garoon以外の商品に、当社の売上高前年度比16.3%増という高成長がかかっているという予測が立ちます。kintoneです。

グループウェアの代表格であるサイボウズ Officeとkintoneには以下のような相違点があります。

サイボウズOfficeは社員間の「連携」に重きを置く一方、kintoneは作業道具箱を「最適化」していくイメージで、社員が個々に利用し効率を高める「作業性の向上・省力化」への寄与が大きいといえそうです。

一般的なグループウェアとの比較で、より強く業務改善を志向するkintoneが高成長を継続していけるかが、当社の今後数年を左右する最重要ポイントとなります。

2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成

当社ウェブサイトに「ソーシャルメディア」というページが設けられています。

商品・事業・支社の単位に加え社長がフェイスブックアカウントを公開し情報を発信。さらに読み物コンテンツ(ブログ)として、企業研修についての情報発信を行う「チームワーク総研」と、働き方や仕事を通じた自己実現を主に取り扱う「サイボウズ式」を運営しています。

SNSの積極利用は、よくも悪くもSNSにおける一方向の情報拡散が起こりがちな時代において、ファンをつくる有益な取り組みです。

積極的・継続的な情報発信によって、グループウェア・業務改善プラットフォームについて意思決定を行う企業の人事総務部門やマネジメント層への認知向上が見込めます。

また、サイボウズは社内の働き方を改善する取り組みを長期・継続的に行っており、この点に関する情報公開も盛んです。「働きがいのある会社」ランキングの常連であるほか、ワークライフバランスやダイバーシティについての賞も複数受賞しています。

仕事環境の整備やマネジメント手法についても青野社長がスピーカーとなって積極的に発信しており、これほど経営者の顔やガバナンスの姿勢が知られている企業もなかなかありません。

社員が尊重され、風通しがよく働きがいのある、いわゆる「ホワイト企業」であり続ける努力を行うこと・情報を公開すること・社長の顔が見えることは、1990年代後半~2000年代に誕生し今まさに社会参画を始めつつある「Z世代」へ非常に大きなインパクトを与えます。

短期的な株価動向などに反映されることではありませんが、当社が力点を置く社内統治と情報発信は、最適な人材の獲得と社歴・モチベーションの長期継続に資する決定的に重要な取り組みといえるでしょう。実際、2019年度の当社の離職率は特筆に値する約3.8%という低さです。

さらに言えば、信頼感の醸成は長期的な「雇用コストの適正化」にも役立ちます。

3.海外展開

2019年度の決算報告においてはグローバル展開も強調ポイントとなっていました。

すでに中国・ベトナム・アメリカ・オーストラリアに現地拠点を設けており、製品の多言語化を進めアジア・欧米地域での販売に取り組んでいます。中国語圏では1,030社(前年比+3%)、アジア太平洋地域では590社(前年比+39%)、アメリカでは360サブドメイン(前年比+33%)の成長を示しました。

組織形態の改革も進めており、組織戦略室・事業戦略室を新設して、国外拠点における事業ノウハウの共有・連携を推進しています。

4.成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

本決算では、通期目標の達成度が最大の注目点となります。アナリストのコンセンサスや経営陣からの情報発信などをキャッチするために、情報感度を高くしておきましょう。

2020年以降のグループウェア市場の成長率・年率8.8%に対し、看板商品であるサイボウズOfficeとGaroonはシェア争いを制し、キャッシュカウ(長期収益源)であり続けられるかが第一の注目ポイント。レッドオーシャンを勝ち抜く自信と戦略を聞き取りたいところです。

目下の成長商品であるkintoneと海外展開の進捗は、今後の当社に対する期待=PERを大きく左右します。2020年12月期本決算の説明会において、中長期的な成長目標が出れば、株価上昇の材料となります。担当役員・社長の説明会コメントのニュアンスに至るまで、アンテナを高く張っておきましょう。

上でも言及したALTalkで確認できる「web訪問数の推移」「kintoneアプリダウンロード数」は、kintoneの成長を傍証する貴重な材料です。投資家は定点観測必至といえます。

●類似・競業関係にある企業の動向

一様に増収基調であり、後続の猛追が見て取れます。サイボウズの決算数値・通期予想には、この業界老舗ならではの安定感が感じられます。

●株価指標

サイボウズの株価は1株当たり利益の120.57倍の評価を受けています。

利益を投資に回す局面であるため、成長株の評価はPSR(株価売上高比率)で行うことが多いのですが、10.46倍という水準は成長性がすでに目いっぱい株価に乗っており、既存投資家の期待は高い水準にあります。

自分なりに、短期の材料もしくは長期の成長性をしっかり腹落ちさせて、投資に臨みたい銘柄といえます。サイボウズOffice・Garoonというトップ商品がいまだに高成長局面にあることは、安心材料です。さらなる高成長の芽を逃すことのないよう、参入の機を見据えていきましょう。


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参照資料

2020年12月期第3四半期決算短信
2020年10月度月次
2019年12月期(第23期)決算および2020年12月期(第24期)事業戦略説明会
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現在のデフレ状態はいつまで続く?オルタナティブデータから考察

 総務省が12月18日に発表した11月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.9%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.9%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.3%となりました。

 前月に続いて3指数ともに前年同月比マイナスとなりましたが、特に生鮮食品を除く総合 の前年同月比-0.9%という下げ幅は 2010年9月に同-1.1%となって以来、10年2カ月ぶりの落ち込みとなりました。

「Go To」事業がなくても物価は下落傾向

 内訳を見ていくと、前年同月比で大きくマイナスとなっているのが「宿泊料」です。前年同月比-34.4%と大きく下落していますが、「Go To トラベルキャンペーン」による割引の 影響であることは言うまでもありません。消費者物価指数の場合、消費者が支払った価格が基になるため、このような割引支援や、消費増税などによって指数が大きく影響を受けることは知っておきましょう。ちなみに、本キャンペーンによる割引を除いた宿泊料は同+0.7%となっています。

 とはいえ、「Go To」事業の影響を除いた試算でも生鮮食品を除く総合は同-0.5%となっているので、「Go To」事業の影響だけが物価下落の原因ではないことが分かります。

エネルギー価格の持ち直しが反映されるのに期待?

 前回の記事「日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認」でも指摘しましたが、2019年10月実施の消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響を品目ごとに機械的に一律に調整した「消費税調整済指数」は8月から3指数が全て前年同月比でマイナスとなっており、既に日本はデフレに再び突入したと考えてもよいと書きました。

 一方で、春先の原油価格下落の影響が時差をもって物価全体に出てきており、持ち直してきて原油価格が反映される数か月後には再び物価は前年同月比でプラスに回復するという解説もありますが、そんなに単純な話ではないということは主張しておきましょう。

 今回発表されたデータも含めて、エネルギー価格の推移を見てみると、下図のように下落傾向にあります。

 昨年の10月に消費増税がありましたが、実は経過措置として電気代とガス代は10月から税率が引き上げられました。その結果、他の品目と比較して、電気代とガス代は1か月後ろ倒しで消費増税の反動による物価下落圧力が表れます。よって、今回のデータから1年間、両品目はマイナス圧力を受けることになります。

オルタナティブデータを見ても目先は厳しい

 既に2020年も終わろうとしている中で、先程の消費者物価指数は11月のものになります。足元の物価動向を把握するため、全国の食品スーパー1200店舗のPOSデータをもとに、ナウキャスト社が提供している日次物価指数「日経CPINow・T指数(物価指数)」を見てましょう。

 11月下旬に日次T指数が前年同月比でマイナスとなっていますが、12月も再び下落傾向にあることが分かります。T指数を構成する品目を細かく見ても、前年同月比で下落に転じた品目数が増えてきており、物価下落圧力は足元でも強くなっていることが確認されます。

第3波による更なる物価下落圧力

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかりません。国内の1日における感染者の報告数が3,000人を超える日が散見されるようになり、東京都内でも1日で800人以上の感染者数が報告される日も現れ始めました。このような状況下、「Go Toトラベル」について、政府は14日に今月28日から来年1月11日まで全国一斉に一時停止することを決め、東京都をはじめとするいくつかの都道府県では飲食店に対する時短営業の要請がありました。

 このような危機を感じるような報道が増えることで、国民は自主的に経済活動を自粛するようになるというのは、これまでの3回の新型コロナウイルスの感染拡大の波における消費関連のデータを見れば分かる話です。ここ数週間の報道を受けて経済活動が抑制されれば、これもまた物価下落圧力になります。

 そして、今年の2月以降は非自発的失業者が増え続けていますが、いまのところその雇用調整は非正規雇用を対象に起こっていますが、10月の労働力調査をみていると、遂に正規雇用でも雇用調整が起こりつつあるかもしれないと考えられる数字が出てきました。

 雇用関連の指標は景気に遅行します。労働市場には第3波の影響が来年以降表れはじめるため、やはり来年も春先は消費が控えられて物価にはマイナスの影響が出ると考えています。よって、来夏あたりまでは少なくとも現在のデフレ状態が続くとみてよいのではないでしょうか。

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楽天・ドコモとの「経済圏トリプルウォーズ」をいかに戦うのか? 2021 年度におけるZホールディングスの事業構造を読み解く

