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出前館の決算短信を読み解く(基礎編②-業績の変動要因の特定方法)

こんにちは、Suiです。

前回の続きで「決算短信をどのように読んでいくか」について書いていきたいと思います。基礎編の2回目として、今回も出前館の3Q決算で業績の変動要因を見ていきます。

全体の流れ

(1)増収減益の要因

(2)定性情報の確認

前回の基礎編①では、決算短信の数字の部分をチェックしてきました。今回は業績が変化した要因を見ていきます。

<前回のポイント>

・3Qは前年同期比で増収減益(売上:+40% 営業利益:赤字転落)

・進捗率は未定に変更する前の通期予想に対して売上73.3%、営業利益(赤字)は超過ペース

(1)増収減益の要因

今回の出前館の例で押さえておきたいポイントとして挙げたのが「増収減益」という部分です。

前回記事からの引用)

通常、売上が増加していれば、費用がそれ以上に増加しない限りは増益になる可能性が高いです。今回の出前館で言えば、+40%の増収なのに減益になるのは増収以上にコストが増えた、しかも昨年はぎりぎり営業利益が出ていたのが営業赤字になるほどコストが増加したと解釈できます。

さて、増収減益の要因を詳しく見ていきたいと思いますが、上に書いた通り、コストの部分がどう変化したのかを確認する必要があります。

コスト部分を見るには損益計算書(P/L)のページを確認します。

出前館 2020年8月期 第3四半期 決算短信

3Q短信の6ページにP/Lが記載されています。

営業利益を動かすコストには売上原価と販売費及び一般管理費(販管費)の大きく2つありますが、これらの売上に対する比率(原価率、販管費率)を計算することでどのコストが大きくなったのかを把握できます

<図表1>

まずは売上原価率をみると、前期3Qの38.7%に対し、当期3Qは30.2%と売上原価の比率は低下しています。売上原価が具体的に何を示すのかについては、次回以降の応用編でビジネスモデルの理解と併せて見ていきたいと思います。

販管費率は前期3Qの60.7%に対し、当期3Qは93.3%と大きく上昇しているので販管費が大幅に増加したことが営業赤字になった主な要因と言えます。なぜ販管費が大幅に増加したのかは次の定性情報の確認でチェックしていきます。

これで利益増減の変動要因がコスト面でどこにあるかをP/Lで確認できました。次にその定性的な要因を見ていきますが、一旦ここまでの内容を整理します。

  • 3Qは前年同期比で増収減益(売上:+40% 営業利益:赤字転落)
  • 減益要因は販管費の大幅な増加によるもの

→販管費の増加理由は定性情報を確認する

(2)定性情報の確認

短信の業績部分から定量情報をまずは確認しました。次にその背景となる定性情報を確認していきます。

定性情報に関しては、まず決算短信のコメント部分に記載がないかチェックします。また、企業によりますが、決算説明資料で説明される場合もあるので決算説明資料の確認も必要です。同様に決算説明会で口頭による説明がされる場合もあります。

それでは出前館の決算短信を見ていきます。

<図表2>

売上に関する説明は、外出自粛による新規加盟の増加やエリア拡大などの説明がされていますが(青色部分)、費用に関する説明は「積極的な事業展開と投資実行」としか記載されていません(黄色部分)。短信の説明は企業によって丁寧に書かれていたり、出前館のように一言で説明されていたりとバラバラです。

ちなみに応用編では、ビジネスモデルと併せてさらに決算の理解を深める予定ですが、ビジネスモデルが理解できていると直接的な理由が記載されていない場合でも、他の情報からある程度の推測ができるようになったりします。

話を戻しますと、決算短信に記載が無い場合には決算資料など他の情報に記載がないかを探します。しかし、3Qでは説明会資料が開示されていないため、その直前の2Q決算資料を参考に確認してみます。

前回の基礎編①でも説明しましたが、2Qの業績は9月から2月までの6カ月間になります。

2Qの決算資料を見ると2Q時点で既に大きく販管費が増加していることが分かりますが、その理由としては広告宣伝費増加との記載がされています。

<図表3>

また、決算資料ではその販管費の内訳がスライドで説明されており、広告宣伝費、人件費ともに大幅に増加しています。販管費の内訳は大きくこの3つに分けて記載や説明がされる場合もあるので、短信と説明会資料を確認してみてください。

ちなみに、会社によりますが比較的上半期(2Q)や通期(4Q)の決算では詳細な説明がされることが多い印象がありますので、少し前の上半期や通期の資料まで遡ると情報が見つかるかもしれません。

