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オルタナティブデータが解き明かす外食産業の勝ち組

 総務省が3月19日に発表した2月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.4%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.4%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同+0.2%となりました。

今後の物価推移は政策によって左右される

「総合」は5か月連続、「生鮮食品を除く総合」は7か月連続で前年同月比マイナスとなりましたが、ともに2カ月連続でマイナス幅を縮めています。また、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は2か月連続でプラスの伸びとなりました。

「総合」と「生鮮食品を除く総合」がマイナスの伸びとなっているものの、マイナス幅を縮めている要因を調べるために内訳をみていくと、エネルギー価格が前年同月比-7.2%と依然としてマイナスではあるものの、前月からマイナス幅を0.9%縮めているというところが影響していそうです。エネルギー価格を構成する電気代、都市ガス代、石油製品など全ての品目も同様に前月比ではプラスとなっています。原油相場が昨年春の急落から反転したことが時差をもって現れました。

今後の物価推移を予想する際に、カギとなるのは政策による物価への影響でしょう。今回発表された消費者物価指数において、「宿泊料」は前年同月比-5.1%と前月からマイナス幅を縮めました。感染拡大に伴い、Go To トラベルキャンペーンが一時的に全面停止されたことから、前年同月比で大きくマイナスとなった宿泊料は下げ幅を縮める傾向にありましたが、外出自粛の影響で自然に下落傾向となったのです。21日に1都3県での緊急事態宣言が明けたことから、今後は同キャンペーンの再開について注目が集まりますが、再開となれば物価の下押し圧力になります。

また、通信大手3社による携帯料金の値下げが実施されますが、これも携帯の通信料という品目で物価には影響があります。2割程度下がれば、物価全体にも0.4%前後の下押し圧力になるでしょう。今後はこのような政策による下押し圧力と、前述のエネルギー価格の上昇圧力のバランスを見極める必要があるでしょう。

物価の内訳から家計の行動変容が分かる

 さらに内訳を見ていくと、ゆでうどんやカップ麺といった手軽に自炊をする際の味方である食材の価格に1つの傾向が見られます。外出自粛や飲食店の時短営業などがあった昨年の春先は価格が伸びている一方で、昨年後半はマイナスの伸びが続いています。

 昨年10月以降は、前年の消費増税の反動もあるという事実は念頭に置く必要がありますが、この動きから分かるのは、これまで夕飯を外食で済ませてきた層が、急に自炊をすることになってしまったことで、お手軽な食材への需要が高まったため、特に値下げをしなくても売れるようになったということです。ナウキャスト社が発表している日次の品目別物価指数の推移を見てみても同じ傾向があります。

 コロナ禍が長引く中で、新しい生活様式が定着し、自炊が習慣化されたことや、自炊・外食の代わりにテイクアウトやデリバリーをするようになったということも一因といえます。

テイクアウト、デリバリーという新しい戦場

 外出自粛に伴い、外食産業にはとても厳しい逆風が吹いたと思われがちです。事実、居酒屋チェーンを運営する鳥貴族の2021年7月期第2四半期の決算は、売上高が前期比-37.8%と大きく減少しています。ファミレス大手のサイゼリヤも2020年8月期の通期決算で売上高が前期比-19.0%とコロナ禍における経営に苦しんでいます。

 しかし、同じ外食産業であっても、マクドナルドは2020年12月期の通期決算で既存店の売上高が前年比+6.8%、1店舗当たりの平均月商も約1,600万円で上場来最高という好業績を発表しています。

 この1つの差として挙げられるのが、アプリから注文して店内での待ち時間など、不特定多数の第三者との接触を避けられる環境を整備したテイクアウトや、マックデリバリーという自社の配送網を持っていたり、UberEatsといった外部のデリバリーサービスの存在が挙げられるでしょう。

 外食産業の場合、原材料費、人件費、賃料という3つの大きなコストがありますが、テイクアウトの場合は人件費が下げられ、かつテイクアウト専門店の場合は賃料も下げられるということで、マクドナルド以外にも各社が注力し始めています。また、客単価×回転率という外食産業の売上構成を考えても、テイクアウトは理にかなっているのです。

家庭で再現できない体験を提供できるか?

 外食産業という観点から、もう少し消費者物価指数の内訳を見てみましょう。すしや焼肉といった外食の価格は2019年10月の消費増税の反動が出る2020年10月以降も前年同月比でプラスの伸びを続けています。

 ここから言えることは、家庭では再現できない体験を提供できている外食産業は依然として需要が高まっているということです。たとえば、家庭で手巻き寿司をすることは出来ますし、焼肉もスーパーで肉を買ってくればできます。

 しかし、例えば回転すしのように、違うネタを1品ずつ10皿食べるというようなことは家庭だと難しいですし、焼肉もあれだけの部位を少しずつ楽しむというのは難しいでしょう。実際、スシローの2020年9月期の決算を見ると売上高は前年比+2.9%と増収を記録しています。

 今後はテイクアウトやデリバリー、そして店内における徹底的な衛生管理なども一層求められると思いますが、それ以外にもコロナ前から求められていたはずの家庭では再現できない体験を提供できているか、という点も企業を評価する際に重要な視点となってきそうです。

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コロナが追い風になった業種は何か?オルタナティブデータが解き明かす行動変容

 足元では新規感染者数の下げ止まりが懸念されているものの、ようやく1都3県における緊急事態宣言も解除され、国内では早くも一部で2回目のワクチン接種が行われるなど、私たちの日常生活が少しずつ正常化していくのではないかという期待の声も耳にします。正常化に伴い、コロナ禍で変容した消費行動が再び変化していくかもしれませんが、今回はオルタナティブデータを活用してコロナ禍における行動変容を確認していきましょう。

コロナによって大きく変化した消費行動

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける消費指数をマクロの観点から19業種に分けたうえで、2021年2月の前年同月比の伸び率を「コロナ禍の1年による変化」、その前の3年間の年間平均変化率を「コロナ前の平均成長率」としてマッピングしたものが下のグラフになります。

