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飲食・旅行予約サイトの決算は?現状と今後の展望を考察

コロナ禍によって大打撃を受けた飲食業界と旅行業界。今回は、その中でも「予約サイト」をターゲットに、実際どのようなダメージを受けたのか、2月の決算発表から読み解きます。また決算発表報告書をもとに、今後の予測や注目の銘柄についても解説・紹介していきます。

目次

  1. 飲食系と旅行系「予約サイト」の決算内容
  2. 今後注目しておきたい「飲食・旅行予約サイト」関連銘柄
  3. 飲食関係や旅行関係の「予約サイト」の今後を読む

1.飲食系と旅行系「予約サイト」の決算内容

●飲食系予約サイト

主な飲食系予約サイトのうち、上場企業が運営するものは以下の通りです。

【上場企業が運営する飲食系予約サイト一覧】

この中から、運営母体への売上・利益の寄与が大きく、サービスへの注目度が高い「ぐるなび」と「食べログ」について見ていきましょう。

〈ぐるなび)

ぐるなびは2月4日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、2020年4~12月の累計売上高は120億4,100万円で、前年同期比で48.6%の大幅減少となりました。営業利益は62億5,000万円の損失計上となり、営業赤字に転落しました。

期間別に見ると、売上高は前年同期比で4~6月が77.3%減、7~9月が46.0%減、10~12月が22.7%減と、苦しいながらも徐々にマイナス幅を圧縮していました。

昨年春の緊急事態宣言で大打撃を受けた後、9月のGo To Eatキャンペーン開始を受けて回復基調にありましたが、年明けからの緊急事態宣言が再び業績に影を落としていることは言うまでもありません。

財務を見ると、純損失計上に伴い、期初と第3四半期との比較で自己資本が65億円の減少となっています。資金繰りや事業存続のリスクは当面ありませんが、当期の本決算は要注目です。悪材料出し切りと説得力のある来期の展望が、安値拾いが奏功する展開も視野に入ります。

〈食べログ)

食べログを運営するカカクコムは、2月3日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、食べログ部門の2020年4~12月の累計売上高は135億9,900万円で、前年同期比で31.5%の大幅減少となりました。

期間別に見ると、前年同期比で4~6月が72.5%減、7~9月が30.8%減、10~12月は4.6%増となり、Go To Eatキャンペーンが回復の後押しとなりました。回復フェーズにおいて、売上高も近く、かつ最大のライバルであるぐるなびに差を付けてきた点は注目に値します。

カカクコムとしては、2020年4~12月の累計売上高は377億6,800万円で前年同期比16.5%減、営業利益は134億6,900万円で前年同期比35.5%減となりました。食べログ以外の事業もコロナ禍で売上を落としており、食べログの落ち込みをカバーし切れない展開となりました。

●旅行系予約サイト

主な旅行系予約サイトのうち、上場企業が運営するものは以下の通りです。

【上場企業が運営する旅行系予約サイト一覧】

〈楽天トラベル)

楽天トラベルは、運営母体である楽天の事業セグメントでは「国内EC」に分類されています。コロナ禍で打撃を受けたトラベルと、コロナ禍が追い風となった楽天市場が同一セグメントであり、楽天トラベルが単体でどの程度売上高・営業利益に影響しているかは、決算説明会資料等の公開資料からうかがい知ることはできません。

参考までに、国内ECの売上高は1,785億2,800万円で前年同期比35.1%増となりました。営業利益は209億7,600万円、前年同期比70.3%増を記録し、楽天市場の寄与が大きいことがうかがえます。

〈エアトリ)

エアトリは、航空券・新幹線の予約に強い総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営する東証1部上場企業です。2月12日に2021年9月期第1四半期決算を発表しました。

決算説明資料によると、2020年9月期第3・4四半期と2021年9月期第1四半期の累計(2020年4~12月)売上高が143億5,800万円で、前年同期比33.7%減となりました。営業利益は4億600万円の損失となり、営業赤字に転落です。

期間別に見ると、売上高は前年同期比で4~6月は30.4%減、7~9月は51.3%減、10~12月は17.8%減と、やはりコロナ禍に打ちのめされる展開でした。しかし投資事業やヘルスケア事業など、業務の多角化を図りつつGo To トラベルキャンペーンの恩恵を受け、10~12月は前年同期比で売上高は落としながらも営業利益は前年同期比超えを達成しています。苦境をバネに急ピッチで改革を進める注目企業です。

***まとめ***

飲食・旅行それぞれの予約サイト運営企業の決算には、コロナ禍がこの業界に与えた痛手の巨大さがまざまざと表れていました。しかし一方で、米国・英国・ロシア・中国などで開発されたワクチンの接種が世界各国で進み、日本でも米国産ワクチンの接種が2月17日に開始されています。首都圏・近畿などの都市部では、高齢・壮年者(55歳以上)を対象に年内にも接種を完了できるという予測も報道されており、早ければ来年春の集団免疫形成が見えてきています。

こうした状況を踏まえ、脱コロナ禍に向けて進んでいく今年、そして来年の収束を見据えて、注目すべき企業を飲食・旅行それぞれ1社ずつ深掘りしていきます。

2.今後注目しておきたい「飲食・旅行予約サイト」関連銘柄

〈カカクコム(食べログ)〉

飲食系予約サイトの二強を形成する食べログとぐるなびでは、昨年春の緊急事態宣言以降の「傷の深さ」に明らかな差が表れていました。

2020年・売上高増減の推移、前年同期比は下表のとおりです。

春から冬へと季節が進む間に、両サービスのレジリエンスの差は開く一方でした。この点については、「週刊東洋経済Plus」《データ比較でわかるグルメサイト大手の実力 コロナ禍で明暗分かれた「食べログ」と「ぐるなび」》が昨年末に詳細かつ妥当な比較検討を行っています。

この記事を要約すると、

  • コロナ禍以前から成長軌道にあった食べログ、下降線をたどっていたぐるなび
  • 集客力に優れる食べログ、飲食店寄りのぐるなび
  • 営業利益率が極めて高い食べログ(カカクコム)、サポート人員を抱えてコスト高のぐるなび

以上のような違いがあるとしています。

ユーザー見ると、食べログは「グルメエッセイ」的であり、ぐるなびは「チラシ」に近いという違いがあります。

食べログの圧倒的な口コミのボリュームは、例えば「3週間先の初デートでは、どこで食事をしようか」と考える若い男性に、3週間のうちに幾度となく食べログアプリを起動させるほどのコンテンツ力を持っています。