<図表4>

広告宣伝費の大きな増加に関しては、テレビ広告などを増やしたり投資の側面が強いですが、人件費に関しては投資的に増加させたのか、売上と連動してコスト的に増加したのかが会社のビジネスモデルによって変わる場合があります。

したがって、次回以降の応用編で詳しく見ていきますが、ビジネスモデルが理解できていると、「業績の変化がどのような戦略をとった結果なのか」が見えてきます。

営業利益の増減分析の方法として、基礎的な見方は以上です。

基礎編としては、まず売上・利益の増減を確認し、その要因を理解するというのが決算では重要になります。

決算短信のサマリーでまず数字を確認し、増益・減益の要因を①原価率、販管費の比率から定量的に確認する、②原価、販管費がなぜ増減したのかを定性的な要因を確認する、の2点を決算短信や他の資料から確認していきましょう。

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出前館の決算短信を読み解く(基礎編①-数値のチェック方法)

こんにちは、Suiです。

今回は「決算短信をどのように読んでいくか」について書いていきたいと思います。

全体の流れ

(1)決算短信で見るポイント

(2)対象期間の確認

(3)売上、利益の確認

(4)通期予想に対する進捗

まずは決算短信で確認するポイントを説明してから、具体的に出前館(2484)の決算短信を一緒に見ていきたいと思います。

また、今回は基礎編としてまずは最低限チェックするべき部分をまとめていますが、次回は応用編として、さらに理解を深めるためにはどこを見ていくのがいいかをまとめる予定です。

基礎編も①と②に別れており、今回の基礎編①で短信の数字をチェックしたうえで、基礎編②で数字の変動要因を分析していきたいと思います。

(1)決算短信で見るポイント

・対象期間

これは当たり前かもしれませんが、対象企業が何月決算で今回の決算短信がいつの数字なのかをまず確認します。

・売上、利益の変化

基礎編として確認すべきはこの2つです。前年の同期間と比べて売上と利益がどう変化したかを把握する必要があります。

・通期予想に対する進捗

将来に目を向けると、通期の業績に対する進捗がどうだったかを確認します。

もちろん決算短信で他にも見るポイントはたくさんありますが、決算を見る1番の目的は対象企業の業績が良かったのか悪かったのかを確認することです。

そのために、まずは売上・利益がどう変化したかを確認して、その変化の要因を深掘りしていくイメージです。変化した要因の分析に関しては、決算短信以外にも説明会資料なども併せて見ていく必要があります。

それでは具体的に出前館の決算短信(2020年8月期 第3四半期)を使って各項目を見ていきたいと思います。

(2)対象期間の確認

基礎的な部分ですが、まずは今回の業績がいつの数字なのかを確認します。

慣れてくるとすぐにいつの数字なのかが分かりますが、最初は①何月決算か②何月から何月の業績なのかをしっかり確認することをお勧めします。

例えば今回の出前館の場合、決算期は8月決算で少し珍しいです。日本企業で多い3月決算の場合は、1Q=4-6月、2Q=7-9月、3Q=10-12月、4Q=1-3月でこれには慣れている方も多いかもしれませんが、決算期が3月以外の場合は確認した方が確実です。

出前館の場合、8月決算なので1Q=9-11月、2Q=12-2月、3Q=3-5月、4Q=6-8月となります。したがって、今回の3Q決算は2019年9月から2020年5月末までの決算です。これは決算短信の1ページ目に記載されてますので、まずここを確認しましょう。

<図表1>

対象期間を確認するもう一つの理由が、季節性やイベントの考慮です。

例えば今回の2020年3-5月の場合は大きなイベントや出来事としては、新型コロナウイルスによる(緊急事態宣言などの)影響が大きい期間になります。他にも小売の企業では年末年始が含まれる四半期は売上が大きくなるなど業界やビジネスモデル特有の季節性があります。

このように対象期間をチェックすることで、その時期に起きた出来事や影響を考慮して業績を見ることができます。

また、注意すべき点は決算短信に記載されている数字や情報は基本的に累計である点です。2020年3月~5月の情報が追加されてはいますが、短信に記載されているのは2019年9月〜2020年5月の累計9ヶ月の情報になります。