 横軸がコロナ前の変化率、縦軸がコロナ禍での変化率を表しています。コロナが逆風となった業種が「旅行」、「外食」、「交通」などの外出が伴う消費活動なのに対して、追い風となった業種は外出を伴わない「EC」と「コンテンツ配信」という点が、いかにもコロナ禍における消費行動の変容をきれいに反映した結果といえるでしょう。

コロナに押し上げられた代表的な2業種

 これまでの連載の中でも、ECとコンテンツ配信がコロナという追い風によって、この1年間で大きく伸びた業種だということは何度も指摘していましたが、2020年1月からの推移を見てみると、改めてこの2業種が力強い伸びを維持していることが分かります。

 上図をみれば、特にコンテンツ配信の伸びは顕著であり、1年を通じて毎月40%前後の伸びを維持しているわけですから、いかに多くの人達が外出自粛の代わりに家で過ごす「おうち時間」において、動画鑑賞をして過ごしたかが容易に想像できます。

 動画配信サービス最大手のネットフリックスの会員数が昨年末時点で2億人を突破し、ウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニー+」の会員数がサービス開始からわずか16カ月で1億人を突破したという事実からも分かる通り、この傾向は日本に限らず世界中で確認できます。

最も追い風を受けたのはECだった

 コロナ禍の1年のデータを見てみると、ECよりもコンテンツ配信がコロナの恩恵を受けたように見えてしまいますが、先程のマッピングデータをコロナ前の平均成長率とコロナ禍の1年間の変化率の差分というかたちで計算しなおし、両社の差分の上位、下位それぞれの5業種をまとめたものが下表になります。

 上位5業種を見てみると、なんとコンテンツ配信が含まれておらず、むしろ5業種中4業種がECに関連していることが分かります。これが何を意味しているか分かりますか?実はコンテンツ配信はコロナ前から高い成長を維持し続けており、コロナが追い風になった部分はあれど、コロナがなかったとしても高い成長を続けていた可能性があり、一方でECについてはコロナが明確に追い風になったということなのです。

新しい生活様式への対応

 冒頭で述べたように、今後はワクチン接種がどんどん広がっていくでしょうし、その間に集団免疫が確立されたり、特効薬が開発されるなど、よりコロナ前の日常へと正常化が進んでいくことが期待されます。しかし、完全にコロナ前の状態に戻るかというと、その可能性はかなり低いのではないかと思われます。これまで食わず嫌いでECやコンテンツ配信を利用してこなかった人たちが、コロナをきっかけに利用するようになり、その利便性を体験してしまった以上、継続して利用していく人は相当数いるでしょうし、実際に外食大手のサイゼリヤはコロナ収束後も午後10時以降の営業を取りやめる方針を発表しました。

 飲食業界でもこれまでのように店舗を拡大するよりは、デリバリーやテイクアウトの比率を高める一方で、実店舗では無人会計やオペレーションの効率化を図ることで、人員削減を図っている企業も多く、どの業界も新しい生活様式にあわせていこうという動きが確認されています。

 このリアルからオンラインという行動変容だけを見ると、それならEC関連の銘柄に投資をすればいいのか?と思うかもしれませんが、実はこの変化による影響が及ぶ範囲はもっと広いのです。これまでは消費をするのは実店舗がメインでしたから、実店舗に人を呼び込むために様々な広告の施策が打たれていましたが、消費をする場がECというオンライン上に変化するのであれば、広告もネット広告がメインになります。

 電通が発表した「2020年 日本の広告費」によれば、テレビ広告は4年連続のマイナス成長となり、かつ2020年はコロナの影響で2桁マイナスとなっていますが、ネット広告は96年の推定開始以来、一貫して成長を続けており、2020年もコロナの影響で伸び率が1桁台になったものの、成長し続けています。この背景にはECプラットフォームの広告費が大幅に増加したことがあります。つまり、消費をする場がリアルからオンラインに変化することで、販促のための広告もオンラインに投下されていくため、ネット広告関連の銘柄にも増収増益期待が生まれます。

 さらにいえば、これまでオンラインマーケティングの際に常用されていたクッキーの利用制限が今後は厳しくなります。アップルは既にiPhoneなどで標準的に使用されているブラウザの「サファリ」でサードパーティークッキーの使用をいち早く制限しており、グーグルも2022年までに自社ブラウザの「クローム」でサードパーティークッキーへの対応を止めることを決めています。このことを考慮すると、単純にネット広告関連の銘柄だけでなく、クッキーレス社会に対応できるアドテク企業や、自然言語処理が可能なAI企業などにも投資妙味が生まれるのです。

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スーパーの特売が減った?オルタナティブデータから読み解く売り手側の動向

 総務省が2月19日に発表した1月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.6%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.6%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同+0.1%となりました。

各品目の物価がコロナの影響を受け変動している

「総合」は4か月連続、「生鮮食品を除く総合」は6か月連続で前年同月比マイナスとなりましたが、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は3か月ぶりにプラス圏に浮上しました。上図を見れば明らかですが、1月の消費者物価指数は1年以上続いていた物価の下落トレンドから反転に生じています。

その要因の1つに「宿泊料」が挙げられます。「Go To トラベル」が一時的に全面停止されたことにより、宿泊料は前月の前年同月比-33.5%から同-2.1%へと大きくマイナス幅を縮小しました。

また、巣ごもり需要の高まりを背景に電子レンジ、ルームエアコン、空気清浄機などの「家庭用耐久財」は前年同月比3.1%と高い伸びを続けています。「設備・修繕」や「住居」などの項目も上昇しているのも外出自粛や在宅勤務の普及が影響しているのでしょう。

一方で、依然としてエネルギー価格は前年同月比-8.6%と前月の同-8.1%から更にマイナス幅を拡大することになりました。灯油は前年同月比-14.4%と前月から変わらずとなりましたが、ガソリン、電気代、ガス代は全てマイナス幅を広げています。

宿泊料と保険料それぞれの指数への影響は?

