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【ラクスル】長期的に株価上昇の余地残すテック成長株として注目!

▽市場平均予想(単位:百万円)

※現株価4,950円で計算。
※以下の市場平均予想とは、予想を出している証券会社の予想の平均です。 

目次

  1. 会社概要:印刷や物流の分野にシェアリングの概念を投入した風雲児
  2. 「非効率が存在する大規模な市場」をキーワードに横展開
  3. 業績:売上成長、収益改善いずれも実現。コロナの影響も底打ち確認
  4. 【総合評価:☆☆☆☆】成長ポテンシャル、財務健全性の高さから、長期的には株価に上昇余地も

1.会社概要:印刷や物流の分野にシェアリングの概念を投入した風雲児

「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンの下、シェアリングエコノミーを活用したBtoB-ECサービスを提供する企業です。

印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」、TVCM等の広告のプラットフォーム「ノバセル」、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を展開しています。

主力事業は、印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」。


稼働率の低い印刷機を持っている中小印刷会社と、印刷を依頼したいユーザーを結びつけるプラットフォームです。印刷会社にとっては印刷機の非稼働時間の有効活用につながり、ユーザーにとっては小ロットだけれどもサイト全体のボリュームディスカウント効果によって単価が安くなる、「win-win」のビジネスモデルとなっています。


同社は2009年創業で、元は印刷会社を比較して一括見積もりができる価格.comのようなサイト運営を事業としていました。印刷業界は、半分のシェアを凸版印刷と大日本印刷の2社が占め、残りを3万社の中小企業が奪い合う市場で、中小企業では印刷機の稼働率が低い状態でした。

この印刷業界を俯瞰する立場から、印刷事業者の稼働率の低さや空き時間に着目。休眠している印刷機で印刷させ小ロットでも低価格な印刷を可能とする仕組みを作ったのです。全国の印刷事業者をネットワーク化し、その中の空いている印刷機を使うファブレス型の、実に生産性の高い印刷工場を作り上げたのです

ラクスルのユーザー数は継続的に増加しており、2020年7月期末には120万件を突破。購入ユーザー数も平均単価も伸び続けており、粗利も改善が続いています。

同社はこの概念を、同じように非効率性が存在した物流業界にも投入。
2015年に、非稼働のトラックと荷主をマッチングして荷物を安く配送するプラットフォーム「ハコベル」を開始しました。日本のトラック業界は多重下請け構造になっていますが(大手宅配会社が受注しそれを下請けに発注する構図)、ハコベルは直接、荷主と「実際に仕事をする」ドライバーや中小の運送会社をつなげます。荷主は「ハコベル」で配送依頼をかけると提携運送会社に連絡が行き、配送状況の管理・共有をオンラインで完結できます。ちなみに、ラクスルは2017年7月にヤマトホールディングス(9064)との資本提携を行っています。

2020年7月期における事業別売上構成比は、ラクスル(印刷ECサービス)が60.7%、ラクスル(集客支援サービス)が15.3%、ハコベルが10.2%、ノバセルが13.3%となっています。

(ノバセルは2018年にラクスル事業内で参入した広告宣伝サービスで、2020年にセグメントとして独立)

ラクスルの継続的成長に加え、ほかのサービスも年を追うごとに売上比率を伸ばしており、会社全体が大きくなっています(構成比推移を見ると、2015年12月開始のハコベルは2017年7月期の2.2%→18年7月期の4.6%→19年7月期の9.0%→20年7月期の10.2%と拡大。ノバセルは18年7月期の1.8%→19年7月期の6.2%→20年7月期の13.3%と順調に成長しています)。

2.「非効率が存在する大規模な市場」をキーワードに横展開

印刷と物流、まったく異なる産業での事業展開に見えますが、同社は筋の通った考えで他産業へ参入しています。その考えとは、参入するのは「大規模かつ非効率が存在していて、新しい仕組みによって業界のあり方を変革する余地がある」と考えるBtoB市場と決めていることです。

国内トラック市場は14兆円の規模を持ちますが、中間マージンが非常に多く、最終的に物を運ぶドライバーや中小の運送会社の取り分は売上の4割だったりすることもあります。この非効率を変える新しい仕組みとして「ハコベル」がリリースされたのでした。