では3-5月の3Qだけの部分を見なくていいのか?という部分については、応用編で詳しく解説する予定です。

(3)売上、利益の確認

決算で確認すべきポイントは一言で言えば、業績が良かったか悪かったかです。その判断をする際に、まず見るのは売上と利益の変化になります。

変化を見るには①増収(増益)or減収(減益)か?②変化率が昨年と比較してどうか?の2つをまずチェックします。次に③通期予想に対する進捗はどうか?を確認していきますが、この「進捗」については(4)で説明します。

決算短信を読むゴールとしては、決算を見て「売上と利益がどう変化したのか、その原因は何だったか」を説明できれば決算の内容を理解できたと言えるでしょう。

まずは数字をチェックしてから、その原因を特定していきます。

そしてできれば③にあたる今後の予想を考えていくと良いでしょう。

それでは、出前館の決算を見ながら説明していきたいと思います。

まず決算短信のサマリー(最初のページ)で売上・利益の変化が確認できます。

<図表2>

昨年の3Q売上が+21%の伸びに対して、今年の3Q売上は+40%と大幅な増収で、かなり好調だったことが分かります。

企業の業界や規模、ステージにもよりますが、二桁成長(+10%以上)の増収増益であれば一般的には順調と言えるかもしれません。ただ、成長率の水準よりも重要なのが、前年の成長率を上回ったかどうかです。成長率は企業の成長スピードを表すため、特に企業の拡大期にあたるステージでは成長スピードが減速するのはかなり致命的です。

成熟した企業でも前年比で成長率が鈍化したということは売上が落ち始めている(=他社にシェアを奪われている)ことになるので、原因が一時的なものであるかどうか特定が必要です。

利益についても基本的には同じ考えで確認をしていきます。利益もサマリーで確認できます。短信には営業利益、経常利益、純利益が記載されてますが、個人的には営業利益を確認するのがオススメです。

その理由としては営業利益から純利益に向かっていくにつれて、一時的要因や特殊要因の影響が含まれるのが大きな理由です。最も分かりやすいのは経常利益と純利益の間にある特別利益・損失だと思います。営業利益と経常利益の間にある営業外収益・費用は一時的ではないものの、本業とは関連性がない損益で、例えば受取家賃などいわば副業、副収入のようなものです。本業であるメイン事業の業績を確認することが目的なので、その利益を見るためにはノイズが少ない営業利益が1番だと考えます。

それでは出前館の短信に戻ります。

基本的には売上の時と同じで①増益or減益か?②変化率が昨年と比較してどうか?を見ていきます。営業利益を見ると、今年は営業利益がマイナスになっています。その理由に関しては次回の変動要因の分析で詳しく見ていきますが、まず今回の決算は増収減益だったというのは押さえておきたいポイントになります。

通常、売上が増加していれば、費用がそれ以上に増加しない限りは増益になる可能性が高いです。今回の出前館で言えば、+40%の増収なのに減益になるのは増収以上にコストが増えた、しかも昨年はぎりぎり営業利益が出ていたのが営業赤字になるほどコストが増加したと解釈できます。

<図表3>

決算の結果を分類すると、①増収増益②増収減益③減収増益④減収減益の4パターンに分類されますが、このうち②増収減益と③減収増益は売上と利益のトレンドが逆になっています。この場合、今回の出前館のように、コストの部分で大きな変化があったことが想定されるのでその要因をしっかり見る必要があります。

コスト増加の部分やその要因については、次回の「基礎編②変動要因の分析」で詳しく解説していきます。

(4)通期予想に対する進捗

最後に通期予想に対する進捗度を確認します。

短信のサマリーの一番下には今期の業績予想(会社予想、通期予想と呼ぶ事が多いです)が記載されています。毎年4Qの決算時に翌年の目標として予想売上、予想利益(ガイダンス)が公表されます。

今回は2020年8月期の3Qなので、通常であればここに記載されている業績予想(4Qの目標)と3Q時点の売上を比較します。ただし、今年においては新型コロナウイルスの関係で業績予想を未定とする企業が多く、出前館も未定に変更しています。

そこで、あくまで参考ではありますが、2019年10月に開示された2019年8月期4Q決算短信に記載されている業績予想を見てみます。

この時の業績予想は売上93億円、営業利益-15億円という通期予想になっています。これを参考にして、3Q時点での進捗率を計算します。

売上は3Qの実績値である68億円を通期予想の93億円で割ると73.3%になります。単純計算で四半期ごと25%進んでいくとすれば3Q時点では75%が基準となり、少し足りないくらいの水準ですが特に問題はない水準だったと考えることができます。