 1月の消費者物価指数の品目別価格指数を見ていくと、前述の通り宿泊料が大きく跳ね上がっています。12月の時点で先行して一部地域で「Go To トラベル」が停止された結果、宿泊料の下げ幅が少しだけ縮小していたことから、1月は全面停止で大きくマイナス幅を縮小することは前回の記事「デフレ脱却は当分難しい?オルタナティブデータから浮かび上がる悲観的シナリオ」で指摘した通りです。

 一方で、足元では1日あたりの陽性者数が大幅に減少しはじめ、一部では予定よりも早く緊急事態宣言を解除することも検討されているとの報道もあり、「Go To トラベル」が再開されれば改めて宿泊料のマイナス幅は大きくなるため、この項目は新型コロナウイルスの感染拡大の状況に左右されてくる要因となります。

 また、「火災・地震保険料」や「傷害保険料」も上昇に寄与していますが、自然災害が頻発していることから、特に火災・地震保険料は段階的に引き上げられている傾向にあることは覚えておきたい点です。

エネルギー価格と通信料に注目

 今後の物価動向について考えてみると、前述の通り宿泊料がどのタイミングで大きくマイナスになるかという不確定要因もありつつ、それ以外で注目すべきなのは「通信料(携帯電話)」と「エネルギー価格」でしょう。

 携帯電話大手3社が値下げをすることは既に報道されていますが、通信料(携帯電話)は消費者物価指数への寄与度が比較的大きい項目であり、仮に報道にあるように2割程度の値下げとなるのであれば、0.4%前後の押し下げ圧力となるのではないでしょうか。

 一方で、足元では原油価格が13カ月ぶりの高値を記録するなど、上昇傾向にあります。昨年の原油安の裏が発生することから、エネルギー価格が原油相場の価格を反映するタイムラグを考慮しても、これからはエネルギー価格が大きく指数全体を押し下げることはなくなりそうです。

スーパーは特売をしなくなっている?

 さて、1月の消費者物価指数について、全体の動向から細かい品目別の価格動向について見てきましたが、今月はオルタナティブデータを活用して消費者物価指数が下落傾向にあるなかで、スーパーの販売戦略について見てみましょう。

 ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」を用いますが、同データは全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。日次の物価指数であるT指数、t日の前後28日間に最も多かった売価(定価)を示すmode指数の2つを使ってグラフを描画したのが下図です。

 定価を示すmode指数がこの1年間で下落傾向にあるのは、消費者物価指数の動向と整合性が取れています。そして、T指数からmode指数を引いた数値を青い折れ線で表していますが、これが何を意味するかを説明しましょう。この数値がゼロより小さい、つまりマイナスになっている場合は特売が多くなっている可能性が高いと推定できます。

 コロナの感染拡大が本格化したのが昨年の3月頃とすると、その頃からあまり特売しなくなっていることが分かります。その理由を断定することは出来ませんが、コロナ禍においてはスーパーに足を運ぶ人が増え、通常の不況のようにスーパーで買い物をする人が減ったということはないため、そこまで特売をするインセンティブが働かなかった可能性があると考えられます。

 今後も消費者物価指数というマクロな物価動向を注視しつつ、各業種・業態で販売戦略や動向にどのような変化があるのかをオルタナティブデータを活用して確認していきたいと思います。

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失った市場規模の一部は戻らない?コロナ後の娯楽業界をオルタナティブデータから考察

 2月に入り新型コロナウイルスのワクチンの話を耳にする機会も増え、陽性者数もピークアウトしたように見えますが、栃木県を除く10都府県では緊急事態宣言が3月7日まで延長されました。

思い返せばちょうど昨年の2月頃から日本国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大していきましたが、この1年で私たちの行動にはどのような変化が生じたのでしょうか。今回もオルタナティブデータが示す行動変容について確認していきましょう。

コロナ問題発生から1年での変化とは?

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける消費指数を20分野に分けたうえで、昨年1月を「コロナ前」として、2021年の1月のデータと比較することで、この1年間で生じた行動変容を確認しましょう。そのデータをマッピングしたものが下のグラフになります。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 このグラフから読み取れるのは、動画配信などを含む「コンテンツ配信」や「EC」が巣ごもり需要の高まりを受けて大きく伸びただけでなく、飛行機や鉄道による移動の代替手段としてマイカー移動の需要が高まり「自動車小売」や、在宅勤務の普及で家電を含む「機械器具小売」も大きく伸びていることです。

 一方で、やはり感染拡大を防止すべく外出を控える人が増えたり、不特定多数の第三者との接触を回避したいという気持ちが表れたことで、「交通」、「旅行」などは大きく下落し、当然ながら時短営業の影響もあり「サービス総合」も大きく落ち込みました。

「密」のイメージが強い映画館は苦戦

 もう少しミクロな視点で見るために、分野を業種業態で区分けすると、コロナ禍で苦戦を強いられた業種の1つとして「映画館」が挙げられます。

 下図の左側のグラフは映画館の消費指数を年代区分ごとに半年前の8月から月次でグラフにしたものですが、その消費指数を見てみると、全年代で大きく落ち込んでいることが分かります。10月に40歳未満と70歳以上で前年同月比プラスになっているのが確認されますが、これは10月16日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が歴代興行収入新記録を樹立した影響です。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 昨年1月と今年の1月を比較したのが右側のグラフですが、全年代で映画館での消費が大きく下落していることが分かります。傾向としては高齢者の下落幅の方が大きく、新型コロナウイルスの重篤化リスクが高い高齢者が密の環境を避けたとみていいでしょう。