また、口コミを集めやすい「コスパ」「おしゃれ」「新しい」といった特徴を持つ店は個人経営が多く、都市部に多いという特徴あります。

これに対し、忘年会や地域・趣味の会合などを取り仕切る幹事が店選びをする際には、ぐるなびが役に立ちます。個人経営店が醸し出すニュアンスや、一つ一つの料理のこぎれいさを伝える写真は、この際不要です。

たくさんのチラシを比較する幹事にとっては、店舗側が幹事に伝えたい情報を手際よく見て取れるページ設計の方が都合よく、出席者にとっても地図を見る際に一瞥する程度なので過不足ありません。中小~大規模のチェーン店のほか、郊外にもぐるなびの顧客が幅広く存在しています。

「グルメエッセイ」と「チラシ」。特徴の違いが、コロナ禍で両者の業績に影響を及ぼした可能性があると考えられます。

昨年春の緊急事態宣言中はもちろん、解除後でも多くの職場・地域・趣味の集まりなどにおける食事会・飲み会に関しては自粛が続いています。このことは両者のどちらに、よりマイナスに働くでしょうか。我慢を強いられる生活の中で、たまに親友や恋人・家族と一緒に行く外食では、どんなお店に行きたくなるでしょうか。どんな気持ちで、どのように探すでしょうか。

カカクコムの最新の決算説明資料を確認すると、食べログ有料プラン契約店舗数は2020年12月の5.99万店から2021年1月の5.88万店と、1.8%の微減にとどまっています。食べログは契約店舗のサービス休会(料金が発生しない)を受け付けていますが、顧客ロイヤリティーの高さが見て取れます。

顧客の経営サポート強化にかじを切るぐるなびと、スマホサイトやアプリの充実といった集客を強化する食べログは、コロナ禍で明確にすみ分けていくことになりました。感染制御・収束で発生する個人の食欲・交際の大復活をこれまで以上に独占できるであろう食べログ(カカクコム)の業績は、今後も要注目です。

ALTalkで食べログ(カカクコム)のアプリダウンロード数を長期で見ると、昨年春のコロナ禍以降、Go To Eatキャンペーン開始時の急上昇を除いて低調にあることが見て取れます。1~3カ月程度の短期で上昇基調が確認できれば、業績浮上のシグナルとなるかもしれません。

(ALTalk「カカクコム」の指標より)

〈エアトリ〉

エアトリの最新決算説明資料(2021年9月期第1四半期)と1年前のそれを見比べてみると、経営の力点が様変わりしています。

最新資料では、冒頭から成長戦略「エアトリ2021“リ・スタート”」をうたい上げ、6つの事業ドメインの連携を「エアトリ経済圏」という用語でアピールしています。1年前の資料では、これらは影も形もありませんでした。

この間、エアトリは新たに「ヘルスケア事業」という事業ドメインを立ち上げてPCR検査に参入。クリニックと提携し、国内検査希望者の予約代行と、海外渡航者向けの陰性証明書発行を開始しました。投資事業の規模も前年度比で19%増加させ、急ピッチで多角化を進め収益減を埋めようとしています。

その結果、セグメント業績を見ると、4つの事業ドメインを含む「オンライン旅行事業」の売上高は前年同期比21.13%減、「ITオフショア開発事業」は15.98%減となったところ、「投資事業」は315.49%増と急速に成長しています。オンライン旅行事業売上減の中でもセグメント利益は倍増させており、リストラの効果が表れています。

コロナ禍において、事業の再構築と体質強化をなりふり構わず進めるエアトリは、感染制御・収束後に業績を急回復させ、さらなる高みをうかがうための組織づくりをぬかりなく行っているといえるでしょう。中国をはじめとするグローバルビジネスの急回復も追い風となるはずです。

エアトリのアプリダウンロード数も、昨年春のコロナ禍以降の低調から脱出できていません。慎重を期したい投資家は、1~3カ月程度の短期で上昇基調を確認してからのポジション取りが無難かもしれません。

(ALTalk指標「エアトリ」より)

3.飲食関係や旅行関係の「予約サイト」の今後を読む

今冬の緊急事態宣言は、2カ月に及ます。冬場に強くなったウイルスの勢いが次第に衰えて、昨年同様の経過をたどるなら、Go To キャンペーンが再開され、当業界にとって晩秋までは再び穏やかな回復フェーズとなることが予想されます。

来年まで時間軸を伸ばせば、ワクチン接種による集団免疫形成後のペントアップ需要は、非常に大きいものとなるでしょう。大きな収穫を得るために、曇り空の1年にダイエットと筋トレを着実に行っている企業であるかどうかを、投資家は見極めていく必要があります。

以上をメインシナリオと考えていますが、続いてリスクファクターを点検していきます。

1. ワクチン接種の進捗

日本におけるワクチン接種希望者は6割程度という調査があり、これは他国に比べてです。希望者が7割を超え、接種が進んでいる米国でも、集団免疫獲得は秋以降と見込まれています。日本の集団免疫形成は次の冬には間に合わないでしょう。医療機関の疲弊が進んでいることもあり、年内にもう一度、緊急事態宣言があるかどうかが当業界にとって最大の業績リスクとなります。

2. 政治的リスク

昨夏~冬にかけてのGo Toキャンペーンが、飲食・旅行予約サイトのつかの間の回復に一役買ったことは明らかです。しかしGo Toは、関連業界の好意的な受け止めをよそに、世論の受け止めは決して良くありません。旅行や外食に行ける高所得者だけを対象とした優遇策であるばかりでなく、ウイルスを蔓延させた元凶との批判もあります。

報道で伝わるところでは、このキャンペーンは自民党・官邸実力者の肝いりで強力に推進された政策といわれています。その政権発足からわずか5カ月で、内閣支持率は危険水域(アンダー30%)に近づいています。政変が起こって看板が変わり、後ろ盾がようなことがあれば、キャンペーンの再開も疑わしくなります。政権の動静には十分に注意を払っておくべきでしょう。

3. 東京2020オリンピック競技大会

東京2020オリンピック競技大会の開催は極めて流動的になっています。

当業界にとっての最良のシナリオは、検疫によって海外からの観光客を事実上シャットアウトし、国内からの観客を入れて行われるケースです。この場合、飲食・旅行予約サイトともに恩恵が及びます。