Zホールディングスは2021年3月期第2四半期決算において、前年同期比で売上高15.1%増、営業利益29.8%増という大幅進捗を発表しました。この多くはZOZOの子会社化によるものです。
来期以降の経営環境を占うには事業の内実をしっかり確認していく必要があります。LINEとの経営統合・PayPayブランドへの大胆な投資・広告事業へのテコ入れなど、話題が目白押しの下半期を展望しました。

目次

  1. 【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に
  2. 【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析
  3. 【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る
  4. 【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

1.【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に

2021年1月に控える第3四半期決算発表の前に、2020年10月末に行われたZホールディングスの2021年3月期第2四半期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

1996年、Yahoo! 米国法人とソフトバンクの合弁でヤフー株式会社が設立されました。以後、孫正義氏率いるソフトバンクの中核企業・ブランドとして、M&Aを繰り返しながら業容を拡大。2019年に行われたグループ再編の際、改めて挑戦の姿勢を世に示すべく新社名に「Y(Yahoo! JAPAN)からZへ」という意味を込め、Zホールディングス株式会社という社名となりました。

インターネット・情報技術で実現できる「利便性」「豊かな生活環境」「社会の発展」の追求を掲げ、その連結子会社数は45社にのぼります。日本を代表するIT企業グループの1つです。

2021年3月期第2四半期決算(2020年4月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

大幅な増収増益ですが、当四半期特有の事情があります。セグメント別の数値とともに確認していきましょう。

モノやサービスを販売・流通するコマース事業の進捗が目立つ半面、メディア事業は減収減益と明暗を分ける形に。新型コロナウイルスはEコマース需要増・広告出稿減と、当社事業に複雑な影響を及ぼしました。

コマース事業の指標には2019年11月にZOZOを連結子会社化したことが大きく寄与しています。売上収益で327億円、営業利益で61億円がプラスされたことで、前年同期比の伸び率がかさ上げされる形となりました。

2021年3月期の通期予想では売上収益1.14兆円(8.3%増)、営業利益 1,600億円(5.1%増)の見込み。既存事業の拡大に加え、下半期は主にコマース事業を中心とした注力領域への積極的な投資を実行するとしています。

株価は決算発表後(11/2)の終値で648.2円、時価総額は約3兆1,268億円となり、10月14日にはここ10年で最高値の790.0円をつけました。この3ケ月の値動き一部上場銘柄ながら東証マザーズ指数に近く、インターネット・DX関連の短期売買資金が多く出入りしている印象を受けます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

2.【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析

Zホールディングスは事業を大きく2つのセグメントに分けて決算発表を行っています。売上高1兆円・連結45社を数え事業領域は多岐にわたるため、比較的売上げの大きい部門および成長著しい部門を押さえておきましょう。

連結の対象となる主な関連会社の一覧です。

《コマース事業》

コマース事業では、ポータルサイト「Yahoo!」ブランドのもとで「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」などのコンシューマーサービスを手広く展開。ASKULやヤフオク!の法人向けシステムなどBtoBも強く、売上高はビジネス関連がコンシューマーを上回っています。

ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」は2020年のウェブサイト訪問者数ランキングでグーグルに次ぐ国内第2位。ニュース・メール・天気予報・検索といった日常生活の情報源をコンパクトにまとめ、オンライン接続ドアとしての強みは圧倒的です。堅いブランドイメージを保持し、関連サービスへの直接的な送客チャネルとして機能しています。スマホアプリ「Yahoo! JAPAN」は2019年の日本でのダウンロード数で7位につけていますが、スマホ世代の若年層への浸透は十分とはいえません。

コマース事業のKPIのうち「物販取扱高」は1兆2,535億円で前年同期比+30.8%、予約サイトや電子書籍などの「サービス・デジタル取扱高」は2,386億円で+3.4%となっています。前者は新型コロナウイルス感染拡大による消費チャネルの変化を追い風に成長した一方、後者は行動自粛とGo To キャンペーンの影響が入り交じりの小幅な成長となりました。

コマース事業に属する金融部門では、既存のサービスをソフトバンクグループが推進しているバーコード決済サービス「PayPay」ブランドに統一し、消費生活全般の金融サービス需要をカバーする「シナリオ金融」構想を推進。完全子会社「Zフィナンシャル」を中心にクレジットカード・銀行・証券・保険・FX・資産運用などを手がけています。

ソニーやトヨタなど、金融部門を祖業と並ぶ、もしくは凌駕する収益エンジンに成長させた先達は複数存在しており、ソフトバンクグループの金融部門を担う当社に強い期待がかかります。

金融事業のKPIである「クレジットカード取扱高」は1兆1,396億円で前年同期比+28.9%。Yahoo! カードとPayPayの連携による優遇キャンペーンの効果が出ているようです。

ALTalkではPayPayのアプリダウンロード数を確認できます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

ここ3年を見ると、2019年のダウンロード数増が目につく一方、今年に入っての減少が気にかかります。QRコード決済におけるPayPayのシェアは約55%と独り勝ちの状態にあり、大規模キャンペーン等で拡大する時期は過ぎたということかもしれません。

コマース事業/パーソナル部門の売上高推移を確認すると、PayPayアプリダウンロード数の増減から少し遅れて売上高が追っているように見えます。

疑似相関の可能性はありますが、PayPayのキャンペーンがコマース事業の売上をかさ上げしている、いわばタコ足食いの可能性も排除できません。毎四半期決算で発表されるKPI「PayPay決済回数」で進捗の裏取りは行っておきたいところです。

《メディア事業》

メディア事業は主に子会社であるヤフー株式会社の所管です。検索連動型広告などのネット広告関連サービスを提供しています。一般的な広告スペース提供のほか、新型コロナウイルスの蔓延を受け感染者情報ページの解説や学校休校支援に向けた学習コンテンツの提供を行うなど、消費者サービスというものを「公共性」や「好感度」も含め重層的にとらえている点は大いに好感が持てます。

メディア事業のKPIである「広告関連売上収益」は1,629億円で前年度比+1.6%の小幅な成長。ここ数年は5~7%程度の安定成長路線でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響で出稿が停滞。景気依存の面が強いという広告の限界を打破すべく推進中の「Yahoo!セールスプロモーション」については後述します。

セグメント別の売上高・営業利益は以下のとおりです。

コマース事業とメディア事業は売上高には約2,700億円の差がありますが、セグメント利益にはほとんど差がありません。原価のかからない広告ビジネスの効率性が表れている形ですが、経済状況に左右されやすい面も。下半期はコマース事業を中心に投資し収益基盤の拡大を狙います。

3.【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る

Zホールディングスの今後を、3つの「切り口」から読み解いていきます。

① LINEとの完全統合
② 2021年3月期・下半期の重点投資
③「経済圏」バトルの帰趨

①LINEとの完全統合

Zホールディングスは、国内スマホユーザーが利用するコミュニケーションツールではスタンダードであるLINEの運営と関連サービスの提供を行う、LINE株式会社の子会社化を2021年3月頃を目標に推進中。確固たるチームワークとサービス連携・統合によるシナジー発揮に重点を置いています。

LINEとの経営統合のメリットは2点に集約されます。1点目が、長くパソコンベースでのサービス展開を行ってきたヤフーが、LINEを通じスマホユーザーとの接点を強化できること。アプリとしてのLINEおよび付随サービスのコアユーザーである若年層を取り込むことで、全世代をカバーする長期的な成長戦略の立案およびサービス展開が可能となります。その延長線上には、国内オンライン・コンシューマーサービスのプラットフォームとして盤石の体制を整え、アマゾンやテンセントといったグローバル企業とのサービス競争に勝ち抜くという大きな目的があります。

統合により提供中のサービスがどのように整理・統合されていくかは明らかになっていません。今後のプレスリリースや決算発表に要注目です。

②下半期の重点投資を点検

コマース事業では、

  • PayPayを用いた特典付与、イベント(超PayPay祭)開催
  • クレジットカード(PayPayカード)会員拡大施策

これらの施策により「Eコマース利用者の優良顧客化、周期的購入の習慣化」「クレジットカードのアクティブ会員数拡大」を図るとしています。

加えて、あらゆる金融サービスをPayPayブランドに統一してYahoo! ブランドのサービス利用者が決済でPayPayブランドを利用する機会を増やし、両ブランドのシームレスな共通利用を推進します。

こうしたPayPayを中心とするコマース事業の施策には1つ、気がかりな点があります。利用した人なら誰もが感じている「QRコード決済は最も便利な決済手段とはいえない」ことです。

日常的な使い勝手は、電子マネー>クレジットカード>QRコード決済であり、QRコード決済には迅速性・スマホの電源・電波状況による処理遅滞などの問題がつきものです。クレジットカード会員数の拡大を重点項目としていますが、成熟市場であり急速な拡大は易しいものではありません。

PayPayブランドを利用者にとって価値あるものとしSuicaや楽天Edyから決済金額を奪うためには、PayPay特典・イベントといったいわば「金配り」をやめることはできません。後述する他の「経済圏」との戦いに勝つための体力勝負となります。