特需を受けたのはコンテンツ配信

 外出をして映像コンテンツを楽しむという選択肢が失われた一方で、動画配信などの「コンテンツ配信」が大きく伸びたことが確認できます。経済とは面白いもので、どこかの業種が落ち込むと、反対に特需の恩恵を受ける業種が出てくるものです。

下図は「コンテンツ配信」の消費指数を月次でグラフ化したものに、陽性者数の推移を重ねたものですが、昨年に緊急事態宣言が発出された4月以降、前年同月比で30%以上の伸びを続けており、足元では40%以上の伸びが続いています。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」、厚生労働省のデータを基に著者作成
(注):網掛け部分は第1波~第3波を表現。

 この傾向は日本に限った話ではなく、たとえば米国の動画配信大手ネットフリックスは世界の有料会員数は2020年末時点で2億人を突破したと発表しています。

 先程の映画館と同様に年代別に区分けをしてグラフ化してみると、80歳以降の伸びが目立ちます。実はECでも同じ傾向が確認されており、これまではなかなかネットサービスを使うというきっかけを作れていなかった高齢者世代がコロナ禍をきっかけにデジタルシフトした様子が確認されます。

(出所):JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」のデータを基に著者作成

 今後、ワクチン接種が一巡し、経口摂取できる薬などが普及した場合、再び一部の消費者は映画館での鑑賞を楽しむとは考えられますが、一度自宅で好きな時間に好きなスタイルで動画を楽しめるというメリットを実感してしまった消費者が全て映画館に戻るとは思えません。

失った市場規模の一部は戻らない

 今月、ネットフリックスは2018年8月に次いで2回目の値上げを行いましたが、コロナ禍で新たに多くのユーザーを獲得した動画配信企業は値上げを含めた強気の戦略をとっていくでしょう。

反対にコロナ禍が逆風となってしまった映画業界はこれまでの常識が大きく転換するかもしれません。新型コロナウイルスが新たに変異したり、または全く違う疫病が流行することは今後も十分にあり得るため、今後はリスクを抑えるべく映画の公開本数が減る一方で、動画配信プラットフォームと連携して、有料会員だけに限定配信されるコンテンツが増えたり、視聴者がただ鑑賞するだけでなく、参加できる双方向型のコンテンツも増えていくことが予想されます。

 そのようなシナリオを考えると、これから拡大していく動画配信市場には関係する企業が多く、単純に動画の権利を持つ企業だけではなく、決済機能や配信プラットフォームを持つ企業、動画を利用した広告配信サービスを提供する企業など、多くの企業が物色対象になっていくと考えられます。

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デフレ脱却は当分難しい?オルタナティブデータから浮かび上がる悲観的シナリオ

 総務省が1月22日に発表した12月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-1.2%、「生鮮食品を除く総合」が同-1.0%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.4%となりました。

デフレに再突入したのではないか?

 これで3指数ともに前年同月比マイナスとなるのは3か月連続となります。特に生鮮食品を除く総合は5か月連続で前年同月比マイナスであり、下落幅の大きさは2010年9月以来、10年3か月ぶりの水準となりました。

 また、今回は去年1年間の消費者物価指数も発表されましたが、生鮮食品を除いた総合は前年比-0.2%となっており、4年ぶりの下落となっています。11月公開記事「日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認」でも指摘していますが、もはやデフレに再突入したと指摘しても全く問題のない状態であると言えるでしょう。

エネルギー価格と宿泊料の転換に期待?

 現時点では公式にデフレであるという話は聞こえてきません。その理由として、まだ3指数の前年同月比マイナスが3か月連続でしかないという観点があるかと思います。つまり、物価の下落は1四半期続いただけであり、まだ「継続的な物価下落」には当たらないという考え方も出来るからです。今後、物価の下落基調の反転要因として考えられるのはすぐに2つ思い浮かびます。1つは宿泊料。もう1つはエネルギー価格です。

 今回発表された消費者物価指数の内訳をみていくと、宿泊料が前年同月比-33.5%と大きく下落しています。この大幅下落は「Go To トラベルキャンペーン」の割引の影響ですが、前月の同-34.4%%からは下げ幅を縮小しています。これは札幌市と大阪市が先行してGo Toの対象から対象から外された影響と考えられます。この事象に基づけば、来月以降は「Go To トラベルキャンペーン」の全面的な一時停止の影響が出るため、宿泊料の下落幅は更に縮小するでしょう。

 また、エネルギー価格は原油価格をリアルタイムで反映するわけではなく、数か月の時差をもって出てきます。昨年春の原油相場の急落の影響が徐々に薄れてくることは既に分かっており、宿泊料やエネルギー価格の反転が物価全体に対しては多少なりとも上昇に寄与するということです。来月以降、限りなくゼロに近いとはいえ、前年同月比プラスを続けるようであれば、デフレではなかったということになると期待している向きもあるかもしれません。

オルタナティブデータを見ると当分は厳しい

 しかし、実際にはそのような展開は期待しづらいのではないかと思います。消費者物価指数に限らず、経済指標はどうしても発表時期が1~2か月遅れてしまう傾向があるため、リアルタイムで物価情報を見るため、ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」のデータを見ていこうと思います。日経CPI Nowでは、全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。

 日次のT指数の推移を見ると、昨年の緊急事態宣言期間中は物価がそこまで下がっていないものの、緊急事態宣言明け以降は物価が下落傾向にあることが分かります。

 今回も緊急事態宣言明けに再び物価の下落傾向が続く可能性もあり、さらに言えば昨年と同様に緊急事態宣言が延長されるようなことがあれば、昨年同様の展開になる可能性は更に高まるでしょう。

データ以上に厳しい現状

 それでは、緊急事態宣言明けに物価が下落傾向になるのは何故なのでしょうか。データを分析して仮説を作ることは最低限の作業であって、実際には実地調査をすることでその仮説の精度は高まっていきます。昨年の2月以降、私はタクシー運転手や飲食店のオーナーなどに色々と話を聞いてきました。