同社は、こうした大きな産業単位で3~5年に1産業の開拓を進めていくとしています。今期には、誰でも簡単にホームページが作成できるSaaSサービスのペライチを買収しました。印刷やTVCMだけではなく、webサイトを作りたいニーズに応える、「ラクスル」の顧客基盤を活かした販促領域への事業展開となります。

産業単位での横展開もありますが、継続的にセグメント内のラインナップ追加も行っており、継続利用率の向上や新規顧客の呼び込みにつなげています。

直近2020年7月期においても、「ラクスル」においては、シールやノベルティ、パッケージ、バッテリーといった紙以外の印刷ECに進出。「ノバセル」では、従来のローカルエリア展開に加え主要都市圏での展開、また広告効率のPDCA分析を提供するSaaSサービスを開始しています。すでに30社以上が有償利用しているとのことで、粗利改善に貢献しているとみられます。そして今後5年で50億円の投資を計画しているハコベルでは、マッチングサービスに加え、コスト削減のソリューション提供を開始。さらにノバセル同様、SaaSサービス「ハコベルコネクト」の導入が進んでいます。

ところで、ラクスルの顧客基盤は、TVCMの「ノバセル」の展開にも活用されています。ノバセルは、制作放映込みの「1週間集客プラン」を50万円から用意しており、TVCMに手が届かなかったスタートアップや中小企業の利用を集めています。同社自身30億円以上をTVCMに投入し、認知度向上に成功した経験を持っており、その経験やノウハウが活かされています。ノバセルは2020年7月期から従来のラクスル事業から独立し、新セグメントとなりましたが、2018年には参入していた事業です。ラクスルの既存顧客からの利用が多く、クロスセル効果の高い事業となっているようです。

3.業績:売上成長、収益改善いずれも実現。コロナの影響も底打ち確認

2020年7月期のラクスルは、コロナ禍においても、ユーザー数は増加しました。

特に上期はラクスル(印刷ECサービス・集客支援サービス)の持続的な成長に加え、ノバセル(TVCM関連事業)、ハコベル(運送事業)のいずれも大幅に拡大しました。下期は新型コロナウイルスが感染拡大し、企業の販促活動の手控えなどの影響があり、同社は売上拡大よりも投資ペースとコスト構造の見直しなど収益性の改善を優先。

先行投資もあり赤字着地となりましたが、結果的には、売上高(業績予想比+3.3%)、売上総利益(同+6.0%)、non-GAAP営業利益(同+2億100万円)といずれも6月の修正業績予想を上回って着地しました。特に4Qには営業利益(non-GAAPベース)が過去最高となる2億3,700万円となり、コスト構造の見直しの効果が発現。コロナ禍でも利益を創出できる体制が整ってきたことは評価されるポイントです。

売上高は前年比25.2%増の214億9,400万円、売上総利益は24.9%増の49億2,800万円、営業利益は2億4,400万円の赤字(前年は1億4,300万円の黒字)、経常利益は3億6,800万円の赤字(同1億3,000万円の黒字)、純利益は4億9,400万円の赤字(同6,900万円の黒字)となりました。

売上総利益の伸びについては、前年度の49%成長に比べて低くなりましたが、コロナの影響が響いたようです。4Qの月ごとの前年度成長率を見ると、5月の+9.4%を底に、6月は+19.9%、7月には+40.9%まで急速に回復しています。

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ラクスルは継続的に安定して成長しています。

コロナ禍においてもユーザー数は継続的に増加しており、期末時点での累計登録ユーザー数は前期末比29.0%増となる120万3,726件となりました。また、年間購入者数は、前年比10.2%増となる34万7,492人となりました。コロナの影響で年間平均注文回数は2.5%減となりましたが、ユーザー数の増加により、平均注文単価は15.0%増となる1万4,725円と上昇。

この結果、ラクスルセグメントの売上高は前年比12.9%増の163億3,000万円、セグメント利益は2.1%増の13億4,000万円となりました。

ALTalkの指標を見てみると、BtoBプラットフォームにしてはweb訪問数が1,000万件以上に達する週もあり、認知度の高さが表れているように思えます。

ALTalk「ラクスルの指標」より

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ノバセルでは、新型コロナウイルス感染拡大前まで売上が急成長していましたが、4Qは製作延期と顧客の広告宣伝見合わせという新型コロナウイルスによるマイナスの影響があり、失速しました。ノバセルセグメントの売上高は167.4%増の28億5,300万円(前事業年度比)、セグメント利益は93.3%減の400万円となりました。セグメント利益は5月に底打ちし、7月には黒字化しています。