体力勝負という観点では、Zホールディングスが所属するソフトバンク陣営にはすでにPayPayをQRコード決済の最強ブランドに育てた実績があり、古くはYahoo! BBでADSLに打って出た際の成功体験があります。縦横無尽な資金調達も得意とするところであり、大盤振る舞いも勝つまでやり切れば勝つ……という世界かもしれません。

メディア事業では「統合マーケティングソリューション」の確立に期待がかかります。Zホールディングスに蓄積されるビッグデータを活用し、広告による認知→PayPay特典付与→消費者の購入行動とつなげるマーケティング活動支援サービス「Yahoo!セールスプロモーション」です。

2019年より提供開始となったサービスで、広告事業の中でも成長著しくインパクトは大です。本年度上半期と前年度下半期の比較で、Yahoo!セールスプロモーション経由の広告売上収益は2.6倍となっています。ショッピング広告には季節性があり、下半期の売上げが上半期を3割程度上回る通例にかんがみれば、Yahoo!セールスプロモーションが急速に認知されていることがわかります。

BtoBサービスのため実状が見えにくい部分があり、「広告主にとって真に実用的なものになっているか」という点は今後の情報を待ちたいところです。本来、PayPay特典付与といったプッシュ型マーケティングの訴求力をより確かなものとするためには、決済データと購入された商品がつなぎ合わされた形で利用できればベストのはず。コンビニエンスストアがPOSデータの蓄積・分析からマーケティング施策を立案するイメージです。現状、PayPayの決済データは購入情報と紐づけされていません。

いかに実用性を高め広告主に訴求していくかは技術の核であり、尋ねてわかることでは当然ありませんが、プレスリリースや四半期決算等で情報が得られるか、ウォッチすべき項目の1つといえます。成長商品ですが、投資家としては過信は禁物です。

③「経済圏」バトルの帰趨を占う

LINEとの統合は、Zホールディングスが若年層へ訴求する力を飛躍的に高めます。アマゾン、デンセント等グローバル企業への危機感が素地にあることは先述しましたが、同時に国内のライバル「経済圏」との競争に勝ち抜くことも重要です。

消費者向けサービス市場では、携帯キャリアを核として様々なサービスが連携して展開・相互に送客を行い顧客を取り合う経済圏バトルが激化しています。経済圏は、決済手段やポイントサービスを通じた顧客の囲い込みによって形成されます。現状は、PayPay決済を中心とするヤフー・PayPay経済圏、楽天カード・楽天Edyを擁する楽天経済圏、dポイントを育成し業務提携で固めるドコモ経済圏の三つ巴です。

それぞれの経済圏に特有の強みと弱みがあり、現時点では覇権は定まっていません。ヤフー経済圏はLINEとの経営統合によってサービスラインナップが大きく充実することに加え、ソフトバンクグループのアセットを利用することができれば、一歩抜きんでる存在になる可能性があります。中国の大手総合IT企業アリババやウーバーといった海外の著名なサービスとのつながりは他の経済圏にはないものです。

一消費者として各経済圏の「使い勝手」や「ブランドイメージ」を考えてみることも投資判断の良い材料になるでしょう。

4.【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

Zホールディングスの第2四半期決算は大幅な増収増益となりましたが、実状はZOZO連結のインパクトが大きかったといえます。2021年3月期の通期予想は売上収益1.14兆円(+8.3%)、営業利益 1,600億円(+5.1%)と慎重な見込みです。

ここまで当社の業績・成長戦略・施策・競争環境を分析してきましたが、これらのファクターを株価展望に結びつけるにあたっては、「親子上場」が問題となる場合があります。

Zホールディングスの連結対象企業のうち、売上高の大きい3社がそれぞれ単独で株式を上場しています。

アスクル、バリューコマース、ZOZOの利益は、それぞれの企業の株価とZホールディングスの株価の双方に影響を与えます。

本来はあくまで個別企業の利益ですが、連結(個別)企業の投資家が利益に対して何倍の価格で購入するか(PER)と、Zホールディングスの投資家が投資する場合のPERは常にずれが生じます。いわば一物二価の状態です。この意味で、親子上場は投資家が親子それぞれの企業の利益を適切に評価することを妨げています。

現時点では、ZホールディングスのPERは各連結企業より少々低めといったところです。購入を検討している投資家にはお得に感じられる一方、購入した後、株価が伸びにくい可能性もあります。ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株に投資した際に、多角的な事業構造のため企業価値が割安に評価される「コングロマリット・ディスカウント」という言葉が聞かれましたが、当社に投資する際にはディスカウントとなるのかプレミアムが生じるのか、とくに長期投資を考える向きは気にしておいた方が良いかもしれません。

今後の成長と株価を占うにあたっての最注目ポイントは、金融部門のPayPayブランドの統一効果です。金融部門は現時点での収益寄与は大きくありませんが、うまく育てば優秀な利益セクターとなることはソニー、トヨタなどの前例が証明しています。KPIである「クレジットカード取扱高」「ジャパンネット銀行口座数」は四半期ごとにチェックしておきましょう。前提となる「PayPay決済回数」「累計登録者数」の伸びも重要です。

収益寄与の観点からは、コマース事業に比べ利益率が圧倒的に高いメディア事業で推進している「Yahoo!セールスプロモーション」の進捗についても情報収集に努めたいところです。広告はBtoBのサービスであり投資家が直接動向を知ることはむずかしいのですが、プレスリリースや@DIME、ITmedia等のメディアで動向がわかる可能性もあるので気にかけておきましょう。

第3四半期の業績への影響はまだ少ないものですが、2021年度以降はLINEとの統合が本格的に当社の事業をリフォームしていきます。重複事業の整理やシナジーについて聞こえてくる内容によって、先回りして資金を投下しておくべき場面もあり得るでしょう。若いLINEユーザーをヤフーブランドのサービスに誘導する導線をうまく設計できるかがシナジーのカギとなるため、こうした点を考える際も前述のテック系メディアが参考になります。

類似・競業関係にある企業の動向は以下のとおりです。

経済圏でライバル関係にある両社とも売上成長は高い水準を見込んでいます。楽天は携帯事業の先行投資が響いており、利益については参考になりません。

株価指標については下記のとおりです。

Zホールディングスの株価は1株当たり利益の36.30倍の評価を受けています。日本を代表するオンライン・コンシューマーサービス企業として、海外企業に伍していく期待が込められた評価になっているようです。

ヤフー・PayPay経済圏が楽天・ドコモの経済圏との戦いを勝ち抜いていけるか、ユーザーとしての実感が投資に活かされることもありそうです。PayPayブランド育成にあたり投資先行のフェーズが続きますが、投資家としては費用対効果を厳しく見ていく姿勢が求められます。


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参照資料

2020年度第2四半期(7-9月期)決算説明資料
2021年3月期 第2四半期決算短信
2020 年度第 2 四半期決算説明会(2020 年 10 月 30 日開催)質疑応答要旨
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【出前館】売り上げ急増するも今期も営業赤字予想。大規模な先行投資での勝算はあるのか?

出前館は、出前フード専門Webサイトの「出前館」を運営しています。2016年に配達機能を持たない飲食店向けへの配達代行サービスである「シェアリングデリバリーサービス(R)」を開始。19年11月にそれまでの「夢の街創造委員会」から現社名に変更しました。現在の筆頭株主はLINEです。

2020年初め頃からの新型コロナウイルス感染拡大を受け、「3密」を避けるためのニーズとしてフードデリバリーの引き合いが活発化し、株価も上昇。市場の関心が高い銘柄です。

一方、中期経営計画で事業拡大のための大規模な投資実行で、2021年8月期も大幅な営業赤字予想を打ち出し、実現性に懐疑的な見方も浮上しています。業績の実績と予想、そして中計の内容や可能性などについて取り上げます。

目次

  1. 2020年8月期は26億円の営業赤字、売上高55%増も先行費用負担増
  2. 営業赤字は今期がピーク、中計最終年には120億円の黒字を目指す
  3. 新型コロナウイルス感染拡大で事業環境は追い風、デリバリーが日常に定着も
  4. 【まとめ】PSRは許容範囲、中計の達成可否は新型コロナウイルス感染症の収束時期との兼ね合いか

1.2020年8月期は26億円の営業赤字、売上高55%増も先行費用負担増

まずは直近の決算などについて分析したいと思います。

2020年10月15日に発表された2020年8月期決算(19年9月~20年8月)は売上高103億600万円(前年比54.6%増)となりました。

新型コロナウイルス感染拡大によってこれまでの日常生活が脅かされる中、「在宅勤務へのシフト」、「自宅での食事機会の増加」、「飲食店における営業時間短縮および座席数削減」が広がった結果、外食から中食へのシフトが進み、テイクアウトやデリバリーに対するニーズが拡大。同社の「シェアリングデリバリー(R)」を活用してデリバリーを開始する飲食店が急増しました。

こうした中で、同社では需要に応じるためにサービス展開を加速し、2020年8月末時点で1都1道2府21県まで拡大。ユーザー利用の拡大のために、タレントの浜田雅功氏をCMに起用するなどプロモーション強化に、先行費用がかさみ営業赤字になった格好です。

第2四半期決算発表時点(3月26日)で株価は660円、時価総額は約564億円でしたが、10月15日時点では株価3,025円、時価総額は約2,585億円と急増しています。