 これらの話はどれも非常にミクロな話であり、それぞれの事象がどこまでマクロの指標に寄与するのかは分かりません。それを定量的に示せと言われたら難しいのですが、ミクロな事象が積み重なったものがマクロの事象となることは間違いありません。

 たとえば、緊急事態宣言期間中は営業時間の短縮を要請されます。いま発出されている緊急事態宣言では、飲食店の多くは協力金と引き換えに20時での営業終了を求められています。20時に営業終了ということは、ラストオーダーは19時や19時半になります。また、東京都の場合は酒類の提供は19時までにして欲しいとの要求もあるため、居酒屋やバーからすると、もはや夕方以降の稼ぎ時の時間帯は営業ができないのと等しくなります。

 このような状況下では、なんとか人件費と店舗の維持費ぐらいは稼ごうとして、日中にテイクアウトを始めたり、イートインの場合でも通常時より20%ほど値下げをして客を1人でも多く呼び込もうとします。このような施策でなんとか営業を続けたとしても、一度20%オフの相場観が身に付いてしまうと、緊急事態宣言明けに値段を再び元に戻しづらいというのです。

 また、日中のテイクアウト対応だけではとても人件費や維持費を補えないという高級な飲食店は休業という選択をとっています。その結果、従来はそのような店で扱われていた高級食材(魚や肉)の需要が落ちます。しかし、需要が落ちたからといって、生産農家の方々は機動的に生産量を調整することは出来ません。野菜の場合は収穫後に自ら廃棄することもありますが、たとえば牛は子牛を生むサイクルや成長速度を変えられません。そこで、最近はかなりお手頃な値段で高級和牛などの食材を扱う店も目立ち始めています。普段は卸さないような店にまで高級食材が破格の値段で卸されている現実があるのです。

 コロナ禍で給料が下がったり、ボーナスが出なかった人は多いでしょう。また、職を失った人も多くいます。その場合、消費の源泉となる収入が通常時より低下するわけですから、当然家計の財布にヒモは堅くなります。そうなると、よりモノが売れなくなるので、利益率を下げてでも安売りをする。その結果、働いている人たちの給与は下がり、また消費が冷え込んでいく、というデフレスパイラルが発生するのです。

 今回はデフレにはならずに反転するというシナリオと、更にデフレが進行するというシナリを紹介しました。これらのシナリオを頭に入れたうえで、来月以降の物価の行方を注視していくと、これまで以上に経済を見る際の解像度が上がることでしょう。

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オルタナティブデータが明かす行動変容~個人レベルでもDXが推進~

 1月に入り遂に緊急事態宣言が出てしまいました。当初は関東の1都3県が対象でしたが、執筆時点では11都府県に拡大しています。2021年も新型コロナウイルスによって社会情勢や経済環境は大きく変化してしまいそうですが、昨年1年間の行動変容を改めておさらいすることで、今後の予想にいかしましょう。今回もオルタナティブデータを用いて個人の行動変容を確認していきます。

楽しみが減ってしまった自粛期間

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける「外食」、「旅行」、「映画館」、「遊園地」の4項目についての消費指数にPCR検査の陽性者数の推移と重ね合わせたものが下のグラフになります。

 「外食」、「旅行」、「映画館」、「遊園地」の4項目はコロナ前には多くの人が普通に楽しんでいた娯楽かと思いますが、昨年の緊急事態宣言が出たときは全項目が大きく減少し、その後は回復傾向にありましたが、気温が下がるにつれて陽性者数も増えていくなかで、再び減速していきました。感染拡大を抑えるべく、各自が不要不急な外出を自粛していましたが、やはりその間は楽しみが減っていってしまったことが分かります。

若者が意外と大丈夫と言う理由

 終わりが見えないコロナ禍において、自粛疲れが起きていたり、慣れが生じてしまったことによって、一部では気のゆるみなども指摘されていますが、私の周りで自粛に対してあまりストレスを感じないと答えるのは若者が多いように感じています。その理由の1つは下のグラフに表れているのかもしれません。新型コロナウイルスに揺れた1年を振り返ってみると、買い物はEC(Eコマース)で済むので外出の必要がなく、娯楽も動画配信で十分というライフスタイルに違和感がない若者はストレスが少なく済むのかもしれません。

 ここで注目すべきは動画配信などの「コンテンツ配信」の伸びの大きさです。外出しない代わりにEC経由の消費が増えるということは誰もが予想できた行動変容だと思いますが、コンテンツ配信がここまで伸びると予想していた人は多くないでしょう。この伸びがどこまで続くのかにも興味は湧きますが、コンテンツ配信自体よりも波及して恩恵を受ける業種や企業が何かという分析をするとお宝銘柄の発掘に繋がるかもしれません。

小売業界は厳しい

 さて、オンライン上の話から実際のリアル店舗に目を向けてみましょう。やはり「スーパー」、「コンビニ」、「百貨店」はいずれも年末にかけて減速傾向にあります。

 外出して買い物をすると、どうしても不特定多数の人と密な環境に一緒になることもあるため、ECで買い物をすませてしまいたいと考える人もおり、コロナの問題が収束するまでは厳しい環境が続きそうです。昨年の終わりごろからはワクチンの話も具体的に耳にするようになってきたものの、ワクチンの効果が証明され、多くの国民が摂取するのはまだまだ先の話でしょう。

 もちろん、過度に怖がりすぎると、今度は経済活動が停滞して別の問題が発生してしまうリスクもあります。実際に買い物に行けば分かる通り、店舗側も十分に感染リスクを抑える施策をとっており、私自身もなるべくお気に入りの店では買い物をしたいと思っています。しかし、連日、陽性者数が増えたと報道され、その数が日に日に増えていく様子をみてしまうと客足が遠のいてしまうというのが現場で働く人の声でもあります。