ただし、企業や業界によっては売上や利益が特定の四半期に偏る場合があるので、単純計算ではなくその特徴を考慮して判断することが重要です。

営業利益に関しては予想は-15億円の赤字、実績は-16億円の赤字です。赤字の場合は少し計算しにくいですが、4Qで15億円の赤字予想が3Q時点でもうオーバーして16億円の赤字になっています。計画が変更されているとはいえ、当初予定を大きくオーバーしていることがわかります。

<図表4>

このように通期業績の予想を基準にして、決算短信の実績値がどれくらいの位置にあるか見ることで、通期業績の計画をクリアできるかの材料が見えてきます。通期業績を明らかに上回る進捗であれば上方修正も期待できる可能性がありますので、短信を見るときはぜひチェックしてみてください。

さて、今回は短信の読み方として、出前館の決算短信を使ってまず数字の確認などファクトチェックをしてきました。最後にポイントを簡単にまとめます。

<まとめ>

・2020.8期3Q決算は2019年9月〜2020年5月の累計9ヶ月の情報

・3Qは前年同期比で増収減益(売上:+40% 営業利益:赤字転落)

・進捗率は未定に変更する前の通期予想に対して売上73.3%、営業利益は超過ペース

次回の基礎編②ではこれらの数字を踏まえて、変化の要因などを見ていきたいと思います。

参考資料

2020年8月期 第3四半期 決算短信

2020年8月期 第2四半期決算説明資料

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ユーザベース企業分析(後編)-直近決算で進捗を確認

こんにちは、Suiです。

今回は前回の続きで、ユーザベース分析の後編になります。

<全体の流れ>

1. ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する=前編

2. 各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する=中編

3. 直近決算(2020.12期2Q)で進捗を確認=後編

後編では2020年8月13日に発表された2Q決算を詳しく見ていきます。

決算の内容を見る前に、まず前編・中編でのポイントを簡単に振り返りたいと思います。

前編ではユーザベースが4つのセグメントから構成されており、利益を生み出す黒字事業(SPEEDA事業、NewsPicks事業)と投資フェーズである赤字事業(Quartz事業、その他BtoB事業)に分別できる点や、全体業績を見ると同時に各セグメントの売上・利益をチェックする必要性について確認しました。

中編では、各セグメントについて細かく見てきましたが、収益構造としては①広告売上、②サブスク型の有料課金売上、の2つに分けられることが分かりました。また、今後は広告売上が新型コロナの影響を受けるリスク、有料課金売上では重要KPIであるMRRが重要である点を確認しました。

これらを踏まえた上で、2Q決算を見ていきたいと思います。

このように過去の決算やビジネスモデルを分析して、どこが今後の重要ポイントなのか今後考えられるリスクは何か、などを把握してから決算をチェックすると理解が深まると思いますので、ぜひ試してみてください。

■2020年12月期 第2四半期決算説明資料

■2Q決算説明会 書き起こし+Q&A
コロナ下でSPEEDA・NewsPicks好調の理由、Quartz黒字化への道筋などについて回答(全35問)

決算で確認する際におすすめの順番としては、(1)連結業績の確認(2)各セグメントの確認になります。

(1)連結業績の確認

まずは連結業績の確認です。資料の13ページに記載があり、2Qの実績値は売上63.5億円、EBITDA-1.0億円となりました。

図表1

決算を確認する上での注意点ですが、基本的には決算短信や説明会資料では累計の数字で表示されることがほとんどです。

例えば、今回の2Q決算であれば、1~6月の6カ月間の売上、利益の数字になります。

そのため、純粋な2Qのみ(4~6月の3カ月間)の数字を見る場合には別途計算する必要が出てきます。説明会資料では会社によって3カ月間の2Q単体の数字を計算して掲載している場合もあるので、累計なのか単体なのかは確認が必要です。

1Q決算と2Q決算から2Q単体を整理したものが図表2で、2Q単体では売上31.8億円、利益は-0.6億円となっています。

図表2

これまでの記事で見てきたように、まずは売上と利益の成長からチェックしていきます。

売上と利益の成長率を昨年と比較すると、前期(2019.12月期)から売上の成長率が鈍化(2Q累計:85.0%→12.2%)したように見えますが、これは鈍化ではなく前期にQuartzの買収効果が含まれる影響です。2019.12期では売上が大きく成長した(2019.12期1Q:売上+91.9%)ように見えますが、買収による特殊要因なので注意が必要です。図表3は買収直後の2019年12月期1Qの資料ですが、買収効果を除いた実質ベースでは+49%となりますので、M&Aが連結売上に寄与する場合は注意が必要です。また、前期の利益成長がマイナス(2Q累計-262.5%)になっているのも同様の理由です。

