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コロナ銘柄のモメンタムはいつまで続く?最新決算から今後を考察

コロナ禍によって伸びている企業があります。このモメンタムはいつまで続くのか。アフターコロナでもモメンタムを維持し続けるのか。コロナで恩恵を受けた代表的な銘柄をピックアップし、最新決算を確認しながら、今後の成長性を考察します。

目次

  1. コロナ禍ではどのような業界が伸びたのか
  2. 「BASE」、「弁護士ドットコム」、「出前館」の最新決算は?
  3. 「BASE」、「弁護士ドットコム」、「出前館」の今後の展開・成長性を考察
  4. ほか「EC、DX、宅配」関連銘柄のおススメを紹介

1.コロナ禍ではどのような業界が伸びたのか

まず、コロナ禍ではどのような業界が伸びたのでしょうか。ここでは、特に伸び方の良かった「ウェブ・アプリベースのコンシューマーサービス」、「DX」、「テレワーク」にターゲットを絞って整理してみます。

昨年の新型コロナウイルス感染拡大前にTOPIXが高値を付けた2020年1月20日を基準に、2020年2月以降の最高値と、2021年3月10日の各銘柄の終値との騰落率を計算してみます。

2020年春(全国)、2021年冬(主に都市部)と、2度にわたる緊急事態宣言が発令され、ステイホームのライフスタイルは、消費生活のさまざまな局面を、ウェブやスマホベースにスライドさせていく機会となりました。

最高値が2020年1月20日株価の2倍以上となった銘柄を取り上げました。なかでも目を引くのは、動画コンテンツ配信インフラを提供するJストリーム、小学生~高校生向けのデジタル学習教材を手がけるすららネット、ネットショップ大手のBASEです。BASEはこの短期間で、栄誉あるテンバガーとなりました。

2020年以前にも、働き方改革など労働者の健康と生産性向上の双方に働きかける政策が推進されていましたが、コロナ禍をきっかけに国の旗振りでデジタルシフトに注目が集まり、株式市場の一大テーマとなりました。

IT化を通じたビジネスモデルや組織の変革が求められ、特に「コスト削減圧力」と「医療現場への人流削減」要請から、医療分野におけるDXに注目が集まり、関連企業はバブル的な株価上昇を見せました。

主にホワイトカラーの職種において、テレワークにおける非効率やコミュニケーション不足解消をテーマとするSaaS銘柄も注目を集めました。これらの銘柄については、ALTalkで3月5日に公開した記事『コロナ銘柄「SaaS・EC」2月の決算発表から現状と今後を読み解く』にて分析していますのでご覧ください。

また、ステイホームを続ける消費者と外食産業への時短要請は、Uber Eatsをはじめとするデリバリーサービスへの追い風となり、出前館の株価が急上昇しました。

2.「BASE」、「弁護士ドットコム」、「出前館」の最新決算は?

次に、各業界でも注目の「BASE」、「弁護士ドットコム」、「出前館」の最新決算について見ていきます。

BASE

ネットショップ大手で2020年に業績を急拡大したBASEは、2021年2月10日に2020年12月期決算を発表しました。決算説明資料によると、当期の通期売上高は82億8,800万円で、前期比で115.3%増という好業績となりました。営業利益は8億300万円で、前年度から12億円強積み増し初の通期営業黒字を達成しました。

テレビCMやウェブマーケティング等のプロモーションを積極展開し、2020年12月にはネットショップ開設数が130万件を突破した勢いが、決算にも表れた形です。

弁護士ドットコム

ウェブベースでの弁護士・税理士向け営業支援と、一般会員向け法律相談サイト運営を手がけ、電子署名「クライドサイン」を急速育成中の弁護士ドットコムは、2021年1月25日に2021年3月期第3四半期決算を発表しました。

決算説明資料によると、当期の売上高は38億600万円で、前期比で27.1%増となりました。一方、営業利益は2億2,200万円で前年同期比2.3%減。クラウドサインが急拡大し第二の柱に育ちつつあるものの、おそらくはより利益率の大きい弁護士ドットコムの減収が響き、全体では減益となっています。

出前館

出前サービスを全国展開しUber Eatsとしのぎを削る出前館は、2020年12月24日に2021年8月期第1四半期決算を発表しました。決算説明資料によると、当期の売上高は42億2,800万円で、前年同期比で132.7%増という特筆すべき急拡大を見せました。一方、営業利益は31億9,400万円の損失で営業赤字を計上しています。

人件費や広告宣伝費の増加が足を引っ張ったとの見方が広まり、決算発表以降株価の下げ止まりが見えない状況です。中期計画で積極投資による赤字継続を公言しており、決算資料等でも営業赤字については詳細な記述を避けています。詳しくは次項で解説していきます。

3.「BASE」、「弁護士ドットコム」、「出前館」の今後の展開・成長性を考察

それでは、ここまで解説した「BASE」、「弁護士ドットコム」、「出前館」の今後の展開や成長性について考察していきます。

BASE

BASEの2020年は、ネットショップの運営・商品管理を支援する新機能を次々と提供し、既存顧客のユーティリティ改善が大いに進捗した1年でした。

その戦略は、当社の基本思想である「個人およびスモールビジネスを対象とするロングテール市場の独占」を忠実に踏襲しています。少額でもコツコツ売れていくショップで構成されるロングテール市場は、高いGMV(そのマーケットやプラットフォームで消費者が購入した商品の売上の合計額、流通取引総額)成長率や、テイクレート(ECサイト上での取引金額のうち運営企業の取り分の割合)を期待できる市場です。

BASEのビジネスモデルは、ショップの商品が売れる度に手数料が入るという仕組みであり、顧客にとっては仮に半ば休眠状態であっても、継続費用がかかるわけでもなく負担感が少ない点が特徴。個人・スモールビジネスはマンパワーが少なく、他のネットショップに移るコスト感が大規模ショップに比べて大きいため、適切な施策を継続すれば非常にロイヤリティの高い顧客層でもあります。

BtoCのEC市場はこの10年、一貫して伸び率を拡大しながら成長しています。コロナ禍の収拾に伴う一時的なダウンサイドがあっても、数年単位での成長性は固いといえます。

「短期的な利益ではなく、中長期の利益成長を目指していくための先行投資を継続」するフェーズで、2021年12月期業績予想では

●売上高   9,750百万円~10,536百万円
●営業利益  -1,433百万円~-929百万円

を見込んでいます。海外投資家を対象とした増資で調達した12,396百万円に加え、営業活動によるキャッシュフローも含め、現預金を前期比15,076百万円増加させる財務戦略の周到さも頼もしいものです。

昨年10月以降、株価は一進一退が続き直近はかなり下押ししているものの、将来性には期待が持てます。テクニカル指標も参照し適切なエントリーポイントを探りましょう。

(ALTalk「BASE」の指標より)

ALTalk指標を見てみると、アプリダウンロード数は昨年春の急上昇から徐々に低下し、コロナ以前の水準に落ち着いていますが、web訪問数は右肩上がりのトレンドを維持。顧客層である個人・スモールビジネスにおける注目度・認知度を測る意味で重要な指標です。

弁護士ドットコム

弁護士検索の際の上位表示・プロフィールの詳細表示・案件管理等業務支援のパッケージである「弁護士マーケティング支援サービス」が当社の主力サービスですが、2021年3月期に入り伸び率が急降下している点が気がかり。月額300円で法律相談ができる有料会員の売上は、昨年初頭から減少しています。すでに底打ちし昨年12月以降は純増に転じているとのことですが、引き続き推移を見守りたいところです。

クラウドサインが急速に売上を伸ばしているものの、全体では増収減益となっています。クラウドサインは拡大に応じたシステム投資が必要な段階で、おそらく利益への寄与はこれから。大企業によるビジネスプランの導入が進み、売上高は来期以降も倍速成長を見込んでいますが、利益が一気に拡大し始めるスケールを超えるまでは、投資家は我慢の時期と言えます。

株価は昨年10月以降右肩下がりとなっているものの、バリュエーションは膨れ上がっており、下げ止まりの見当をつける役には立ちません。取り組む際は、トレンドの切り返しを探り打診買いから入る慎重さが求められます。

(ALTalk「弁護士ドットコム」の指標より)

ALTalk指標を見てみると、web訪問数は下落基調。「Googleの検索アルゴリズム変更による表示順位の下落等の影響により月間サイト訪問者が減少」というコメントが経営陣より出ていますが、うまく対応して再浮上を期待したいところです。

出前館

2020年春にLINEの子会社となり、LINEがZホールディングスと統合し新生Zホールディングスの子会社となったため、出前館は実質的にソフトバンク陣営の一員に加わる形となりました。

持株会社であるソフトバンクグループは、Uber Eatsを運営するUber Technologies Inc.の株式16%を保有する大株主です。競業に強い影響力を持つ親会社に議決権の過半数を握られる形となった当社が自主自立を保つには、勝ち抜く以外の道はありません。

このことが、直近の2021年8月期第1四半期の売上高42億円に対して、「32億円という巨額の営業損失を計上してでも攻めに攻める」姿勢に影響していると考えるのは邪推でしょうか。

3月10日の「日経ビジネス」にフードデリバリービジネスに関する記事『ドコモ撤退、出前館は赤字 フードデリバリーは本当に「おいしい」か』が掲載されました。

「撤退」と取り上げられた「dデリバリー」は、表向きこそドコモのサービスですが、プラットフォームは出前館のものを使っていたといいます。「すごくもうかるわけではない一方で、マーケティングコストはかかる」事業という記事でのコメントの通り、顧客の囲い込みを目指して各社が割引クーポンを乱発、激しい陣取り合戦が繰り広げられています。

競業他社には最大のライバルUber Eats以外にも新規参入が相次ぎ、米国でシェアトップのドアダッシュも参入を予定。もはやレッドオーシャンというより血の池に近い様相です。

昨年10月に行われた2020年8月期の決算発表で中期経営計画が示され、通期営業黒字化は2023年を想定していることが明らかになりました。2022年まで投資拡大フェーズが続き、加盟店舗数拡大・ユーザー数拡大・シェアリングデリバリー(出前代行)拡大の「事業拡大の3軸」にフルスロットルで注力。フードデリバリー以外の小物物流も扱うプランもあり、デリバリー網の効率運用にも期待がかかります。

黒字化が遠い目標である現状では、加盟店舗数やユーザー数といったKPIの進捗と資金調達など財務面の双方に目配りしながら、株価のモメンタムを利用した慎重な投資が求められます。新規参入が相次ぐ段階で、Uber Eatsとの2強体制を固めようとする当社の経営方針には合理性があり、市場の大勢が決すれば利益率はたちまち改善に転じます。

株価が激しく上下動する小型株であり、一時の悪材料や金融市場の需給・経済ショックなどで株価が大きく下押しした際を待って仕込むのもよいでしょう。

(ALTalk「出前館」の指標より)

ALTalk指標を見てみると、アプリダウンロード数は3回の山を形成しつつゆるやかに右肩上がり。最初の山は昨年春の緊急事態宣言、直近の山は年頭の緊急事態宣言によるものです。昨秋の山は、クーポンキャンペーンを悪用して無限に無料飲食できる祭りがあったためで、攻めの姿勢ゆえの詰めの甘さといえるかもしれません。

4.ほか「EC、DX、宅配」関連銘柄のおススメを紹介

日本が世界における圧倒的なトップランナーと「ならざるを得ない」分野であるという点で、医療DXに注目しています。

世界に先駆けて超高齢化社会を突き進んでいる日本社会は、実際のところ団塊ジュニアが亡くなるまで医療負担が減ることはありません。病院運営・医師の働き方・薬局運営・介護との連携に至るまで、DXによる効率化・最適化は喫緊の課題であり、やり遂げた暁には世界へ輸出できる有望な商材となるでしょう。

エムスリーは海外事業にいち早く着手しており、1月29日に行われた2021年3月期第3四半期決算発表によれば、海外事業の売上高は全体の23.7%、セグメント利益は19.0%に及んでいます。日経平均採用銘柄の中でも屈指の高バリュエーション銘柄であり、当面は神経質な展開が続きそうですが、長期的には最大の有望株と考えています。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

免責事項

記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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コロナ銘柄「SaaS・EC」2月の決算発表から現状と今後を読み解く

2020年はコロナ禍を追い風に、業績を伸ばしてきた「SaaS」「EC」の関連銘柄。株価も順調に上げてきました。これら1年間の業績や株価は、2月の決算発表にどのような影響を与えたか。また今後はどのような展開が予測されるのか。注目の銘柄をピックアップして検証します。

目次

  1. 「SaaS」「EC」関連企業 最新決算ダイジェスト
  2. 今後注目しておきたい「SaaS」「EC」関連銘柄
  3. 今後の展望は?見通し・シナリオ・リスク等

1.「SaaS」「EC」関連企業 最新決算ダイジェスト

まずは「SaaS」と「EC」における、代表的な企業の最新決算発表を見ていきましょう。

SaaS

●サイボウズ

グループウェア最大手のサイボウズは、2月12日に2020年12月期決算を公開しました。

決算説明資料によると、2020年12月期の通期売上高は156億7,400万円で、前期比で16.8%増となりました。営業利益は22億7,000万円で31.1%増と、コロナ禍という追い風を受け絶好調でした。

●Chatwork

国内ビジネスチャットツールの草分け的存在であるChatworkは、2月12日に2020年12月期決算を公開しました。

決算説明資料によると、2020年12月期の通期売上高は24億2,400万円で、前期比で33.6%の大幅増となりました。営業利益は3億2,700万円で前期比321.1%増と、こちらもコロナ禍という追い風を受け絶好調でした。

●フリー

クラウド会計ソフトでトップを走るフリーは、2月10日に2021年6月期第2四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、第2四半期の累計売上高は46億1,600万円で、前年同期比で50.3%の大幅増となりました。営業利益は7億2,000万円の損失で営業赤字を計上するも、赤字額を33.5%圧縮しました。

●マネーフォワード

家計簿アプリから業容を拡大中のマネーフォワードは、1月14日に2020年11月期決算を公開しました。

決算説明資料によると、2020年11月期の通期売上高は113億1,800万円で、前期比で58.1%の大幅増となりました。営業利益は28億400万円の損失で営業赤字を計上し、14.6%の赤字拡大となりました。

EC

●楽天

国内Eコマース大手の楽天市場を運営する楽天は、2月12日に2020年12月期決算を発表しました。

決算説明資料によると、2020年12月期の通期売上高は1兆4,555億3,800万円で、前期比で15.2%増となりました。営業利益は938億4,900万円の損失で営業赤字を計上。楽天モバイルの投資が響いています。

楽天市場を擁するセグメント「インターネットサービス」の売上高は8,201億1,500万円で前期比10.3%増となりました。セグメント損益は401億1,400万円、前期比62.6%の減益でした。

●BASE

ネットショップ大手のBASEは、2月10日に2020年12月期決算を発表しました。

決算説明資料によると、2020年12月期の通期売上高は73億2,100万円で、前期比で128.9%の大幅増となりました。営業利益は9億4,200万円を計上し黒字転換。コロナ禍という追い風を受け絶好調でした。

●ZOZO

ファッション通販サイトZOZOTOWNを運営するZOZOは、2月12日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、第3四半期の累計売上高は1,084億8,000万円で、前年同期比で18.1%増となりました。営業利益は337億8,500万円で前年同期比74.3%の大幅増を記録しました。

まとめ

「SaaS」と「EC」、いずれの業界も、コロナ禍という未曽有の危機をたくましく生かし、成長を遂げた企業が連なっています。ワクチンの接種が開始され、脱コロナ禍に向けて進んでいく今年から来年の来たる収束を見据えて、注目すべき企業を深掘りしていきます。

2.今後注目しておきたい「SaaS」「EC」関連銘柄

●フリー/マネーフォワード

マネー系のビジネスクラウドを商材とする両社は、確定申告・会計など直接競合するアプリもあり、売上高が著増している点も共通しています。しかし、PSR(株価売上高倍率)を比較すると、フリーの85.99倍に対してマネーフォワードは20.57倍と評価にかなりの差が付いています。