 このような逆境を打開するためには、やはりECを活用したり、店舗にいても非接触で買い物が出来るような仕組み作り、つまりDXが求められるわけですが、いち早く対応したのは意外にも外食産業でした。ファストフード店ではアプリで注文したり、ドライブスルーやデリバリーにもアプリやウェブサービスを活用しています。

コロナ禍ではECがシェアを拡大

 対面での販売がメインの小売業界は早々にDXを推進しなければ、コロナ問題が収束したとしても、元のようなビジネス規模では商売が出来ないかもしれないというデータもあります。下図は小売業態を分野ごとに区分けし、コロナ前と言える昨年1月と第3波真っただ中の昨年12月の消費指数を比較したものになります。

 どの分野でもコロナ禍で対面の小売業態が前年比でマイナスになっているなか、ECはいずれも大きく伸びていることが確認できます。なかでも、医薬品・化粧品や飲食料品はもはやECで注文することが浸透しているように見えます。鶏が先か卵が先かの議論になってしまうかもしれませんが、外部環境によって個人の行動様式がオンラインサービスの利用にシフトしていく速度よりも速く企業はDXを推進しないことには、コロナ前のビジネス規模を維持できなくなるということは非常に重要な観点だと思います。決算説明会資料などに目を通し、依然として「DXの推進」程度の記載しかなく、具体的なアクション内容や結果が書いていない企業は危険かもしれないからです。

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現在のデフレ状態はいつまで続く?オルタナティブデータから考察

 総務省が12月18日に発表した11月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.9%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.9%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.3%となりました。

 前月に続いて3指数ともに前年同月比マイナスとなりましたが、特に生鮮食品を除く総合 の前年同月比-0.9%という下げ幅は 2010年9月に同-1.1%となって以来、10年2カ月ぶりの落ち込みとなりました。

「Go To」事業がなくても物価は下落傾向

 内訳を見ていくと、前年同月比で大きくマイナスとなっているのが「宿泊料」です。前年同月比-34.4%と大きく下落していますが、「Go To トラベルキャンペーン」による割引の 影響であることは言うまでもありません。消費者物価指数の場合、消費者が支払った価格が基になるため、このような割引支援や、消費増税などによって指数が大きく影響を受けることは知っておきましょう。ちなみに、本キャンペーンによる割引を除いた宿泊料は同+0.7%となっています。

 とはいえ、「Go To」事業の影響を除いた試算でも生鮮食品を除く総合は同-0.5%となっているので、「Go To」事業の影響だけが物価下落の原因ではないことが分かります。

エネルギー価格の持ち直しが反映されるのに期待?

 前回の記事「日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認」でも指摘しましたが、2019年10月実施の消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響を品目ごとに機械的に一律に調整した「消費税調整済指数」は8月から3指数が全て前年同月比でマイナスとなっており、既に日本はデフレに再び突入したと考えてもよいと書きました。

 一方で、春先の原油価格下落の影響が時差をもって物価全体に出てきており、持ち直してきて原油価格が反映される数か月後には再び物価は前年同月比でプラスに回復するという解説もありますが、そんなに単純な話ではないということは主張しておきましょう。

 今回発表されたデータも含めて、エネルギー価格の推移を見てみると、下図のように下落傾向にあります。

 昨年の10月に消費増税がありましたが、実は経過措置として電気代とガス代は10月から税率が引き上げられました。その結果、他の品目と比較して、電気代とガス代は1か月後ろ倒しで消費増税の反動による物価下落圧力が表れます。よって、今回のデータから1年間、両品目はマイナス圧力を受けることになります。

オルタナティブデータを見ても目先は厳しい

 既に2020年も終わろうとしている中で、先程の消費者物価指数は11月のものになります。足元の物価動向を把握するため、全国の食品スーパー1200店舗のPOSデータをもとに、ナウキャスト社が提供している日次物価指数「日経CPINow・T指数(物価指数)」を見てましょう。

 11月下旬に日次T指数が前年同月比でマイナスとなっていますが、12月も再び下落傾向にあることが分かります。T指数を構成する品目を細かく見ても、前年同月比で下落に転じた品目数が増えてきており、物価下落圧力は足元でも強くなっていることが確認されます。

第3波による更なる物価下落圧力

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかりません。国内の1日における感染者の報告数が3,000人を超える日が散見されるようになり、東京都内でも1日で800人以上の感染者数が報告される日も現れ始めました。このような状況下、「Go Toトラベル」について、政府は14日に今月28日から来年1月11日まで全国一斉に一時停止することを決め、東京都をはじめとするいくつかの都道府県では飲食店に対する時短営業の要請がありました。

 このような危機を感じるような報道が増えることで、国民は自主的に経済活動を自粛するようになるというのは、これまでの3回の新型コロナウイルスの感染拡大の波における消費関連のデータを見れば分かる話です。ここ数週間の報道を受けて経済活動が抑制されれば、これもまた物価下落圧力になります。

 そして、今年の2月以降は非自発的失業者が増え続けていますが、いまのところその雇用調整は非正規雇用を対象に起こっていますが、10月の労働力調査をみていると、遂に正規雇用でも雇用調整が起こりつつあるかもしれないと考えられる数字が出てきました。

 雇用関連の指標は景気に遅行します。労働市場には第3波の影響が来年以降表れはじめるため、やはり来年も春先は消費が控えられて物価にはマイナスの影響が出ると考えています。よって、来夏あたりまでは少なくとも現在のデフレ状態が続くとみてよいのではないでしょうか。

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GoToトラベル vs コロナ第3波。旅行需要の変化をオルタナティブデータで確認しよう

 12月に入っても新型コロナウィルス感染拡大の第3波のピークは未だ確認できません。同月12日には国内感染者数が1日の発表数としては最多となる3,000人を超えました。前回の記事でGo To トラベルキャンペーンの効果が東京追加以降の10月から発揮されてきたと書きました。しかし、11月から第3波といわれる感染の再拡大が生じているため、同キャンペーンの一時停止なども検討されています。今回はオルタナティブデータを用いて同キャンペーンのデータを確認し、誰が利用しているのかを確認していきましょう。

