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アフターコロナでどう変わる? テレワーク関連株の2021年【クラウド型ビジネスツール関連企業:編】

ワクチン開発の進展により、アフターコロナが現実味を帯びてきました。新型コロナウイルス感染拡大により、好調な伸びを見せてきたテレワーク関連企業、特にクラウド型ビジネスツールを提供する企業の業績と株価は、2021年どう動くのか。ALTalkでカバーしている「Chatwork」「サイボウズ」をはじめ、競合他社の先行きを見てみましょう。

目次

  1. 2020年(コロナ禍)におけるテレワーク関連企業を振り返る
  2. 個別のクラウド型ツール業界の成長にフォーカス
  3. 個別銘柄における業績の推移と株価の動向
  4. 今後どのような展開となるか、業界の先行きを占う

1. 2020年(コロナ禍)におけるテレワーク関連企業を振り返る

内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2020年6月)によると、新型コロナウイルスの蔓延を受け全国でテレワークを定期的に行った人は28.4%と4人に1人を少し超える程度で、正規雇用に限ると35%弱に達しました。

この比率を2020年12月現在の就業者数で換算すると、約1,893万人がテレワークを定期的に行ったことになります。巨大なテレワーク特需が巻き起こったことは想像に難くありません。テレワークで業容を拡大した企業の例を挙げてみます。

テレワークの導入を追い風に、大きく売上高・営業利益を伸ばした企業です。各社直近・四半期決算ベースの売上高・営業利益の向上率は以下の通りです。

中にはSBテクノロジーやパソナなど、複数のセグメントを抱えテレワーク関連の売上がメインではない企業もありますが、総じて売上高・営業利益ともに大幅に増加しています。

TOPIX(東証株価指数)の1株当たり当期純利益は、2019年12月時点で130.70円、2020年12月時点で103.44円でした。純利益と売上高・営業利益なので完全にパラレルな比較とはなりませんが、上場企業の96%(時価総額)の収益がトータルで20%以上の減益にあえいだ時期に、テレワーク関連企業が勝ち組だったことは明らかです。

2. 個別のクラウド型ツール業界の成長にフォーカス

それではここで、代表的なテレワークツールに焦点を絞って検証してみましょう。

【グループウェア・ビジネスクラウド】

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(株式会社富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長が見込まれています。この調査におけるグループウェアには、当記事で触れるビジネスクラウドも含まれています。

グループウェア・ビジネスクラウドは導入社数で見ると、「Microsoft 365」と「サイボウズOffice」がそれぞれ20%程度を占めており、ライバルを大きく引き離した2強体制を形成しています。サイボウズの大企業向けグループウェアである「Garoon」を加えると25%に達し、サイボウズだけで市場の1/4を占めています。

グループウェアとは、メールやスケジュール管理、メッセージによるコミュニケーションの円滑化などをサポートするもので、その草分けといえる「サイボウズOffice」はよく知られた存在です。データベース・表計算等の個別アプリを統合したもので、導入部署に合わせたカスタマイズが可能なビジネスクラウドとしては、「Microsoft 365」「Google Workspace」などがメジャーどころで、これらはグループウェアに含められることもあります。

サイボウズOfficeはサイボウズが開発・販売している商品ですが、「Microsoft 365」や「Google Workspace」は、ベンダーがマイクロソフトやグーグルに代わり、顧客企業に対してツールの導入や研修などを行います。例えば、上の表で紹介したSBテクノロジーは「Microsoft 365」のベンダーです。

サイボウズは自社オリジナルのビジネスクラウド「kintone」を擁しており、目下の成長商品です。この年末年始、「kintone」のテレビCM出稿量はかなりのボリュームに及んだものと推察されます。

【ビジネスチャット】

IT調査・コンサルティングを行うITRの調査によれば、ビジネスチャット市場の2019年度の売上金額は105億6,000万円に達し、前年度比41.6%増となりました。2019年~2024年にかけてのCAGR(年平均成長率)は21.9%を想定し、2024年度には300億円に迫る市場規模に拡大すると予測されています。