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ハコベルでも4Qに新型コロナウイルス感染拡大の影響がありました。コロナの影響により、同社では案件絞り込みを実施。この結果、注文件数が前年同期比18.7%減となる影響がありました。一方、利益面では、4Qには損失が2Qの半分以下にまで縮小。収益性改善の効果が表れ始めているようです。これらの結果、ハコベルセグメントの売上高は41.7%増の21億8,600万円、セグメント損失は3億7,000万円(前年度はセグメント損失1億6,100万円)となりました。

事業基盤自体は順調に成長しており、登録車両台数は1万8,867台と前期末から倍増しています。

同社は2Qに、ハコベルコネクト(運行管理システム)の有償導入を進めるとの方針を示していましたが、期末には6社の導入実績を積むことができており、投資回収が待たれます。

そして2021年7月期の通期計画は、レンジ形式での表示となっています。
売上高は25.6~30.3%増の270億~280億円、売上総利益は30.9%~40.0%増の64億5,000万~69億円を見込み、利益面では一定の再投資を継続する予定であることから、営業利益は1億5,000万円の赤字~5,000万円の黒字、non-GAAP営業利益は3億~5億円の見通しとしています。

4.【総合評価:☆☆☆☆】成長ポテンシャル、財務健全性の高さから、長期的には株価に上昇余地も

2020年7月期の後半は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が足かせとなりましたが、7月には売上総利益が+40.9%まで急回復していることが確認できており、好調な滑り出しが期待できそうです。ラクスルによる成長継続の上に、ハコベル、ノバセルの伸びが期待できます。運行管理システム「ハコベルネクスト」の有償利用も同社の宣言通り進捗しており、ハコベル事業の売上総利益は目標の10%を上回って15%まで回復しています。今期は粗利への寄与度が高まる見込みです。

また中期的には、webサイトサービス「ペライチ」の寄与も期待されます。同社はラクスルの顧客基盤を活かしたクロスセルによる売上増、それに伴う粗利拡大が可能なビジネスモデルが出来上がっており、利益率の改善を伴った成長が期待できると思います。

産業を革新するBtoBシェアリングプラットフォームを展開することで驚異的な成長を遂げてきた同社。今後も旧態依然とした業界にITで斬り込んでいくことが予想されます。単に「印刷業界の会社」と見ていては、成長株投資のチャンスを逃してしまう、そんな企業だと思います。

赤字については、あまり気にしないでいいでしょう。同社が見ているのは、短期的な利益ではなく「未来の利益の最大化」です。「利益確保よりも、再投資を重視する」シリコンバレー的戦略で拡大しています。実際、顧客ベースは拡大を続けており、M&Aを含め事業の横展開も行っています。売上も過去5年のCAGRは49%で成長を遂げています。そして何より、資金調達ができていることが信用性の証左となっています。

財務基盤は健全です。自己資本比率は34.5%と前期末73.6%から大きく低下していますが、これは資金調達によって母体を大きくしたため(具体的には、長期借入金が50億円、転換社債型新株予約権付社債が約50億円(24年11月償還)増加したことで固定負債が増加。一方、純損失を繰越利益剰余金に約4億円計上したことで純資産が増加しなかったためです)。自己資本比率は低下しましたが、総資産の8割が現預金(約154億円)というキャッシュポジションの厚い構造。成長への臨戦態勢が整えられたと見えます。

株価ですが、2018年5月の上場から2.7倍、年初来+47%のパフォーマンスとなっています。成長期待を織り込みながら上昇を続けています。買い進まれてはいますが、PSR(株価売上倍率)は6.5倍程度であり、成長株SaaS企業としては、長期的にまだ伸びる余地を残していると思います。


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免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

参考

2020年7月期 決算説明会資料

2020年7月期 決算短信(日本基準)

By グローバルリンクアドバイザーズ(株)代表取締役社長

早期に中国市場の潜在性に着目し、中国株への投資を開始。全国の個人投資家向けにインターネットを通して中国株の情報発信を続け、中国株のオピニオン・リーダーとなる。2001年に外資系証券会社傘下の投資顧問会社に取締役として移籍、2005年に同社を買収。現在は日本株、中国株、米国株など投資情報の発信やファンドを運営するとともに、各メディアで積極的に投資情報を発信している。フジテレビ「バイキング」などテレビ、新聞・雑誌・出演・掲載多数。

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