2.営業赤字は今期がピーク、中計最終年には120億円の黒字を目指す

2021年8月期は売上高280億円(前期比2.7倍)、営業損益130億円の赤字を見込んでいます。出前館流通金額は1,600億円(同2.5倍)となる見通しです。今期の赤字も業容拡大のための先行投資が要因です。

そして2023年8月期の出前館流通金額は3,400億円(20年8月期実績は1,027億円、売上高970億円(同103億円)、営業利益120億円の黒字(同27億円の赤字)を目指しています。

(「2020年8月期(第21期)通期決算説明会」より)

中期経営計画では「出前館×LINEで実現したい世界」「デリバリーの日常化」で、具体的には2021年8月期を出前館事業拡大のための大規模な投資実行、2022年8月期に出前館サイトの収益化、そして最終年の2023年8月期に「シェアリングデリバリー(R)」の通期黒字化を目指しています。

加盟店舗数は2022年中に10万店(20年7月で3万店)を達成予定。また、ユーザー数の拡大ではLINE IDとの連携(LINEの利用者は8,000万人超)を活用、「シェアリングデリバリー(R)」では人口カバー率50%以上(20年8月で30%)に拡大させる方針です。

営業赤字は今期がピークで、来期である2022年8月期は20億円の赤字まで縮小する計画です。中計最終年の2023年8月期は120億円の黒字を見込んでいます。売上高の伸びの大半は「シェアリングデリバリー(R)」の拡大による配達代行手数料の増加によるものです。

3.新型コロナウイルス感染拡大で事業環境は追い風、デリバリーが日常に定着も

新型コロナウイルス感染症の感染者数の増加が続いており、北海道や大阪府などでは飲食店の営業自粛が継続しています。感染はむしろ拡大気味に推移しており、フードデリバリーのニーズは拡大基調にあります。こうした流れが日常生活の中で定着しつつあるのは、同社にとって事業環境は追い風とみることができます。

ALTalk指標を見てみると、web訪問数もこの半年間、一定数を維持していることがわかります。

(ALTalk「出前館の指標」より)

【まとめ】PSRは許容範囲、中計の達成可否は新型コロナウイルス感染症の収束時期との兼ね合いか

020年8月期実績、2021年8月期計画でわかるのは、売上高の面では事業環境のフォローアップの風をとらえて、大幅な増収ペースを維持していることです。また、フードデリバリーが日常生活に溶け込みつつあり、一気に減少することは考えにくいといえます。

一方、会社側ではこの機をとらえて、一気に攻めに打って出ています。それが中計に反映されています。2020年8月期は攻めが吉と出て株価も大きく上昇しました。現在でも株価は高値圏にあり、投資家の評価は高いといえます。

今後の注目ポイントは、例えば新型コロナウイルス感染症のワクチンが行きわたり、感染者数が減少し、「アフターコロナ」への生活シフトが進むケースです。外出が自由になり、夜の飲食店街へも普通に出入りできる状況になった際に、デリバリー需要が後退することも想定されます。

出前館の株価指標をみておきましょう。

(2020年12月11日現在)

赤字なのでPER(株価収益率)は算出できず、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)も営業キャッシュフローが赤字なので算出できません。PSR(株価売上高倍率=時価総額÷予想売上高)は一般的に、20倍以上なら割高、0.5倍以下なら割安とみなす指標で、同社のPSRは許容範囲内とみることができます。

今後は四半期ごとの決算で、特に売上高の動向をチェックすることが重要と思われます。攻めの投資が実を結べば、フードデリバリー業界の勝ち組として一段の評価を得られるとみられる半面、新型コロナウイルス感染症が鎮静化となった場合でも成長できるか――。LINEとの連携などの動向にも注視しておきたいところです。


ALTalkでは、出前館以外にも、インターネット系銘柄を中心に約50銘柄を掲載していますので、ぜひ登録してご覧ください。


免責事項

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GoToトラベル vs コロナ第3波。旅行需要の変化をオルタナティブデータで確認しよう

 12月に入っても新型コロナウィルス感染拡大の第3波のピークは未だ確認できません。同月12日には国内感染者数が1日の発表数としては最多となる3,000人を超えました。前回の記事でGo To トラベルキャンペーンの効果が東京追加以降の10月から発揮されてきたと書きました。しかし、11月から第3波といわれる感染の再拡大が生じているため、同キャンペーンの一時停止なども検討されています。今回はオルタナティブデータを用いて同キャンペーンのデータを確認し、誰が利用しているのかを確認していきましょう。

既に国民の自粛は始まっている

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける「旅行」の消費指数にPCR検査の陽性者数の推移と重ね合わせたものが下のグラフになります。

 PCR検査の陽性者数が増えた時期を感染拡大期とした場合、日本では第1波から現在進行形である第3波という3回の感染拡大期があったのですが、第1波の時は緊急事態宣言が発令されていたこともあり、旅行への支出は急激に低下しました。第2波は急激な低下からの回復が止まっただけであり、再びマイナス幅を広げることはありませんでした。

 その後は前回の記事でも書きましたが、Go To トラベルキャンペーンに東京が追加されたこともあり、急回復をして前年比でもプラスの成長まで戻りましたが、第3波が襲来したことで11月後半には再び前年比でマイナスの伸びとなりました。  同キャンペーンが感染拡大を加速させたとの指摘もあり、政府は一時停止なども検討しているということですが、国内の感染拡大の報道を受けて、既に国民は自粛を始めていることがデータから分かります。

そこまで大きな傾向は確認できないが・・・

 旅行について年代別の消費指数を見てみましょう。5歳ごとに年代を区切って見てみると、11月後半はほとんどの年代で伸び率がマイナスになっていることが分かります。

 年齢ごとに見てみても、そこまで大きな傾向を見出すことは出来ませんが、60歳以降の高齢者はややマイナス幅を大きくしているという傾向はあります。やはり新型コロナウイルスの特性の1つとして挙げられている、高齢者ほど重篤化リスクが高いということが影響しているのでしょう。

遠距離移動になると傾向が現れる

 次にJCB消費NOWの航空について見てみましょう。こちらも先程と同様に年代別に見てみると、こちらは明確に傾向が見て取れます。

 航空も高齢者ほどマイナス幅が大きくなっていますが、旅行と違うのは若年層もマイナス幅が大きくなっていることです。グラフを見てみると、50歳台を中心に弓なりに曲がった形になっていることが分かります。  若年層ほどネット環境があればいくらでも楽しく生活できる方法を知っているため、わざわざ感染リスクを負ってまで出かける必要を感じていなかったり、そもそも経済的に同キャンペーンを活用して旅行に行こうとは思わないという要因があるのかもしれません。

マイクロツーリズムすらも控えたか

 前回の記事ではGo To トラベルキャンペーンに東京が追加されたことで旅行へ行く人が増えたものの、不特定多数の第三者と密な環境になる新幹線や飛行機といった交通手段は避け、自家用車で旅行に行く人が多いという分析結果を書きました。しかし、JCB消費NOWの燃料小売業を見てみると、11月は再びマイナス幅が大きくなっていることが分かります。

 やはり現在の第3波に関するニュースの中で報じられる陽性者数がこれまでより多いことや、気温と湿度の低下という一般論として感染症が流行しやすい環境になってきたということなどによって、国民が自主的に自粛を始めているということなのかもしれません。

 未だに第3波のピークが確認できないなかで、仮に政府が同キャンペーンの一時停止を決めた場合、宿泊業や旅行・観光業への影響は言うまでもありませんが、自粛ムードがより強まることで娯楽や外食などの産業にも悪影響が生じます。足元の株式市場は堅調ですが、個人投資家は自分が投資している銘柄が属する産業への影響を再度考え直して保有銘柄の構成を見直してもいいかもしれません。

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「ウィズコロナ」を追い風に「医療DXの本命」メドピアはどう成長するのか|メドピア決算

メドピアは2020年9月期決算において、前年同期比で売上高1.7倍、営業利益2.0倍という驚異の成長を見せつけ注目を集める存在です。新型コロナウイルス感染拡大を機に、さまざまな分野で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)が医療にも到来し、好調の波に乗っています。

先行きを占うための必須ホームワーク、「2つのマクロファクター」と「ライバルとの闘い」をいかに見据えるかを徹底解析しました。

目次

  1. 2020年度の売上高は前年同期比1.7倍、営業利益は2.0倍も増加!来期予想も強気
  2. 「集合知プラットフォーム」MedPeerを土台に、「プライマリケア」「予防医療」2つのセグメントを急速育成中
  3. 「ウィズコロナとアフターコロナ」「デジタルエイジの高齢化」というニッポンの課題に医療DXで立ち向かうメドピア
  4. 成長の土台をなす会員数の増加施策に注目。競合のエムスリー・ケアネットとのすみわけや投資施策の相違などにも注意を払いたい

1.2020年度の売上高は前年同期比1.7倍、営業利益は2.0倍も増加!来期予想も強気

2020年11月12日に行われたメドピアの2020年9月期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