感染鎮静化の失敗によるオリンピックの中止は、いまや想定内といえそうです。ただし医療機関が対応できる程度のコロナ再燃であれば、当業界も穏当な業績回復が進むでしょう。

最悪のケースは、無観客での開催です。オリンピックムードによる盛り上がりが2週間程度続くとすれば、飲食予約サイトは利用者増が想定されます。しかし、それによって市中感染が再燃となれば、またしても緊急事態宣言が発令されるという展開もあり得ます。また旅行予約サイトにとっては、無観客でのオリンピック開催では利得がなく、感染拡大のリスクのみ大きくなる展開も考えられます。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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【バイデン/菅政権でも肝いり】世界的な潮流にある「クリーンエネルギー業界」の現状と注目の銘柄

クリーンエネルギー政策を真っ先に掲げるバイデン政権が誕生し、株式市場では年初に電気自動車(EV)や、洋上風力発電などの環境関連株を物色する動きが見られました。政策は一過性でないばかりか、欧州や日本、中国など主要先進国でも同様の流れが鮮明化しています。新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興について、気候変動対策を軸とする「グリーンリカバリー」(環境に対応した経済復興)を目指す動きも見られています。

目次

  1. 世界的な潮流にある「クリーンエネルギー政策」の実態
  2. 「クリーンエネルギー政策」に大きく関与する業界とは
  3. 今後注目しておきたい「クリーンエネルギー」関連銘柄
  4. 関連業界の動向は常に注視しておきたい

1.世界的な潮流にある「クリーンエネルギー政策」の実態

バイデン新大統領はクリーンエネルギー政策を重点的に推し進める方針を明らかにしています。就任直後に、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」への即時復帰を果たしました。

バイデン大統領は就任前の公約で、2兆ドル(約210兆円)規模の「クリーンエネルギー」計画を掲げました。バイデン政権では、増税による財源と財政赤字を合わせて4兆ドルの経済対策を行うとしています。

このうち4年間で2兆ドルをクリーンエネルギーとインフラに投資する計画ですから、非常に大掛かりです。風力発電や持続可能な住宅、電気自動車などを推進することで雇用の創出も狙っています。2035年までに電力部門のCO2排出ゼロも目指しているほか、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることも宣言しています。

EU(欧州連合)では、10年間で1兆ユーロ(約120兆円)の「欧州グリーンディール投資計画」(2050年までに温室効果ガス排出をゼロにする目標)があります。

そのうち、7年間のEU予算で総事業費5,500億ユーロ(約70兆円)を「グリーンリカバリー」に投入する計画。ドイツでは500億ユーロ(約6兆円)の景気刺激策のうち、水素関連技術や充電インフラに95億ユーロ(約1.1兆円)を充当する方針。イギリスやフランスでも独自の案を出しています。

日本でも菅義偉首相が昨年10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」、すなわち脱炭素社会の実現を宣言しています。

2.「クリーンエネルギー政策」に大きく関与する業界とは

真っ先に関連する業界は自動車業界で、既に動きが出ています。クリーンエネルギー政策では、ガソリン車から電気自動車に大きく舵を切る「EVシフト」の流れが鮮明になっています。

EUでは、2021年から車の燃費規制を強化しています。欧州で販売する車には1キロメートル走行時のCO2排出量に一定の規制がかけられ、達成できなければ高額な罰金が科せられます。2020年は猶予期間でしたが、今年からは欧州、海外メーカー問わず対応に乗り出しました。

2030年までに規制が一層強化されるため、ガソリン車だけを造っているメーカーは淘汰される可能性が現実になってくるでしょう。ガソリン車の開発では、内燃機(エンジン)の部品点数だけでもかなりの数があり、また開発には職人技も必要でした。

電気自動車は駆動システムが電池とモーターだけなので、部品点数は激減します。日本では完成車メーカーを頂点に数多くの部品メーカーが系列としてピラミッドを形成してきましたが、将来的には現状を維持して生き残るのは困難になるかもしれません。

電気自動車のバッテリーなどは高性能化が求められ、改善の余地がありそうです。充電スタンドなどインフラの整備が今後も進みそうです。また、燃料電池自動車(FCV)も有望です。電気自動車は、1回の充電で走行できる距離がガソリン車に比べて短く、充電にも時間がかかります。特に長距離トラックなどはこまめに充電している余裕がないため、1回の充電でガソリン車並みの走行距離が可能なFCVが、欧州を中心に注目されています。

クリーンエネルギーでは、洋上風力発電が注目されています。陸上の風力発電では設置場所が限られ、騒音も問題になっていますが、洋上ならば安定した風が期待できる上に、騒音もさほど問題にはならず、欧州では普及が進んでいます。日本では原発問題もあり、化石燃料を使った発電が多いのが現状ですが、島国である日本は海に囲まれているため、むしろ洋上風力発電に向いているといえます。

3.今後注目しておきたい「クリーンエネルギー政策」関連銘

電気自動車ではまず、リチウムイオン電池に注目が集まります。ただ、かつては日本が強かったリチウムイオン二次電池の部材では中国や韓国のメーカーが台頭し、日本企業の存在感が相対的に低下しています。リチウムイオン電池は、正極、負極、ショートを防ぐセパレータ(絶縁材)、イオンが移動する電解液の4つの部材からできています。

かつては4部門ともに日本が首位でした。ところが大手調査機関によれば、この4部門ともに国別のシェアでは中国がトップで、負極材では実に77%が中国製とのこと。日本はいずれでも2位となっているものの、韓国の追い上げが目立っています。そんな中でも、日本企業が強みを持っている分野があるのです。

●セパレータフィルム製造装置「日本製鉄所」

例えば、セパレータは樹脂製のフィルムでできています。このセパレータフィルム製造装置を造っているのが日本製鋼所で、アナリストによれば世界シェアは7割程度を有していると見られています。中国や韓国のセパレータメーカーでも、セパレータフィルムの製造装置は日本製鋼所のものが採用されていると推測されます。どのメーカーが売り上げを伸ばしても、同社が恩恵を受ける可能性が大きく、利益率も高いと考えられます。

