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【バイデン/菅政権でも肝いり】世界的な潮流にある「クリーンエネルギー業界」の現状と注目の銘柄

クリーンエネルギー政策を真っ先に掲げるバイデン政権が誕生し、株式市場では年初に電気自動車(EV)や、洋上風力発電などの環境関連株を物色する動きが見られました。政策は一過性でないばかりか、欧州や日本、中国など主要先進国でも同様の流れが鮮明化しています。新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興について、気候変動対策を軸とする「グリーンリカバリー」(環境に対応した経済復興)を目指す動きも見られています。

目次

  1. 世界的な潮流にある「クリーンエネルギー政策」の実態
  2. 「クリーンエネルギー政策」に大きく関与する業界とは
  3. 今後注目しておきたい「クリーンエネルギー」関連銘柄
  4. 関連業界の動向は常に注視しておきたい

1.世界的な潮流にある「クリーンエネルギー政策」の実態

バイデン新大統領はクリーンエネルギー政策を重点的に推し進める方針を明らかにしています。就任直後に、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」への即時復帰を果たしました。

バイデン大統領は就任前の公約で、2兆ドル(約210兆円)規模の「クリーンエネルギー」計画を掲げました。バイデン政権では、増税による財源と財政赤字を合わせて4兆ドルの経済対策を行うとしています。

このうち4年間で2兆ドルをクリーンエネルギーとインフラに投資する計画ですから、非常に大掛かりです。風力発電や持続可能な住宅、電気自動車などを推進することで雇用の創出も狙っています。2035年までに電力部門のCO2排出ゼロも目指しているほか、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることも宣言しています。

EU(欧州連合)では、10年間で1兆ユーロ(約120兆円)の「欧州グリーンディール投資計画」(2050年までに温室効果ガス排出をゼロにする目標)があります。

そのうち、7年間のEU予算で総事業費5,500億ユーロ(約70兆円)を「グリーンリカバリー」に投入する計画。ドイツでは500億ユーロ(約6兆円)の景気刺激策のうち、水素関連技術や充電インフラに95億ユーロ(約1.1兆円)を充当する方針。イギリスやフランスでも独自の案を出しています。

日本でも菅義偉首相が昨年10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」、すなわち脱炭素社会の実現を宣言しています。

2.「クリーンエネルギー政策」に大きく関与する業界とは

真っ先に関連する業界は自動車業界で、既に動きが出ています。クリーンエネルギー政策では、ガソリン車から電気自動車に大きく舵を切る「EVシフト」の流れが鮮明になっています。

EUでは、2021年から車の燃費規制を強化しています。欧州で販売する車には1キロメートル走行時のCO2排出量に一定の規制がかけられ、達成できなければ高額な罰金が科せられます。2020年は猶予期間でしたが、今年からは欧州、海外メーカー問わず対応に乗り出しました。

2030年までに規制が一層強化されるため、ガソリン車だけを造っているメーカーは淘汰される可能性が現実になってくるでしょう。ガソリン車の開発では、内燃機(エンジン)の部品点数だけでもかなりの数があり、また開発には職人技も必要でした。

電気自動車は駆動システムが電池とモーターだけなので、部品点数は激減します。日本では完成車メーカーを頂点に数多くの部品メーカーが系列としてピラミッドを形成してきましたが、将来的には現状を維持して生き残るのは困難になるかもしれません。

電気自動車のバッテリーなどは高性能化が求められ、改善の余地がありそうです。充電スタンドなどインフラの整備が今後も進みそうです。また、燃料電池自動車(FCV)も有望です。電気自動車は、1回の充電で走行できる距離がガソリン車に比べて短く、充電にも時間がかかります。特に長距離トラックなどはこまめに充電している余裕がないため、1回の充電でガソリン車並みの走行距離が可能なFCVが、欧州を中心に注目されています。

クリーンエネルギーでは、洋上風力発電が注目されています。陸上の風力発電では設置場所が限られ、騒音も問題になっていますが、洋上ならば安定した風が期待できる上に、騒音もさほど問題にはならず、欧州では普及が進んでいます。日本では原発問題もあり、化石燃料を使った発電が多いのが現状ですが、島国である日本は海に囲まれているため、むしろ洋上風力発電に向いているといえます。

3.今後注目しておきたい「クリーンエネルギー政策」関連銘

電気自動車ではまず、リチウムイオン電池に注目が集まります。ただ、かつては日本が強かったリチウムイオン二次電池の部材では中国や韓国のメーカーが台頭し、日本企業の存在感が相対的に低下しています。リチウムイオン電池は、正極、負極、ショートを防ぐセパレータ(絶縁材)、イオンが移動する電解液の4つの部材からできています。