メドピアは2004年、現代表取締役社長・CEOの石見陽氏が設立。当時の商号は「株式会社メディカル・オブリージュ」でした。2007年に医師専用コミュニティサイト「Next Doctors」(現MedPeer)の運用を開始すると、2010年には商号をメドピア株式会社に変更。2014年に東証マザーズ市場への上場を果たしたのち複数企業の子会社化を経て業容を拡大、そして2020年9月には東証第一部へと鞍替えします。
「集合知により医療を再発明する」というビジョンのもとに、医師を支援し、患者を救うことをそのミッションとしています。

2020年9月期決算(2019年10月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

当期は売上高・営業利益のいずれも前年比で大幅な進捗を見せました。売上高営業利益率は20.8%で前年同期比から2.5%増。各事業領域でDXが加速し、新規連結したコルボ(医療系コンテンツ企画制作会社)を除いても大幅な増収増益という絶好調ぶりです。

事業別に見ても、2部門とも急成長の過程にあります。とくに法人向け医療相談アプリと、健康保険組合向け特定保健指導サービスを擁するヘルスケアソリューション事業の利益率進捗は急で、売上が損益分岐点を超えてきたようです。

2021年9月期(来期)の通期予想では売上高は1.4倍、営業利益および当期純利益は1.5倍の成長率を見込んでいます。

セグメント別では、ドクタープラットフォーム事業の売上高成長率が45.4%増、ヘルスケアソリューション事業の売上高成長率は26.2%増を見込む強烈な強気。医療DXのさらなる進展への自信がみなぎっています。

ALTalk「メドピアの指標」より

株価は決算発表翌日(11月13日)の終値で5,390円、時価総額は約1,157億円となっています。その後は、新型コロナウイルス感染拡大にともなうワクチンの研究開発や、医療従事者への支援の必要性といった報道を境に、DXをテーマとする他銘柄から一定の資金流出がみられるなか、株価は上昇し12月2日には7050円の最高値をつけました。

2.「集合知プラットフォーム」MedPeerを土台に、「プライマリケア」「予防医療」2つのセグメントを急速育成中

メドピアの業績をセグメントで見ると以下のとおりとなります。

ドクタープラットフォーム事業は、「集合知プラットフォーム」と「プライマリケアプラットフォーム」から構成されています。

「集合知プラットフォーム」は会員12万人の医師向けコミュニティサイト「MedPeer」が大黒柱です。製薬企業や医療機器メーカーが疾患・薬剤の啓発や情報提供、Web講演会といったマーケティングを行う場として機能するとともに、コンテンツ制作まで受注します。

MedPeerは、医師向けのメディアの中でも広告メディアやMR、学会・研究会とは異なり、ユーザーである医師の投稿でコンテンツが生成・増殖していくユーザー参加型のソーシャルメディアであることが最大の特徴です。

さらにMedPeerは、関連事業である人材マッチング・開業/経営支援サービスへの送客機能をも担っており、会員数増加と高利用率の継続が目下の強みです。新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化するなか、MedPeerのページビューは前期比1.7倍に増加しました。

「プライマリケアプラットフォーム」は、薬局・クリニックの「かかりつけ化」を支援するアプリ「kakari/kakari for Clinic」を展開。薬局へのチャット相談・電子お薬手帳に加え、薬局での待ち時間を短縮する「処方せん送信」「チェックイン」機能を持つ「kakari」は、KPI(重要業績評価目標)としている「週次処方せん送信数」「週次チャット送信数(患者様→薬局)」のいずれも飛躍的な進捗を見せています。

薬局向けアプリ「kakari」とクリニック向けアプリ「kakari for Clinic」の連携によりサービスを強化し、2033年までには「集合知プラットフォーム」、後述の「予防医療プラットフォーム」と並ぶ三本柱の一角として育成するべく、積極投資を推進するとしています。

ヘルスケアソリューション事業ではアプリを媒介とする「予防医療プラットフォーム」を展開しています。

子会社「MEDIPLAT」が手がける法人向け産業保健支援サービス「first call」は、チャット医療相談や、TV電話による産業医面談、さらにはストレスチェックを提供。おもな顧客である法人・健康保険組合の契約数は、2019年度の289件から2020年度には573件と約2.0倍の高成長を見せました。2021年度の売上高は2020年度比1.9倍の成長を見込んでいます。

子会社「FitsPlus」では健康保険組合向け・特定保健指導サービスを手掛けており、管理栄養士による食生活指導を店舗・アプリの両面で提供。2021年度の売上高は2020年度比約1.3倍の成長を見込んでいます。

サービス開始から13年が経過した「MedPeer」は安定収益基盤として事業の投資資金を捻出するセグメントでありながら、それ自体もいまだ高成長期にあることが当社の指数関数的な成長を支えています。事業の核は、MedPeerのアクティブ会員数を支える「コンテンツ力」にあるとみることができそうです。

3.「ウィズコロナとアフターコロナ」「デジタルエイジの高齢化」というニッポンの課題に医療DXで立ち向かうメドピア

メドピアの事業に関わる2つのマクロファクターを検討していきます。

①新型コロナウイルス感染拡大:ウィズコロナとアフターコロナ
②デジタルエイジの高齢化

①新型コロナウイルス感染拡大:ウィズコロナとアフターコロナ

新型コロナウイルス感染拡大における「人と人との対面を強く制限する」という性質は、医療におけるDXを推進するメドピアに強い追い風を吹かせています。

「集合知プラットフォーム」の主軸である「MedPeer」は、新型コロナウイルス感染拡大を背景に大きく躍進した部門です。

製薬企業のマーケティングは本来、MR(医療薬事情報担当者・製薬企業の営業担当)の訪問による部分が大です。新型コロナウイルス感染拡大はこのチャネルを大幅縮小に追い込みました。  

新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れた病院のうち、MRの訪問自粛要請を行った割合は91%、患者を受け入れていない病院でも82%が自粛要請を行っていたという調査があります。MRもオンラインでの営業・情報提供活動を行ってはいるものの、足しげく訪問することで多忙な医師との面談機会を得るという従前の手法が取れなくなったことは大きな痛手です。

これを機に、製薬企業・医療機器メーカーはMedPeerのようなコミュニティサイトを利用して、疾患・薬剤について啓発するコンテンツを提供したり、Web講演会を行ったりなど、マーケティングリソースをオンラインに割く流れを強めました。ウィズコロナにおいてMRの役割は縮小する一方です。

この傾向がアフターコロナで巻き戻るという合理的な理由を思いつくことはできません。医薬品・医療機器のマーケティングにおけるDXは、医師にとっては時間と手間が省け、製薬企業・医療機器メーカー本部にとっては経費削減ができWin-Winです。

医師の働き方改革や、避けがたい医療費削減の流れのなかで、医師の生産性を上げていくためにも医療のDXは不可避であり、メドピアはその最前線に立っているといえます。

②デジタルエイジの高齢化

「顧客」という観点から医療を眺めると、高齢者の圧倒的な存在感に気づかされます。

一人の人間が生涯に使う医療費の平均は約2,700万円ですが、全体の6割を65歳以上で使います。そして75歳以上で使うのは全体の4割にものぼります。日本の医療費の半分以上が高齢者医療にあてられているのです。

現時点で70歳以上の世代には、現役時代にデジタル化の波を受けなかった方が少なくありません。この先スマホやパソコンを使える方が著増するかといえば、疑問です。つまり、医療の「提供者」におけるDXについては前述のとおりの進捗ですが、「顧客」のDXはこれからが本番だということです。

70歳以上の高齢者は2050年まで増加し続け、そのなかでスマートフォンを使える割合も増加の一途。顧客を巻き込んだ医療DXのプラットフォームとして、今後、薬局とクリニックを統合したアプローチで集客の効率化・省力化を推進できる「kakari/kakari for Clinic」に大きな期待がかかります。

 「予防医療プラットフォーム」の「first call」についても同様です。高齢化と財政難は医療需要のコントロールと医療費削減を強く要請し、予防医療の重要性は増す一方。そのため「first call」が一役買う場面が到来しています。

現状はおもに法人需要に応えるプラットフォームとなっていますが、新型コロナウイルス感染拡大の第一波が襲来した2020年3月には、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の一環として経済産業省が設置する「健康相談窓口」に選定され、個人顧客に利用されるという実績を得ました。

この先、不要の受診削減に向けた医療相談推進という展開があれば、すでに実績のある「first call」にとって大きなチャンスとなります。「健康経営」の推進や「人生100年時代」を迎え、定年延長や再雇用の義務化がより強く企業に求められていくことによる労働者の高齢化なども含め、「first call」の需要が拡大する余地は大きいといえそうです。

「first call」のアプリダウンロード数をALTalkで確認することができます。2020年11月にダウンロード数が急上昇していますが、これはアクサ生命が法人顧客向けに提供する「健康経営サポートパッケージ」に「first call」のメンタルチェックが採用されたため、顧客企業の社員がダウンロードした可能性が考えられます。

ALTalk「メドピアの指標」より

アプリのダウンロード数はサービス利用の前提であり、法人顧客の契約継続に関わる指標といえるので、定点観測に適しています。

デジタルエイジの高齢化については、医療政策にどう落とし込まれるかによってメドピアへの風の吹き方が変わってきます。腰を入れた投資を考える向きは、社会保障・保険医療などの審議会にも注意を払っておくべきといえます。