●リチウムイオン電池用のバインダー「クレハ」

クレハはリチウムイオン電池用のバインダー(結合材)に強みがあります。リチウムイオン電池におけるバインダーの役割は「電極活物質を接着する」こと。電池の負極では活物質である炭素材料などと集電体である銅箔を、正極では金属酸化物などと集電体であるアルミ箔を結合しますが、これらが電極構造を維持する役目を担います。クレハはこの分野で世界シェア4割程度と見られています。また、日本ゼオンもバインダーで優位性があります。

●EV駆動用モーター「日本電産/明電舎」

EV駆動用モーターでは、日本電産が世界でも先行しています。モーターとギア、インバーターなどを組み合わせたシステム製品の「E-Axle(イーアクスル)」を開発。性能と価格の優位性を武器に、中国の大手自動車メーカーに採用されており、今後は欧州向けにも拡大が期待できそうです。明電舎も、EV駆動用モーターの量産化を急いでいます。

●固体電池関連「トヨタ自動車/三井金属/出光興産」

一方、次世代の電池として「全固体電池」が注目を集めています。リチウムイオン電池の電解液は液体で出来ているため、液漏れや爆発などの危険があるとされています。これを固体にしたものが全固体電池で、安全性が高い上に、電池の小型化や充電時間が短縮できるというメリットもあります。トヨタ自動車が内製化での開発で先行しており、2020年代前半にも販売する方針と報じられています。また、三井金属や出光興産が固体電解質の生産を目指しています。

●燃料電池自動車関連「トヨタ自動車/岩谷産業/川崎重工」

トヨタ自動車は、究極のクリーンエネルギー車といわれる燃料電池自動車(FCV)である「MIRAI」でも世界の先頭を走っています。FCVの燃料は水素であり、岩谷産業が日本の水素のパイオニア。水素の製造からサプライチェーンの構築などまで事業を展開しています。川崎重工は、輸送するために不可欠な水素液化機を日本で初めて発売しています。

●洋上風力発電関連「レノバ/丸紅/東京電力/オリックス/日立造船/五洋建設・NTN」

洋上風力発電では、再生可能エネルギーベンチャーのレノバという企業が先行し、秋田県由利本荘市での事業化を目指しています。地元の関係者との話し合いも重ねて、公募で落札できれば事業化が加速すると見られています。丸紅、東京電力、オリックスなども運営企業として有望です。日立造船は、洋上風力発電の風車を立てるための技術などで実績があります。

また、海洋土木大手の五洋建設は、SEP型多目的起重機船を保有しています。洋上風力発電の風車を建設するには、設置場所まで風車や軸の部分をばらして運搬し、海中に軸を埋め込んで組み立てる必要があります。これら一連の作業を行うのがこの船ですが、船で一貫して建設作業ができるという特殊船です。風車の発電向けなどのベアリングでは、NTNが強みを有しています。

4.関連業界の動向は常に注視しておきたい

株式市場では、いわゆる「理想買い」の状況です。EVベンチャーであるテスラの時価総額の大きさが話題になっていますが、将来の業績期待が先行している格好です。電気自動車や次世代電池が普及していく過程では、価格競争があり、性能面での優劣で勝ち組や負け組が発生することが想定されます。

新興国では、性能が高くて価格が安いガソリン車の需要がまだまだ高く、洋上風力も実現するまでには少なくとも5年程度かかると予想されています。実際に収益が出るまでには紆余曲折が予想されますが、関連企業に利益が出始めて「現実買い」になったときに、業界の地図が変わるのかもしれません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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スーパーの特売が減った?オルタナティブデータから読み解く売り手側の動向

 総務省が2月19日に発表した1月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.6%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.6%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同+0.1%となりました。

各品目の物価がコロナの影響を受け変動している

「総合」は4か月連続、「生鮮食品を除く総合」は6か月連続で前年同月比マイナスとなりましたが、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は3か月ぶりにプラス圏に浮上しました。上図を見れば明らかですが、1月の消費者物価指数は1年以上続いていた物価の下落トレンドから反転に生じています。

その要因の1つに「宿泊料」が挙げられます。「Go To トラベル」が一時的に全面停止されたことにより、宿泊料は前月の前年同月比-33.5%から同-2.1%へと大きくマイナス幅を縮小しました。

また、巣ごもり需要の高まりを背景に電子レンジ、ルームエアコン、空気清浄機などの「家庭用耐久財」は前年同月比3.1%と高い伸びを続けています。「設備・修繕」や「住居」などの項目も上昇しているのも外出自粛や在宅勤務の普及が影響しているのでしょう。

一方で、依然としてエネルギー価格は前年同月比-8.6%と前月の同-8.1%から更にマイナス幅を拡大することになりました。灯油は前年同月比-14.4%と前月から変わらずとなりましたが、ガソリン、電気代、ガス代は全てマイナス幅を広げています。

宿泊料と保険料それぞれの指数への影響は?

 1月の消費者物価指数の品目別価格指数を見ていくと、前述の通り宿泊料が大きく跳ね上がっています。12月の時点で先行して一部地域で「Go To トラベル」が停止された結果、宿泊料の下げ幅が少しだけ縮小していたことから、1月は全面停止で大きくマイナス幅を縮小することは前回の記事「デフレ脱却は当分難しい?オルタナティブデータから浮かび上がる悲観的シナリオ」で指摘した通りです。

 一方で、足元では1日あたりの陽性者数が大幅に減少しはじめ、一部では予定よりも早く緊急事態宣言を解除することも検討されているとの報道もあり、「Go To トラベル」が再開されれば改めて宿泊料のマイナス幅は大きくなるため、この項目は新型コロナウイルスの感染拡大の状況に左右されてくる要因となります。

 また、「火災・地震保険料」や「傷害保険料」も上昇に寄与していますが、自然災害が頻発していることから、特に火災・地震保険料は段階的に引き上げられている傾向にあることは覚えておきたい点です。

エネルギー価格と通信料に注目

 今後の物価動向について考えてみると、前述の通り宿泊料がどのタイミングで大きくマイナスになるかという不確定要因もありつつ、それ以外で注目すべきなのは「通信料(携帯電話)」と「エネルギー価格」でしょう。

 携帯電話大手3社が値下げをすることは既に報道されていますが、通信料(携帯電話)は消費者物価指数への寄与度が比較的大きい項目であり、仮に報道にあるように2割程度の値下げとなるのであれば、0.4%前後の押し下げ圧力となるのではないでしょうか。

 一方で、足元では原油価格が13カ月ぶりの高値を記録するなど、上昇傾向にあります。昨年の原油安の裏が発生することから、エネルギー価格が原油相場の価格を反映するタイムラグを考慮しても、これからはエネルギー価格が大きく指数全体を押し下げることはなくなりそうです。

スーパーは特売をしなくなっている?