国内株式市場の大型株指数(MSCI Japan)のPSR 1.07倍、小型株指数(MSCI Japan Small-Cap)の0.65倍に比べれば、いずれも天空に届く勢いの超成長株水準ではあるものの、両銘柄に対する投資家の期待に4倍もの差がある点は、深掘りしておきたいところです。

直近の4四半期分の売上高・営業利益の確認と業容の点検、中期計画なども踏まえて、両社の成長性を検討していきます。

【直近四半期(単期)の数値】

フリーは2020年10~12月、マネーフォワードは2020年9~11月の最新四半期短期の業績を比較します。時期が1カ月ずれていることもあり、売上高・営業利益の絶対額はここでは触れません。売上高の成長率は同程度で、成長性はどちらも目を見張るような高水準です。

一方、営業利益率はフリーが18.7%ダウン、マネーフォワードが35.9%のダウンと差が付いています。いずれも成長局面にあり利益を追求するフェーズにまだ入っていないことが見て取れますが、投資家は早期の黒字転換を期待したいところです。

売上総利益(粗利)率の比較ではフリーが79.2%、マネーフォワードが68%となっています。営業利益率の差は、販管費を差し引く前の収益性で11%程度、販管費(人件費等のコスト)で6%程度と分解できます。

まずは売上を拡大するための戦略も当然重要ですが、この部分の差が広がっていくと、この先の利益再投資・事業拡大・発展に格差が生じてくる可能性があります。

マネーフォワードは「Money Forward Business」「Money Forward X」「Money Forward Home」「Money Forward Finance」という4つの事業ドメインで構成され、事業の多角化(27レーベル)が進んでいます。

なかでも「Money Forward Business」が売上高・成長率とも最大で、他の事業ドメインもおおむね順調に成長していますが、Businessとの比較では成長性でやや後れを取っています。

経営陣は今後の成長戦略として「Businessドメインへの戦略的な投資」「複数事業の運営によるシナジー創出」を掲げ、二兎を追っていくことを宣言していますが、BtoB事業とBtoC事業が混在しており、シナジーの拡大は道半ばです。

多角化が進捗し、投資家にエコシステムとして認知されるまでは、フリーとの比較で「コングロマリット・ディスカウント」(事業の多角化が響いて市場の評価が低くなる現象)が解消されない可能性があります。

両者の今後の業績に対するアナリストのコンセンサスは以下の通りです。

マネーフォワードの2022年度営業利益の成長率予想は、257.1%のプラスと目を見張るものがあります。アナリストのコンセンサスは本来は鰯の頭程度に捉えるべきですが、中・長期保有前提ならマネーフォワードにも目があると考えても悪くはないでしょう。

先行指標

ALTalkでは、両社のweb訪問数をチェックできます。上がフリー・下がマネーフォワードで、フリーは昨年6月からページビューが急上昇している一方、マネーフォワードの伸びはフリーほどではありません。本来なら、後者はBtoC事業を営んでいることを勘案すると、より不特定多数の閲覧を集めやすいはずです。これらのweb訪問数の差は、見掛け以上に成長性・株式評価の格差を暗示しているかもしれません。

(ALTalk「フリー」より)
(ALTalk「マネーフォワード」より)

●BASE

BASEは2020年春の緊急事態宣言以降、巣ごもり消費の活発化を取り込み、劇的な成長を遂げました。昨年後半から大量出稿されたテレビ・インターネット広告を、実際に目にした方もおられるかもしれません。2021年以降、アフターコロナに向けて特需が沈静化していく当社の中期予想を確認していきます。

決算説明資料を見ると、2021年は成長がいったん「踊り場」入りするものの、強気の投資を継続し2022年以降は高成長を復活させるとしています。BASE事業では、プロモーション投資をさらに強化して、ニッチな商品を息長く売っていく「ロングテール市場」におけるプレゼンスを確固たるものとし、中長期的な高成長をもくろんでいます。

売上高は97.5億~105.36億円程度に着地させ、17.6%~27.1%程度の増加を見込みます。先行投資の拡大を踏まえ、営業利益は-9.29億~-14.33億円程度の営業損失見込みとなっていますが、2月10日の決算発表以降、当社の株価は8.4%の上昇を見せています(2月22日現在)。この間、マザーズ指数は0.7%下落しており、決算内容が好感されたといえそうです。

BASEは月次の発表を行っていないため、ALTalkのオルタナティブデータや株式情報サイトでニュースを確認しつつ、昨年12月に発生し勢いを増しているモメンタムを生かしたトレードが、投資家のオプションに入ってきます。

(ALTalk「BASE」より)

BASEのweb訪問数は、昨年5月以来、増加の一途にあります。下落トレンドの兆候が見えてきた際には、業績を今一度確認して、慎重に臨みたいところです。

3. 今後の展望は?見通し・シナリオ・リスク等

●フリー/マネーフォワード

フリーの決算説明資料によると、想定顧客の分析において「有料課金ユーザー企業数は、個人及びSmallセグメントを中心に安定的に増加」としています。具体的には個人事業主450万人、20名以下企業150万社が対象です。

この部分は、開業率・廃業率の影響を受けます。開業率が高くなればフリー・マネーフォワードのサービスを利用する顧客は増えますし、廃業率が増加すれば減るでしょう。厚生労働省「雇用保険事業年報」を確認すると、開業率は2008年に底をつけた後、2013年から上昇の角度が確度が急になっています。廃業率は2009年に天井をつけた後下降の一途です。

リーマンショック後の米国好景気を受け、さらに2013年以降は、アベノミクスの追い風を受けています。近年ではウーバーイーツに代表されるギグエコノミーの浸透や、電通やタニタによる社員の個人事業主化を先駆けに、想定顧客は増加していくと考えられます。

とはいえ、開・廃業率は景気動向に大きく左右されることを等閑視するべきではありません。ワクチン接種の進展と巨額の財政支出に支えられ、コロナ収束を先取りする米国景気回復の恩恵を受け、日本経済も回復が見込まれる2021年です。

株価も上昇が期待されますが、忘れ去られている金利上昇からの景気の「踊り場入り」を金融市場が先取りする局面もないとは言えません。

両社とも、上場後の不景気をまだ経験していません。まだ過剰におびえる段階ではありませんが、この点に留意して四半期ごとの経営陣のコメントを聴いていく必要がありそうです。

●EC各社

2019年12月の野村総合研究所による予測では、EC(BtoC)市場は2020年の20.8兆円から2022年には23.4兆円、2025年には27.8兆円への成長が見込まれていました。2020年~2025年の成長率は、年率6%程度の想定です。

コロナ禍で2020年のEC市場の成長は上振れた可能性がありますが、コロナ収束を徐々に織り込んでゆき、元々の想定成長率程度へ収れんしていくと考えるのが穏当です。BASEの中期予想で見たように、成長の「踊り場入り」で株価のボラティリティが増す局面もあり得ます。

問題は、投資判断に際して、コロナ収束後の消費におけるECの定着をいかに織り込んでいくかということでしょう。都市圏⇔郊外・地方の人口移動が一つの目安になる可能性があります。都市からの人口流出はリアル消費離れ=ECの定着を、都市回帰はリアル消費の回帰=EC離れを、それぞれ想起させます。

2月25日には、共同通信のニュースで「東京都、7カ月連続で人口流出」という記事が出ました。都市を離れているのがコロナ禍で職を失った方やオンライン講義で都市に居住する意味を失った学生なのか、あるいはテレワークの定着で良い住環境を求めたファミリー層なのかによって、コロナ後の都市回帰フェーズの様相は変わります。引き続き、報道はチェックしておくべきでしょう。

●SaaS・EC全般

20年を超えるデフレ・ディスインフレに慣れ切った私たちは、長期金利の上昇と早期のテーパリング(金融緩和の縮小)観測で持ち切りの米国金融市場を見ても、それが日本に波及するというイメージは相当持ちにくくなっています。「金利上昇を心配するなら、まず金利とやらを屏風から出してください」というところではないでしょうか。

実は日本でも、長期金利はじわりと動いています。2019年8月28日に-0.287%の底をつけ、その後しばらくは0%~0.05%のレンジで推移しましたが、昨年末から動意づいて2021年2月25日には0.138%まで上昇。超成長株には、これがボディーブローのように効いてきます。

成熟企業と異なり、事業資金の外部調達が命綱である超成長企業において、資金調達コスト上昇に直結する長期金利は、わずかでも上昇してほしくはありません。投資家サイドにとっても、超成長企業の収益発生が比較的先の未来であることを考えれば、長期金利=割引率の上昇は割引キャッシュフローを減少させ、株式の現在価値を損ない、結果的に株価下落につながります。すでにバリュエーションは水の入った風船のようにパンパンです。たとえ数十ベーシスであっても、看過していれば針の切っ先となる可能性があるのです。

取り上げた銘柄の中では、楽天・サイボウズ・ZOZO以外はいずれもアベノミクス以降の上場であり、これらの銘柄に関心を持つ投資家の多くは、わずかな金利上昇が超成長株のボラティリティーを高めるシナリオをおそらく想定していません。金利上昇局面とその対策を事前に想定しておかなければ、平静を保って適切に判断することはできません。ホームワークを確実にこなす投資家だけが報われる展開が忍び足で迫り来ています。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

免責事項

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飲食・旅行予約サイトの決算は?現状と今後の展望を考察

コロナ禍によって大打撃を受けた飲食業界と旅行業界。今回は、その中でも「予約サイト」をターゲットに、実際どのようなダメージを受けたのか、2月の決算発表から読み解きます。また決算発表報告書をもとに、今後の予測や注目の銘柄についても解説・紹介していきます。

目次

  1. 飲食系と旅行系「予約サイト」の決算内容
  2. 今後注目しておきたい「飲食・旅行予約サイト」関連銘柄
  3. 飲食関係や旅行関係の「予約サイト」の今後を読む

1.飲食系と旅行系「予約サイト」の決算内容

●飲食系予約サイト

主な飲食系予約サイトのうち、上場企業が運営するものは以下の通りです。

【上場企業が運営する飲食系予約サイト一覧】

この中から、運営母体への売上・利益の寄与が大きく、サービスへの注目度が高い「ぐるなび」と「食べログ」について見ていきましょう。

〈ぐるなび)

ぐるなびは2月4日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、2020年4~12月の累計売上高は120億4,100万円で、前年同期比で48.6%の大幅減少となりました。営業利益は62億5,000万円の損失計上となり、営業赤字に転落しました。

期間別に見ると、売上高は前年同期比で4~6月が77.3%減、7~9月が46.0%減、10~12月が22.7%減と、苦しいながらも徐々にマイナス幅を圧縮していました。

昨年春の緊急事態宣言で大打撃を受けた後、9月のGo To Eatキャンペーン開始を受けて回復基調にありましたが、年明けからの緊急事態宣言が再び業績に影を落としていることは言うまでもありません。

財務を見ると、純損失計上に伴い、期初と第3四半期との比較で自己資本が65億円の減少となっています。資金繰りや事業存続のリスクは当面ありませんが、当期の本決算は要注目です。悪材料出し切りと説得力のある来期の展望が、安値拾いが奏功する展開も視野に入ります。

〈食べログ)

食べログを運営するカカクコムは、2月3日に2021年3月期第3四半期決算を公開しました。

決算説明資料によると、食べログ部門の2020年4~12月の累計売上高は135億9,900万円で、前年同期比で31.5%の大幅減少となりました。

期間別に見ると、前年同期比で4~6月が72.5%減、7~9月が30.8%減、10~12月は4.6%増となり、Go To Eatキャンペーンが回復の後押しとなりました。回復フェーズにおいて、売上高も近く、かつ最大のライバルであるぐるなびに差を付けてきた点は注目に値します。

カカクコムとしては、2020年4~12月の累計売上高は377億6,800万円で前年同期比16.5%減、営業利益は134億6,900万円で前年同期比35.5%減となりました。食べログ以外の事業もコロナ禍で売上を落としており、食べログの落ち込みをカバーし切れない展開となりました。

●旅行系予約サイト

主な旅行系予約サイトのうち、上場企業が運営するものは以下の通りです。

【上場企業が運営する旅行系予約サイト一覧】

〈楽天トラベル)

楽天トラベルは、運営母体である楽天の事業セグメントでは「国内EC」に分類されています。コロナ禍で打撃を受けたトラベルと、コロナ禍が追い風となった楽天市場が同一セグメントであり、楽天トラベルが単体でどの程度売上高・営業利益に影響しているかは、決算説明会資料等の公開資料からうかがい知ることはできません。

参考までに、国内ECの売上高は1,785億2,800万円で前年同期比35.1%増となりました。営業利益は209億7,600万円、前年同期比70.3%増を記録し、楽天市場の寄与が大きいことがうかがえます。

〈エアトリ)

エアトリは、航空券・新幹線の予約に強い総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営する東証1部上場企業です。2月12日に2021年9月期第1四半期決算を発表しました。

決算説明資料によると、2020年9月期第3・4四半期と2021年9月期第1四半期の累計(2020年4~12月)売上高が143億5,800万円で、前年同期比33.7%減となりました。営業利益は4億600万円の損失となり、営業赤字に転落です。

期間別に見ると、売上高は前年同期比で4~6月は30.4%減、7~9月は51.3%減、10~12月は17.8%減と、やはりコロナ禍に打ちのめされる展開でした。しかし投資事業やヘルスケア事業など、業務の多角化を図りつつGo To トラベルキャンペーンの恩恵を受け、10~12月は前年同期比で売上高は落としながらも営業利益は前年同期比超えを達成しています。苦境をバネに急ピッチで改革を進める注目企業です。

***まとめ***

飲食・旅行それぞれの予約サイト運営企業の決算には、コロナ禍がこの業界に与えた痛手の巨大さがまざまざと表れていました。しかし一方で、米国・英国・ロシア・中国などで開発されたワクチンの接種が世界各国で進み、日本でも米国産ワクチンの接種が2月17日に開始されています。首都圏・近畿などの都市部では、高齢・壮年者(55歳以上)を対象に年内にも接種を完了できるという予測も報道されており、早ければ来年春の集団免疫形成が見えてきています。

こうした状況を踏まえ、脱コロナ禍に向けて進んでいく今年、そして来年の収束を見据えて、注目すべき企業を飲食・旅行それぞれ1社ずつ深掘りしていきます。

2.今後注目しておきたい「飲食・旅行予約サイト」関連銘柄

〈カカクコム(食べログ)〉

飲食系予約サイトの二強を形成する食べログとぐるなびでは、昨年春の緊急事態宣言以降の「傷の深さ」に明らかな差が表れていました。

2020年・売上高増減の推移、前年同期比は下表のとおりです。

春から冬へと季節が進む間に、両サービスのレジリエンスの差は開く一方でした。この点については、「週刊東洋経済Plus」《データ比較でわかるグルメサイト大手の実力 コロナ禍で明暗分かれた「食べログ」と「ぐるなび」》が昨年末に詳細かつ妥当な比較検討を行っています。

この記事を要約すると、

  • コロナ禍以前から成長軌道にあった食べログ、下降線をたどっていたぐるなび
  • 集客力に優れる食べログ、飲食店寄りのぐるなび
  • 営業利益率が極めて高い食べログ(カカクコム)、サポート人員を抱えてコスト高のぐるなび

以上のような違いがあるとしています。

ユーザー見ると、食べログは「グルメエッセイ」的であり、ぐるなびは「チラシ」に近いという違いがあります。

食べログの圧倒的な口コミのボリュームは、例えば「3週間先の初デートでは、どこで食事をしようか」と考える若い男性に、3週間のうちに幾度となく食べログアプリを起動させるほどのコンテンツ力を持っています。