4.成長の土台をなす会員数の増加施策に注目。競合の「エムスリー」や「ケアネット」とのすみわけや投資施策の相違などにも注意を払いたい

メドピアの2020年9月期決算は絶好調の一言です。来期に向けても売上高1.4倍、営業利益および純利益は1.5倍の成長を見込む強気の予想で、経営陣は自信満々です。

今後の成長と株価上昇を占うにあたって、まず注目すべきは売上の約7割、営業利益の約8割を占めるドクタープラットフォーム事業の主軸となっているMedPeerの動向です。

実は、現状の会員数12万人はライバルであるエムスリー(約29万人)、ケアネット(約16.1万人)の後塵を拝しています。

製薬会社・医療機器メーカーのマーケティングチャネルとしての収入がMedPeerを支えており、会員数はクライアントに訴求するもっとも重要な指標です。会員数増に向けての直接の施策やコンテンツの充実について、定点観測を行っていきたいところです。

当期ではコルボ(医療系コンテンツ企画制作会社)の子会社化は特筆すべき動き。MedPeerにおける動画コンテンツの拡充も早期シナジーの表れとみることが可能です。ライバルであるエムスリー、ケアネットとの差異の把握やコンテンツ力の評価は、長期ホルダーには必須のホームワークであり、メドピアのプレスルーム(https://medpeer.co.jp/press/8491.html)は定期的に見ておきましょう。

自分がクリニックで受診する際など、ユーザーである医師に聞いてみるのも面白い取り組みです。メドピアのコンテンツについての評価や、エムスリー・ケアネットとの相違やすみわけなどについて生の声を聞くことができた際にはIRに伝えてみましょう。株価上昇の一助になるかもしれません。

ALTalkでは、メドピアの主力商品であるMedPeerのweb訪問数も確認できます。

ALTalk「メドピアの指標」より

長期的に安定利用されているかのチェックは重要です。ただしアプリからのアクセスはweb訪問数には反映されません。一定の規則性をもって山と谷を繰り返す傾向をみてとることができ、短期的に一喜一憂する必要はないと考えられます。

類似・競業関係にある企業の業績予測は以下のとおりです。

一様に増収増益フェーズにあり、医療DXは明らかに成長セクターといえます。売上高・営業利益の増加率は売上高の規模と逆相関しています。身の丈24~40倍の巨人エムスリーを高成長で追いかけるメドピア、ケアネットという図式です。

ここ2年の株価チャートを重ね合わせると3社ともほぼ同様の軌跡を描いています。投資家が重なっている印象です。

メドピアの株価は1株当たり利益の112.1倍の評価を受けており、ファンダメンタルズを評価して株価を予想するフェーズにはありません。

サービス開始から13年が経過し、なおも成長しているMedPeerを擁する点は安心材料です。競合他社も一様に高い評価を受けており、メドピアだけが過大評価というわけではありません。決算資料において来期の売上高1.4倍、営業利益1.5倍と自信を見せた点も好材料です。

ウィズコロナ・高齢化といったマクロファクターが軒並み強力な追い風となるなか、競業他社から際立つ独自性を打ち出し、高成長を継続できるかの見極めが投資家には求められます。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

参照資料

①2020年 9月期 決算説明資料
2020年 9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
③IRページ

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急成長するフリマアプリ市場で最大手、潜在的ユーザーの掘り起こしがさらなる成長のカギに|メルカリ決算

日本では、ここ数年でCtoC-EC市場(個人間電子商取引市場)が急成長しています。経済産業省の推計によると、2018年には1兆5,891億円だった市場規模が2019年には1兆7,407億円と9.5%も伸びています(※1)。

現時点での、この市場のトップランナーは、フリマアプリ「メルカリ」の企画、開発、運用を手がけるメルカリ(4385)で、月間アクティブユーザー数1,755万人、累計出品数15億品以上にのぼります。

とはいえ、ライバルには、楽天グループの「ラクマ」や、オークションサイトで国内最大級の「ヤフオク!」によるフリマ出品、スマホ決済サービス「PayPay」の「PayPayフリマ」など錚々たるメンバーが居並びます。

市場拡大が期待される一方、競争も激しさを増しそうななかでのメルカリの2021年6月期第1四半期決算の注目ポイントを取り上げました。

(※1)出所:経済産業省商務情報政策局情報経済課「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」

目次

  1. 月間出品者数1,755万人、累計出品数15億品以上の業界最大手サービス
  2. 売上高は前年同期比52.3%増、営業利益は2四半期連続の黒字に!
  3. コロナ禍にありながらもビジネスを順調に拡大
  4. 流通取引総額はメルカリJPで前年比+20%以上、メルカリUSで同+50%以上を想定

1.月間出品者数1,755万人、累計出品数15億品以上の業界最大手サービス

メルカリのウェブサイトによると、創業者である山田進太郎氏が、世界一周の旅で「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」という問題意識を抱き、フリマアプリ「メルカリ」が生まれたそうです。

そんな同社では、「世界中の個人と個人をつなぎ、誰もが簡単にモノの売り買いを楽しめる。それにより資源を循環させる豊かな社会、個人がやりたいことを実現できる社会をつくっていきたい」という目標を掲げています。

フリマアプリ「メルカリ」の利用実績は、下図の通りです。

通年の流通取引総額や売上高、ここ3期の第1四半期の売上高、月間アクティブユーザー数とも順調に伸びています。

2.売上高は前年同期比52.3%増、営業利益は2四半期連続の黒字に!

10月30日に発表された2021年6月期第1四半期の業績を見ていきましょう。

売上高は、前年同期比で52.3%増の221億5,600万円と大きく伸びています(百万円未満切り捨て、以下同)。

本業での儲けである営業利益は3億6,400万円と2四半期連続の黒字に。経常利益は2億6,200万円と黒字化、親会社株主に帰属する四半期純利益は42億8,100万円と黒字化で、売上高、利益とも高い伸びを示しました。

メルカリJPでは、売上高が前年同期比33%増の159億円となりました。調整後営業利益は前年同期比115%増の46億円となったものの、従業員向けの一時的な賞与支給により、調整後営業利益率は29%に低下しています。

同社では、一時的な賞与について、業績向上の成果を従業員と分かち合うためであり、恒久的な政策ではないとしています。

●2021年6月期の連結業績予想

メルカリでは、2021年6月期の連結業績予想について、新型コロナウイルス感染拡大による影響により「合理的な業績予想の算定が困難」であるとして発表していません。

株価は第1四半期決算発表時点(2020年10月30日)で4,400円、時価総額は約6,900億円でしたが、11月27日時点では株価は4,655円、時価総額は約7,300億円とほぼ横ばいです。ちなみに、初来高値は10月14日の5,930円となっています。

ALTalk「メルカリの指標」より

3.コロナ禍にありながらもビジネスを順調に拡大

●メルカリJP

2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、国内外が未曾有の危機に直面しました。そのなかにあって、メルカリでは、流通総取引額が前年比34%増の1,706億円、月間アクティブユーザー数は前年比21%増の1,755万人と順調に成長を続けています。

ALTalk指標で同社の「web訪問数」と「アプリダウンロード数」を見てみました。web訪問数はコロナ禍にあっても順調に伸びています。また、アプリダウンロード数も安定的に推移し、利用者を着実に増やしている様子がうかがえます。

ALTalk「メルカリの指標」より

この背景には、2020年5月から始まったドコモとのID連携があるようです。ID連携数は2020年6月末の130万から、同9月末には340万と大きく増加しています。

ID連携によってメルカリ内で「dポイント」が利用可能になったほか、メルカリの利用で付与されたdポイントを使って、メルカリで新たに購入するという好循環も発生しているようです。

前月にメルカリで商品を売却し、当月に購入した場合には、dポイントの付与額が0.5%から1.5%にアップする施策が出品増につながっているとも見られます。

また、dポイントの利用増加により、クレジットカードを利用した場合に比べて支払手数料(決済手数料)が減少することも、プラスに作用しているようです。

●メルペイ

メルペイでは、2020年7月7日から「定額払い(分割払い)」を開始し、ユーザーの獲得が順調に進捗しています。2020年9月からは「d払い」との共通QRコードでの利用が可能になったことで、メルペイ自体の利便性もぐっと向上しています。

なお、メルカリではメルペイを安心安全に利用できるよう不正利用対策として、本人確認(eKYC)を強化しています。そのため、最大で約20億円のシステム等への追加投資を予定していると発表しています。

●メルカリUS

メルカリUSでは、より簡単で安全に売れるマーケットプレイス「Mercari」を展開しています。認知度の向上と出品、配送の最適化に注力したことで、流通取引総額が307億円(為替レートは期中平均為替レート106.22円で換算)となり、前年同期比で190億円増(165%増)と大きく伸びました。

なお、従来は決済手数料を無料としていましたが、新規の出品に対しては2020年10月1日から、すべての出品に対しては2020年11月2日から、売価の2.9%及び30セントの決済手数料を徴収しています。これにより、収益基盤の強化が期待されるところです。

さらなるユーザーの拡大や、プロダクトに機能強化にも注力しています。そのひとつが人気商品の需要と供給を予測する「Demand Prediction」です。これをユーザー出品管理画面に表示することで、売り手のサポートを行っています。