ビジネスチャットでは国内産アプリのChatwork・LINE WORKSと、外国産アプリのSlack やMicrosoft Teamsが知られた存在です。

※SlackとMicrosoft Teamsの導入社数は海外企業を含む

この中では、ChatworkとSlackがビジネスチャットを本業としています。Slackは米国上場企業であるため、当記事ではChatworkについて取り上げます。

3. 個別銘柄における業績の推移と株価の動向

クラウド型ビジネスツール業界における主要プレイヤーの業績動向をまとめます。

事業セグメントが複数あるナレッジスイートとSBテクノロジーに比べ、クラウド型ビジネスツールの割合が大きい企業の方が、売上高成長率が大きい傾向が見て取れます。

表を見ると、ネオジャパンを除き証券会社アナリストによるコンセンサス予想は各社とも2020年度並みの成長率が予想されています。

売上成長は既存顧客に対する追加サービスの訴求および値上げ、そして新規顧客の開拓によって実現されます。コロナ禍が1年に迫る中、はたして今年の新規需要は、前年度の言わば「特需に基づく売上成長」と同様の水準を見込むに足るでしょうか。

2020年度の本決算で投資検討先の経営陣が2021年度の業績予想を発表する際には、前提条件を真っ先にチェックする必要があるでしょう。

各社の株価指標(バリュエーション)は以下の通りです。

サイボウズ・ネオジャパン・rakumo・Chatworkの専業4社は、合理的に解釈できる水準のバリュエーションではありません。超長期での成長性を見込んで投資するか、あるいは割安・割高など考えず、月次報告や四半期決算で確認できる業績予想の達成度や事業の成長性、投資動向と市場のモメンタムをうかがいながら、出入りのタイミングを計るのが投資家の基本姿勢といえそうです。

4. 今後どのような展開となるか、業界の先行きを占う

各社の個々の事業や成長性についての評価は行わず、テレワークという日本社会にとっての新しい働き方がもたらした変化と、近い未来についての見通しを検討していきます。

テレワークがもたらした影響・変化を以下の点に分けて考えます。

①公共交通需要
②オフィス需要
③労働者の意識変化
④生産性に与えた影響

①公共交通需要

都市部公共交通需要の変化というレンズでテレワークを見てみましょう。東京都営地下鉄と、JR東海による名古屋近郊の輸送量の推移は以下の通りでした。

2020年1月の水準を100とした輸送量の変化を見ています。2020年4~5月は緊急事態宣言で最も輸送量が少なくなった期間で、2020年10~11月は2度の緊急事態宣言のはざまで最も輸送量が多くなった期間です。東京と名古屋近郊で最高・最低の時期に微妙なズレがあるため、時期に幅を持たせてまとめています。

東京・愛知ともども、秋には公共交通の輸送量は7~8割まで回復していました。飲食・観光・娯楽分野などの復活と同時に、オフィスワーカーの通勤復活の寄与があったと推察できます。

2020年の10~11月には米国・英国のワクチン開発はまだ治験段階にあり、コロナ収束が視野に入る前でも、新規感染がある程度収まれば、オフィスワークは回復していることが分かります。ワクチンによる集団免疫が達成されれば、オフィスワーク回帰への流れはさらに加速する可能性があり、2022年以降のテレワーク事情を遠望する際の一つの材料となるでしょう。

とはいえ、これだけでは交通需要をオフィスワークとそれ以外の仕事・レジャー等で切り分けできていないので、先を占うには不十分です。続けてオフィスの実需を点検します。

② オフィス需要

東京都心ビジネス地区の平均空室率(三鬼商事調べ)は、2020年1月の1.53%から12月には4.49%へ、2.96%の上昇を示しました。シンクタンクの日本総研は、「テレワーク化でオフィス需要が大幅減に」というリサーチを発表しています。

とはいえ2000年以降で最悪の空室率は2012年6月の9.43%であり、現状とはまだ5%近い開きがあります。加えて、この1年間で平均家賃はほとんど下がっていません。多くの企業がコロナ収束を見据えていまだオフィスを維持しています。大家である不動産会社もまた同様の判断で、家賃減額要請に応じないことで空室が生じたとしても、ある程度は損失を甘受する覚悟で家賃を下げていないと考えられます。こうしたオフィス需要の推移もまた、テレワークの定着に疑問を生じさせる根拠といえるでしょう。