また、口コミを集めやすい「コスパ」「おしゃれ」「新しい」といった特徴を持つ店は個人経営が多く、都市部に多いという特徴あります。

これに対し、忘年会や地域・趣味の会合などを取り仕切る幹事が店選びをする際には、ぐるなびが役に立ちます。個人経営店が醸し出すニュアンスや、一つ一つの料理のこぎれいさを伝える写真は、この際不要です。

たくさんのチラシを比較する幹事にとっては、店舗側が幹事に伝えたい情報を手際よく見て取れるページ設計の方が都合よく、出席者にとっても地図を見る際に一瞥する程度なので過不足ありません。中小~大規模のチェーン店のほか、郊外にもぐるなびの顧客が幅広く存在しています。

「グルメエッセイ」と「チラシ」。特徴の違いが、コロナ禍で両者の業績に影響を及ぼした可能性があると考えられます。

昨年春の緊急事態宣言中はもちろん、解除後でも多くの職場・地域・趣味の集まりなどにおける食事会・飲み会に関しては自粛が続いています。このことは両者のどちらに、よりマイナスに働くでしょうか。我慢を強いられる生活の中で、たまに親友や恋人・家族と一緒に行く外食では、どんなお店に行きたくなるでしょうか。どんな気持ちで、どのように探すでしょうか。

カカクコムの最新の決算説明資料を確認すると、食べログ有料プラン契約店舗数は2020年12月の5.99万店から2021年1月の5.88万店と、1.8%の微減にとどまっています。食べログは契約店舗のサービス休会(料金が発生しない)を受け付けていますが、顧客ロイヤリティーの高さが見て取れます。

顧客の経営サポート強化にかじを切るぐるなびと、スマホサイトやアプリの充実といった集客を強化する食べログは、コロナ禍で明確にすみ分けていくことになりました。感染制御・収束で発生する個人の食欲・交際の大復活をこれまで以上に独占できるであろう食べログ(カカクコム)の業績は、今後も要注目です。

ALTalkで食べログ(カカクコム)のアプリダウンロード数を長期で見ると、昨年春のコロナ禍以降、Go To Eatキャンペーン開始時の急上昇を除いて低調にあることが見て取れます。1~3カ月程度の短期で上昇基調が確認できれば、業績浮上のシグナルとなるかもしれません。

(ALTalk「カカクコム」の指標より)

〈エアトリ〉

エアトリの最新決算説明資料(2021年9月期第1四半期)と1年前のそれを見比べてみると、経営の力点が様変わりしています。

最新資料では、冒頭から成長戦略「エアトリ2021“リ・スタート”」をうたい上げ、6つの事業ドメインの連携を「エアトリ経済圏」という用語でアピールしています。1年前の資料では、これらは影も形もありませんでした。

この間、エアトリは新たに「ヘルスケア事業」という事業ドメインを立ち上げてPCR検査に参入。クリニックと提携し、国内検査希望者の予約代行と、海外渡航者向けの陰性証明書発行を開始しました。投資事業の規模も前年度比で19%増加させ、急ピッチで多角化を進め収益減を埋めようとしています。

その結果、セグメント業績を見ると、4つの事業ドメインを含む「オンライン旅行事業」の売上高は前年同期比21.13%減、「ITオフショア開発事業」は15.98%減となったところ、「投資事業」は315.49%増と急速に成長しています。オンライン旅行事業売上減の中でもセグメント利益は倍増させており、リストラの効果が表れています。

コロナ禍において、事業の再構築と体質強化をなりふり構わず進めるエアトリは、感染制御・収束後に業績を急回復させ、さらなる高みをうかがうための組織づくりをぬかりなく行っているといえるでしょう。中国をはじめとするグローバルビジネスの急回復も追い風となるはずです。

エアトリのアプリダウンロード数も、昨年春のコロナ禍以降の低調から脱出できていません。慎重を期したい投資家は、1~3カ月程度の短期で上昇基調を確認してからのポジション取りが無難かもしれません。

(ALTalk指標「エアトリ」より)

3.飲食関係や旅行関係の「予約サイト」の今後を読む

今冬の緊急事態宣言は、2カ月に及ます。冬場に強くなったウイルスの勢いが次第に衰えて、昨年同様の経過をたどるなら、Go To キャンペーンが再開され、当業界にとって晩秋までは再び穏やかな回復フェーズとなることが予想されます。

来年まで時間軸を伸ばせば、ワクチン接種による集団免疫形成後のペントアップ需要は、非常に大きいものとなるでしょう。大きな収穫を得るために、曇り空の1年にダイエットと筋トレを着実に行っている企業であるかどうかを、投資家は見極めていく必要があります。

以上をメインシナリオと考えていますが、続いてリスクファクターを点検していきます。

1. ワクチン接種の進捗

日本におけるワクチン接種希望者は6割程度という調査があり、これは他国に比べてです。希望者が7割を超え、接種が進んでいる米国でも、集団免疫獲得は秋以降と見込まれています。日本の集団免疫形成は次の冬には間に合わないでしょう。医療機関の疲弊が進んでいることもあり、年内にもう一度、緊急事態宣言があるかどうかが当業界にとって最大の業績リスクとなります。

2. 政治的リスク

昨夏~冬にかけてのGo Toキャンペーンが、飲食・旅行予約サイトのつかの間の回復に一役買ったことは明らかです。しかしGo Toは、関連業界の好意的な受け止めをよそに、世論の受け止めは決して良くありません。旅行や外食に行ける高所得者だけを対象とした優遇策であるばかりでなく、ウイルスを蔓延させた元凶との批判もあります。

報道で伝わるところでは、このキャンペーンは自民党・官邸実力者の肝いりで強力に推進された政策といわれています。その政権発足からわずか5カ月で、内閣支持率は危険水域(アンダー30%)に近づいています。政変が起こって看板が変わり、後ろ盾がようなことがあれば、キャンペーンの再開も疑わしくなります。政権の動静には十分に注意を払っておくべきでしょう。

3. 東京2020オリンピック競技大会

東京2020オリンピック競技大会の開催は極めて流動的になっています。

当業界にとっての最良のシナリオは、検疫によって海外からの観光客を事実上シャットアウトし、国内からの観客を入れて行われるケースです。この場合、飲食・旅行予約サイトともに恩恵が及びます。

感染鎮静化の失敗によるオリンピックの中止は、いまや想定内といえそうです。ただし医療機関が対応できる程度のコロナ再燃であれば、当業界も穏当な業績回復が進むでしょう。

最悪のケースは、無観客での開催です。オリンピックムードによる盛り上がりが2週間程度続くとすれば、飲食予約サイトは利用者増が想定されます。しかし、それによって市中感染が再燃となれば、またしても緊急事態宣言が発令されるという展開もあり得ます。また旅行予約サイトにとっては、無観客でのオリンピック開催では利得がなく、感染拡大のリスクのみ大きくなる展開も考えられます。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

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記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

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アフターコロナでどう変わる? テレワーク関連株の2021年【クラウド型ビジネスツール関連企業:編】

ワクチン開発の進展により、アフターコロナが現実味を帯びてきました。新型コロナウイルス感染拡大により、好調な伸びを見せてきたテレワーク関連企業、特にクラウド型ビジネスツールを提供する企業の業績と株価は、2021年どう動くのか。ALTalkでカバーしている「Chatwork」「サイボウズ」をはじめ、競合他社の先行きを見てみましょう。

目次

  1. 2020年(コロナ禍)におけるテレワーク関連企業を振り返る
  2. 個別のクラウド型ツール業界の成長にフォーカス
  3. 個別銘柄における業績の推移と株価の動向
  4. 今後どのような展開となるか、業界の先行きを占う

1. 2020年(コロナ禍)におけるテレワーク関連企業を振り返る

内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2020年6月)によると、新型コロナウイルスの蔓延を受け全国でテレワークを定期的に行った人は28.4%と4人に1人を少し超える程度で、正規雇用に限ると35%弱に達しました。

この比率を2020年12月現在の就業者数で換算すると、約1,893万人がテレワークを定期的に行ったことになります。巨大なテレワーク特需が巻き起こったことは想像に難くありません。テレワークで業容を拡大した企業の例を挙げてみます。

テレワークの導入を追い風に、大きく売上高・営業利益を伸ばした企業です。各社直近・四半期決算ベースの売上高・営業利益の向上率は以下の通りです。

中にはSBテクノロジーやパソナなど、複数のセグメントを抱えテレワーク関連の売上がメインではない企業もありますが、総じて売上高・営業利益ともに大幅に増加しています。

TOPIX(東証株価指数)の1株当たり当期純利益は、2019年12月時点で130.70円、2020年12月時点で103.44円でした。純利益と売上高・営業利益なので完全にパラレルな比較とはなりませんが、上場企業の96%(時価総額)の収益がトータルで20%以上の減益にあえいだ時期に、テレワーク関連企業が勝ち組だったことは明らかです。

2. 個別のクラウド型ツール業界の成長にフォーカス

それではここで、代表的なテレワークツールに焦点を絞って検証してみましょう。

【グループウェア・ビジネスクラウド】

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(株式会社富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長が見込まれています。この調査におけるグループウェアには、当記事で触れるビジネスクラウドも含まれています。

グループウェア・ビジネスクラウドは導入社数で見ると、「Microsoft 365」と「サイボウズOffice」がそれぞれ20%程度を占めており、ライバルを大きく引き離した2強体制を形成しています。サイボウズの大企業向けグループウェアである「Garoon」を加えると25%に達し、サイボウズだけで市場の1/4を占めています。

グループウェアとは、メールやスケジュール管理、メッセージによるコミュニケーションの円滑化などをサポートするもので、その草分けといえる「サイボウズOffice」はよく知られた存在です。データベース・表計算等の個別アプリを統合したもので、導入部署に合わせたカスタマイズが可能なビジネスクラウドとしては、「Microsoft 365」「Google Workspace」などがメジャーどころで、これらはグループウェアに含められることもあります。

サイボウズOfficeはサイボウズが開発・販売している商品ですが、「Microsoft 365」や「Google Workspace」は、ベンダーがマイクロソフトやグーグルに代わり、顧客企業に対してツールの導入や研修などを行います。例えば、上の表で紹介したSBテクノロジーは「Microsoft 365」のベンダーです。

サイボウズは自社オリジナルのビジネスクラウド「kintone」を擁しており、目下の成長商品です。この年末年始、「kintone」のテレビCM出稿量はかなりのボリュームに及んだものと推察されます。

【ビジネスチャット】

IT調査・コンサルティングを行うITRの調査によれば、ビジネスチャット市場の2019年度の売上金額は105億6,000万円に達し、前年度比41.6%増となりました。2019年~2024年にかけてのCAGR(年平均成長率)は21.9%を想定し、2024年度には300億円に迫る市場規模に拡大すると予測されています。

ビジネスチャットでは国内産アプリのChatwork・LINE WORKSと、外国産アプリのSlack やMicrosoft Teamsが知られた存在です。

※SlackとMicrosoft Teamsの導入社数は海外企業を含む

この中では、ChatworkとSlackがビジネスチャットを本業としています。Slackは米国上場企業であるため、当記事ではChatworkについて取り上げます。

3. 個別銘柄における業績の推移と株価の動向

クラウド型ビジネスツール業界における主要プレイヤーの業績動向をまとめます。

事業セグメントが複数あるナレッジスイートとSBテクノロジーに比べ、クラウド型ビジネスツールの割合が大きい企業の方が、売上高成長率が大きい傾向が見て取れます。

表を見ると、ネオジャパンを除き証券会社アナリストによるコンセンサス予想は各社とも2020年度並みの成長率が予想されています。

売上成長は既存顧客に対する追加サービスの訴求および値上げ、そして新規顧客の開拓によって実現されます。コロナ禍が1年に迫る中、はたして今年の新規需要は、前年度の言わば「特需に基づく売上成長」と同様の水準を見込むに足るでしょうか。

2020年度の本決算で投資検討先の経営陣が2021年度の業績予想を発表する際には、前提条件を真っ先にチェックする必要があるでしょう。

各社の株価指標(バリュエーション)は以下の通りです。

サイボウズ・ネオジャパン・rakumo・Chatworkの専業4社は、合理的に解釈できる水準のバリュエーションではありません。超長期での成長性を見込んで投資するか、あるいは割安・割高など考えず、月次報告や四半期決算で確認できる業績予想の達成度や事業の成長性、投資動向と市場のモメンタムをうかがいながら、出入りのタイミングを計るのが投資家の基本姿勢といえそうです。

4. 今後どのような展開となるか、業界の先行きを占う

各社の個々の事業や成長性についての評価は行わず、テレワークという日本社会にとっての新しい働き方がもたらした変化と、近い未来についての見通しを検討していきます。

テレワークがもたらした影響・変化を以下の点に分けて考えます。

①公共交通需要
②オフィス需要
③労働者の意識変化
④生産性に与えた影響

①公共交通需要

都市部公共交通需要の変化というレンズでテレワークを見てみましょう。東京都営地下鉄と、JR東海による名古屋近郊の輸送量の推移は以下の通りでした。

2020年1月の水準を100とした輸送量の変化を見ています。2020年4~5月は緊急事態宣言で最も輸送量が少なくなった期間で、2020年10~11月は2度の緊急事態宣言のはざまで最も輸送量が多くなった期間です。東京と名古屋近郊で最高・最低の時期に微妙なズレがあるため、時期に幅を持たせてまとめています。

東京・愛知ともども、秋には公共交通の輸送量は7~8割まで回復していました。飲食・観光・娯楽分野などの復活と同時に、オフィスワーカーの通勤復活の寄与があったと推察できます。

2020年の10~11月には米国・英国のワクチン開発はまだ治験段階にあり、コロナ収束が視野に入る前でも、新規感染がある程度収まれば、オフィスワークは回復していることが分かります。ワクチンによる集団免疫が達成されれば、オフィスワーク回帰への流れはさらに加速する可能性があり、2022年以降のテレワーク事情を遠望する際の一つの材料となるでしょう。

とはいえ、これだけでは交通需要をオフィスワークとそれ以外の仕事・レジャー等で切り分けできていないので、先を占うには不十分です。続けてオフィスの実需を点検します。

② オフィス需要

東京都心ビジネス地区の平均空室率(三鬼商事調べ)は、2020年1月の1.53%から12月には4.49%へ、2.96%の上昇を示しました。シンクタンクの日本総研は、「テレワーク化でオフィス需要が大幅減に」というリサーチを発表しています。

とはいえ2000年以降で最悪の空室率は2012年6月の9.43%であり、現状とはまだ5%近い開きがあります。加えて、この1年間で平均家賃はほとんど下がっていません。多くの企業がコロナ収束を見据えていまだオフィスを維持しています。大家である不動産会社もまた同様の判断で、家賃減額要請に応じないことで空室が生じたとしても、ある程度は損失を甘受する覚悟で家賃を下げていないと考えられます。こうしたオフィス需要の推移もまた、テレワークの定着に疑問を生じさせる根拠といえるでしょう。

③労働者の意識変化

内閣府(2020年6月)の調査によると、テレワークを行った人のうちおよそ9割がテレワークの継続を希望しています。その理由としては、家族関係の改善が最も目立っています。

日本労働組合総連合会(2020年6月)の調査でもテレワーク継続希望は8割を超えていますが、テレワークを継続する上の課題として以下の点が挙げられているのが目に付きます。

・会社トップの意識改革:31.3%
・上司や同僚の意識改革:26.4%

労働者はテレワークにメリットを感じ継続を希望している反面、「会社トップや上司の意識」が壁として立ちはだかっている現実も見て取れます。続いて、経営者の考えを推察するファクターとして「生産性」を確認しましょう。

④生産性に与えた影響

内閣府(2020年6月)の調査から、「今回の感染症の影響下において仕事の効率性や生産性が落ちたと感じている人の割合」を、テレワーク実施率上位5業種と下位5業種で平均を取り比較しました。

テレワーク実施率が高い業種の方が、平均で効率性・生産性が落ちたと感じている人の割合が6.5%高くなっています。このことは、テレワークにあまり好感を持っていない「意識改革が必要な会社トップ・上司」にとって、コロナ収束後にオフィス回帰を推進する格好の理由となるかもしれません。

●2021年のクラウド型ビジネスツール関連企業「勝ち組」はどうなる?