図表3 2019年12月期 1Q決算説明資料

昨年との比較については、上記のとおりM&Aによる影響で単純な比較が難しいですが、今期で1Qと2Qの比較(QonQでの比較)をしてみると、売上・利益の成長率ともに大きく変化していないので、順調だったと言えるでしょう。

(2)各セグメント業績の確認

次は各セグメントを見ていきます。p.12の業績サマリーで各セグメントの結果が簡潔にまとまっています。

図表4

まずは黒字事業のSPEEDA事業、NewsPicks事業(以下、NP事業)を見ていきます。

連結業績と同様に2Q累計と2Q単体における売上と利益の成長率を確認します。

売上成長は昨年から変わらず+20%超と堅調です。利益成長は+70%台から+20%台と低下しているように見えますが、金額ベースで考えると2.3億円→4.1億円→5.3億円で安定成長している(同じ金額なので比率で見ると低下していく)ので何か問題があったわけでは無いと考えられます。また、利益率を見ても39%台と安定しているので順調と言えるでしょう。

図表5

次はNP事業です。

売上成長については2Q累計で+30%超と順調に伸びています。利益については2Q単体を計算してみると実はマイナスということが分かります。これは資料の30ページに記載されているようにマーケティングコストが要因と考えられます。

また、昨年通期では3.8億円の利益なので、下期(3Q+4Q)に利益が偏重する季節性がありそうです。3Q、4QではNP事業の利益がしっかりと出せているかは確認が必要になってきます。セグメント別の通期予想は出ていませんが、前期4QでのNP事業の利益は3.8億円なので、減益にならない水準として残り3億円の利益を下期で創出しなければいけません。3Q決算でこの進捗を確認して達成確度は確認したいところです。

図表6

次は投資フェーズにある赤字事業(Quartz事業、その他BtoB事業)を見ていきます。まずはQuartz事業です。

前回の記事では、Quartz事業の今後の確認ポイントとして広告売上の減少リスクを挙げていました。

2Q累計の売上は-57.5%で、1Q、2Qと連続で減収となりました。この要因は広告売上が新型コロナによる影響で大きく減少したことによるものです。1Qの資料でも言及されていますが、2Qでも状況は変わらず広告に関しては厳しい状況が続いているようです。

一方で、利益に関しては赤字幅が縮小しています。2Q単体では1Q単体よりも赤字幅が縮小しており、説明にもある通り固定費削減の効果が出ています。今後のポイントとしては、資料の29ページにあるリストラ効果が3Q以降に出てくるので赤字幅がどの程度縮まるのかは確認が必要になります。また、①広告売上の回復があるか②有料課金売上が増加するか、にも今後注目していきたいところです。

図表7

その他BtoB事業(図表8)については、売上・利益の金額はまだ小さいですが、順調に成長している点に加えて2Q時点で黒字化できています。今後のマーケティング次第ではありますが、Quartz事業よりも早く連結業績で黒字貢献ができるかもしれません。

図表8

最後にセグメント別の業績と全体の連結業績との関係を確認したいと思います。具体的にはどのセグメントが全体の売上・利益増加に貢献したかを確認します。

まず図表2で、2Q累計の売上を見ると、連結業績では+6.9億円の増収で、Quartz事業の-7.3億円をSPEEDA事業(+4.9億円)とNP事業(+6.3億円)、その他BtoB事業(+3億円)の増収でカバーしています。

次に利益の増減を見ていきます。2Q累計の利益増加は+4.2億円です。この4.2億円がどのセグメントから来ているのかを見ると、SPEEDA事業+2.2億円、Quartz事業+2.2億円が主な増益要因になっています。各セグメントの増減については先ほど見てきた通りですが、SPEEDA事業については安定的な利益成長、Quartz事業ではコスト削減による赤字幅縮小が要因です。

今回の説明では最後に書きましたが、通常の分析ではまずこの増減の要因分析を最初に確認してから、各セグメントでその原因は何かをチェックしていくとスムーズに決算の分析ができると思います。