 さて、1月の消費者物価指数について、全体の動向から細かい品目別の価格動向について見てきましたが、今月はオルタナティブデータを活用して消費者物価指数が下落傾向にあるなかで、スーパーの販売戦略について見てみましょう。

 ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」を用いますが、同データは全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。日次の物価指数であるT指数、t日の前後28日間に最も多かった売価(定価)を示すmode指数の2つを使ってグラフを描画したのが下図です。

 定価を示すmode指数がこの1年間で下落傾向にあるのは、消費者物価指数の動向と整合性が取れています。そして、T指数からmode指数を引いた数値を青い折れ線で表していますが、これが何を意味するかを説明しましょう。この数値がゼロより小さい、つまりマイナスになっている場合は特売が多くなっている可能性が高いと推定できます。

 コロナの感染拡大が本格化したのが昨年の3月頃とすると、その頃からあまり特売しなくなっていることが分かります。その理由を断定することは出来ませんが、コロナ禍においてはスーパーに足を運ぶ人が増え、通常の不況のようにスーパーで買い物をする人が減ったということはないため、そこまで特売をするインセンティブが働かなかった可能性があると考えられます。

 今後も消費者物価指数というマクロな物価動向を注視しつつ、各業種・業態で販売戦略や動向にどのような変化があるのかをオルタナティブデータを活用して確認していきたいと思います。

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失った市場規模の一部は戻らない?コロナ後の娯楽業界をオルタナティブデータから考察

 2月に入り新型コロナウイルスのワクチンの話を耳にする機会も増え、陽性者数もピークアウトしたように見えますが、栃木県を除く10都府県では緊急事態宣言が3月7日まで延長されました。

思い返せばちょうど昨年の2月頃から日本国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大していきましたが、この1年で私たちの行動にはどのような変化が生じたのでしょうか。今回もオルタナティブデータが示す行動変容について確認していきましょう。

コロナ問題発生から1年での変化とは?

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける消費指数を20分野に分けたうえで、昨年1月を「コロナ前」として、2021年の1月のデータと比較することで、この1年間で生じた行動変容を確認しましょう。そのデータをマッピングしたものが下のグラフになります。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 このグラフから読み取れるのは、動画配信などを含む「コンテンツ配信」や「EC」が巣ごもり需要の高まりを受けて大きく伸びただけでなく、飛行機や鉄道による移動の代替手段としてマイカー移動の需要が高まり「自動車小売」や、在宅勤務の普及で家電を含む「機械器具小売」も大きく伸びていることです。

 一方で、やはり感染拡大を防止すべく外出を控える人が増えたり、不特定多数の第三者との接触を回避したいという気持ちが表れたことで、「交通」、「旅行」などは大きく下落し、当然ながら時短営業の影響もあり「サービス総合」も大きく落ち込みました。

「密」のイメージが強い映画館は苦戦

 もう少しミクロな視点で見るために、分野を業種業態で区分けすると、コロナ禍で苦戦を強いられた業種の1つとして「映画館」が挙げられます。

 下図の左側のグラフは映画館の消費指数を年代区分ごとに半年前の8月から月次でグラフにしたものですが、その消費指数を見てみると、全年代で大きく落ち込んでいることが分かります。10月に40歳未満と70歳以上で前年同月比プラスになっているのが確認されますが、これは10月16日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が歴代興行収入新記録を樹立した影響です。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 昨年1月と今年の1月を比較したのが右側のグラフですが、全年代で映画館での消費が大きく下落していることが分かります。傾向としては高齢者の下落幅の方が大きく、新型コロナウイルスの重篤化リスクが高い高齢者が密の環境を避けたとみていいでしょう。

特需を受けたのはコンテンツ配信

 外出をして映像コンテンツを楽しむという選択肢が失われた一方で、動画配信などの「コンテンツ配信」が大きく伸びたことが確認できます。経済とは面白いもので、どこかの業種が落ち込むと、反対に特需の恩恵を受ける業種が出てくるものです。

下図は「コンテンツ配信」の消費指数を月次でグラフ化したものに、陽性者数の推移を重ねたものですが、昨年に緊急事態宣言が発出された4月以降、前年同月比で30%以上の伸びを続けており、足元では40%以上の伸びが続いています。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」、厚生労働省のデータを基に著者作成
(注):網掛け部分は第1波~第3波を表現。

 この傾向は日本に限った話ではなく、たとえば米国の動画配信大手ネットフリックスは世界の有料会員数は2020年末時点で2億人を突破したと発表しています。

 先程の映画館と同様に年代別に区分けをしてグラフ化してみると、80歳以降の伸びが目立ちます。実はECでも同じ傾向が確認されており、これまではなかなかネットサービスを使うというきっかけを作れていなかった高齢者世代がコロナ禍をきっかけにデジタルシフトした様子が確認されます。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 今後、ワクチン接種が一巡し、経口摂取できる薬などが普及した場合、再び一部の消費者は映画館での鑑賞を楽しむとは考えられますが、一度自宅で好きな時間に好きなスタイルで動画を楽しめるというメリットを実感してしまった消費者が全て映画館に戻るとは思えません。

失った市場規模の一部は戻らない

 今月、ネットフリックスは2018年8月に次いで2回目の値上げを行いましたが、コロナ禍で新たに多くのユーザーを獲得した動画配信企業は値上げを含めた強気の戦略をとっていくでしょう。

反対にコロナ禍が逆風となってしまった映画業界はこれまでの常識が大きく転換するかもしれません。新型コロナウイルスが新たに変異したり、または全く違う疫病が流行することは今後も十分にあり得るため、今後はリスクを抑えるべく映画の公開本数が減る一方で、動画配信プラットフォームと連携して、有料会員だけに限定配信されるコンテンツが増えたり、視聴者がただ鑑賞するだけでなく、参加できる双方向型のコンテンツも増えていくことが予想されます。

 そのようなシナリオを考えると、これから拡大していく動画配信市場には関係する企業が多く、単純に動画の権利を持つ企業だけではなく、決済機能や配信プラットフォームを持つ企業、動画を利用した広告配信サービスを提供する企業など、多くの企業が物色対象になっていくと考えられます。