株価は実体経済の先行指標といわれます。2021年の株価動向を考えるにあたっては、来年以降の長期的なテレワークの未来を想定する必要があるわけです。

2020年はテレワーク導入・推進を背景にクラウド型ビジネスツール関連企業が業績を伸ばしましたが、2020年のテレワーク事情を複数の切り口で点検したところ、以下のような懸念事項が見えてきました。

・コロナ収束が見えない段階でもオフィスワーク復帰の圧力は根強いようだ
・労働者はテレワーク継続を希望しているものの生産性の低下を感じている
・テレワークに理解を示さない、適応できない上司や会社トップが少なくない
・コロナ収束が見えてくる2021年後半~2022年以降、テレワークが縮小していく可能性がある

これらの懸念を乗り越えていく企業は、業績を伸ばし株価を上昇させることができます。そのためには、テレワーク/オフィスワークの別を超えて、原点である

  • 生産性の改善・向上への寄与
  • 顧客企業の社員(ひいては家族)の満足度向上

において商品力を高めると同時に、エビデンス(事例)を蓄積し販促ブースターとして活用していくことが求められていくでしょう。

社員から経営者への「テレワーク継続圧力」を高め、経営者には生産性向上による満足を与えられる企業こそが、アフターコロナでも「勝ち組」であり続けられる企業であると筆者は考えます。

今回取り上げた企業の中では、Chatworkやサイボウズは事例の蓄積や情報発信を積極的に行っており、ウェブサイトを一目見ただけでもこのことは明らかです。クラウド型ビジネスツールはサブスクリプション型のビジネスですが、定期的かつ肉厚な情報発信は、既存顧客とのリンケージ維持にも新規顧客の誘引にも有効です。

ALTalkでは、Chatworkのweb訪問者数・アプリダウンロード数などを確認できます。web訪問者数は既存顧客のアクティブ度と新規顧客の誘引、アプリダウンロード数は新規顧客獲得の進捗を確かめる意味で、定点観測しておきたいファクターです。

ALTalk「Chatwork」より)

サイボウズについては、成長商品であるkintoneのアプリダウンロード数の推移は要チェックです。過去記事「第3四半期決算は「営業利益25.4%増」の絶好調!今後はkintoneの成長と海外展開がカギ|サイボウズ」もご参照ください。

ALTalk「サイボウズ」より)

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

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2021年度の相場は? 注目業界・銘柄をALTalkライターが解説

年が明け、海外情勢の動きに加え、アフターコロナの足音もだいぶ近づいてきました。ALTalk執筆陣の一人、個人投資ジャーナリストの日野秀規氏が、2021年の相場観や注目する業界、そしておすすめの銘柄について解説します。

目次

  1. 日野秀規が振り返る2020年のマーケット
  2. 2021年の相場を占う上で注目のイベントとトピック
  3. そして気になる注目の業界と銘柄は?

1.日野秀規が振り返る2020年のマーケット

2020年は、世界中の投資家が新型コロナウイルス感染拡大に影響を受け、振り回された1年でした。

「実体経済への巨大なショック」と、それを打ち消そうとする「政府・中央銀行による史上空前のバックアップ」という極めて特殊なマクロファクターがはたらき、株式市場は通年では上昇となりました。

日本の株式市場では1年を通してグロース株(成長株)の独り勝ちとなり、バリュー株(割安株)や小型株などのセグメントに大差を付けて、市場平均(TOPIX)をも大きく凌駕。グロース株の指標である日経平均のインデックスファンドが年率リターン18.1%を記録したのに対し、TOPIXインデックスファンドは7.3%にとどまりました。

※日経平均・TOPIXインデックスファンドの年率リターンはeMAXIS Slimシリーズの運用成績

この傾向は日本国内に限らず、米国株式や日米を含む先進国株式で広く見られた現象です。詳しくは昨年末に公開されたALTalk記事「グロース株投資vsバリュー株投資、2021年はどちらが笑う?」でまとめましたので、ご一読ください。

新型コロナウイルスによるショックが世界の経済社会に与えている傷は、ワクチン接種の進展とともに今後1~2年をかけて修復されていくでしょう。この間、政府・中央銀行によるバックアップ=巨額のマネーは、経済社会の回復によってお役御免になることもなく、滞留・循環を続けていきます。FRB・ECB・日本銀行のいずれも、2021年内の金融引き締めを想定すらしていません。

滞留が続けばデフレ、循環が早まればバブルです。2021年金融市場の通奏低音は「デフレとバブルの綱引き」ということになりますが、本稿では個人投資家にとってよりリスクの大きいバブルに着目して考えていきましょう。

2021年の相場を占う上で注目のイベントとトピック

①ダボス会議

ダボス会議は「世界経済フォーラム」という非営利団体の年次総会です。スイスのダボスで毎年1月に開催され、世界各国から知識人やジャーナリスト、グローバル企業の経営者や政治指導者といったさまざまな分野のトップリーダーが集結します。世界の経済や環境の持続可能性・紛争や貧困など、世界が直面する重大な問題を議論する場として注目を集めています。

今年は例外的に5月にシンガポールでの開催となり、そのテーマは「グレート・リセット」。経済発展と、社会の公正・持続性・回復力、さらには人間の尊厳を両立する経済・社会システムの構築を目指した「再起動」のイメージです。

ダボス会議はもとより毀誉褒貶(きよほうへん)の多いイベントです。「ダボス貴族の社交場」と揶揄され、“意識高い系エグゼクティブがキメ顔できれいごとを語る場”というイメージを持たれている節がありつつも、参加者の知名度やパワー、メディアの扱いを通じて、現実の経済社会に影響がトリクルダウンしていきます。

金融市場との関わりで特に重要なのが、環境・社会・統治の公正・適切をうたう「ESG」という投資指針です。コロナ禍で世界経済・社会が大きなダメージを負う中、今年のダボス会議では例年にも増して、ESGを後押しする強いメッセージが出る可能性があります。

それを受けて、機関・個人双方の投資で「ダボス・マーケティング」の類が展開され、株式のESG投資やソーシャルボンド・グリーンボンドといった債券投資も含め、現在進行中の「全部バブル」(Everything Bubble)に薪がくべられていく1年になるのではないかと考えています。ESGについては考慮すべき点が多いので、詳細は後述します。

②米国インフレ率・長期金利

上昇を続ける米国BEI(10-Year Break Even Inflation Rate, 今後10年間の予想インフレ率)は2021年1月12日現在、2.08%に達しています。昨年末の日本のBEI 0.024%とは格段の差です。

期待インフレ率の上昇は長期金利の上昇圧力となりやすいため、米国株式についてはグロース株からバリュー株へのローテーションが起こりつつあります。またBEIの予測通りにインフレ率が上昇しつつも長期金利が上がらなければ、実質金利の低下となり、ゴールドやビットコインのさらなる価格上昇も視野に入ってくるでしょう。

米国の長期金利上昇は、それ自体が円安効果を通じて日本株式に影響を与えるとともに、米国景気の回復を連想させ、リスクオンのムードを呼ぶ面もあります。目配りしておいて損はないでしょう。

③「ドットコムバブル」以来の米国株式ブーム

収益と株価の関係に特に敏感なバリュー投資家の間では、もはや米国株式バブルの弾薬はかなり充塡が進んでいるという意見が2019年後半から根強くあり、日を追うごとに強くなっています。

米国では1990年代後半に、インターネット関連の株式が異常な高騰を示した「ドットコムバブル」があり、2000年春~夏にかけて破裂を開始。S&P 500指数は頂点から40%、成長株市場のナスダックは80%の下落となり、日欧の株式市場も連れて大幅安となりました。

コロナ禍を追い風に、テクノロジー株を中心に盛り上がる米国株式の現状は、ドットコムバブルをほうふつとさせる……という意見をよく目にします。「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という格言の通り、過去のバブルと全く同じ展開となることはないと思われますが、過去事例としておさらいしておいて損はありません。

ドットコムバブルがはじけて米国株式市場が下落する間も、米国小型バリュー株は25%に迫る上昇となり、長期債券の上昇率は50%を超えました。分散投資は常に有効です。

米国モーニングスターより、分配金再投資
2000.3.24~2002.9.30
青:S&P 500インデックスファンド 橙:日本株ETF 黄緑:欧州株ETF 黄:米国小型バリュー株ETF えんじ:米長期国債ファンド 深緑:ナスダックETF

近年の大規模バブルが崩壊する背景には、常に利上げがありました。日本の平成バブル・ドットコムバブル・サブプライムバブルも例外ではありません。

またバブル崩壊前には、金融市場に違和感が漂います。ドットコムバブルではナスダックとS&P 500の値動きの乖離があり、サブプライムバブルではBNPパリバによるサブプライム証券ファンドのデフォルト以降、金融機関の破綻が続きました。

米国金融市場の現状は、テスラとビットコインの暴騰・SPAC(特別買収目的会社)の流行と、後になって振り返ればバブルエピソードとされるような出来事がそろってきたように見えます。空前の金融・財政のプッシュを受け、一直線の株価上昇を示しつつ、一向に20を切ってこない米国VIX(ボラティリティ指数)の推移も不気味です。

とはいえ、前述しましたがFRBは2021年内の金融引き締めを想定すらしていません。ギリギリまで踊るにせよ、早めに引き上げるにせよ、戦略を持っておきたいところです。

3.そして気になる注目の業界と銘柄は?

昨年に続き今年も強気にリスクテイクをされたい向きにおすすめしたいテーマが、前述の「ESG」です。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、社会経済の公正や持続可能性に貢献する企業の資金調達を助け、育成する意味合いを含んだ投資指針です。ESGの観点から銘柄を選別する株式ファンドは、大手金融機関や年金基金などの注目を集め資金流入が加速しています。

長期にわたって安定的に資金が入ってくる株式セグメントは、いわば「肥沃な土壌」であり、投資家の選択眼が実を結びやすいフィールドです。ESG投資を標榜している投資信託には、「グローバルESGハイクオリティ成⻑株式ファンド」「ジャパンESGクオリティ200インデックスファンド」などがあり、これらの月次レポートや運用報告書は銘柄選択のヒントになります。

ジャパンESGクオリティ200インデックスには

  • エムスリー(2413)
  • 神戸物産(3038)
  • MonotaRO(3064)
  • ZOZO(3092)
  • オープンハウス(3288)
  • Zホールディングス(4689)
  • リクルートホールディングス(6098)
  • キーエンス(6861)

といった成長・優良銘柄が含まれています。

(参考:https://www.stoxx.com/index-details?symbol=ISMJESGK

ALTalkでカバーしているMonotaRO(3064)を見てみましょう。

(ALTalk 「MonotaRO」参照)

MonotaROのweb訪問数は、ホームセンター運営企業の月次開示などと比較検討することで、より立体的に資材需要や業績の予測に活用できる可能性があります。

Zホールディングス(4689)の場合は、肝いりの「PayPay経済圏」の帰趨を占う「PayPayアプリダウンロード数」を確認できます。

(ALTalk 「Zホールディングス」参照)

ただし、ESG銘柄の要件は公式に決まっているわけではなく、銘柄選択の基準は多分に恣意的です。ESG投資が、比較対象となる市場平均インデックスを上回る(プレミアム)という証拠も不足しています。定義の定まらないコンセプト、超過収益が確かめられていない投資方針が正当性や権威を持ち、そこに資金が雪崩を打って集まる様には、個人的には違和感を禁じ得ません。

そもそも、株式市場が限りある資金を適切に配分するという「神の見えざる手」は、参加者それぞれが勝手に私利私欲を追求した結果として実現されるものです。ESG投資が、例えばアルコールやたばこといった「望ましくない」産業やガバナンス整備途中の成長企業を恣意的に除外するのであれば、長期的にはこうした非ESG企業を割安に拾った投資家に報いるのが株式市場である……という考え方もあり得ます。海外では、このような”Sin Stock”(罪のある株式)の長期運用成績が優れているという研究結果もあります。

株式や債券などの金融市場を通じて、社会経済の公正や持続可能性を実現するというESGのコンセプトは、若干の「うぬぼれ」や「規制逃れ」を感じさせつつも、逆らえない時流の勢いに乗っています。アフターコロナでいよいよ吹き上がる「全部バブル」の掉尾を飾るにふさわしいキーワードといえるでしょう。

ちなみに私個人の投資は、現金・債券・コモディティ・ゴールドがポートフォリオの4割強を占める、コロナバブルの負け組であることを申し添えます。皆さまの爆益をお祈りしております。

※取り上げた個別銘柄への投資を推奨する意図はありません。

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グロース株投資vsバリュー株投資、2021年はどちらが笑う?

コロナ禍においてはITやハイテクに代表されるグロース株投資に軍配が上がりました。しかし今後、ワクチンの開発や景気の回復、金利の上昇を背景に、潮目が変わりそうです。2021年はグロース株投資? それともバリュー株投資? その勝敗を占います。

目次

  1. 2020年の市場総括
  2. 現状の市場について
  3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?
  4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

1. 2020年の市場総括

まず、2020年の国内株式市場を「バリュー」「グロース」「小型」の3スタイルに着目して振り返ってみると、以下のことが見えてきます。

  • 通年ではグロース株が市場平均およびバリュー株を大きく上回った(図1:A)
  • 暴落からのリカバリー~レンジ相場にかけて、グロース株の強さが目立った(図1:B)
  • 秋から冬にかけては実体経済の足踏み予想を反映し、小型株が沈む展開に(図1:C)

【図1】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

●株式市場動乱の2020年上半期

年初から中国の武漢を封鎖に追い込んだ新型コロナウイルスが、すでにアジアのみならず欧米・中東などに伝播していることが明らかとなり、3月25日を境に世界の株式市場は激しく動揺していきます。

約1カ月間続いた暴落期(図2・①)では、投資家の心理は未知の疫病への恐怖に支配されました。通常の景気後退では株価下落のヘッジとなる投資適格債券やゴールドまでそろって急落。日本株式全般が影響を受け、日本株式を代表する株価指数であるTOPIXは26.14%の大暴落となりました。

3月中旬には米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)がそろって大規模な金融緩和を打ち出します。各国政府もビジネスや市民への直接給付など、近年例のない巨額の財政支出を行い、経済を支えました。

3月下旬から株式市場は、実体経済に先駆けて急速な回復を見せ(図2・②)ましたが、ここでバリュー株の不振が始まります。TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の上昇率に7.54ポイントの差が付きました。同時期に好調に推移した日経平均もグロース株指数といえます。

【図2】

※図,表のデータは2019年12月30日終値~2020年12月15日終値

コロナ禍で値を伸ばしたグロース銘柄の代表格がBASE(4477)です。コロナ禍が引き起こした最も顕著な消費形態の変革であるEコマースはまさに当社のフィールドであり、3月23日に付けた896円から10月8日には、15,930円と約18倍の大相場となりました。

緊急事態宣言中の5月から10月にかけて、Web訪問数は約3倍に急伸。積極的な広告宣伝が功を奏し、急速に注目を集めていたことが分かります。

《BASE:株価》

《BASE:web訪問数》

(ALTalk「BASE」指標より)

●レンジ相場とバリュー株復権の下半期

不安と弛緩が同居した夏から秋にかけて株式市場はレンジ相場入り(図2・表③)。金融・不動産・資本財といった実体経済と直結するバリュー株セクターは、緩慢な景気回復とワクチン開発の様子見などが相まって低迷が継続します。TOPIXバリューとTOPIXグロースの上昇率較差は約10ポイントに及びました。

その後、いち早く新型コロナウイルスを制圧した中国の景気回復やワクチン開発の進捗を受け、株式市場は歴史的な上昇の11月を経験しました(図・表④)。小幅ながらバリューがグロースを逆転する一方で、小型株が不振に陥ります。