既に国民の自粛は始まっている

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。

このJCB消費NOWにおける「旅行」の消費指数にPCR検査の陽性者数の推移と重ね合わせたものが下のグラフになります。

 PCR検査の陽性者数が増えた時期を感染拡大期とした場合、日本では第1波から現在進行形である第3波という3回の感染拡大期があったのですが、第1波の時は緊急事態宣言が発令されていたこともあり、旅行への支出は急激に低下しました。第2波は急激な低下からの回復が止まっただけであり、再びマイナス幅を広げることはありませんでした。

 その後は前回の記事でも書きましたが、Go To トラベルキャンペーンに東京が追加されたこともあり、急回復をして前年比でもプラスの成長まで戻りましたが、第3波が襲来したことで11月後半には再び前年比でマイナスの伸びとなりました。  同キャンペーンが感染拡大を加速させたとの指摘もあり、政府は一時停止なども検討しているということですが、国内の感染拡大の報道を受けて、既に国民は自粛を始めていることがデータから分かります。

そこまで大きな傾向は確認できないが・・・

 旅行について年代別の消費指数を見てみましょう。5歳ごとに年代を区切って見てみると、11月後半はほとんどの年代で伸び率がマイナスになっていることが分かります。

 年齢ごとに見てみても、そこまで大きな傾向を見出すことは出来ませんが、60歳以降の高齢者はややマイナス幅を大きくしているという傾向はあります。やはり新型コロナウイルスの特性の1つとして挙げられている、高齢者ほど重篤化リスクが高いということが影響しているのでしょう。

遠距離移動になると傾向が現れる

 次にJCB消費NOWの航空について見てみましょう。こちらも先程と同様に年代別に見てみると、こちらは明確に傾向が見て取れます。

 航空も高齢者ほどマイナス幅が大きくなっていますが、旅行と違うのは若年層もマイナス幅が大きくなっていることです。グラフを見てみると、50歳台を中心に弓なりに曲がった形になっていることが分かります。  若年層ほどネット環境があればいくらでも楽しく生活できる方法を知っているため、わざわざ感染リスクを負ってまで出かける必要を感じていなかったり、そもそも経済的に同キャンペーンを活用して旅行に行こうとは思わないという要因があるのかもしれません。

マイクロツーリズムすらも控えたか

 前回の記事ではGo To トラベルキャンペーンに東京が追加されたことで旅行へ行く人が増えたものの、不特定多数の第三者と密な環境になる新幹線や飛行機といった交通手段は避け、自家用車で旅行に行く人が多いという分析結果を書きました。しかし、JCB消費NOWの燃料小売業を見てみると、11月は再びマイナス幅が大きくなっていることが分かります。

 やはり現在の第3波に関するニュースの中で報じられる陽性者数がこれまでより多いことや、気温と湿度の低下という一般論として感染症が流行しやすい環境になってきたということなどによって、国民が自主的に自粛を始めているということなのかもしれません。

 未だに第3波のピークが確認できないなかで、仮に政府が同キャンペーンの一時停止を決めた場合、宿泊業や旅行・観光業への影響は言うまでもありませんが、自粛ムードがより強まることで娯楽や外食などの産業にも悪影響が生じます。足元の株式市場は堅調ですが、個人投資家は自分が投資している銘柄が属する産業への影響を再度考え直して保有銘柄の構成を見直してもいいかもしれません。

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日本経済は再びデフレに突入か?制度変更が物価に与える影響を確認

 総務省が11月20日に発表した10月の全国消費者物価指数(CPI)は「総合」が前年同月比-0.4%、「生鮮食品を除く総合」が同-0.7%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は同-0.2%となりました。

 3指数が全て前年同月比でマイナスの伸びとなるのは2013年4月以来のことです。特に「生鮮食品を除く総合」のマイナス幅(前年同月比-0.7%)は2011年3月以来のマイナス幅となっています。

制度の変更などによって大きく動く物価

 前回の物価に関する記事では、以下のような文章で締めくくりました。

10月のデータではどの品目がどのような価格変動を見せるのかを今から予想してみましょう。次回の記事で答え合わせが出来ればいいなと思います。

 さて、前述の通り、10月の消費者物価指数は日本経済がデフレに再突入したことを確信させるほど非常に弱い内容となりました。なぜこのような結果になったのでしょうか?また、何が物価に大きく影響を与えたのでしょうか?今回は1つずつ確認していきましょう。

 まず、最初に考えられるのは、昨年の10月に引き上げられた消費税の影響が剥落したということ。ただし、経過措置の関係で新しい消費税率の適用が11月以降になった品目は来月以降に影響が出ます。また、同時に実施された幼児教育の無償化の影響も剥落します。この消費増税と幼児教育の無償化の影響一巡によって、物価上昇率は前年同月比で0.2%程度押し下げられたと計算されます。

私たちの消費に大きな影響を与えた制度変更

 10月はその他にも様々な制度変更がありました。ここでは大きな3点を紹介しましょう。1点目は「Go To トラベルキャンペーン」に東京が追加されたことです。「宿泊料」は前年同月比-37.1%と同キャンペーンが実施されて以降、最も大きなマイナス幅を記録しました。

 2点目は10月1日から酒税が変更されたことです。こちらは少し変更内容が複雑で、酒類が全て増税になった訳ではありません。大まかに説明すると、ビールと日本酒は減税され、発泡酒、第三のビール、チューハイ・サワー、ワインは増税となりました。実際、10月の消費者物価指数を品目別に見てみると、10月は種類ごとに価格の変動が大きく生じていることが分かります。