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アフターコロナでどう変わる? テレワーク関連株の2021年【クラウド型ビジネスツール関連企業:編】

ワクチン開発の進展により、アフターコロナが現実味を帯びてきました。新型コロナウイルス感染拡大により、好調な伸びを見せてきたテレワーク関連企業、特にクラウド型ビジネスツールを提供する企業の業績と株価は、2021年どう動くのか。ALTalkでカバーしている「Chatwork」「サイボウズ」をはじめ、競合他社の先行きを見てみましょう。

目次

  1. 2020年(コロナ禍)におけるテレワーク関連企業を振り返る
  2. 個別のクラウド型ツール業界の成長にフォーカス
  3. 個別銘柄における業績の推移と株価の動向
  4. 今後どのような展開となるか、業界の先行きを占う

1. 2020年(コロナ禍)におけるテレワーク関連企業を振り返る

内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2020年6月)によると、新型コロナウイルスの蔓延を受け全国でテレワークを定期的に行った人は28.4%と4人に1人を少し超える程度で、正規雇用に限ると35%弱に達しました。

この比率を2020年12月現在の就業者数で換算すると、約1,893万人がテレワークを定期的に行ったことになります。巨大なテレワーク特需が巻き起こったことは想像に難くありません。テレワークで業容を拡大した企業の例を挙げてみます。

テレワークの導入を追い風に、大きく売上高・営業利益を伸ばした企業です。各社直近・四半期決算ベースの売上高・営業利益の向上率は以下の通りです。

中にはSBテクノロジーやパソナなど、複数のセグメントを抱えテレワーク関連の売上がメインではない企業もありますが、総じて売上高・営業利益ともに大幅に増加しています。

TOPIX(東証株価指数)の1株当たり当期純利益は、2019年12月時点で130.70円、2020年12月時点で103.44円でした。純利益と売上高・営業利益なので完全にパラレルな比較とはなりませんが、上場企業の96%(時価総額)の収益がトータルで20%以上の減益にあえいだ時期に、テレワーク関連企業が勝ち組だったことは明らかです。

2. 個別のクラウド型ツール業界の成長にフォーカス

それではここで、代表的なテレワークツールに焦点を絞って検証してみましょう。

【グループウェア・ビジネスクラウド】

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(株式会社富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長が見込まれています。この調査におけるグループウェアには、当記事で触れるビジネスクラウドも含まれています。

グループウェア・ビジネスクラウドは導入社数で見ると、「Microsoft 365」と「サイボウズOffice」がそれぞれ20%程度を占めており、ライバルを大きく引き離した2強体制を形成しています。サイボウズの大企業向けグループウェアである「Garoon」を加えると25%に達し、サイボウズだけで市場の1/4を占めています。

グループウェアとは、メールやスケジュール管理、メッセージによるコミュニケーションの円滑化などをサポートするもので、その草分けといえる「サイボウズOffice」はよく知られた存在です。データベース・表計算等の個別アプリを統合したもので、導入部署に合わせたカスタマイズが可能なビジネスクラウドとしては、「Microsoft 365」「Google Workspace」などがメジャーどころで、これらはグループウェアに含められることもあります。

サイボウズOfficeはサイボウズが開発・販売している商品ですが、「Microsoft 365」や「Google Workspace」は、ベンダーがマイクロソフトやグーグルに代わり、顧客企業に対してツールの導入や研修などを行います。例えば、上の表で紹介したSBテクノロジーは「Microsoft 365」のベンダーです。

サイボウズは自社オリジナルのビジネスクラウド「kintone」を擁しており、目下の成長商品です。この年末年始、「kintone」のテレビCM出稿量はかなりのボリュームに及んだものと推察されます。

【ビジネスチャット】

IT調査・コンサルティングを行うITRの調査によれば、ビジネスチャット市場の2019年度の売上金額は105億6,000万円に達し、前年度比41.6%増となりました。2019年~2024年にかけてのCAGR(年平均成長率)は21.9%を想定し、2024年度には300億円に迫る市場規模に拡大すると予測されています。

ビジネスチャットでは国内産アプリのChatwork・LINE WORKSと、外国産アプリのSlack やMicrosoft Teamsが知られた存在です。

※SlackとMicrosoft Teamsの導入社数は海外企業を含む

この中では、ChatworkとSlackがビジネスチャットを本業としています。Slackは米国上場企業であるため、当記事ではChatworkについて取り上げます。

3. 個別銘柄における業績の推移と株価の動向

クラウド型ビジネスツール業界における主要プレイヤーの業績動向をまとめます。

事業セグメントが複数あるナレッジスイートとSBテクノロジーに比べ、クラウド型ビジネスツールの割合が大きい企業の方が、売上高成長率が大きい傾向が見て取れます。

表を見ると、ネオジャパンを除き証券会社アナリストによるコンセンサス予想は各社とも2020年度並みの成長率が予想されています。

売上成長は既存顧客に対する追加サービスの訴求および値上げ、そして新規顧客の開拓によって実現されます。コロナ禍が1年に迫る中、はたして今年の新規需要は、前年度の言わば「特需に基づく売上成長」と同様の水準を見込むに足るでしょうか。

2020年度の本決算で投資検討先の経営陣が2021年度の業績予想を発表する際には、前提条件を真っ先にチェックする必要があるでしょう。

各社の株価指標(バリュエーション)は以下の通りです。

サイボウズ・ネオジャパン・rakumo・Chatworkの専業4社は、合理的に解釈できる水準のバリュエーションではありません。超長期での成長性を見込んで投資するか、あるいは割安・割高など考えず、月次報告や四半期決算で確認できる業績予想の達成度や事業の成長性、投資動向と市場のモメンタムをうかがいながら、出入りのタイミングを計るのが投資家の基本姿勢といえそうです。