ワクチン接種による欧米の早期正常化が期待される一方で、日本国内の正常化が2022年までかかるという予想もあり、国内経済を反映する小型株からグローバル企業を含む大型株へ資金のローテーションが起きている可能性があります。

11月には、割安感から外国人投資家が日本株の買い越しに転じており、その資金が小型株には及ばないことも不振の一因として考えられます。

TOPIXは3.53%の小幅上昇となった2020年は、TOPIXグロース・日経平均など大型グロース株が市場平均・バリュー株・小型株に大差を付け、一人勝ちの1年となりました。

2. 現状の市場について

株価の最も基本的な物差しであるPER(株価収益率)を使って、ごく大雑把に考えてみます。

一般的に、株式というリスク資産を保有することで得られる利益(リスクプレミアム)は、4~6%程度が通常の水準です。現状はリスクフリー資産である国債の金利がないので、この4~6%がそのまま株式益回り(1株当たり利益を株価で割ったもの)となります。逆数を取れば、PERが算出できます。

《PERの計算式:100 ÷ 4~6% = 16.7~25倍》 

金利がない状況では、株式投資の一般的なPERは16.7~25倍程度ということになります。
日本では金利のない時期が20年近く続いていますが、本来リスクプレミアムと金利を足したものが株式益回りなので、仮に金利が上昇して1%になれば

《PERの計算式:100 ÷ 5~7% = 14.3~20倍》

PERは14~20倍程度が妥当な水準となるわけです。

この計算を踏まえて、現在の日本株式市場のPERを確認します。

(12月17日現在)

今後の企業収益改善予想を織り込んだ予想PERであり、割高水準といえるでしょう。この水準で買いに入った投資家が報われるには最低限、以下の条件のうち少なくとも一つは満たされる必要があります。

①企業の収益改善が継続・ジャンプアップしていく
②投資家のマインドがさらに高進して株式投資ブームがやってくる
③長期金利がマイナスを掘り進む

頭を冷やして考えると、この水準では買いづらいと思われる向きも少なくないでしょう。とはいえ、これまでの議論は株式市場一般についてであり、いわゆる「長期インデックス投資」に強く関係するものです。

個別企業については常に、さらなる利益成長や株価の上昇トレンド継続が見込める銘柄や、割安放置が是正されそうな銘柄の発掘は、努力次第で可能です。過熱気味であるとはいえ、少なくとも平成バブル末期の日経平均PER 60倍という情勢とは全く異なります。

米国S&P500指数のPERが44倍に達した1990年代末のドットコムバブル期でも、バリュー株は安値に放置されており、バリュー投資家は後に高リターンで報われました。

皆が教科書通りインデックスに行くなら、「裏に道あり花の山」です。

3. 日本でも長期金利の上昇はあり得るのか?

実体経済の回復による長期金利の上昇や、サプライチェーン再構築によるインフレといったマクロ経済の動向が懸念されています。現実となれば、長く続いたグロース株優位が終わり、テクノロジー企業に代表される超成長株投資に逆風が来ると考える向きも少なくないようです。

私見ですが、これは米国内の論調に引っ張られている面があると思えてなりません。米国経済には、2019年までに政策金利を2.25~2.5%へ上げることができた元来の足腰の強さがありますし、現時点でもまだ長期金利は0.9%のプラスです。

異次元緩和でもインフレ目標を達成できていない日本で、インフレ期待・金利上昇へ導く確かな道筋を示すことができる政府・中央銀行関係者や学者がいればノーベル賞ものです。日本銀行がイールドカーブコントロールで国債市場を制圧してきた点も米国とは事情が異なります。マネーストック増につながる財政支出も迫力不足です。

金利上昇で恩恵を受けるバリュー株の代表といえば銀行株ですが、日本の銀行株指数の動きは惨憺たるものです。米国の銀行と比べても明らかな低評価が定着しており、金利が上がらなければ業績の先行きも多くは望めません。

金利上昇による恩恵を現実的に期待できる銀行セクターと、実体経済の回復が強い追い風となるエネルギーセクターを抱える米国とは構造が異なるため、日本でもバリュー株の復権があり得ると単純に考えるのは難しいといえます。

(2020年12月17日現在)

●とはいえバリュー株は「安過ぎる」のは確か

先進国株式におけるバリュー株はこの10年余りは極度の不振にあり、グロース株とのリターン較差は空前の域に達しています。だからこそ長期投資で「平均回帰」が起きたときの見返りはかつてないものになると、世界の著名バリュー投資家は皆考えています。

米国の著名投資顧問会社GMOを率いるジェレミー・グランサムやスマートベータ投資の立役者ロブ・アーノット、著名ヘッジファンド運用会社AQRキャピタル・マネジメントのクリフ・アスネスなど、枚挙にいとまがありません。日本のバリュー株もまた極度の割安にあることは確かです。

以上を踏まえて、「2021年にグロース株とバリュー株のどちらが有利か」を考えるためのポイントは以下の通りです。

①欧米でワクチンの接種・効力発揮が順調に進むか
②中国経済の腰折れがないか
③国内のデフレ再来懸念

2021年単年であれば、上記のポイントのうち①、②が順調にいくなら一般消費財や素材など景気敏感セクターのバリュー株にチャンスがあるかもしれません。

ワクチン接種が遅れる日本国内では、現在の消費・経済の流れが急変する見込みはありません。投資家の成長株物色トレンドを先回りして仕込みたいところですが、東証マザーズから資金が抜けている現状もあります。判断に迷うところで、投資家個々人の年末年始のホームワークになるでしょう。

10年単位の長期資金であれば、バリュー株投資にうってつけの局面です。金融・公益株を避け、コア事業が明瞭・売上営業利益とも大まかに右肩上がり・高ROE(自己資本利益率)・高自己資本比率の、いわゆる優良株の中から割安な株を仕込んでいくのがよいでしょう。

バリュー株投資はその時点で「見過ごされている」銘柄に投資することが多く、株価が上昇するためには「見つかる」タイミング(カタリスト)を待つ必要があります。最悪の場合は「見つからない」可能性もあるので、複数セクターにまたがる分散投資は必須です。

4. 2021年、注目しておきたいIT関連企業とは

成長株と一口にいっても、コロナ禍においてはその性質によって株価の挙動に差が見られました。

①「実際の人間の動き」に密着したサービスを提供する企業
  人材系、アパレルなど  例:ZOZO、リクルート

②オンライン上のサービスに特化した企業
  Eコマースなど  例:BASE

③高成長局面にある中で、さらにコロナ禍を追い風とした企業
 メディカルプラットフォーム、DXなど  例:エムスリー

この中では『①』で比較的株価の戻りが鈍い銘柄を見つけることができれば、欧米のワクチン接種進捗とともに国内正常化の期待が盛り上がり、値を切り上げていくというシナリオが考えられます。

ALTalkがオルタナティブデータを提供している銘柄では、ZOZO(3092)、リクルート(6098)あたりにその可能性があるかもしれません。

《ZOZO:株価》

《ZOZOTOWN:web訪問数》

(ALTalk「ZOZO」指標より)

人と人が元通り会えるようになる「生活スタイルの正常化」が連想されれば、ファッション需要はペントアップもあり、急速に回復すると考えられます。コロナ禍で消費者がEコマースチャネルに慣れた意義は大きく、ZOZOにとってはチャンス到来となるでしょう。

《リクルート:株価》

《Indeed:web訪問数》

(ALTalk「リクルート」指標より)

リクルートは人材派遣分野での売り上げが大きいので、ALTalkで見られるオルタナティブデータの中では、Indeedの訪問数が人材流動の動向を考える上で参考となるかもしれません。

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第3四半期決算は「営業利益25.4%増」の絶好調!今後はkintoneの成長と海外展開がカギ|サイボウズ

サイボウズは2020年12月期第3四半期決算において、前年同期比で売上高16.7%増、営業利益25.4%増と注目すべき好業績を発表。グループウェアの老舗ながら高い成長性を投資家にアピールしました。

2021年に控える本決算を見据え、第3四半期決算の内容点検と企業成長に期待が持てる「3つのポイント」をご紹介します。「グループウェア市場の成長性」「同社の情報公開が担う『メディア=メッセージ』機能」「海外展開」に注目です。

目次

  1. 連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調
  2. グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力
  3. 「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる
  4. 成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

1.連結売上高は前年同期比16.7%増、営業利益は25.4%増。10月度月次も好調

2020年11月12日に発表された2020年12月期第3四半期決算について、主な経営指標と事業の進捗、本決算と今後の成長を占う上でのポイントについて見ていきましょう。

サイボウズは1997年に現代表取締役の青野慶久社長他2名により創業。同年にグループウェア「サイボウズOffice」を発売し、以来一貫してグループウェアを磨き上げつつ、メール共有・業務改善アプリのプラットフォームとサービスを提供してきました。

「企業組織のチームワークに貢献する」という使命は内部にも貫徹されており、当社は「社員が働きやすい企業」として認知されています。青野社長はこの分野でも頻回にメッセージを発信し、よく知られた存在です。

2020年12月期の第3四半期決算(2020年1月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりでした。

第1~3四半期の合計で、売上高・営業利益のいずれも前年同期から目覚ましい成長を遂げています。売上高営業利益率は19.9%で、前年同期比から1.4%増の絶好調です。

業績の押し上げ要因は決算資料等を見る限り「特にない」というのが実際のところです。新型コロナウイルス感染拡大による事業活動・業績および会計上の見積もり等への重大な影響もありません。

2019年における前年同期比の数値を見ても、売上高19.2%増・営業利益17.9%増を記録しており、特段の材料がなくとも通常営業で高成長を遂げる局面にあります。

2020年12月期の本決算見通しは以下のとおりです。

第4四半期に発生する広告宣伝費や業績連動型賞与・税金等を加味した結果、通期での営業利益は21億5,700万円を見込んでいます。第4四半期の1月目に当たる2020年10月度の月次決算でも9月までの成長基調を維持。通期予想の達成は堅そうです。

株価について

株価は第3四半期決算発表翌日(11/13)終値で2,970円を付け、時価総額は約1,258億円に達しました。2019年3月の700円近傍を出発点に上げて足を強め、2020年9月24日には3,800円の最高値を付けて投資家は達成感を得ています。

チャート形状的にはダブルトップを形成し、当面は下落基調にありますが、業績好調で下げ材料となるようなニュースは特に確認できていません。業務上のライバルとなる「ナレッジスイート(3999)」「rakumo(4060)」、さらには「東証マザーズETF(2516)」と値動きが重なっていることから、テクノロジー系成長銘柄全般の動意に連動しているという印象を受けます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2.グループウェアの「老舗」は基幹4商品にひたすら注力

当社は決算の際に、売り上げ等を事業セグメントに分割する形式を採用していません。商品ごとの売り上げ推移も、四半期短信では発表していないため不明です。当社発表数値およびリサーチ会社等統計数値を押さえつつ、基幹4商品を概観します。

①kintone

14,000社が導入する「kintone」は、データベース・プロセス管理・コミュニケーションの機能を統合した業務改善プラットフォームです。「情報の属人化・二重管理」「進捗共有の不備」「売り上げ・勤怠・交通費等の管理労力」「契約書面準備の際の連絡不備」といった非効率性に対応。メンバー間での顧客・案件・問い合わせの共有・見える化を促進し、時間と手間の削減に寄与します。

「日経コンピュータ 2020年 9 月 3 日号 顧客満足度調査 2020-2021」クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門において2年連続第1位を獲得。2019年12月期(前期)には売上高が前年度比1.4倍、契約社数が前年度比1.3倍の伸びを記録しました。決算説明資料等で基幹4商品の筆頭に挙げられていることから、当社イチ押しの成長商品であるといえるでしょう。

②サイボウズOffice

66,000社が採用する「サイボウズOffice」は中小規模の企業に適したグループウェアの草分け的存在。スケジュール管理や掲示板・ワークフロー・ファイル管理・メッセージ・タイムカードなどの機能を備えています。2001年~2012年まで売上高が減少基調にありましたが、2011年のクラウド版リリースから再成長を開始。現時点では4年連続で最高売上を達成しています。

③Garoon

5,800社が導入している「Garoon」は中・大規模企業向けグループウエアです。ビジネス向けクラウドサービスのレビューサイト「ITreview」のグループウエア部門、ワークフロー部門で高評価(LEADER)を獲得。自社サービスkintoneとの連携に加え、Microsoft 365など他社システム・サービスとの連携も拡大し、利便性を高めています。

④Mailwise

10,000社が採用している「Mailwise」は、届いたメールを複数人で共有し、履歴を一元管理できるメール共有・管理ツールです。お問い合わせメールの対応・管理、顧客とのやりとりの共有、誤送信・二重送信の防止、アドレス帳の共有などが可能となります。

ALTalk指標

ALTalk指標で、サイボウズOfficeとkintoneへのweb訪問数の推移(合算/1年)を見てみましょう。1年で約2倍となっており、継続して注目を集めていることが見て取れます。

ALTalk「サイボウズの指標」より

次にkintoneスマホアプリのダウンロード数推移(2年)を見てみましょう。移動平均を読み取ると年率40%程度の上昇傾向にあり、利用者増は一目瞭然。2020年3月のダウンロード数は3,466件と突出しており、緊急事態宣言下のリモートワークで利用機会が急拡大したことが分かります。

ALTalk「サイボウズの指標」より

2020年9月以降のアプリダウンロード数が若干下降傾向にあるのが気掛かりですが、web訪問数は上昇傾向です。潜在ユーザーの伸びが確認できる指標であり、web訪問数は継続的にウォッチしていきたいデータです。

下の表は、年商500億円未満の中堅・中小企業におけるグループウェアの社数シェアを「導入済み」と「新規予定」に分けて集計したものです。大企業は除外されており、また「社数」であり「ユーザー数」ではないため、必ずしもシェアが売上高と一致しないことには注意が必要です。

(ノークリサーチ「2020年中堅・中小市場のグループウェアとビジネスチャットに起きている変化」より作成)

2019年までにOfficeを含めた統合アプリ「Microsoft 365」にリードを許していたものの、2020年の新規導入予定者数ではサイボウズOfficeがトップを奪取。2強体制を形成しています。

3.「新時代の働き方」の旗振り役として、市場コンセンサスを超えた成長で海外への道をつくる

これまで見てきたように、当社の商品展開はいずれも「グループウェア」に属するシンプルな事業構造であり、短期的な事業の浮沈を左右する事情も出てきていません。グループウェアが寄与する部課単位のミクロな事業改善は、政策のはやり廃りに影響されにくい地道な分野であるため、当節よくいわれる「DX」や「AI」「フィンテック」のようなブームとは縁遠いものです。

このような銘柄への投資を考えるにあたっては、高成長トレンドを継続していける「事業性」の根本といえる「事業環境」や「強み」を実直に検討・確認していく作業が必要です。当社の成長を占う「3つのポイント」をみていきます。

1. グループウェア市場の成長性
2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成
3.海外展開

1.グループウェア市場の成長性

『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』(富士キメラ総研)によると、グループウェアの需要は2024年にかけて、年率8.8%程度の成長を続ける見込みです。

これまで見てきたように、現時点ではサイボウズ(サイボウズOffice+Garoon)とMicrosoft 365の二強体制となっています。少しさかのぼってシェア推移を確認しても、競争は熾烈ですが短期的に大きくシェアが上下するフェーズとは見えず、一定の均衡状態にあるようです。

このこととグループウェア全体の2020年~2024年の市場成長予想・年率8.8%を突き合わせると、サイボウズOffice・Garoon以外の商品に、当社の売上高前年度比16.3%増という高成長がかかっているという予測が立ちます。kintoneです。

グループウェアの代表格であるサイボウズ Officeとkintoneには以下のような相違点があります。

サイボウズOfficeは社員間の「連携」に重きを置く一方、kintoneは作業道具箱を「最適化」していくイメージで、社員が個々に利用し効率を高める「作業性の向上・省力化」への寄与が大きいといえそうです。