③労働者の意識変化

内閣府(2020年6月)の調査によると、テレワークを行った人のうちおよそ9割がテレワークの継続を希望しています。その理由としては、家族関係の改善が最も目立っています。

日本労働組合総連合会(2020年6月)の調査でもテレワーク継続希望は8割を超えていますが、テレワークを継続する上の課題として以下の点が挙げられているのが目に付きます。

・会社トップの意識改革:31.3%
・上司や同僚の意識改革:26.4%

労働者はテレワークにメリットを感じ継続を希望している反面、「会社トップや上司の意識」が壁として立ちはだかっている現実も見て取れます。続いて、経営者の考えを推察するファクターとして「生産性」を確認しましょう。

④生産性に与えた影響

内閣府(2020年6月)の調査から、「今回の感染症の影響下において仕事の効率性や生産性が落ちたと感じている人の割合」を、テレワーク実施率上位5業種と下位5業種で平均を取り比較しました。

テレワーク実施率が高い業種の方が、平均で効率性・生産性が落ちたと感じている人の割合が6.5%高くなっています。このことは、テレワークにあまり好感を持っていない「意識改革が必要な会社トップ・上司」にとって、コロナ収束後にオフィス回帰を推進する格好の理由となるかもしれません。

●2021年のクラウド型ビジネスツール関連企業「勝ち組」はどうなる?

株価は実体経済の先行指標といわれます。2021年の株価動向を考えるにあたっては、来年以降の長期的なテレワークの未来を想定する必要があるわけです。

2020年はテレワーク導入・推進を背景にクラウド型ビジネスツール関連企業が業績を伸ばしましたが、2020年のテレワーク事情を複数の切り口で点検したところ、以下のような懸念事項が見えてきました。

・コロナ収束が見えない段階でもオフィスワーク復帰の圧力は根強いようだ
・労働者はテレワーク継続を希望しているものの生産性の低下を感じている
・テレワークに理解を示さない、適応できない上司や会社トップが少なくない
・コロナ収束が見えてくる2021年後半~2022年以降、テレワークが縮小していく可能性がある

これらの懸念を乗り越えていく企業は、業績を伸ばし株価を上昇させることができます。そのためには、テレワーク/オフィスワークの別を超えて、原点である

  • 生産性の改善・向上への寄与
  • 顧客企業の社員(ひいては家族)の満足度向上

において商品力を高めると同時に、エビデンス(事例)を蓄積し販促ブースターとして活用していくことが求められていくでしょう。

社員から経営者への「テレワーク継続圧力」を高め、経営者には生産性向上による満足を与えられる企業こそが、アフターコロナでも「勝ち組」であり続けられる企業であると筆者は考えます。

今回取り上げた企業の中では、Chatworkやサイボウズは事例の蓄積や情報発信を積極的に行っており、ウェブサイトを一目見ただけでもこのことは明らかです。クラウド型ビジネスツールはサブスクリプション型のビジネスですが、定期的かつ肉厚な情報発信は、既存顧客とのリンケージ維持にも新規顧客の誘引にも有効です。

ALTalkでは、Chatworkのweb訪問者数・アプリダウンロード数などを確認できます。web訪問者数は既存顧客のアクティブ度と新規顧客の誘引、アプリダウンロード数は新規顧客獲得の進捗を確かめる意味で、定点観測しておきたいファクターです。

ALTalk「Chatwork」より)

サイボウズについては、成長商品であるkintoneのアプリダウンロード数の推移は要チェックです。過去記事「第3四半期決算は「営業利益25.4%増」の絶好調!今後はkintoneの成長と海外展開がカギ|サイボウズ」もご参照ください。

ALTalk「サイボウズ」より)

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

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By 個人投資ジャーナリスト

ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。
常に10年先を見据え一般庶民の資産形成に役立つ最新の情報や投資手法を発信している。20年来の賃金停滞とAI/ロボットによる雇用代替・富の集中は進むので、労働者が株を買うのは必須の「ヘッジ」であり「保険」であると考えている。個人的な投資はファンドを利用した長期バリュー投資が中心。
ツイッター:@kujiraya_fp

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