今回のポイント、今後の確認ポイントを整理すると、以下の通りです。

今回のポイント

  • 2Q累計、単体ともに増収増益
  • 増収要因はQuartz事業の減収を3事業の増収でカバー
  • 増益要因はSPEEDA事業の安定成長、Quartz事業のコスト削減による赤字縮小
  • その他BtoB事業が早くも黒字化

今後の確認ポイント

NP事業

  • 下期の利益創出

Quartz事業

  • 広告売上の回復
  • 有料課金売上の増加=MRRの増加
  • リストラ効果による赤字縮小

参考資料・リファレンス

2020年12月期 第2四半期決算説明資料

2Q決算説明会 書き起こし+Q&A
コロナ下でSPEEDA・NewsPicks好調の理由、Quartz黒字化への道筋などについて回答(全35問)

2020年12月期 第1四半期決算説明資料

2019年12月期 決算説明資料


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ユーザベース企業分析(中編)-事業セグメントの分析-

こんにちは。株式投資ライターSuiです。

今回は前回の続きで、ユーザベース企業分析の中編「各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する」です。

<全体の流れ>

1. 前編:ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

2. 中編:各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する

3. 後編:直近決算(2020.12期2Q)で進捗を確認

前回の記事で4つのセグメントのうち、SPEEDA事業とNewsPicks事業は黒字で利益を稼いでいる一方、Quartz事業とその他BtoB事業はまだ赤字だが、投資フェーズであることが分かりました。

さて、各セグメントを見るうえでのポイントは①収益構造の理解②業績とKPIの関係性です。

企業によって開示にばらつきはありますが、KPIまで資料や短信で開示している場合は、セグメント情報とKPIの関係性まで考えるとより理解が進みます。

まず黒字事業であるSPEEDA事業、NewsPicks事業を確認し、その後Quartz事業、その他BtoB事業を見ていきます。

(1)SPEEDA事業

SPEEDA事業は、“SPEEDA”という企業情報データベースを企業向け提供するサービスを展開しています。

上場企業から未上場企業の財務データなどを自由に使用することができ、例えば、経営企画部が自社の競合分析をしたり、M&Aの候補を探す時のデータ収集など様々な場面で使用されます。

Bloombergをイメージすると分かりやすいかもしれません。

ライセンス契約でIDが付与されて、月額や年間での料金体系になっているので、サブスクリプション型のビジネスです。

図表1を見ると、SPEEDA事業は利益率(EBITDA/売上)が改善していることがわかります。これは投資フェーズが終わり、コストをかけなくても利益が出せる状態になっていると考えられます。

(図表1)SPEEDA事業 売上・EBITDA推移

次にKPIを見ていきます。

ユーザベースはこの決算でセグメントごとに設定されていたKPIをMRRに統一しています。

おそらく、SPEEDA事業もNewsPicks事業もサブスクリプション型になっているため、統一した方が投資家にとっても分かりやすいのもあり、MRRに変更したのだと思います。

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは1カ月あたりのリカーリング(継続的)収益です。簡単にいえばMRR=サブスク部分の1カ月売上です。MRRのYoYを見ると、売上と同じくらいの成長率になっています。

また、MRRの期中平均に12(ヵ月)をかけて年間のリカーリング収益(ARR)を計算しSPEEDA事業の売上と比較するとほぼ全てがリカーリング収益になっているため、解約がほとんどないといえるでしょう。

したがって、解約率が低い状態でMRRが伸びれば、その分だけSPEEDA事業の売上も伸びる可能性が高いと考えることができます。今後もMRRの成長率には要注目です。(次回の後編では最新決算でこのKPIも確認していきます)

(2)NewsPicks事業

NewsPicks事業は、“NewsPicks”という経済メディアを運営しており、収益源は①広告売上、②有料会員からの売上、③その他売上から構成されています。

残念ながら①~③のそれぞれの売上については説明会資料に数字の開示がありません。

説明会の動画や質疑応答で数字が出ているかもしれませんが、どうしても分析で必要な場合には、IR担当の方へ直接問い合わせしてもいいかもしれません。

(図表2)2019年12月期決算資料 NewsPicks事業ハイライト(売上高の推移)