一般的なグループウェアとの比較で、より強く業務改善を志向するkintoneが高成長を継続していけるかが、当社の今後数年を左右する最重要ポイントとなります。

2.当社の情報公開がもたらす信頼感の醸成

当社ウェブサイトに「ソーシャルメディア」というページが設けられています。

商品・事業・支社の単位に加え社長がフェイスブックアカウントを公開し情報を発信。さらに読み物コンテンツ(ブログ)として、企業研修についての情報発信を行う「チームワーク総研」と、働き方や仕事を通じた自己実現を主に取り扱う「サイボウズ式」を運営しています。

SNSの積極利用は、よくも悪くもSNSにおける一方向の情報拡散が起こりがちな時代において、ファンをつくる有益な取り組みです。

積極的・継続的な情報発信によって、グループウェア・業務改善プラットフォームについて意思決定を行う企業の人事総務部門やマネジメント層への認知向上が見込めます。

また、サイボウズは社内の働き方を改善する取り組みを長期・継続的に行っており、この点に関する情報公開も盛んです。「働きがいのある会社」ランキングの常連であるほか、ワークライフバランスやダイバーシティについての賞も複数受賞しています。

仕事環境の整備やマネジメント手法についても青野社長がスピーカーとなって積極的に発信しており、これほど経営者の顔やガバナンスの姿勢が知られている企業もなかなかありません。

社員が尊重され、風通しがよく働きがいのある、いわゆる「ホワイト企業」であり続ける努力を行うこと・情報を公開すること・社長の顔が見えることは、1990年代後半~2000年代に誕生し今まさに社会参画を始めつつある「Z世代」へ非常に大きなインパクトを与えます。

短期的な株価動向などに反映されることではありませんが、当社が力点を置く社内統治と情報発信は、最適な人材の獲得と社歴・モチベーションの長期継続に資する決定的に重要な取り組みといえるでしょう。実際、2019年度の当社の離職率は特筆に値する約3.8%という低さです。

さらに言えば、信頼感の醸成は長期的な「雇用コストの適正化」にも役立ちます。

3.海外展開

2019年度の決算報告においてはグローバル展開も強調ポイントとなっていました。

すでに中国・ベトナム・アメリカ・オーストラリアに現地拠点を設けており、製品の多言語化を進めアジア・欧米地域での販売に取り組んでいます。中国語圏では1,030社(前年比+3%)、アジア太平洋地域では590社(前年比+39%)、アメリカでは360サブドメイン(前年比+33%)の成長を示しました。

組織形態の改革も進めており、組織戦略室・事業戦略室を新設して、国外拠点における事業ノウハウの共有・連携を推進しています。

4.成長セクターである「kintone」と「海外展開」に注目。市場からの高評価をどう解釈するか

本決算では、通期目標の達成度が最大の注目点となります。アナリストのコンセンサスや経営陣からの情報発信などをキャッチするために、情報感度を高くしておきましょう。

2020年以降のグループウェア市場の成長率・年率8.8%に対し、看板商品であるサイボウズOfficeとGaroonはシェア争いを制し、キャッシュカウ(長期収益源)であり続けられるかが第一の注目ポイント。レッドオーシャンを勝ち抜く自信と戦略を聞き取りたいところです。

目下の成長商品であるkintoneと海外展開の進捗は、今後の当社に対する期待=PERを大きく左右します。2020年12月期本決算の説明会において、中長期的な成長目標が出れば、株価上昇の材料となります。担当役員・社長の説明会コメントのニュアンスに至るまで、アンテナを高く張っておきましょう。

上でも言及したALTalkで確認できる「web訪問数の推移」「kintoneアプリダウンロード数」は、kintoneの成長を傍証する貴重な材料です。投資家は定点観測必至といえます。

●類似・競業関係にある企業の動向

一様に増収基調であり、後続の猛追が見て取れます。サイボウズの決算数値・通期予想には、この業界老舗ならではの安定感が感じられます。

●株価指標

サイボウズの株価は1株当たり利益の120.57倍の評価を受けています。

利益を投資に回す局面であるため、成長株の評価はPSR(株価売上高比率)で行うことが多いのですが、10.46倍という水準は成長性がすでに目いっぱい株価に乗っており、既存投資家の期待は高い水準にあります。

自分なりに、短期の材料もしくは長期の成長性をしっかり腹落ちさせて、投資に臨みたい銘柄といえます。サイボウズOffice・Garoonというトップ商品がいまだに高成長局面にあることは、安心材料です。さらなる高成長の芽を逃すことのないよう、参入の機を見据えていきましょう。


ALTalkでは、サイボウズ以外にも、インターネット系銘柄を中心に約50銘柄を掲載していますので、ぜひ登録してご覧ください。


免責事項

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参照資料

2020年12月期第3四半期決算短信
2020年10月度月次
2019年12月期(第23期)決算および2020年12月期(第24期)事業戦略説明会
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楽天・ドコモとの「経済圏トリプルウォーズ」をいかに戦うのか? 2021 年度におけるZホールディングスの事業構造を読み解く

Zホールディングスは2021年3月期第2四半期決算において、前年同期比で売上高15.1%増、営業利益29.8%増という大幅進捗を発表しました。この多くはZOZOの子会社化によるものです。
来期以降の経営環境を占うには事業の内実をしっかり確認していく必要があります。LINEとの経営統合・PayPayブランドへの大胆な投資・広告事業へのテコ入れなど、話題が目白押しの下半期を展望しました。

目次

  1. 【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に
  2. 【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析
  3. 【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る
  4. 【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

1.【全体サマリー】2021年度第2四半期はコロナ禍においても大幅増収増益に

2021年1月に控える第3四半期決算発表の前に、2020年10月末に行われたZホールディングスの2021年3月期第2四半期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

1996年、Yahoo! 米国法人とソフトバンクの合弁でヤフー株式会社が設立されました。以後、孫正義氏率いるソフトバンクの中核企業・ブランドとして、M&Aを繰り返しながら業容を拡大。2019年に行われたグループ再編の際、改めて挑戦の姿勢を世に示すべく新社名に「Y(Yahoo! JAPAN)からZへ」という意味を込め、Zホールディングス株式会社という社名となりました。

インターネット・情報技術で実現できる「利便性」「豊かな生活環境」「社会の発展」の追求を掲げ、その連結子会社数は45社にのぼります。日本を代表するIT企業グループの1つです。

2021年3月期第2四半期決算(2020年4月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

大幅な増収増益ですが、当四半期特有の事情があります。セグメント別の数値とともに確認していきましょう。

モノやサービスを販売・流通するコマース事業の進捗が目立つ半面、メディア事業は減収減益と明暗を分ける形に。新型コロナウイルスはEコマース需要増・広告出稿減と、当社事業に複雑な影響を及ぼしました。

コマース事業の指標には2019年11月にZOZOを連結子会社化したことが大きく寄与しています。売上収益で327億円、営業利益で61億円がプラスされたことで、前年同期比の伸び率がかさ上げされる形となりました。

2021年3月期の通期予想では売上収益1.14兆円(8.3%増)、営業利益 1,600億円(5.1%増)の見込み。既存事業の拡大に加え、下半期は主にコマース事業を中心とした注力領域への積極的な投資を実行するとしています。

株価は決算発表後(11/2)の終値で648.2円、時価総額は約3兆1,268億円となり、10月14日にはここ10年で最高値の790.0円をつけました。この3ケ月の値動き一部上場銘柄ながら東証マザーズ指数に近く、インターネット・DX関連の短期売買資金が多く出入りしている印象を受けます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

2.【セグメント分析】コマース事業とメディア事業、それぞれの業績を分析

Zホールディングスは事業を大きく2つのセグメントに分けて決算発表を行っています。売上高1兆円・連結45社を数え事業領域は多岐にわたるため、比較的売上げの大きい部門および成長著しい部門を押さえておきましょう。

連結の対象となる主な関連会社の一覧です。

《コマース事業》

コマース事業では、ポータルサイト「Yahoo!」ブランドのもとで「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」などのコンシューマーサービスを手広く展開。ASKULやヤフオク!の法人向けシステムなどBtoBも強く、売上高はビジネス関連がコンシューマーを上回っています。

ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」は2020年のウェブサイト訪問者数ランキングでグーグルに次ぐ国内第2位。ニュース・メール・天気予報・検索といった日常生活の情報源をコンパクトにまとめ、オンライン接続ドアとしての強みは圧倒的です。堅いブランドイメージを保持し、関連サービスへの直接的な送客チャネルとして機能しています。スマホアプリ「Yahoo! JAPAN」は2019年の日本でのダウンロード数で7位につけていますが、スマホ世代の若年層への浸透は十分とはいえません。

コマース事業のKPIのうち「物販取扱高」は1兆2,535億円で前年同期比+30.8%、予約サイトや電子書籍などの「サービス・デジタル取扱高」は2,386億円で+3.4%となっています。前者は新型コロナウイルス感染拡大による消費チャネルの変化を追い風に成長した一方、後者は行動自粛とGo To キャンペーンの影響が入り交じりの小幅な成長となりました。

コマース事業に属する金融部門では、既存のサービスをソフトバンクグループが推進しているバーコード決済サービス「PayPay」ブランドに統一し、消費生活全般の金融サービス需要をカバーする「シナリオ金融」構想を推進。完全子会社「Zフィナンシャル」を中心にクレジットカード・銀行・証券・保険・FX・資産運用などを手がけています。

ソニーやトヨタなど、金融部門を祖業と並ぶ、もしくは凌駕する収益エンジンに成長させた先達は複数存在しており、ソフトバンクグループの金融部門を担う当社に強い期待がかかります。

金融事業のKPIである「クレジットカード取扱高」は1兆1,396億円で前年同期比+28.9%。Yahoo! カードとPayPayの連携による優遇キャンペーンの効果が出ているようです。

ALTalkではPayPayのアプリダウンロード数を確認できます。

(ALTalk「Zホールディングス」指標より)

ここ3年を見ると、2019年のダウンロード数増が目につく一方、今年に入っての減少が気にかかります。QRコード決済におけるPayPayのシェアは約55%と独り勝ちの状態にあり、大規模キャンペーン等で拡大する時期は過ぎたということかもしれません。

コマース事業/パーソナル部門の売上高推移を確認すると、PayPayアプリダウンロード数の増減から少し遅れて売上高が追っているように見えます。

疑似相関の可能性はありますが、PayPayのキャンペーンがコマース事業の売上をかさ上げしている、いわばタコ足食いの可能性も排除できません。毎四半期決算で発表されるKPI「PayPay決済回数」で進捗の裏取りは行っておきたいところです。

《メディア事業》

メディア事業は主に子会社であるヤフー株式会社の所管です。検索連動型広告などのネット広告関連サービスを提供しています。一般的な広告スペース提供のほか、新型コロナウイルスの蔓延を受け感染者情報ページの解説や学校休校支援に向けた学習コンテンツの提供を行うなど、消費者サービスというものを「公共性」や「好感度」も含め重層的にとらえている点は大いに好感が持てます。

メディア事業のKPIである「広告関連売上収益」は1,629億円で前年度比+1.6%の小幅な成長。ここ数年は5~7%程度の安定成長路線でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響で出稿が停滞。景気依存の面が強いという広告の限界を打破すべく推進中の「Yahoo!セールスプロモーション」については後述します。

セグメント別の売上高・営業利益は以下のとおりです。

コマース事業とメディア事業は売上高には約2,700億円の差がありますが、セグメント利益にはほとんど差がありません。原価のかからない広告ビジネスの効率性が表れている形ですが、経済状況に左右されやすい面も。下半期はコマース事業を中心に投資し収益基盤の拡大を狙います。

3.【下半期の展望】注目すべき取り組みは? 3つの切り口から下半期の展望を探る

Zホールディングスの今後を、3つの「切り口」から読み解いていきます。

① LINEとの完全統合
② 2021年3月期・下半期の重点投資
③「経済圏」バトルの帰趨

①LINEとの完全統合

Zホールディングスは、国内スマホユーザーが利用するコミュニケーションツールではスタンダードであるLINEの運営と関連サービスの提供を行う、LINE株式会社の子会社化を2021年3月頃を目標に推進中。確固たるチームワークとサービス連携・統合によるシナジー発揮に重点を置いています。

LINEとの経営統合のメリットは2点に集約されます。1点目が、長くパソコンベースでのサービス展開を行ってきたヤフーが、LINEを通じスマホユーザーとの接点を強化できること。アプリとしてのLINEおよび付随サービスのコアユーザーである若年層を取り込むことで、全世代をカバーする長期的な成長戦略の立案およびサービス展開が可能となります。その延長線上には、国内オンライン・コンシューマーサービスのプラットフォームとして盤石の体制を整え、アマゾンやテンセントといったグローバル企業とのサービス競争に勝ち抜くという大きな目的があります。

統合により提供中のサービスがどのように整理・統合されていくかは明らかになっていません。今後のプレスリリースや決算発表に要注目です。

②下半期の重点投資を点検

コマース事業では、

  • PayPayを用いた特典付与、イベント(超PayPay祭)開催
  • クレジットカード(PayPayカード)会員拡大施策

これらの施策により「Eコマース利用者の優良顧客化、周期的購入の習慣化」「クレジットカードのアクティブ会員数拡大」を図るとしています。

加えて、あらゆる金融サービスをPayPayブランドに統一してYahoo! ブランドのサービス利用者が決済でPayPayブランドを利用する機会を増やし、両ブランドのシームレスな共通利用を推進します。

こうしたPayPayを中心とするコマース事業の施策には1つ、気がかりな点があります。利用した人なら誰もが感じている「QRコード決済は最も便利な決済手段とはいえない」ことです。

日常的な使い勝手は、電子マネー>クレジットカード>QRコード決済であり、QRコード決済には迅速性・スマホの電源・電波状況による処理遅滞などの問題がつきものです。クレジットカード会員数の拡大を重点項目としていますが、成熟市場であり急速な拡大は易しいものではありません。

PayPayブランドを利用者にとって価値あるものとしSuicaや楽天Edyから決済金額を奪うためには、PayPay特典・イベントといったいわば「金配り」をやめることはできません。後述する他の「経済圏」との戦いに勝つための体力勝負となります。

体力勝負という観点では、Zホールディングスが所属するソフトバンク陣営にはすでにPayPayをQRコード決済の最強ブランドに育てた実績があり、古くはYahoo! BBでADSLに打って出た際の成功体験があります。縦横無尽な資金調達も得意とするところであり、大盤振る舞いも勝つまでやり切れば勝つ……という世界かもしれません。

メディア事業では「統合マーケティングソリューション」の確立に期待がかかります。Zホールディングスに蓄積されるビッグデータを活用し、広告による認知→PayPay特典付与→消費者の購入行動とつなげるマーケティング活動支援サービス「Yahoo!セールスプロモーション」です。

2019年より提供開始となったサービスで、広告事業の中でも成長著しくインパクトは大です。本年度上半期と前年度下半期の比較で、Yahoo!セールスプロモーション経由の広告売上収益は2.6倍となっています。ショッピング広告には季節性があり、下半期の売上げが上半期を3割程度上回る通例にかんがみれば、Yahoo!セールスプロモーションが急速に認知されていることがわかります。

BtoBサービスのため実状が見えにくい部分があり、「広告主にとって真に実用的なものになっているか」という点は今後の情報を待ちたいところです。本来、PayPay特典付与といったプッシュ型マーケティングの訴求力をより確かなものとするためには、決済データと購入された商品がつなぎ合わされた形で利用できればベストのはず。コンビニエンスストアがPOSデータの蓄積・分析からマーケティング施策を立案するイメージです。現状、PayPayの決済データは購入情報と紐づけされていません。

いかに実用性を高め広告主に訴求していくかは技術の核であり、尋ねてわかることでは当然ありませんが、プレスリリースや四半期決算等で情報が得られるか、ウォッチすべき項目の1つといえます。成長商品ですが、投資家としては過信は禁物です。