4.流通取引総額はメルカリJPで前年比+20%以上、メルカリUSで同+50%以上を想定

前述のように、メルカリでは、新型コロナウイルス感染拡大の今後の影響が不透明だとして、2021年6月期の業績予想を出していません。

とはいえ、同社では、目標値の変更はなく、流通取引総額はメルカリJPで前年比+20%以上、メルカリUSで同+50%以上が想定されているとし、順調な成長を示唆しています。

2四半期連続の黒字となった営業利益については、「機会と見れば、トップラインの更なる成長を最優先した投資加速によって、赤字になる可能性がある点に変更はない」としています。言い換えれば、同社はまだまだ積極的に投資を行い、いっそうの拡大を目指すフェーズにあるといえるでしょう。そのため、定常的な黒字化を期待するのは時期尚早なのかもしれません。

なお、同社では、第2四半期以降は、クリスマスやお正月、バレンタインデーなどのイベントも多く、ハイシーズンであることから売上高が増加する一方で、人件費率や広告宣伝比率が低下するとみられ、30%以上の調整後営業利益率の達成が期待されるとしています。

投資家にとっては、現在は、将来の成長をじっくり見守る段階と言えるのではないでしょうか。

●メルカリJP

前述のとおり、フリマアプリ「メルカリ」は、月間出品者数1,755万人、累計出品数15億品以上のフリマアプリの最大手サービスです。ライバルには、楽天グループの「ラクマ」や、オークションサイトで国内最大級の「ヤフオク!」のフリマ出品、スマホ決済サービス「PayPay」の「PayPayフリマ」などがあります。

個人間取引市場は拡大すると見られるものの、強力なライバルがいる市場にあってどう事業を拡大していくのかが注目されるところです。

メルカリでは、「出品意向はあるが未出品の人」が3,610万人いると見積もっています。この層をいかに掘り起こすかが、さらなる成長のポイントといえそうです。

同社では、さらなる集客をめざし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年2月から中断していた「メルカリ教室」について、2020年9月18日からオンライン版を本格展開しています。これにより、低コストで効率の良い出品促進の実現が期待できそうです。

生活動線上での利用者とメルカリとのタッチポイントをつくることで、潜在顧客の開拓にも力を入れています。そのひとつとして、メルカリの使い方の説明や出品サポートなどを体験できるリアル店舗「メルカリステーション」の展開を開始。2020年6月には新宿マルイ本館に、2020年7月にはららテラス武蔵小杉に出店しました。

2020年10月には、店舗の空きスペース2畳から展開できる共創型の「メルカリステーション」を「Panasonic KURA_THINK(パナソニック クラシンク)」にもオープン。さらに、無人投函ボックス「メルカリポスト」の運用も始まっています。

これらの取り組みによって、出品意向はあるものの、利用したことのなかった層、なかでもスマホなどIT機器に苦手意識を持つ層を発掘することができれば、売上増加につながることが期待できるでしょう。

2020年8月12日には、東南アジア、台湾で最大のマーケットプレイスである「Shopee」と連携し、越境ビジネスを強化しています。この連携によって日本では1年以上売れなかった高額な商品が売れるなど、新たな需要の創出にもつながっています。

●メルペイ

メルペイは、「J.D.パワー 2020年後期QRコード・バーコード決済サービス顧客満足度調査」で総合満足度第1位を評価を受けるなど、顧客利便性が高いサービスを提供しています。

前述の「定額払い(分割払い)」などによるメルカリとメルペイのシナジー強化も今後の注目ポイントと言えそうです。

●メルカリUS

「Demand Prediction」の提供開始などプロダクトの機能強化に加えて、配送の利便性向上にも力を入れています。2020年10月からは、即日配送サービス「Mercari Now」の運用をニューヨーク市のマンハッタンとブルックリンでも開始しています。また、2020年8月にはUPSでの発送にQRコード決済を導入し、紙での印刷が不要になったことも利便性向上につながっているようです。

●その他の取り組みと業績見通し

メルカリでは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションのもと、「循環型社会の実現」を目指しています。

そのひとつとして、2020年7月30日に社会にとって必要なマーケットプレイスを業界全体で目指す取り組みである「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」(座長:慶應義塾大学・大学院商学研究科准教授/ケンブリッジ大学訪問教授 梅津光弘氏)を設立。最終的なPrinciples(原理・原則)を今後公開する予定です。

また、循環型社会を実現するべく、2020年9月より希望する自治体等団体に売上金を寄付できる「メルカリ寄付」機能をスタートました。

メルカリで購入した製品を安全安心に使えるよう、該当製品を持っている出品者や購入者にリコール情報をピンポイントで届けるサービス「リコール品プログラム」も始まっています。

2020年11月27日の時点では、株価は調整局面にあるかに見えます。

同社は、フリマサービスの最大手企業ではあるものの、マーケットプレイスという事業自体が成長段階にあると考えられます。

今後は、国内での新規顧客獲得による市場の拡大や、台湾など海外での市場拡大、既にサービスを開始しているアメリカでの市場拡大を期待して、業績動向を注視しながら、超成長株への投資を行っているというスタンスを忘れずに投資に臨みたいものです。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

参考資料

2021年6月期第1四半期決算短信(日本標準)

四半期報告書-第9期第1四半期(令和2年7月1日-令和2年9月30日)

FY2021.6 1Q 決算説明会資料

FY2021.6 1Q 決算発表 FAQ

Mercari-Fact-book_jp

サステナビリティレポート 2020 / 2020 Sustainability Report_jp

メルカリIRニュース

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株価急上昇で注目!脱ハンコ・DXの追い風に乗れるか?|GMOグローバルサインHD決算

GMOグローバルサイン・ホールディングスは、2020年12月期第3四半期決算において、前年同期比で売上高3.9%増、営業利益1.7%増と堅調な業績を発表。電子証明書を扱うセキュリティ事業の進捗が目立ちました。

先行きを占うには、「脱ハンコ」「DX」といったキーワードがホットなうちに、ライバルを出し抜きスピード感をもって、対象顧客への訴求を進めていけるかが焦点となります。2021年2月に控える本決算発表を見据え、第3四半期決算の内容点検と未来への期待、そして課題について取り上げました。

目次

  1. 第3四半期までの売上高は前年同期比3.9%増、営業利益は1.7%増。業績予想は据え置き
  2. 安定のクラウド・ホスティング事業を確保し、ソリューション事業で攻める
  3. 「脱ハンコ」が象徴する国・地方行政のDXへ本格参入。AWSの成長果実を着実に収穫していけるかどうかも要注目
  4. 脱ハンコ」「DX」とキーワードが新鮮なうちに、知名度を上げ対象顧客への訴求をどれだけできるだけ進めていけるかが焦点

第3四半期までの売上高は前年同期比3.9%増、営業利益は1.7%増。業績予想は据え置き

2020年11月11日に行われたGMOグローバルサイン・ホールディングス(以下「GMOグローバルサイン」)の2020年12月期第3四半期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、本決算と今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

GMOグローバルサインは、インターネットというフィールドで金融・メディア・インフラ事業などを手掛ける「GMOインターネットグループ」の主力企業として、その一角を占めています。世界で主要な電子認証局を運営するブランド「GlobalSign」を通して培った知名度をベースに、電子署名や電子契約などの電子文書向けトラストサービスを推進しています。

2020年12月期の第3四半期決算(2020年1月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

第1四半期~第3四半期の合計で、売上高・営業利益のいずれも前年同期からの進捗を見せました。売上高営業利益率は10.8%で、前年同期比から0.23%減となっています。

事業別に見ると、おもに電子証明書を取り扱うセキュリティ事業の堅調ぶりが目立ちます。クラウド・ホスティング事業も売り上げを稼ぐ点では重要ですが、レッドオーシャンであり利幅は薄い水準です。

今話題の電子印鑑を扱うソリューション事業は売上高が大きく伸びています。主力商品「GMO電子印鑑Agree」の顧客拡大施策コストが響いてのセグメント損失を計上していますが、甘受すべきフェーズといえるでしょう。

2021年2月の本決算発表に向け、業績予想は据え置きとしました。上の表内2020年12月期第4四半期カッコ内の数値は、通期予想を達成するために必要な売上高と営業利益です。

昨年の推移に照らすと、売上高と営業利益ともに各四半期でさほど季節性は見られません。売上高は達成は可能そうですが、営業利益は微妙な水準と見られます。業績予想をクリアできるかが本決算の焦点の1つです。

株価は第3四半期決算発表翌日(11月12日)の終値で10,340円をつけました。10月15日に13,780円の最高値を付けた後は下落基調に入り、8月12日の終値でつけた6,970円を割ってダブルトップを形成するかどうかが気がかりです。

10月15日以降、下げ材料となるようなニュースは特に出ていません。電子印鑑分野のライバル「弁護士ドットコム」と値動きがかなり重なっていることから、「脱ハンコ」をはじめとするデジタル化を材料に、短期資金が出入りしている印象です。

安定のクラウド・ホスティング事業を確保し、ソリューション事業で攻める

GMOグローバルサインの業績をセグメントで見ると以下のとおりとなります。

売上高の4割強を占めるクラウド・ホスティング事業では、AWS(アマゾン ウェブ サービス)の導入支援から運用までをトータルにサポートする「CloudCREW」の利用増が著しく、前年同期比22.1%の伸びを見せています。