この部分で少し気になるのは、広告売上の部分です。

新型コロナウイルスの影響で単価や出稿が減少した場合は、広告売上が減少するため、NewsPicks事業の売上減少リスクになります。

グラフからの推測で4割近くは広告売上なので、新型コロナウィルスの影響が出ていないか今後も注意が必要です。

また、SPEEDA事業と同じく、NewsPicks事業でもKPIがMRRに変更されています。先ほど同様に各数字を整理してみたのが下の図です。

MRRからARRを計算すると約18億円になり、セグメント売上41.9億円のうち43.1%(サブスク比率)となります。

MRRに該当するのは有料会員からの売上で、広告売上もあるためSPEEDA事業と比べてサブスク比率は低くなります。

(図表3)SPEEDA事業 売上・EBITDA推移

広告売上の部分は気になる点がありますが、MRRがしっかり増加すれば利益率の改善も期待できると思います。

2019年12月期で利益率が低下している要因も少し気になりますね。

また、広告と有料メディアのビジネスモデルなので、将来的な利益率の水準はもっと高いはずなので、投資も多少しているのかなと思います。

(3)Quartz事業

Quartz事業では、“Quartz”という海外版NewsPicksのような経済メディアを運営しています。

投資フェーズであるQuartz事業ですが、今回は大きな変化がありました。業績を見ると一目瞭然ですが、減収減益となっています。

この大きな原因は「有料課金事業の立ち上げ」です。

(図表4)Quartz事業 売上・EBITDA推移

今までは広告売上だけだったものが、NewsPicksと同様に会員制で有料課金の売上が追加されることになります。

減収については図表5のスライドにある通り、広告売上の減少ですが、減益についてはおそらくこの有料課金事業を開始したことによるコスト増加(図表6のスライドでは新規会員は1年目40%オフ)も影響していると思われます。

(図表5)2019年12月期決算資料 Quartz事業ハイライト(売上高の推移)
(図表6)2019年12月期決算資料 Quartz事業ハイライト(MRRの推移)

広告売上に関しては、NewsPicks事業と同様に新型コロナの影響が今後は少し注意が必要かもしれません。一方で、それをカバーするように有料会員が増えてくれば、有料課金の売上が伸びてくるのでMRRの増加にも注目です。

ちなみに(図表4)のサブスク比率に関しては、まだ有料課金売上を始めたこともあり、かなり低い水準となっています。

(4)その他BtoB事業

その他BtoB事業に関しては、“FORCAS”というマーケティング関連のサービスが牽引して売上が伸びていますが、まだ売上の規模としては9億円弱(全体の7%)と小さいため、ここでは省略したいと思います。

ただ、今後Quartz事業に続く将来の成長ドライバーになる部分ではあるので、今後も売上の伸びには注目していきたいと思います。

まとめ

以上4つのセグメントを見てきましたが、基本的には

1. 広告売上(NewsPicks事業とQuartz事業の一部)

2. サブスク型の有料課金(SPEEDA事業全て、事業とQuartz事業の一部)

によって売上が決まる収益構造になっています。

有料課金の部分については各セグメントのMRRが成長しているかが重要になってくるので、決算でのKPIのチェックが必要です。

中編では各セグメントを細かく見てきましたが、後編となる次回ではこれらの分析を踏まえて、最新決算である2020年12月期2Q決算(記事作成時点)を見ていきたいと思います。


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ユーザベース企業分析(前編)-事業ポートフォリオ整理-

はじめまして、株式投資ライターのSuiと申します。

今回分析するのはSPEEDAやNewsPicksを運営するユーザベース(証券コード:3966)です。

分析の流れとしては、以下の順番で分析をしていきます。

1. 前編:ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

2. 中編:各事業セグメントの売上・利益、KPIなどの数字を整理する

3. 後編:直近決算(2020年12月期2Q)で進捗を確認

前編となる今回の記事では、ユーザベースの全体像や各事業セグメントの業績を整理し、理解を深めていきます。

中編では、それぞれの事業セグメントを深堀りすることで収益構造を理解します。

後編では、それらを踏まえて直近決算(2020年12月期2Q決算)を確認していきます。

さて、前編のゴールは、過去の決算説明資料から、ユーザベースがどのような事業から構成され、各事業の業績がどういう状況なのかを理解することです。

さらに、どの事業が会社全体の成長ドライバーとなっているかを理解すると同時に、ユーザベースの業績を見るうえで重要な数字は何か?という点も見ていきたいと思います。

それでは実際に2019年12月期決算説明資料を見ながら分析していきましょう。

最新の決算説明資料は5月14日に発表された2020年12月期 第1四半期の資料 ですが、2Qや通期の決算資料の方が詳細なデータや説明資料が掲載されているケースが多いので、今回は2019年12月期決算説明資料を見ながら分析していきます。