 3点目はたばこ税の変更です。たばこ1本当たり1.0円(たばこ税0.500円、道府県たばこ税0.070円、市町村たばこ税0.430円)の引き上げとなりました。こちらは全て増税対応となりますので、同じく品目別でみてみると、国産品、輸入品ともにたばこの価格は10月に上昇しています。

物価の変動を先読みして変容する消費行動

 このように10月は制度変更の影響による価格変動が多く生じたのですが、それに応じて私たち消費者の消費行動も変容します。ここで、ナウキャスト社が提供している「日経CPI Now」のデータを用いて、行動変容を見ていこうと思います。日経CPI Nowでは、全国の食品スーパー1200店舗のPOS(販売時点情報管理)データを基に日次の物価や売上高を算出しています。

 品目別の日次売上高を見てみると、酒類では増税の数日前から増税対象の発泡酒やワインに対して駆け込み需要が発生したことが確認できます。

デフレに再突入した日本経済

 これまで見てきたように、今年の10月分の消費者物価指数は非常に多くの変動要因がありました。しかし、最も注目すべきことは、冒頭で説明した通り、日本経済がデフレに再突入したことを確信させるほど非常に弱い内容となったことでしょう。現時点では総務省による「デフレ」という言葉を使った説明は出ていませんが、データだけを見れば既にデフレに再突入したと言っても過言ではないでしょう。なぜなら、消費増税や幼児教育の無償化の影響を調整した指数では既に前年同月比でマイナスを何か月も続けていたからです。

 一時、原油市場が急落したことがあり、その影響が時差をもって日本の消費者物価指数にマイナスの影響を与えており、今後は原油市場の持ち直しが物価にプラスに作用するという見通しがあるため、まだデフレという話が出てきていないのかもしれませんが、日本では新型コロナウイルスの第三波が確認されており、これによって経済活動が再び委縮し、結果として物価にもマイナスの効果を与える可能性は十分あるため、少なくとも個人投資家は日本経済が既にデフレに再突入しているという認識は持った方が良いでしょう。


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「Go To トラベル 」東京追加の効果は? オルタナティブデータから見える新しい旅のかたち

 気温も湿度も下がり、外を歩いていても冬を感じる気候となってきました。それに伴い、新型コロナウイルスの感染が再拡大し、従前から懸念されていた「第三波」を指摘する専門家の声も耳にします。そのような状況下で、なぜ「Go To トラベル」キャンペーンを続けるのかという声が聞こえる一方で、前回の記事でも指摘した通り、同キャンペーンの効果は東京追加以降の10月から効果が発揮されてくると考えています。今回もオルタナティブデータを用いてキャンペーンの効果を確認していきましょう。

やはり東京追加以降の10月に激変

 株式会社ジェーシービー(以下:JCB)と株式会社ナウキャスト(以下:ナウキャスト)は、匿名加工されたJCBのクレジットカードの取引データを活用して、現金も含むすべての消費動向を捉える国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供しています。このJCB消費NOWにおいて、「旅行」の消費指数を見てみると、やはり10月から前年同月比でプラスとなっています。前年同月比がプラスの伸びになるのは2020年では10月が初となります。

 しかも、同キャンペーンによって大幅に割引された金額で決済されているため、決済件数が変わらなければ同指数は割引分だけ減速するわけですから、その大幅割引分を埋めてもなお前年同月比でプラスとなったということは、この数字以上に強い伸びを示したことになります。

 この項目には旅行代理店のウェブサイトなどを通じてクレジットカードで決済したデータが含まれます。同キャンペーンの東京追加は10月からでしたが、先行予約は9月後半から可能であったため、9月後半から既に東京追加の影響が確認できます。やはり、東京追加前までは期待していたほどの効果はなかったものの、東京追加で激変するというこれまでの仮説は正しかったと言えるでしょう。

依然として不特定多数と密になる空間は避ける

 しかし、同キャンペーンによって旅行の需要は押し上げられたものの、その移動手段に目を向けてみると、航空・鉄道ともに大きな変化は見られません。前年と比較すると相変わらず停滞を続けています。

 やはり、不特定多数の人と密な環境になってしまう移動手段は依然として避ける傾向があるようです。鉄道に関しては首都圏や関西圏で終電の時間が繰り上げられ、航空も国内外で本数が絞られていることから、乗客が減るだけでなく物理的な減少も影響したと考えていいでしょう。

マイクロツーリズムが浸透

 それでは、旅行需要が高まった一方で航空・旅客といった一般的な移動手段があまり使われていないということを考えると、どのように旅行に行っているのでしょうか。航空・鉄道のように自動車移動にかかる消費を直接計測することは出来ませんが、代わりにガソリンスタンドにおける決済を見てみましょう。

 暖房用の燃料も含まれるデータにはなりますが、10月はまだそれほど暖房用の燃料購入は大きくないでしょうから、ほとんどが自動車移動による燃料需要と考えても問題ありません。このデータを見ると、やはり自家用車で近郊へ旅行するというマイクロツーリズムが浸透したと言えます。実際に都内に住む筆者の知人に聞いてみても、箱根、熱海、軽井沢など近場に自家用車で旅行をしたという回答が多い印象を受けます。

第三波の影響は注視すべし

 しかし、第三波がどれほど大きな波となるか。これは注視すべきだと考えます。今年の消費関連の指数を2週間ごとに見ていくと、新規感染者数が増えたといった報道が多くなってくると、多くの国民が自主的に外出を自粛する傾向が確認されます。実際、旅行先としては人気がある北海道も、道内の新規感染者数が大幅に増えたという報道が出たために10月後半は伸びが減速しました。愛知でも新規感染者数が増加しており、その影響か東海地方も10月後半は伸びが減速しています。

 既に野党からは感染が再拡大しているなかで、同キャンペーンを続けるのか、延長するのかという声も上がっているため、観光業や交通関連の企業に投資をしている個人投資家は経済指標だけではなく感染者数などの動向にも注意を配るべきでしょう。