当セグメントについて、経営陣は「クラウド・ホスティング事業においては、従来のホスティングサービスの売上高については、国内外の競合他社との激しい価格競争や当社サービスの統廃合のため、緩やかながら減少傾向が続いております」との認識。利幅の薄い分野ではあるものの、資金繰りなどの企業経営的には安定売り上げは非常に重要といえ、実は是が非でも崩せないセグメントです。

セキュリティ事業の主力であるSSLサーバ証明書発行事業「GlobalSign」は大手顧客への販売が堅調に推移しました。9月には後述の「GMO電子印鑑Agree」より、電子署名・電子サインのエンジンを切り出したリモート署名ツール「PDF電子印鑑エンジン」を提供開始。すでに他社システムによるIT化を進めている企業への訴求を狙います。

SOHOや中小規模法人向けに「業務効率化・高付加価値化」を訴求するソリューション事業では、いわゆる「電子契約」がクラウドで簡単に行える「GMO電子印鑑Agree」が注目です。

脱ハンコの流れに乗り利用アカウント数は7万件を突破し、前年同期比でアカウント数は16倍、契約送信数は2.4倍。ライバルである「弁護士ドットコム」が提供する「クラウドサイン」を猛追しています。

計画の数値などは公開されていませんが、ライバルサービスであるクラウドサインの売上予測は目安になるかもしれません。

2020年7~9月におけるクラウドサインの売上高は3億4,400万円でした。期初の計画によると、正確な数値は非公開ですが、決算説明資料から読み取れる2020年10~12月の売上高はおよそ4億円程度で、増加率は16%程度の計算です。現時点で業績予想の変更はありません。

現時点で、いわば格上のライバルが16%程度の成長を見込んでいることは「GMO電子印鑑Agree」の成長を占う上でも心強いといえるでしょう。広告による集客を行ったほか、12月からは価格・スペックともクラウドサインを凌駕する水準に改定し、早い段階でのシェアNo.1奪取を狙います。セグメント損失は拡大したものの、必要性の高い投資といえます。

業績予実比較では、売上高は全体で73.4%の進捗となりました。全体の9割以上を占めるクラウド・ホスティング事業とセキュリティ事業の進捗が順調であり、達成の可能性は高いと推測されます。

営業利益は全体で70.7%の進捗にとどまり、ソリューション事業の損失が、第3四半期時点ですでに通期予想の水準に接近しています。今後、営業利益予想の達成/不達成がどう株価に織り込まれていくか、要注意です。

「脱ハンコ」が象徴する国・地方行政のDXへ本格参入。AWSの成長果実を着実に収穫していけるかどうかも要注目

2020年9月以降、GMOグローバルサインの株価は「脱ハンコ」という単語にまつわる投資家の思惑によって、いわば「振り回されている」印象です。

「脱ハンコ」すなわち電子印鑑・電子承認は、新型コロナウイルス感染拡大でテレワークを導入する企業が増えたなか、「押印のためだけに出勤するケース」などの不安全・非効率が取り沙汰されたことで、実現が急がれるようになりました。

2020年9月に誕生した菅義偉政権は、河野太郎行政改革担当大臣と平井卓也デジタル改革担当大臣のタッグによる行政のデジタル化(DX)を目玉政策に据えました。「脱ハンコ」は、政府のデジタル化を推進する姿勢を国民にアピールするためのキャッチーなワードとして一躍浮上したのです。

総務省は、電子文書が改ざんされていないと証明する「タイムスタンプ」を2020年度から、電子的な社印である「eシール」を2021年度から、それぞれ実用化に向け推進しています。「脱ハンコ」の本質は「業務続きの簡略化」であり、行政のデジタル化、ひいてはDX(デジタル化による組織・業務・生活の変革)に関連する企業には、民間への波及も含め、巨大なチャンスが訪れているといえるでしょう。

「脱ハンコ」を糸口に進められるDXに向けた、GMOグローバルサインの回答の核は「社名変更」にあります。

2020年9月に「GMOクラウド」から「GMOグローバルサイン・ホールディングス」への社名変更を行ったことは、「脱ハンコ」に加え「サーバ証明書」分野にも強みを持つ同社が、共通する「サイン」というキーワードのもとに、成長分野にフルコミットしていくという決意を顧客・投資家に対して示したものといえるでしょう。

その証拠に、2021年度から開始される「日本版eシール」について、いち早く対応サービスの設計・開発を決定しています。加えて社内に「デジタル・ガバメント支援室」を設置し、「脱ハンコ」をきっかけに数年単位で進んでいく国・地方行政のDXに本格参入しました。

「脱ハンコ」民間向けサービスの中核をなす「GMO電子印鑑Agree」については、この2ヵ月でweb訪問数が減少トレンドにあります。広告効果が減衰している可能性も考えられ、来期に向けてのさらなるプッシュを要する局面かもしれません。

(ALTalk「GMOグローバルサイン・ホールディングス」指標より)

クラウド・ホスティング事業については、経営陣も激しい価格競争の中で緩やかな減少傾向にあるという認識を示しています。

しかしながら、グローバル市場を点検すると様相は一変します。クラウド部門の看板サービス「CloudCREW」のプラットフォームであるAWSが著しい成長を継続しているからです。

2019年、全世界のクラウドインフラストラクチャサービスにおけるAWSのシェアはトップで34.6%。続く2位であるMicrosoft Azureの18.1%を大きく引き離しています。2019年のクラウドインフラストラクチャにおける総支出は、2018年の780億ドルから290億ドル増加し1,070億ドルを突破。2020年には32%増加し1,410億ドルになる見込みです。この勢いは続き、総支出は2024年には2,840億ドルに達すると予想されています。

AWSがシェアを維持していくことができれば、今後も売上成長は続きます。GMOグローバルサインは、2019年から2020年にかけて32%成長し、それから2024年まで年率19.1%の成長が見込める商材の、エキスパートたる地位を占めているのです。

日本国内でのAWSの成長が世界水準に準ずるとは当然考えられません。そこで日本国内での成長率を、GDP成長率と同様に全世界の6分の1として割り引いて試算してみます。2020年~2024年にかけては、19.1%÷6=年率3.2%程度の成長を期待してもおかしくはないでしょう。

競合他社がひしめく分野ですが、現状程度に泳いでいければ、安定した売上・収益が見込め成長分野への投資を支えるコア部門としての存在感は保たれます。

GMOグローバルサインは今後、新サービス・新規事業に参入する手段として、M&Aや資本提携を含むアライアンス(戦略的提携)を活用していく方針です。

そもそも同社も資本提携によりGMOグループに入り、M&Aを繰り返して現在に至っています。現状、新たなM&A案件などは明らかにされていませんが、株価に与える影響が大きいイベントであり常にアンテナを張っておく必要があります。

「脱ハンコ」「DX」とキーワードが新鮮なうちに、知名度を上げ対象顧客への訴求をどれだけ進めていけるかが焦点

本決算では、通期目標の達成度が最大の注目点となります。それまでにアナリストのコンセンサスや経営陣からの情報発信がないか、情報感度は高くしておきましょう。

「脱ハンコ」「DX」とキーワードが新鮮なうちに、知名度を上げ想定顧客層への訴求を一刻も早く進めていくことが肝要です。ソリューション部門の今期損失に関してはやむを得ないと考えるのが妥当であり、むしろ「GMO電子印鑑Agree」への積極投資と、国・地方行政への食い込み策については株主総会で必ず質問が出るはずなので要チェックです。

セキュリティ事業は同社の事業セグメントの中では比較的安定しており、特段の新展開を期待する局面ではありませんが、堅実な成長が続くかに注目です。クラウド・ホスティング事業が引き続き高稼働を保てるかも長期的な要ウォッチ事項。AWSの成長をいかに取り込んでいくか、レッドオーシャンで勝つ施策を経営陣から聞き取りたいところです。

類似・競業関係にある企業の売上・収益動向は以下のとおりです。

一様に増収基調にありますが、成長企業の常として投資先行となりやすいフェーズです。利益をどれだけ残すかは事業分野の動向や個別の経営方針によるため、成長株投資家は設備・人材・宣伝等投資の「質」まで踏み込んで投資判断を行う必要があります。

GMOグローバルサインの株価指標は以下のとおりです。

GMOグローバルサインの株価は1株当たり利益の106.1倍に評価されています。ファンダメンタルズにもとづいた株価とはいいにくい水準です。

クラウド・ホスティング事業という安定的な売上が見込めるセグメントがあることは、長期ホールドを考える投資家には安心材料です。短期的に財務が悪化したり、成長分野への投資資金が枯渇するといったリスクが小さくなります。

目先では、国・地方行政DXへの食い込みと「GMO電子印鑑Agree」の成長をどう評価するかがカギとなります。短期の投資では「脱ハンコ」「DX」のキーワードが新鮮なうちにどれだけ利幅をとれるか、潮目の目利きと出入りの機動力が問われる局面が続くでしょう。

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参照資料

2020年12月期第3四半期決算資料

四半期報告書

四半期決算短信

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