③「経済圏」バトルの帰趨を占う

LINEとの統合は、Zホールディングスが若年層へ訴求する力を飛躍的に高めます。アマゾン、デンセント等グローバル企業への危機感が素地にあることは先述しましたが、同時に国内のライバル「経済圏」との競争に勝ち抜くことも重要です。

消費者向けサービス市場では、携帯キャリアを核として様々なサービスが連携して展開・相互に送客を行い顧客を取り合う経済圏バトルが激化しています。経済圏は、決済手段やポイントサービスを通じた顧客の囲い込みによって形成されます。現状は、PayPay決済を中心とするヤフー・PayPay経済圏、楽天カード・楽天Edyを擁する楽天経済圏、dポイントを育成し業務提携で固めるドコモ経済圏の三つ巴です。

それぞれの経済圏に特有の強みと弱みがあり、現時点では覇権は定まっていません。ヤフー経済圏はLINEとの経営統合によってサービスラインナップが大きく充実することに加え、ソフトバンクグループのアセットを利用することができれば、一歩抜きんでる存在になる可能性があります。中国の大手総合IT企業アリババやウーバーといった海外の著名なサービスとのつながりは他の経済圏にはないものです。

一消費者として各経済圏の「使い勝手」や「ブランドイメージ」を考えてみることも投資判断の良い材料になるでしょう。

4.【まとめ】今後の成長予測と、株価の動きを占う上で押さえておきたいポイント

Zホールディングスの第2四半期決算は大幅な増収増益となりましたが、実状はZOZO連結のインパクトが大きかったといえます。2021年3月期の通期予想は売上収益1.14兆円(+8.3%)、営業利益 1,600億円(+5.1%)と慎重な見込みです。

ここまで当社の業績・成長戦略・施策・競争環境を分析してきましたが、これらのファクターを株価展望に結びつけるにあたっては、「親子上場」が問題となる場合があります。

Zホールディングスの連結対象企業のうち、売上高の大きい3社がそれぞれ単独で株式を上場しています。

アスクル、バリューコマース、ZOZOの利益は、それぞれの企業の株価とZホールディングスの株価の双方に影響を与えます。

本来はあくまで個別企業の利益ですが、連結(個別)企業の投資家が利益に対して何倍の価格で購入するか(PER)と、Zホールディングスの投資家が投資する場合のPERは常にずれが生じます。いわば一物二価の状態です。この意味で、親子上場は投資家が親子それぞれの企業の利益を適切に評価することを妨げています。

現時点では、ZホールディングスのPERは各連結企業より少々低めといったところです。購入を検討している投資家にはお得に感じられる一方、購入した後、株価が伸びにくい可能性もあります。ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株に投資した際に、多角的な事業構造のため企業価値が割安に評価される「コングロマリット・ディスカウント」という言葉が聞かれましたが、当社に投資する際にはディスカウントとなるのかプレミアムが生じるのか、とくに長期投資を考える向きは気にしておいた方が良いかもしれません。

今後の成長と株価を占うにあたっての最注目ポイントは、金融部門のPayPayブランドの統一効果です。金融部門は現時点での収益寄与は大きくありませんが、うまく育てば優秀な利益セクターとなることはソニー、トヨタなどの前例が証明しています。KPIである「クレジットカード取扱高」「ジャパンネット銀行口座数」は四半期ごとにチェックしておきましょう。前提となる「PayPay決済回数」「累計登録者数」の伸びも重要です。

収益寄与の観点からは、コマース事業に比べ利益率が圧倒的に高いメディア事業で推進している「Yahoo!セールスプロモーション」の進捗についても情報収集に努めたいところです。広告はBtoBのサービスであり投資家が直接動向を知ることはむずかしいのですが、プレスリリースや@DIME、ITmedia等のメディアで動向がわかる可能性もあるので気にかけておきましょう。

第3四半期の業績への影響はまだ少ないものですが、2021年度以降はLINEとの統合が本格的に当社の事業をリフォームしていきます。重複事業の整理やシナジーについて聞こえてくる内容によって、先回りして資金を投下しておくべき場面もあり得るでしょう。若いLINEユーザーをヤフーブランドのサービスに誘導する導線をうまく設計できるかがシナジーのカギとなるため、こうした点を考える際も前述のテック系メディアが参考になります。

類似・競業関係にある企業の動向は以下のとおりです。

経済圏でライバル関係にある両社とも売上成長は高い水準を見込んでいます。楽天は携帯事業の先行投資が響いており、利益については参考になりません。

株価指標については下記のとおりです。

Zホールディングスの株価は1株当たり利益の36.30倍の評価を受けています。日本を代表するオンライン・コンシューマーサービス企業として、海外企業に伍していく期待が込められた評価になっているようです。

ヤフー・PayPay経済圏が楽天・ドコモの経済圏との戦いを勝ち抜いていけるか、ユーザーとしての実感が投資に活かされることもありそうです。PayPayブランド育成にあたり投資先行のフェーズが続きますが、投資家としては費用対効果を厳しく見ていく姿勢が求められます。


ALTalkでは、Zホールディングス以外にも、インターネット系銘柄を中心に約50銘柄を掲載していますので、ぜひ登録してご覧ください。


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参照資料

2020年度第2四半期(7-9月期)決算説明資料
2021年3月期 第2四半期決算短信
2020 年度第 2 四半期決算説明会(2020 年 10 月 30 日開催)質疑応答要旨
IRページ

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「ウィズコロナ」を追い風に「医療DXの本命」メドピアはどう成長するのか|メドピア決算

メドピアは2020年9月期決算において、前年同期比で売上高1.7倍、営業利益2.0倍という驚異の成長を見せつけ注目を集める存在です。新型コロナウイルス感染拡大を機に、さまざまな分野で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)が医療にも到来し、好調の波に乗っています。

先行きを占うための必須ホームワーク、「2つのマクロファクター」と「ライバルとの闘い」をいかに見据えるかを徹底解析しました。

目次

  1. 2020年度の売上高は前年同期比1.7倍、営業利益は2.0倍も増加!来期予想も強気
  2. 「集合知プラットフォーム」MedPeerを土台に、「プライマリケア」「予防医療」2つのセグメントを急速育成中
  3. 「ウィズコロナとアフターコロナ」「デジタルエイジの高齢化」というニッポンの課題に医療DXで立ち向かうメドピア
  4. 成長の土台をなす会員数の増加施策に注目。競合のエムスリー・ケアネットとのすみわけや投資施策の相違などにも注意を払いたい

1.2020年度の売上高は前年同期比1.7倍、営業利益は2.0倍も増加!来期予想も強気

2020年11月12日に行われたメドピアの2020年9月期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

メドピアは2004年、現代表取締役社長・CEOの石見陽氏が設立。当時の商号は「株式会社メディカル・オブリージュ」でした。2007年に医師専用コミュニティサイト「Next Doctors」(現MedPeer)の運用を開始すると、2010年には商号をメドピア株式会社に変更。2014年に東証マザーズ市場への上場を果たしたのち複数企業の子会社化を経て業容を拡大、そして2020年9月には東証第一部へと鞍替えします。
「集合知により医療を再発明する」というビジョンのもとに、医師を支援し、患者を救うことをそのミッションとしています。

2020年9月期決算(2019年10月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

当期は売上高・営業利益のいずれも前年比で大幅な進捗を見せました。売上高営業利益率は20.8%で前年同期比から2.5%増。各事業領域でDXが加速し、新規連結したコルボ(医療系コンテンツ企画制作会社)を除いても大幅な増収増益という絶好調ぶりです。

事業別に見ても、2部門とも急成長の過程にあります。とくに法人向け医療相談アプリと、健康保険組合向け特定保健指導サービスを擁するヘルスケアソリューション事業の利益率進捗は急で、売上が損益分岐点を超えてきたようです。

2021年9月期(来期)の通期予想では売上高は1.4倍、営業利益および当期純利益は1.5倍の成長率を見込んでいます。

セグメント別では、ドクタープラットフォーム事業の売上高成長率が45.4%増、ヘルスケアソリューション事業の売上高成長率は26.2%増を見込む強烈な強気。医療DXのさらなる進展への自信がみなぎっています。

ALTalk「メドピアの指標」より

株価は決算発表翌日(11月13日)の終値で5,390円、時価総額は約1,157億円となっています。その後は、新型コロナウイルス感染拡大にともなうワクチンの研究開発や、医療従事者への支援の必要性といった報道を境に、DXをテーマとする他銘柄から一定の資金流出がみられるなか、株価は上昇し12月2日には7050円の最高値をつけました。

2.「集合知プラットフォーム」MedPeerを土台に、「プライマリケア」「予防医療」2つのセグメントを急速育成中

メドピアの業績をセグメントで見ると以下のとおりとなります。

ドクタープラットフォーム事業は、「集合知プラットフォーム」と「プライマリケアプラットフォーム」から構成されています。

「集合知プラットフォーム」は会員12万人の医師向けコミュニティサイト「MedPeer」が大黒柱です。製薬企業や医療機器メーカーが疾患・薬剤の啓発や情報提供、Web講演会といったマーケティングを行う場として機能するとともに、コンテンツ制作まで受注します。

MedPeerは、医師向けのメディアの中でも広告メディアやMR、学会・研究会とは異なり、ユーザーである医師の投稿でコンテンツが生成・増殖していくユーザー参加型のソーシャルメディアであることが最大の特徴です。

さらにMedPeerは、関連事業である人材マッチング・開業/経営支援サービスへの送客機能をも担っており、会員数増加と高利用率の継続が目下の強みです。新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化するなか、MedPeerのページビューは前期比1.7倍に増加しました。

「プライマリケアプラットフォーム」は、薬局・クリニックの「かかりつけ化」を支援するアプリ「kakari/kakari for Clinic」を展開。薬局へのチャット相談・電子お薬手帳に加え、薬局での待ち時間を短縮する「処方せん送信」「チェックイン」機能を持つ「kakari」は、KPI(重要業績評価目標)としている「週次処方せん送信数」「週次チャット送信数(患者様→薬局)」のいずれも飛躍的な進捗を見せています。

薬局向けアプリ「kakari」とクリニック向けアプリ「kakari for Clinic」の連携によりサービスを強化し、2033年までには「集合知プラットフォーム」、後述の「予防医療プラットフォーム」と並ぶ三本柱の一角として育成するべく、積極投資を推進するとしています。

ヘルスケアソリューション事業ではアプリを媒介とする「予防医療プラットフォーム」を展開しています。

子会社「MEDIPLAT」が手がける法人向け産業保健支援サービス「first call」は、チャット医療相談や、TV電話による産業医面談、さらにはストレスチェックを提供。おもな顧客である法人・健康保険組合の契約数は、2019年度の289件から2020年度には573件と約2.0倍の高成長を見せました。2021年度の売上高は2020年度比1.9倍の成長を見込んでいます。

子会社「FitsPlus」では健康保険組合向け・特定保健指導サービスを手掛けており、管理栄養士による食生活指導を店舗・アプリの両面で提供。2021年度の売上高は2020年度比約1.3倍の成長を見込んでいます。

サービス開始から13年が経過した「MedPeer」は安定収益基盤として事業の投資資金を捻出するセグメントでありながら、それ自体もいまだ高成長期にあることが当社の指数関数的な成長を支えています。事業の核は、MedPeerのアクティブ会員数を支える「コンテンツ力」にあるとみることができそうです。

3.「ウィズコロナとアフターコロナ」「デジタルエイジの高齢化」というニッポンの課題に医療DXで立ち向かうメドピア

メドピアの事業に関わる2つのマクロファクターを検討していきます。

①新型コロナウイルス感染拡大:ウィズコロナとアフターコロナ
②デジタルエイジの高齢化

①新型コロナウイルス感染拡大:ウィズコロナとアフターコロナ

新型コロナウイルス感染拡大における「人と人との対面を強く制限する」という性質は、医療におけるDXを推進するメドピアに強い追い風を吹かせています。

「集合知プラットフォーム」の主軸である「MedPeer」は、新型コロナウイルス感染拡大を背景に大きく躍進した部門です。

製薬企業のマーケティングは本来、MR(医療薬事情報担当者・製薬企業の営業担当)の訪問による部分が大です。新型コロナウイルス感染拡大はこのチャネルを大幅縮小に追い込みました。  

新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れた病院のうち、MRの訪問自粛要請を行った割合は91%、患者を受け入れていない病院でも82%が自粛要請を行っていたという調査があります。MRもオンラインでの営業・情報提供活動を行ってはいるものの、足しげく訪問することで多忙な医師との面談機会を得るという従前の手法が取れなくなったことは大きな痛手です。

これを機に、製薬企業・医療機器メーカーはMedPeerのようなコミュニティサイトを利用して、疾患・薬剤について啓発するコンテンツを提供したり、Web講演会を行ったりなど、マーケティングリソースをオンラインに割く流れを強めました。ウィズコロナにおいてMRの役割は縮小する一方です。

この傾向がアフターコロナで巻き戻るという合理的な理由を思いつくことはできません。医薬品・医療機器のマーケティングにおけるDXは、医師にとっては時間と手間が省け、製薬企業・医療機器メーカー本部にとっては経費削減ができWin-Winです。

医師の働き方改革や、避けがたい医療費削減の流れのなかで、医師の生産性を上げていくためにも医療のDXは不可避であり、メドピアはその最前線に立っているといえます。

②デジタルエイジの高齢化

「顧客」という観点から医療を眺めると、高齢者の圧倒的な存在感に気づかされます。

一人の人間が生涯に使う医療費の平均は約2,700万円ですが、全体の6割を65歳以上で使います。そして75歳以上で使うのは全体の4割にものぼります。日本の医療費の半分以上が高齢者医療にあてられているのです。

現時点で70歳以上の世代には、現役時代にデジタル化の波を受けなかった方が少なくありません。この先スマホやパソコンを使える方が著増するかといえば、疑問です。つまり、医療の「提供者」におけるDXについては前述のとおりの進捗ですが、「顧客」のDXはこれからが本番だということです。

70歳以上の高齢者は2050年まで増加し続け、そのなかでスマートフォンを使える割合も増加の一途。顧客を巻き込んだ医療DXのプラットフォームとして、今後、薬局とクリニックを統合したアプローチで集客の効率化・省力化を推進できる「kakari/kakari for Clinic」に大きな期待がかかります。

 「予防医療プラットフォーム」の「first call」についても同様です。高齢化と財政難は医療需要のコントロールと医療費削減を強く要請し、予防医療の重要性は増す一方。そのため「first call」が一役買う場面が到来しています。

現状はおもに法人需要に応えるプラットフォームとなっていますが、新型コロナウイルス感染拡大の第一波が襲来した2020年3月には、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の一環として経済産業省が設置する「健康相談窓口」に選定され、個人顧客に利用されるという実績を得ました。

この先、不要の受診削減に向けた医療相談推進という展開があれば、すでに実績のある「first call」にとって大きなチャンスとなります。「健康経営」の推進や「人生100年時代」を迎え、定年延長や再雇用の義務化がより強く企業に求められていくことによる労働者の高齢化なども含め、「first call」の需要が拡大する余地は大きいといえそうです。

「first call」のアプリダウンロード数をALTalkで確認することができます。2020年11月にダウンロード数が急上昇していますが、これはアクサ生命が法人顧客向けに提供する「健康経営サポートパッケージ」に「first call」のメンタルチェックが採用されたため、顧客企業の社員がダウンロードした可能性が考えられます。

ALTalk「メドピアの指標」より

アプリのダウンロード数はサービス利用の前提であり、法人顧客の契約継続に関わる指標といえるので、定点観測に適しています。

デジタルエイジの高齢化については、医療政策にどう落とし込まれるかによってメドピアへの風の吹き方が変わってきます。腰を入れた投資を考える向きは、社会保障・保険医療などの審議会にも注意を払っておくべきといえます。