(1)ユーザベースの全体像(事業ポートフォリオ)を把握する

まずは全体像の理解から始めたいと思います。決算資料を見ると、色々な数字がたくさん書いてあり、迷う方も多いかと思います。ただし、必ずチェックすべきなのは次の2点です。

  1. 全体業績(連結業績)の売上・利益
  2. 各セグメントの売上・利益

ユーザベースの場合、連結業績のページでセグメントごとの数字まで記載されているので分かりやすいですね。

決算資料にある通り、ユーザベースは4つのセグメントから構成されています。

SPEEDA事業、NewsPicks事業、Quartz事業、その他B2B事業の4つです。

まずは全体の数字である連結業績を見ていきます。

一般的には、連結業績の売上と営業利益(または当期純利益)の推移や前年比較があるので、売上と営業利益がどのくらい伸びているのかをチェックします。

ユーザベースの場合は、前年比で売上が+34%、営業利益にあたるEBITDAは▲15億で、2019年12月期は増収減益という内容でした。(図表1,2参照)

図表1:2019年12月期 連結業績ハイライト(売上高)
図表2:2019年12月期 連結業績ハイライト(EBITDA)

なぜユーザベースがEBITDAを使っているか、それはユーザベースが積極的な投資をしているからです。EBITDAは、簡単に言うと「営業利益 + 減価償却費」なので、投資が大きい企業は営業利益の代わりにEBITDAを使用しています。

<EBITDAの解説>
【図解あり】EBITDAとは? その意味とは?PLから10秒でキャッシュ・フローをざっくり読み取る方法をわかりやすく3つのステップで解説

売上が +34%に対してEBITDAが赤字になった要因は、新規事業であるQuartz事業が▲20.5億円になったことです。

Quartz事業を除いた場合はEBITDAは+55%と大幅な増益になっています。つまり、SPEEDA事業とNewsPicks事業だけを見ると、増収増益と順調なことがわかります。

簡単にまとめると、全体像は以下のとおりです。

  • ユーザベースの通期決算は増収減益だった(売上+34%, 利益▲15億円)
  • 4セグメントのうち、SPEEDA事業、NewsPicks事業は黒字事業。Quartz事業、その他B2B事業は投資フェーズの赤字事業である
  • Quartz事業の赤字が大きく、全体の利益を押し下げた

(2)各事業セグメントの業績、特徴を整理

全体像を把握した後に、各セグメントを見ていきます。

セグメントで見るポイントは2つで、それは各セグメントの①規模・収益性②成長性です。

① セグメントの規模・収益性

まずは、各セグメントの規模と収益性について見ていきます。

具体的には、各セグメントの売上構成比や利益構成比を確認することで、どこが重要なセグメントなのかを判断することができます。

図表3:セグメント別売上/利益構成比

こちらから、以下のようなことがわかります。

  • 売上構成比は、SPEEDA事業、NewsPicks事業ともに約3
  • 利益は、SPEEDA事業が13.8億円に対しNewsPicks事業は3.8億円と、SPEEDA事業の方が利益を多く出している(今回のケースでは赤字事業で利益構成の比率が分かりにくくなっているため、実数で見ています)

また、利益率で比較しても、NewsPicks事業の利益率が9.1%に対してSPEEDA事業の利益率が30.4%と、SPEEDA事業の方が利益率が高いことがわかります。

②セグメントの成長率

次に、どの事業が成長しているかを見ていきます。

セグメントが変更される時もありますが、過去2〜3年のYoYを計算したのがこちらです。

図表4:セグメント別売上/EBITDAの実績・成長率

各セグメントの売上とEBITDAのYoYを見ると、以下の考察が挙げられます。(利益の金額が小さいためにYoYの変化率が大きくなる点や、サンプルが少ない点には注意が必要です)

  • 売上はSPEEDAよりもNewsPicksの方が伸びている
  • 利益はSPEEDAが安定的に+60%以上の成長
  • NewsPicksは2018年が大きく伸びた or 今年が一時的に伸び鈍化した

また、①で確認したとおり、全社業績との関係ではSPEEDA事業とNewsPicks事業が利益を稼ぎ、まだ赤字であるQuartz事業、その他BtoB事業に投資していることが図表4からも確認できます。

セグメント別の売上・利益をこのようにExcelで整理すると、どのセグメントが収益源なのか、または投資段階なのかなどが見えてくるので、ぜひやってみてください。

中編は、各セグメントのKPIやビジネスモデルなど、事業ごとの細かい部分を見ていきたいと思います。


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