かつては4部門ともに日本が首位でした。ところが大手調査機関によれば、この4部門ともに国別のシェアでは中国がトップで、負極材では実に77%が中国製とのこと。日本はいずれでも2位となっているものの、韓国の追い上げが目立っています。そんな中でも、日本企業が強みを持っている分野があるのです。

●セパレータフィルム製造装置「日本製鉄所」

例えば、セパレータは樹脂製のフィルムでできています。このセパレータフィルム製造装置を造っているのが日本製鋼所で、アナリストによれば世界シェアは7割程度を有していると見られています。中国や韓国のセパレータメーカーでも、セパレータフィルムの製造装置は日本製鋼所のものが採用されていると推測されます。どのメーカーが売り上げを伸ばしても、同社が恩恵を受ける可能性が大きく、利益率も高いと考えられます。

●リチウムイオン電池用のバインダー「クレハ」

クレハはリチウムイオン電池用のバインダー(結合材)に強みがあります。リチウムイオン電池におけるバインダーの役割は「電極活物質を接着する」こと。電池の負極では活物質である炭素材料などと集電体である銅箔を、正極では金属酸化物などと集電体であるアルミ箔を結合しますが、これらが電極構造を維持する役目を担います。クレハはこの分野で世界シェア4割程度と見られています。また、日本ゼオンもバインダーで優位性があります。

●EV駆動用モーター「日本電産/明電舎」

EV駆動用モーターでは、日本電産が世界でも先行しています。モーターとギア、インバーターなどを組み合わせたシステム製品の「E-Axle(イーアクスル)」を開発。性能と価格の優位性を武器に、中国の大手自動車メーカーに採用されており、今後は欧州向けにも拡大が期待できそうです。明電舎も、EV駆動用モーターの量産化を急いでいます。

●固体電池関連「トヨタ自動車/三井金属/出光興産」

一方、次世代の電池として「全固体電池」が注目を集めています。リチウムイオン電池の電解液は液体で出来ているため、液漏れや爆発などの危険があるとされています。これを固体にしたものが全固体電池で、安全性が高い上に、電池の小型化や充電時間が短縮できるというメリットもあります。トヨタ自動車が内製化での開発で先行しており、2020年代前半にも販売する方針と報じられています。また、三井金属や出光興産が固体電解質の生産を目指しています。

●燃料電池自動車関連「トヨタ自動車/岩谷産業/川崎重工」

トヨタ自動車は、究極のクリーンエネルギー車といわれる燃料電池自動車(FCV)である「MIRAI」でも世界の先頭を走っています。FCVの燃料は水素であり、岩谷産業が日本の水素のパイオニア。水素の製造からサプライチェーンの構築などまで事業を展開しています。川崎重工は、輸送するために不可欠な水素液化機を日本で初めて発売しています。

●洋上風力発電関連「レノバ/丸紅/東京電力/オリックス/日立造船/五洋建設・NTN」

洋上風力発電では、再生可能エネルギーベンチャーのレノバという企業が先行し、秋田県由利本荘市での事業化を目指しています。地元の関係者との話し合いも重ねて、公募で落札できれば事業化が加速すると見られています。丸紅、東京電力、オリックスなども運営企業として有望です。日立造船は、洋上風力発電の風車を立てるための技術などで実績があります。

また、海洋土木大手の五洋建設は、SEP型多目的起重機船を保有しています。洋上風力発電の風車を建設するには、設置場所まで風車や軸の部分をばらして運搬し、海中に軸を埋め込んで組み立てる必要があります。これら一連の作業を行うのがこの船ですが、船で一貫して建設作業ができるという特殊船です。風車の発電向けなどのベアリングでは、NTNが強みを有しています。

4.関連業界の動向は常に注視しておきたい

株式市場では、いわゆる「理想買い」の状況です。EVベンチャーであるテスラの時価総額の大きさが話題になっていますが、将来の業績期待が先行している格好です。電気自動車や次世代電池が普及していく過程では、価格競争があり、性能面での優劣で勝ち組や負け組が発生することが想定されます。

新興国では、性能が高くて価格が安いガソリン車の需要がまだまだ高く、洋上風力も実現するまでには少なくとも5年程度かかると予想されています。実際に収益が出るまでには紆余曲折が予想されますが、関連企業に利益が出始めて「現実買い」になったときに、業界の地図が変わるのかもしれません。

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By 経済ジャーナリスト

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年ラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。
2020年6月に独立。企業トップへの取材は1,000社以上。ラジオNIKKEI担当番組に「マーケットプレス」など。日経CNBC毎週水曜日「デイリーフォーカス」にレギュラー出演。国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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