4. 今後どのような展開となるか、業界の先行きを占う

各社の個々の事業や成長性についての評価は行わず、テレワークという日本社会にとっての新しい働き方がもたらした変化と、近い未来についての見通しを検討していきます。

テレワークがもたらした影響・変化を以下の点に分けて考えます。

①公共交通需要
②オフィス需要
③労働者の意識変化
④生産性に与えた影響

①公共交通需要

都市部公共交通需要の変化というレンズでテレワークを見てみましょう。東京都営地下鉄と、JR東海による名古屋近郊の輸送量の推移は以下の通りでした。

2020年1月の水準を100とした輸送量の変化を見ています。2020年4~5月は緊急事態宣言で最も輸送量が少なくなった期間で、2020年10~11月は2度の緊急事態宣言のはざまで最も輸送量が多くなった期間です。東京と名古屋近郊で最高・最低の時期に微妙なズレがあるため、時期に幅を持たせてまとめています。

東京・愛知ともども、秋には公共交通の輸送量は7~8割まで回復していました。飲食・観光・娯楽分野などの復活と同時に、オフィスワーカーの通勤復活の寄与があったと推察できます。

2020年の10~11月には米国・英国のワクチン開発はまだ治験段階にあり、コロナ収束が視野に入る前でも、新規感染がある程度収まれば、オフィスワークは回復していることが分かります。ワクチンによる集団免疫が達成されれば、オフィスワーク回帰への流れはさらに加速する可能性があり、2022年以降のテレワーク事情を遠望する際の一つの材料となるでしょう。

とはいえ、これだけでは交通需要をオフィスワークとそれ以外の仕事・レジャー等で切り分けできていないので、先を占うには不十分です。続けてオフィスの実需を点検します。

② オフィス需要

東京都心ビジネス地区の平均空室率(三鬼商事調べ)は、2020年1月の1.53%から12月には4.49%へ、2.96%の上昇を示しました。シンクタンクの日本総研は、「テレワーク化でオフィス需要が大幅減に」というリサーチを発表しています。

とはいえ2000年以降で最悪の空室率は2012年6月の9.43%であり、現状とはまだ5%近い開きがあります。加えて、この1年間で平均家賃はほとんど下がっていません。多くの企業がコロナ収束を見据えていまだオフィスを維持しています。大家である不動産会社もまた同様の判断で、家賃減額要請に応じないことで空室が生じたとしても、ある程度は損失を甘受する覚悟で家賃を下げていないと考えられます。こうしたオフィス需要の推移もまた、テレワークの定着に疑問を生じさせる根拠といえるでしょう。

③労働者の意識変化

内閣府(2020年6月)の調査によると、テレワークを行った人のうちおよそ9割がテレワークの継続を希望しています。その理由としては、家族関係の改善が最も目立っています。

日本労働組合総連合会(2020年6月)の調査でもテレワーク継続希望は8割を超えていますが、テレワークを継続する上の課題として以下の点が挙げられているのが目に付きます。

・会社トップの意識改革:31.3%
・上司や同僚の意識改革:26.4%

労働者はテレワークにメリットを感じ継続を希望している反面、「会社トップや上司の意識」が壁として立ちはだかっている現実も見て取れます。続いて、経営者の考えを推察するファクターとして「生産性」を確認しましょう。

④生産性に与えた影響

内閣府(2020年6月)の調査から、「今回の感染症の影響下において仕事の効率性や生産性が落ちたと感じている人の割合」を、テレワーク実施率上位5業種と下位5業種で平均を取り比較しました。

テレワーク実施率が高い業種の方が、平均で効率性・生産性が落ちたと感じている人の割合が6.5%高くなっています。このことは、テレワークにあまり好感を持っていない「意識改革が必要な会社トップ・上司」にとって、コロナ収束後にオフィス回帰を推進する格好の理由となるかもしれません。

●2021年のクラウド型ビジネスツール関連企業「勝ち組」はどうなる?

株価は実体経済の先行指標といわれます。2021年の株価動向を考えるにあたっては、来年以降の長期的なテレワークの未来を想定する必要があるわけです。

2020年はテレワーク導入・推進を背景にクラウド型ビジネスツール関連企業が業績を伸ばしましたが、2020年のテレワーク事情を複数の切り口で点検したところ、以下のような懸念事項が見えてきました。

・コロナ収束が見えない段階でもオフィスワーク復帰の圧力は根強いようだ
・労働者はテレワーク継続を希望しているものの生産性の低下を感じている
・テレワークに理解を示さない、適応できない上司や会社トップが少なくない
・コロナ収束が見えてくる2021年後半~2022年以降、テレワークが縮小していく可能性がある

これらの懸念を乗り越えていく企業は、業績を伸ばし株価を上昇させることができます。そのためには、テレワーク/オフィスワークの別を超えて、原点である

  • 生産性の改善・向上への寄与
  • 顧客企業の社員(ひいては家族)の満足度向上

において商品力を高めると同時に、エビデンス(事例)を蓄積し販促ブースターとして活用していくことが求められていくでしょう。

社員から経営者への「テレワーク継続圧力」を高め、経営者には生産性向上による満足を与えられる企業こそが、アフターコロナでも「勝ち組」であり続けられる企業であると筆者は考えます。

今回取り上げた企業の中では、Chatworkやサイボウズは事例の蓄積や情報発信を積極的に行っており、ウェブサイトを一目見ただけでもこのことは明らかです。クラウド型ビジネスツールはサブスクリプション型のビジネスですが、定期的かつ肉厚な情報発信は、既存顧客とのリンケージ維持にも新規顧客の誘引にも有効です。

ALTalkでは、Chatworkのweb訪問者数・アプリダウンロード数などを確認できます。web訪問者数は既存顧客のアクティブ度と新規顧客の誘引、アプリダウンロード数は新規顧客獲得の進捗を確かめる意味で、定点観測しておきたいファクターです。

ALTalk「Chatwork」より)

サイボウズについては、成長商品であるkintoneのアプリダウンロード数の推移は要チェックです。過去記事「第3四半期決算は「営業利益25.4%増」の絶好調!今後はkintoneの成長と海外展開がカギ|サイボウズ」もご参照ください。

ALTalk「サイボウズ」より)

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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ミンカブ(4436)企業分析① -将来予測のための現状分析-

どうもSuiです。

今日は個別銘柄の分析について書きたいと思います。

今回分析する企業はミンカブ・ジ・インフォノイド(4436)です。

先日ALTalkさんで株価予想の投稿をしたので、その解説をしていきたいと思います。

順に解説していきますが、先に株価予想の内容を知りたい方はこちらからどうぞ。

https://altalk.ai/expectations/157

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ALTalkさんでは株価を予想して投稿する機能があります。自分の予想するシナリオを残して後で検証することはとても大事です。また、他の個人投資家のアイデアや視点もみることができるのでおすすめです。