4.成長の土台をなす会員数の増加施策に注目。競合の「エムスリー」や「ケアネット」とのすみわけや投資施策の相違などにも注意を払いたい

メドピアの2020年9月期決算は絶好調の一言です。来期に向けても売上高1.4倍、営業利益および純利益は1.5倍の成長を見込む強気の予想で、経営陣は自信満々です。

今後の成長と株価上昇を占うにあたって、まず注目すべきは売上の約7割、営業利益の約8割を占めるドクタープラットフォーム事業の主軸となっているMedPeerの動向です。

実は、現状の会員数12万人はライバルであるエムスリー(約29万人)、ケアネット(約16.1万人)の後塵を拝しています。

製薬会社・医療機器メーカーのマーケティングチャネルとしての収入がMedPeerを支えており、会員数はクライアントに訴求するもっとも重要な指標です。会員数増に向けての直接の施策やコンテンツの充実について、定点観測を行っていきたいところです。

当期ではコルボ(医療系コンテンツ企画制作会社)の子会社化は特筆すべき動き。MedPeerにおける動画コンテンツの拡充も早期シナジーの表れとみることが可能です。ライバルであるエムスリー、ケアネットとの差異の把握やコンテンツ力の評価は、長期ホルダーには必須のホームワークであり、メドピアのプレスルーム(https://medpeer.co.jp/press/8491.html)は定期的に見ておきましょう。

自分がクリニックで受診する際など、ユーザーである医師に聞いてみるのも面白い取り組みです。メドピアのコンテンツについての評価や、エムスリー・ケアネットとの相違やすみわけなどについて生の声を聞くことができた際にはIRに伝えてみましょう。株価上昇の一助になるかもしれません。

ALTalkでは、メドピアの主力商品であるMedPeerのweb訪問数も確認できます。

ALTalk「メドピアの指標」より

長期的に安定利用されているかのチェックは重要です。ただしアプリからのアクセスはweb訪問数には反映されません。一定の規則性をもって山と谷を繰り返す傾向をみてとることができ、短期的に一喜一憂する必要はないと考えられます。

類似・競業関係にある企業の業績予測は以下のとおりです。

一様に増収増益フェーズにあり、医療DXは明らかに成長セクターといえます。売上高・営業利益の増加率は売上高の規模と逆相関しています。身の丈24~40倍の巨人エムスリーを高成長で追いかけるメドピア、ケアネットという図式です。

ここ2年の株価チャートを重ね合わせると3社ともほぼ同様の軌跡を描いています。投資家が重なっている印象です。

メドピアの株価は1株当たり利益の112.1倍の評価を受けており、ファンダメンタルズを評価して株価を予想するフェーズにはありません。

サービス開始から13年が経過し、なおも成長しているMedPeerを擁する点は安心材料です。競合他社も一様に高い評価を受けており、メドピアだけが過大評価というわけではありません。決算資料において来期の売上高1.4倍、営業利益1.5倍と自信を見せた点も好材料です。

ウィズコロナ・高齢化といったマクロファクターが軒並み強力な追い風となるなか、競業他社から際立つ独自性を打ち出し、高成長を継続できるかの見極めが投資家には求められます。

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参照資料

①2020年 9月期 決算説明資料
2020年 9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
③IRページ

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株価急上昇で注目!脱ハンコ・DXの追い風に乗れるか?|GMOグローバルサインHD決算

GMOグローバルサイン・ホールディングスは、2020年12月期第3四半期決算において、前年同期比で売上高3.9%増、営業利益1.7%増と堅調な業績を発表。電子証明書を扱うセキュリティ事業の進捗が目立ちました。

先行きを占うには、「脱ハンコ」「DX」といったキーワードがホットなうちに、ライバルを出し抜きスピード感をもって、対象顧客への訴求を進めていけるかが焦点となります。2021年2月に控える本決算発表を見据え、第3四半期決算の内容点検と未来への期待、そして課題について取り上げました。

目次

  1. 第3四半期までの売上高は前年同期比3.9%増、営業利益は1.7%増。業績予想は据え置き
  2. 安定のクラウド・ホスティング事業を確保し、ソリューション事業で攻める
  3. 「脱ハンコ」が象徴する国・地方行政のDXへ本格参入。AWSの成長果実を着実に収穫していけるかどうかも要注目
  4. 脱ハンコ」「DX」とキーワードが新鮮なうちに、知名度を上げ対象顧客への訴求をどれだけできるだけ進めていけるかが焦点

第3四半期までの売上高は前年同期比3.9%増、営業利益は1.7%増。業績予想は据え置き

2020年11月11日に行われたGMOグローバルサイン・ホールディングス(以下「GMOグローバルサイン」)の2020年12月期第3四半期決算発表について、主な経営指標と事業の進捗、本決算と今後の成長を占う上でのポイントを見ていきましょう。

GMOグローバルサインは、インターネットというフィールドで金融・メディア・インフラ事業などを手掛ける「GMOインターネットグループ」の主力企業として、その一角を占めています。世界で主要な電子認証局を運営するブランド「GlobalSign」を通して培った知名度をベースに、電子署名や電子契約などの電子文書向けトラストサービスを推進しています。

2020年12月期の第3四半期決算(2020年1月1日~2020年9月30日)における売上高・営業利益は以下のとおりです。

第1四半期~第3四半期の合計で、売上高・営業利益のいずれも前年同期からの進捗を見せました。売上高営業利益率は10.8%で、前年同期比から0.23%減となっています。

事業別に見ると、おもに電子証明書を取り扱うセキュリティ事業の堅調ぶりが目立ちます。クラウド・ホスティング事業も売り上げを稼ぐ点では重要ですが、レッドオーシャンであり利幅は薄い水準です。

今話題の電子印鑑を扱うソリューション事業は売上高が大きく伸びています。主力商品「GMO電子印鑑Agree」の顧客拡大施策コストが響いてのセグメント損失を計上していますが、甘受すべきフェーズといえるでしょう。

2021年2月の本決算発表に向け、業績予想は据え置きとしました。上の表内2020年12月期第4四半期カッコ内の数値は、通期予想を達成するために必要な売上高と営業利益です。

昨年の推移に照らすと、売上高と営業利益ともに各四半期でさほど季節性は見られません。売上高は達成は可能そうですが、営業利益は微妙な水準と見られます。業績予想をクリアできるかが本決算の焦点の1つです。

株価は第3四半期決算発表翌日(11月12日)の終値で10,340円をつけました。10月15日に13,780円の最高値を付けた後は下落基調に入り、8月12日の終値でつけた6,970円を割ってダブルトップを形成するかどうかが気がかりです。

10月15日以降、下げ材料となるようなニュースは特に出ていません。電子印鑑分野のライバル「弁護士ドットコム」と値動きがかなり重なっていることから、「脱ハンコ」をはじめとするデジタル化を材料に、短期資金が出入りしている印象です。

安定のクラウド・ホスティング事業を確保し、ソリューション事業で攻める

GMOグローバルサインの業績をセグメントで見ると以下のとおりとなります。

売上高の4割強を占めるクラウド・ホスティング事業では、AWS(アマゾン ウェブ サービス)の導入支援から運用までをトータルにサポートする「CloudCREW」の利用増が著しく、前年同期比22.1%の伸びを見せています。

当セグメントについて、経営陣は「クラウド・ホスティング事業においては、従来のホスティングサービスの売上高については、国内外の競合他社との激しい価格競争や当社サービスの統廃合のため、緩やかながら減少傾向が続いております」との認識。利幅の薄い分野ではあるものの、資金繰りなどの企業経営的には安定売り上げは非常に重要といえ、実は是が非でも崩せないセグメントです。

セキュリティ事業の主力であるSSLサーバ証明書発行事業「GlobalSign」は大手顧客への販売が堅調に推移しました。9月には後述の「GMO電子印鑑Agree」より、電子署名・電子サインのエンジンを切り出したリモート署名ツール「PDF電子印鑑エンジン」を提供開始。すでに他社システムによるIT化を進めている企業への訴求を狙います。

SOHOや中小規模法人向けに「業務効率化・高付加価値化」を訴求するソリューション事業では、いわゆる「電子契約」がクラウドで簡単に行える「GMO電子印鑑Agree」が注目です。

脱ハンコの流れに乗り利用アカウント数は7万件を突破し、前年同期比でアカウント数は16倍、契約送信数は2.4倍。ライバルである「弁護士ドットコム」が提供する「クラウドサイン」を猛追しています。

計画の数値などは公開されていませんが、ライバルサービスであるクラウドサインの売上予測は目安になるかもしれません。

2020年7~9月におけるクラウドサインの売上高は3億4,400万円でした。期初の計画によると、正確な数値は非公開ですが、決算説明資料から読み取れる2020年10~12月の売上高はおよそ4億円程度で、増加率は16%程度の計算です。現時点で業績予想の変更はありません。

現時点で、いわば格上のライバルが16%程度の成長を見込んでいることは「GMO電子印鑑Agree」の成長を占う上でも心強いといえるでしょう。広告による集客を行ったほか、12月からは価格・スペックともクラウドサインを凌駕する水準に改定し、早い段階でのシェアNo.1奪取を狙います。セグメント損失は拡大したものの、必要性の高い投資といえます。

業績予実比較では、売上高は全体で73.4%の進捗となりました。全体の9割以上を占めるクラウド・ホスティング事業とセキュリティ事業の進捗が順調であり、達成の可能性は高いと推測されます。

営業利益は全体で70.7%の進捗にとどまり、ソリューション事業の損失が、第3四半期時点ですでに通期予想の水準に接近しています。今後、営業利益予想の達成/不達成がどう株価に織り込まれていくか、要注意です。

「脱ハンコ」が象徴する国・地方行政のDXへ本格参入。AWSの成長果実を着実に収穫していけるかどうかも要注目

2020年9月以降、GMOグローバルサインの株価は「脱ハンコ」という単語にまつわる投資家の思惑によって、いわば「振り回されている」印象です。

「脱ハンコ」すなわち電子印鑑・電子承認は、新型コロナウイルス感染拡大でテレワークを導入する企業が増えたなか、「押印のためだけに出勤するケース」などの不安全・非効率が取り沙汰されたことで、実現が急がれるようになりました。

2020年9月に誕生した菅義偉政権は、河野太郎行政改革担当大臣と平井卓也デジタル改革担当大臣のタッグによる行政のデジタル化(DX)を目玉政策に据えました。「脱ハンコ」は、政府のデジタル化を推進する姿勢を国民にアピールするためのキャッチーなワードとして一躍浮上したのです。

総務省は、電子文書が改ざんされていないと証明する「タイムスタンプ」を2020年度から、電子的な社印である「eシール」を2021年度から、それぞれ実用化に向け推進しています。「脱ハンコ」の本質は「業務続きの簡略化」であり、行政のデジタル化、ひいてはDX(デジタル化による組織・業務・生活の変革)に関連する企業には、民間への波及も含め、巨大なチャンスが訪れているといえるでしょう。

「脱ハンコ」を糸口に進められるDXに向けた、GMOグローバルサインの回答の核は「社名変更」にあります。

2020年9月に「GMOクラウド」から「GMOグローバルサイン・ホールディングス」への社名変更を行ったことは、「脱ハンコ」に加え「サーバ証明書」分野にも強みを持つ同社が、共通する「サイン」というキーワードのもとに、成長分野にフルコミットしていくという決意を顧客・投資家に対して示したものといえるでしょう。

その証拠に、2021年度から開始される「日本版eシール」について、いち早く対応サービスの設計・開発を決定しています。加えて社内に「デジタル・ガバメント支援室」を設置し、「脱ハンコ」をきっかけに数年単位で進んでいく国・地方行政のDXに本格参入しました。

「脱ハンコ」民間向けサービスの中核をなす「GMO電子印鑑Agree」については、この2ヵ月でweb訪問数が減少トレンドにあります。広告効果が減衰している可能性も考えられ、来期に向けてのさらなるプッシュを要する局面かもしれません。

(ALTalk「GMOグローバルサイン・ホールディングス」指標より)

クラウド・ホスティング事業については、経営陣も激しい価格競争の中で緩やかな減少傾向にあるという認識を示しています。

しかしながら、グローバル市場を点検すると様相は一変します。クラウド部門の看板サービス「CloudCREW」のプラットフォームであるAWSが著しい成長を継続しているからです。

2019年、全世界のクラウドインフラストラクチャサービスにおけるAWSのシェアはトップで34.6%。続く2位であるMicrosoft Azureの18.1%を大きく引き離しています。2019年のクラウドインフラストラクチャにおける総支出は、2018年の780億ドルから290億ドル増加し1,070億ドルを突破。2020年には32%増加し1,410億ドルになる見込みです。この勢いは続き、総支出は2024年には2,840億ドルに達すると予想されています。

AWSがシェアを維持していくことができれば、今後も売上成長は続きます。GMOグローバルサインは、2019年から2020年にかけて32%成長し、それから2024年まで年率19.1%の成長が見込める商材の、エキスパートたる地位を占めているのです。

日本国内でのAWSの成長が世界水準に準ずるとは当然考えられません。そこで日本国内での成長率を、GDP成長率と同様に全世界の6分の1として割り引いて試算してみます。2020年~2024年にかけては、19.1%÷6=年率3.2%程度の成長を期待してもおかしくはないでしょう。

競合他社がひしめく分野ですが、現状程度に泳いでいければ、安定した売上・収益が見込め成長分野への投資を支えるコア部門としての存在感は保たれます。

GMOグローバルサインは今後、新サービス・新規事業に参入する手段として、M&Aや資本提携を含むアライアンス(戦略的提携)を活用していく方針です。

そもそも同社も資本提携によりGMOグループに入り、M&Aを繰り返して現在に至っています。現状、新たなM&A案件などは明らかにされていませんが、株価に与える影響が大きいイベントであり常にアンテナを張っておく必要があります。

「脱ハンコ」「DX」とキーワードが新鮮なうちに、知名度を上げ対象顧客への訴求をどれだけ進めていけるかが焦点

本決算では、通期目標の達成度が最大の注目点となります。それまでにアナリストのコンセンサスや経営陣からの情報発信がないか、情報感度は高くしておきましょう。

「脱ハンコ」「DX」とキーワードが新鮮なうちに、知名度を上げ想定顧客層への訴求を一刻も早く進めていくことが肝要です。ソリューション部門の今期損失に関してはやむを得ないと考えるのが妥当であり、むしろ「GMO電子印鑑Agree」への積極投資と、国・地方行政への食い込み策については株主総会で必ず質問が出るはずなので要チェックです。

セキュリティ事業は同社の事業セグメントの中では比較的安定しており、特段の新展開を期待する局面ではありませんが、堅実な成長が続くかに注目です。クラウド・ホスティング事業が引き続き高稼働を保てるかも長期的な要ウォッチ事項。AWSの成長をいかに取り込んでいくか、レッドオーシャンで勝つ施策を経営陣から聞き取りたいところです。

類似・競業関係にある企業の売上・収益動向は以下のとおりです。

一様に増収基調にありますが、成長企業の常として投資先行となりやすいフェーズです。利益をどれだけ残すかは事業分野の動向や個別の経営方針によるため、成長株投資家は設備・人材・宣伝等投資の「質」まで踏み込んで投資判断を行う必要があります。

GMOグローバルサインの株価指標は以下のとおりです。

GMOグローバルサインの株価は1株当たり利益の106.1倍に評価されています。ファンダメンタルズにもとづいた株価とはいいにくい水準です。

クラウド・ホスティング事業という安定的な売上が見込めるセグメントがあることは、長期ホールドを考える投資家には安心材料です。短期的に財務が悪化したり、成長分野への投資資金が枯渇するといったリスクが小さくなります。

目先では、国・地方行政DXへの食い込みと「GMO電子印鑑Agree」の成長をどう評価するかがカギとなります。短期の投資では「脱ハンコ」「DX」のキーワードが新鮮なうちにどれだけ利幅をとれるか、潮目の目利きと出入りの機動力が問われる局面が続くでしょう。

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参照資料

2020年12月期第3四半期決算資料

四半期報告書

四半期決算短信

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