今回の記事はこんな人におすすめ

・株価や業績の予想方法を知りたい
・決算資料のどこを見れば良いか分からない
・四半期決算の分析方法を知りたい

さて、まずはじめに株価を予想するにあたっての分析ポイントを説明したいと思います。ポイントを説明した後、具体的にミンカブの資料やデータを見ながら解説していきます。

<分析のポイント>

(1)将来予測のための現状分析
(2)アップサイド・ダウンサイドのリスクを確認する

分析ポイントを説明する前に、定義というか前提について整理します。

今回の株価予想で重視するのは「通期の業績予想をクリアできるかどうか」です。

株価を予想するといっても、実際の投資では人によってそれぞれ対象とする時間軸が異なります。長期投資であれば、2〜3年後の業績予想を考えたりしますが、今回のケースでは今期(2021.3期)の予想に対して、達成できるかどうかの予想をしていきたいと思います。決算時の進捗率の確認とも重なる部分が多いかもしれません。

なぜ今期の業績予想にフォーカスを当てるかというと、今回の株価予想では半年間の予想を考えたからです。2021年の8月末までなので、その間に株価を大きく動かす要因として通期(4Q)決算があります。(厳密には翌期の1Q決算も影響してきますが。。)

ニュースやリリースで株価が動くことももちろんありますが、その内部情報がいつ出るのかを予想するのは不可能なため、予測可能な決算を重視します。

それでは分析時のポイントについて説明したいと思います。

(1)将来予測のための現状分析

将来の予想をするためには当たり前ですが過去・現状の分析が必要になります。過去の傾向や数字を使って将来部分を予測していきます。

また、通期計画を達成するためには、足元でどのセグメント・事業が伸びているのかを理解する必要があります。現状を理解した上で、将来部分(今回は通期計画の達成確度)について考えます。

(2)リスクの確認

リスクにはアップサイドリスクとダウンサイドリスクの2種類があります。一般的にリスクとはダウンサイドリスクを指すことが多いですが、両方について把握しておくことが大事です。

現状分析をしながら、その企業にはどのようなリスクがあり、顕在化するとプラス・マイナス影響がどの程度あるのかを見る必要があります。

それでは具体的にミンカブを見ていきたいと思います。

(1)将来予測のための現状分析

まずは現状分析として、事業内容と業績を確認します。

ここでのポイントは①事業内容の理解、②業績の重要部分の確認です。

①事業内容の理解

事業内容については、ホームページや決算資料を確認します。

ミンカブのセグメントはメディア事業とソリューション事業の2つです。メディア事業は株探などのメディア運営、ソリューション事業はAIを使ったシステムの提供を行っています。

株探ではコンテンツ自動生成エンジンによって、決算などの開示情報やニュース記事が素早く作成され、株探に掲載されます。株探はチャートや企業の基本情報、リリース掲載の即時性などがとても便利で自分もよく使うサイトの一つです。

メディア事業の収益構造は、株探などのメディアによって集客し、広告収入と有料会員からの課金収入でマネタイズをしています。

ソリューション事業は、メディア事業で培った技術やノウハウを利用して、BtoBのサービスとして販売しています。具体的には、画像のようなデータの収集、作成などのソリューションを提供しています。

現状は金融機関向けのサービスが多いようですが、他業種・他業界への転用を進めているようです。

会社HP:ソリューションサービス

また、事業内容やミンカブの全体像についてはALTalkさんの記事に詳しく書かれているので、こちらもご覧ください。

(参考記事)
メディアから最先端AI企業に脱皮?ミンカブの中間決算の総括と今後の成長を考察

次にセグメントの業績を確認しますが、まず全体の業績を見てみます。

2021.3期2Qの決算は売上+60.2%,営業利益+89.7%とかなり良い結果のようです。

②業績の重要部分の確認

次にセグメント別の業績です。全体業績が伸びた内訳をセグメント別で確認します。

今回の2Q(下図の右側)ではソリューション事業が売上・利益ともに大きく伸びていることが分かります。メディア事業は横ばいですが、ソリューション事業が売上・利益ともに2倍近く増加しています。

また、左側の通期業績の推移を見ると、通期ベースでもソリューション事業が大きく成長していることが分かります。前期(2020.3期)はメディア、ソリューションともに大きく成長しましたが、今期(2021.3期)の計画ではソリューション事業の伸びが顕著です。

メディア事業が横ばいの計画になっている背景については、確認や深堀りが必要ですが、おそらく新型コロナの影響でネット広告の広告収入減少を想定していると思われます。

どのセグメントが伸びているのかを把握した後は、会社の開示によりますが、さらに深堀りしてセグメント売上が伸びた要因を確認します。

ミンカブの場合は説明会資料で、セグメント売上の内訳が開示されています。メディア事業の売上は広告収入と課金収入から構成され、ソリューション事業はストック収入と初期・一時売上から構成されています。

内訳の数字までは出ていませんが、メディア事業の広告収入が昨年よりも減少しています。資料には昨年に広告収入が伸びたのはFXサイトの急拡大と書かれており、今年もそれが継続していると書かれています。ただし、新型コロナウイルスの影響もあり広告収入は変動リスクが大きいと考えられます。

一方で、課金収入は登録者が増えれば安定的な収入となるので、今後は課金収入の割合を増やすことでストック収入が増えていく、という成長方針だと思います。ここについては今後も課金収入が増えるかどうかをウォッチする必要があると思います。

ソリューション事業はストック収入が大きく増加しています。説明会資料のtopicsにもソリューション事業の話がいくつか出ており、受注が好調な模様です。

それでは現状分析について、一旦まとめたいと思います。

  • 収益構造は、メディア事業の広告収入とソリューション事業のシステム提供による収入がメイン
  • 2020.3期2Qの業績は売上+60.2%,営業利益+89.7%と好調
  • 2Qはソリューション事業の成長が顕著で全体業績に売上・利益ともに貢献

次回の記事では株価予想をするにあたり、今期の会社計画を達成できるかどうか?という点ならびにリスクの整理について、深堀りしていきたいと思います。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

■参考資料・リファレンス

会社IRサイト
https://minkabu.co.jp/ir

株価予想
https://altalk.ai/expectations/157

ALTalk ミンカブ記事 2021.3期2Q決算
https://altalk.ai/articles/28